仲正昌樹のレビュー一覧
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コンパクトながら大変読み応えがあった。
全体主義やそれに対するアーレントの分析、批判。
悪は誰にでも宿りうるという、一部の人に受け入れ難い考察。
わかりやすさに溺れない、無思想性な服従に陥らない必要性。
知的に誠実であり続けることは容易ではない。ましてや社会全体でそれを維持し、全体主義に陥らないようにするにはなおさら。でも、勤め続けなければならないと改めて理解。
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全体主義
明確な定義があるわけではない
・大衆の願望を吸い上げる形で拡大していった政治運動、大勢
・ファシズムや社会主義の共通性を強調するために使われた言葉
・近代的自由主義を否定し、諸個人を共同体としての国家に完 -
Posted by ブクログ
とても面白かったです。
ハンナアーレントという人、その思想に関する本を初めて読みましたが、共感できるところが多かったです。
本文中で、ギリシャの都市国家ポリスの市民たちは、自分の私的な利害を除いて、全体のための善を討論していた、そこに複数性があること、人間性を見出している旨の話が出てきます。
それが本当にポリスの時代に実現できていたかは置いておいて、私達の生きる現代において、それは国家的な政治においても、もっと小規模な、普段の生活に密着した集団においても、アーレントの理想とするような思考、つまり私的利害を超えて討論し、複数性を持った方策を導くということは、できていない場面がほとんどじゃない -
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ネタバレ哲学、現代思想の分野で多くの著書を持つ作者の人となりを知りたくて購入。本書は仲正氏が東大入学直後に原理研(統一教会の学生組織)に勧誘されて参加し、11年後に脱会するに至った経緯を中心に、幼少時から現在までの半生を振り返った自叙伝である。自らの不安、迷いなどその時々の心の動きを実に率直に語っている。折しも統一教会の多額献金や信者家族のトラブル、自民党との癒着の構図などが問題になっているが、(元)信者の立場からはどのように見えていたのかを知る一助となり得る。それにしても統一教会の「お父さま」「お母さま」たる教祖夫婦のキンキラキンの服装や高飛車でえらそうな物言いを仲正氏のような批判的知性の持ち主がう
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今の日本も何となく全体主義化してるんじゃないかなぁ、と思い勉強のため購入。凄く丁寧で具体例により分かりやすく説明してくれるので助かった。
テレビでは政府への批判を聞く事もめっきり減り、政府も答えたくない質問には「回答を控える」で許される。フォアグラのガチョウの様にバラエティばかり朝から晩までこれでもかと見せられ愚民化政策が進み、「分かりやすさ」ばかりが求られる時代の危うさ。議論と言っても議論が深まる事もなく勝ち負けを決めるケンカのようなモノばかり。大衆化をヒシヒシと感じます。そんな世の中で解決策はと言えば「複数性に耐える」と言われてもムリ。実際しんどい。読み終わっても問題の大きさ深さに暗澹とす -
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とても読みやすい本。全体主義思想、ホロ・コーストがなぜ起こったのか、大衆の心理についてハンナ・アーレントの思想を読み解く。
エルサレムのアイヒマン(数百万人のユダヤ人の虐殺を執行した人、「法」に従ったのみだと主張した)の話に至るまでの最低限必要な知識が順を追って書かれているため、世界史に詳しくない人にもオススメ。
不安が広がると単純でわかりやすい思想に流れがちというのは現代にも通じる話。二項対立で善悪を決めつけるのではなく「複数性」を持つことが大事だと解く。アンナ・ハーレントが世間からの批判を浴びる覚悟で当時持論を展開したことに尊敬の念を抱く。アンナ・ハーレントを英雄視することもまた単純な二元 -
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ハンナ・アーレントの本を読みたかったけれど、難しそうだったので解説書から読むことにした。
アーレントの人生史や時代背景の説明をしながら、アーレントの考えについて解説されていたので、歴史に詳しくない私としてはとても読みやすかった。
全体主義の危険性を終始説いていたが、第二次世界大戦のドイツがなぜそのような思想に陥ったのか、そして現代の我々においても全体主義のリスクがかなり潜んでいることに気付かされた。
複数性に耐え、わかりやすさの罠にはまってはならないとと言われていたけれど、このマインドを維持するのは、本当に忍耐のいる作業だなと感じた。
成長は自分を傷つけることだという考えにも似ていて、常 -
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相変わらず驚異的な編集能力・要約能力を持ち合わせておられる。
題名の通り、この本で20世紀の哲学の要点は大体掴むことが可能でしょう。
単なるすぐれた要約にとどまらず、初学者が疑問に思うような点(例えばロールズの正義論の何が画期的だったか?というように)に視点を向けようと努力している点も素晴らしく、その意味で痒いところに手が届く感触があります。
また個人的には思弁的実在論については無知だったのでとても勉強になりました。
しかし、ある程度の前提知識を要求するような面があると思われ、全くの初心者がこの本を読んで理解できるかどうかは分かりません。
著書もこの点に関しては本書の中で釘を指しています。
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