仲正昌樹のレビュー一覧
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アーレントの『全体主義の起源』および『イェルサレムのアイヒマン』の内容をわかりやすく解説するとともに、「分かりやすさ」を求めて思考停止に陥っている現代日本の言論状況を批判し、アーレントの「複数性」の概念が持つ意義を再評価している本です。
著者がアーレントについて解説している本はいくつか刊行されていますが、そのなかでもとりわけ読みやすく、アーレントの思想のエッセンスをコンパクトなしかたで紹介しています。『全体主義の起源』は、読んでいてどこに連れていかれるのか皆目わからず、途方に暮れるほかなかったのですが、本書は非常にシンプルな見通しをつけていて、すくなくともわかったような気になってしまうこと請 -
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本書は、「存在と時間」の読解を主な内容とする、ハイデガー哲学の入門書である。
筆者は「存在と時間」の原典をときどき引用しながら、難解な思想を卑近な事柄に例えて解説してくれるので、比較的わかりやすい解説書になっている。
特に「存在と時間」原典の文章にはハイデガーの造語や難解な哲学用語が多く、それらの用語の意味の理解に、この本の説明は役に立つ。とはいえ、原典自体が難解なので、筆者の丁寧な解説にもかかわらず、この本一冊で「存在と時間」が読めるようになるといったものではない。次のもっと詳しいハイデガーの解説書に挑むための最初のステップに読むのに適した本であるような気がしている。 -
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すごく分かりやすいと思っていたら『100分de名著』の改訂増補版だった。再構成されていて、とてもいい。
『全体主義の起源』と『イェルサレムのアイヒマン』にフォーカスされた内容になっている。
なかで「犯罪の遂行には悪を行う意図が必要である」という近代法体系の前提すら、思い込みや偏見によって成立しているのではないかとするアーレントは厳しい。
実際、日本の犯罪報道では報道する側も受け取り側も、自分たちと悪との圧倒的な違いを探そうとする。これは容疑者に悪のレッテルを押し付け、その差異によって自分たちを正当化し善良性を証明しようとするものだ。この心性ははナチスがユダヤを迫害したのと同じ構図じゃなかろうか -
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リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズムの対立を中心に、アメリカの政治思想を分かりやすく紹介している本です。
上記の3つの立場だけでなく、ポストモダン左派の文化闘争や、『アメリカン・マインドの終焉』のアラン・ブルーム、「文明の衝突」のハンティントンや『歴史の終わり』のフランシス・フクヤマといった広い意味での思想にまで目配りをおこない、さらに現実の政治状況にも言及していますが、極めてクリアな見通しを与えてくれる本で、優れた入門書だと思います。
同時に、マルクス主義や市民主義の伝統の強い日本では、「自由」や「平等」、「正義」といった基礎的な概念についての突っ込んだ哲学的考察がおこな -
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デリダによる音声中心主義批判にさらされ、アレントによって全体主義の元凶とされたルソーを、仲正昌樹が「読み直す」ということで、かなり期待して読みはじめました。
「終章」で文芸批評家のスタロバンスキのルソー解釈に依拠しつつ、「透明なコミュニケーション共同体」を語った「壮大なフィクション」としてルソーの著作を読み解くという方向性は刺激的に感じました。ただし本論は、現代思想的なルソー解釈がきらびやかに展開されるというわけではなく、『言語起源論』や『人間不平等起源論』『社会契約論』『エミール』といった著作にある程度立ち入って内在的に読み解こうとしています。著者の各種「入門講義」でもそうなのですが、現代 -
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アーレントの主張を読み解こうと思ったけども、
難しかったので入門書的なこの一冊を購入。
分かりやすさの危険性を主張するアーレントを
分かりやすく解説するというちょっと矛盾した本書。
【個の喪失】に繋がることには徹底して警鐘を鳴らす。
というアーレントの主張がわかりやすく書かれていました。
空気には絶対流されないその強い意志が、
アフガン戦争の時期にまだいてくれたのであれば、
アメリカの方向性も多少は違うものになっていたのかもしれないなー。
入門書から始めないといけないなーと思ったのはアダム・スミス以来。
彼女が書いた本もちゃんと時間かけて読んでみようと思います。