仲正昌樹のレビュー一覧

  • 悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える

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    結局全体主義の起源とは、国民国家の誕生による「均質に見える国民の出現」と階級社会の崩壊によって「お上から何か良いものが与えられるのを待っている無知蒙昧な大衆の出現」ということか。ここで言う全体主義の『全体』とは国家、あるいは国民の全体ではなく、全国民から異分子を除いた全体という事であって、随分と狭い意味で使われていることに気づかされた。
    最近の日本でもアメリカでも全体主義の兆しが見えるが、国民が"99%"に均質化され、かつ愚民化政策で複雑なことを考えることをやめた大衆が増えた結果と言えようか。

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    2019年06月22日
  • 悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える

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    アーレントの『全体主義の起源』および『イェルサレムのアイヒマン』の内容をわかりやすく解説するとともに、「分かりやすさ」を求めて思考停止に陥っている現代日本の言論状況を批判し、アーレントの「複数性」の概念が持つ意義を再評価している本です。

    著者がアーレントについて解説している本はいくつか刊行されていますが、そのなかでもとりわけ読みやすく、アーレントの思想のエッセンスをコンパクトなしかたで紹介しています。『全体主義の起源』は、読んでいてどこに連れていかれるのか皆目わからず、途方に暮れるほかなかったのですが、本書は非常にシンプルな見通しをつけていて、すくなくともわかったような気になってしまうこと請

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    2018年11月21日
  • ハイデガー哲学入門 『存在と時間』を読む

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    本書は、「存在と時間」の読解を主な内容とする、ハイデガー哲学の入門書である。
    筆者は「存在と時間」の原典をときどき引用しながら、難解な思想を卑近な事柄に例えて解説してくれるので、比較的わかりやすい解説書になっている。
    特に「存在と時間」原典の文章にはハイデガーの造語や難解な哲学用語が多く、それらの用語の意味の理解に、この本の説明は役に立つ。とはいえ、原典自体が難解なので、筆者の丁寧な解説にもかかわらず、この本一冊で「存在と時間」が読めるようになるといったものではない。次のもっと詳しいハイデガーの解説書に挑むための最初のステップに読むのに適した本であるような気がしている。

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    2018年11月07日
  • 今こそアーレントを読み直す

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    読み終わりました。
    改めてハンナ・アーレントを知ると、現代に通ずる問題提起を多分に含んだ発信をしていた人なのだと思う。全体主義や凡庸な悪というテーマは、現代だからこそ再びスポットライトが当たるべきだし、実際にそうなっている。
    彼女はやや愚直で正直で素直すぎたところがあり、そこが「イェルサレムのアイヒマン」出版後に仲間たちと断絶してしまう結果を招いたのかもしれない。ただ、そうまでして彼女が訴えかけたものは、現代人がさらに後世につないでいかないといけない。また悲劇的な戦争が起こらないために。

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    2018年09月04日
  • 悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える

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    人は不安になると明解で時に過激な思想に傾き、それに従わない強い思考力を持つ人を除外しようとする。今の世界政治も、イジメの構図も、全く同じだ。

    大事なのはきちんと自分の頭で考える。議論に勝つための不純な目的ではなく、本当の正しさを追求するために。

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    2018年08月01日
  • 悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える

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    すごく分かりやすいと思っていたら『100分de名著』の改訂増補版だった。再構成されていて、とてもいい。
    『全体主義の起源』と『イェルサレムのアイヒマン』にフォーカスされた内容になっている。
    なかで「犯罪の遂行には悪を行う意図が必要である」という近代法体系の前提すら、思い込みや偏見によって成立しているのではないかとするアーレントは厳しい。
    実際、日本の犯罪報道では報道する側も受け取り側も、自分たちと悪との圧倒的な違いを探そうとする。これは容疑者に悪のレッテルを押し付け、その差異によって自分たちを正当化し善良性を証明しようとするものだ。この心性ははナチスがユダヤを迫害したのと同じ構図じゃなかろうか

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    2018年06月23日
  • 今こそアーレントを読み直す

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    勉強のための一冊として読む。うん、やっぱり理解できていなかったんだと思わされる。アーレントの著作を再読しなくちゃね。でもそのためにはもっと事前の準備が必要ですね。

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    2018年05月10日
  • 今こそルソーを読み直す

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    ルソーそのものよりも社会契約論に的を少し絞った上での一冊。

    内容はその『社会契約論』に絞ってあるので、前後の著作にはそれほど多くは触れていない感じなのだけど、この社会契約をもとに全体を説明しようとするバランス感覚が読みやすかった。

    一般意志、自然人、社会契約といったキーワードを軸にして、ルソーは現代までにどういった影響を及ぼしているのか、というごく当たり前の疑問に対して、きちんと著者なりの解釈をしているのでスラスラ読める。

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    2018年05月06日
  • 今こそアーレントを読み直す

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    アーレントの思想の上に、著者の思想が乗っていることがはっきり打ち出されている。こういう本を好まない人もいるだろうと思う。読むタイミングによっては、著者の言い分に腹が立つ人もあるだろう。
    ぼくにとってはちょうど良い、アーレントの著作への入門になったように思う。

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    2018年02月22日
  • 今こそアーレントを読み直す

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    全体主義に陥らず、複眼的であり続けるためには、他の人との意見交換がなにより大事だ、ということだと理解した。
    いろんな考えの人と話をするのも大事だけど、きっと、いろんな考えの本を読んで、自分の考えを調整し続けるのも大事なんだろうなと思った。

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    2018年02月04日
  • マックス・ウェーバーを読む

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    小泉進次郎に対して池上彰が「職業としての政治」って読んだことあります?と衆院選特番のインタビューで意地悪く聞いて、「政治とは職業ではなく生き方だ」とそれらしく回答していたのが、ソツないように見えてなんか噛み合ってないように思ったので、ちゃんと勉強してみようと読んでみた。要するにウェーバーの「職業」Berufはドイツ語的に多義的で、召命とか、そういう宗教的意味もあるので、彼の回答はウェーバーに対する反論ではなく、肯定として語れば正解に聞こえたのかもしれない。何にせよ、池上彰の質問はしてとてもいじわるだ。

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    2017年12月03日
  • 「不自由」論 ――「何でも自己決定」の限界

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    帯の「ポストモダンの中で、とりあえずどんな態度をとったらいいのか考えていこうという主題」への記述が自分の力では読み取れなかった。

    102p
    エクリチュールによるパロール支配

    190p~
    アイデンティフィケーションと主体性、自己決定

    指摘されて気がついたが、
    このアイデンティティと所属する共同体との関係、
    そこで求められる主体性との関係が良かった。

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    2017年08月06日
  • 現代思想の名著30

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    Ⅳ表象文化面からの資本主義批判から、俄然、面白くなって来た。特にブルデューからの現代社会批評の数々は、私の問題意識として切実であったからだろう。
    30冊の選書と個々の寸評は、適切かつ正確だと感じた。

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    2023年09月28日
  • 集中講義!日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか

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    日本におけるマルクス主義以降の思想・哲学状況を概観するのに最適。やはり、そうだったのだという納得感が読むうちに漲ってくる。その時々の自分の考えが世界の大きな流れの部分であったという感覚、類としての自分を確認出来る分析である。してみると今、足元の混沌状況も世界の知性がそうなっているからなのであろう。自分の思考状況の客観的位置付けを空間的に確認出来る。

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    2017年03月12日
  • 今こそルソーを読み直す

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    中川八洋氏(タルモン、アーレント)によると、「ルソーは自然人を理想として人格を改造し、一般意志に従属するロボットとして、全体主義を導く」はずであったが、仲正氏によると、それは誤読で、ルソーはそんなことを主張していないとのことである。そうすると、非難されるべきは、ルソーの思想を利用したロベスピエールやレーニン、スターリンである。それにしては被害者の数が桁違いに多い。中川氏はそこを問題にしているのだろう。

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    2017年01月12日
  • 集中講義!アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険

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    リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズムの対立を中心に、アメリカの政治思想を分かりやすく紹介している本です。

    上記の3つの立場だけでなく、ポストモダン左派の文化闘争や、『アメリカン・マインドの終焉』のアラン・ブルーム、「文明の衝突」のハンティントンや『歴史の終わり』のフランシス・フクヤマといった広い意味での思想にまで目配りをおこない、さらに現実の政治状況にも言及していますが、極めてクリアな見通しを与えてくれる本で、優れた入門書だと思います。

    同時に、マルクス主義や市民主義の伝統の強い日本では、「自由」や「平等」、「正義」といった基礎的な概念についての突っ込んだ哲学的考察がおこな

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    2016年12月27日
  • 〈宗教化〉する現代思想

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    ただただ面白い。社会思想・比較文学の研究者である著者が現代日本の思想地図にちょいちょい茶々を入れながら、思想史をかなりわかりやすく説明してくれている。何かを語ろうと思えば不十分であろうが、教養として楽しむには充分。

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    2016年08月27日
  • 今こそルソーを読み直す

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    デリダによる音声中心主義批判にさらされ、アレントによって全体主義の元凶とされたルソーを、仲正昌樹が「読み直す」ということで、かなり期待して読みはじめました。

    「終章」で文芸批評家のスタロバンスキのルソー解釈に依拠しつつ、「透明なコミュニケーション共同体」を語った「壮大なフィクション」としてルソーの著作を読み解くという方向性は刺激的に感じました。ただし本論は、現代思想的なルソー解釈がきらびやかに展開されるというわけではなく、『言語起源論』や『人間不平等起源論』『社会契約論』『エミール』といった著作にある程度立ち入って内在的に読み解こうとしています。著者の各種「入門講義」でもそうなのですが、現代

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    2016年08月13日
  • 集中講義!日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか

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    各章読み応えあるけど、ラストの物書きとしての姿勢、想いがそのまま吐露する場面で随分と印象が変わった。

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    2016年05月29日
  • 今こそアーレントを読み直す

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    アーレントの主張を読み解こうと思ったけども、
    難しかったので入門書的なこの一冊を購入。
    分かりやすさの危険性を主張するアーレントを
    分かりやすく解説するというちょっと矛盾した本書。
    【個の喪失】に繋がることには徹底して警鐘を鳴らす。
    というアーレントの主張がわかりやすく書かれていました。
    空気には絶対流されないその強い意志が、
    アフガン戦争の時期にまだいてくれたのであれば、
    アメリカの方向性も多少は違うものになっていたのかもしれないなー。
    入門書から始めないといけないなーと思ったのはアダム・スミス以来。
    彼女が書いた本もちゃんと時間かけて読んでみようと思います。

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    2016年04月19日