【感想・ネタバレ】集中講義!日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのかのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年12月01日

つねに皮肉っぽい書きぶりであるが、それぞれの時代の思想業界界隈の様子がうかがえて面白い。著者による整理だけに囚われてもいけないが、様々な日本の思想家の文章を読むにあたって、それが書かれた背景をある程度イメージできている方がよいので、こういった本はありがたい。

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Posted by ブクログ 2018年10月08日

明晰でよかった。ポモ思想の内在的な解説ではなくて、歴史的な話をきっちり説明してくれているからありがたい。翻訳、輸入の過程にはタイムラグも当然あるし、全部翻訳されるわけでもないし、受容のプロセスみたいなところはおさえておかないといかんよね。仲正先生の本をちゃんと読むのは初めてだったが、真っ当な解説とい...続きを読むう印象で、ほかの本とか、界隈での評価とかは詳しくないが、生産性がすごい。修論博論も厚い本にされているが、研究的な話はどうなのだろう。

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購入済み

誰もが知るべき現代思想

2018年08月17日

私は理系で、こういう思想とか倫理とか疎い人間なのですが、とても面白かった
近代思想を超克しようとした思想の挑戦の歴史は、誰もが興味を持って勉強すべきなのではと思わされました

私が特にとても興味を持ったのは、ヴァルター・ベンヤミンのファンタスマゴリー論とバタイユと栗本慎一郎の蕩尽論
また読み...続きを読むたい本が増えてしまった

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Posted by ブクログ 2017年12月18日

日本のポストモダンのごちゃごちゃした感じをすっきりと位置づけてくれるのである程度関連や位置関係が見やすくなる日本のポストモダンの総ざらい。柄谷、吉本、中沢、浅田などの有名所の言説と歴史的な背景、課題など含め書いてある。読みやすい。

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Posted by ブクログ 2012年07月19日

21世紀も間近になった頃に大学入学、研究を本格的にはじめたのは2000年代後半というな私は、日々「なんでこんなことになっちゃってるの!?」と叫びたくなるような哲学・思想(と社会との関係)に関する問題にぶちあたることが多かった。――たとえば、「どうして浅間山荘に閉じこもった連合赤軍は仲間同士で殺し合っ...続きを読むたのか?」とか「なんで『総括』という言葉がリンチを指すようになったのか?」とか、「なんでこんなに現代思想は、ライトなノリで明るくたのしく語らなくちゃいけない感じになっちゃったのか?」とか。
本書は、そうして日々ぶつかりながらも、その答えを見出す術同市もなく、喉にささった魚の小骨のようになってしまった問題たちを、一気に溶かしてくれた感じがする。
私と同世代の、研究者の卵たちは、いろいろな現代思想の本を読み、それを吸収して、自分の研究にいかしながらも、それらの思想の位置づけなどを把握するのにものすごく苦労しているんじゃないかと思う。私自身もまさにそんな最中にある。そういう「地図」も持たずひとりさまよい歩き続けてきた私にとってはとてもありがたい本だった。

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Posted by ブクログ 2012年07月05日

いわゆる「現代思想」の入門書として非常に出来が良いと思う。特に日本でどのようにして現代思想が形成されてきたのかの背景について知ることができたのが良かった。2000年代中期ぐらいまで流れをカバーしているというのもポイントが高い。僕のようにこれから現代思想っぽいことをやろうかなーと思っている人以外にも、...続きを読む大枠としての社会「理論」に興味があるなら断然お勧め。また、理論の価値がよくわからないという実証主義の人たちが読んでも面白く読めるのではなかろうか。

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Posted by ブクログ 2011年12月21日

日本の現代思想を学ぶ入門書としては最高の書籍だと思う。
ポストモダンをいきなり語るのではなく、マルクス主義からの流れで書かれているので、その成り立つ背景なども学ぶことができ、より理解がしやすい。

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Posted by ブクログ 2013年04月13日

80年代を中心に流行った、「現代思想(ニューアカデミズム)」の思想がどのように生まれ、どのように展開されたかを中心に戦後の日本の思想をまとめた本。3部に分かれて解説している。

第1部(1.2章)で、戦後マルクス経済学がどのように日本に普及し、その限界があったかを述べている。具体的には、農労派(社会...続きを読む党系)や講座派(共産党系)の違いなどから始まり、全共闘、丸山や吉本などの思想にもふれながら、日本の左翼思想の高まりについて述べている。

第2部(3.4章)では、構造主義から、諸外国のポストモダン(脱構造主義)がどのように展開したか、特に生産から消費へと流れる中で、変化があったこと、またフランスのポストモダンの思想を中心に扱っている。

第3部(5.6章)では、1、2部を受けて、日本の現代思想がいかに展開したかを述べている。第四部は、筆者のまとめであるが、これについては賛否両論があるのではないだろうか。

現代思想を簡単に振り返り、日本の現代思想の地図ができるような良書だと思う。このような類書が少ないために、このような本が多く出ればよいと思うが、やはりそれぞれの専門を越えてこのような通史的な物を人は少ないのだろうかと思った。

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Posted by ブクログ 2010年06月03日

マルクス主義に端を発する近代思想からポストモダンへの思想の変遷をコンパクトにまとめていて、現代思想って結局何だったんだべ、という僕のような今さらながらの入門者に打ってつけ。本書を通じて思想史を概観すると、ポストモダンはまるで保守と左派という連星の周りをグルグルと振り回されながら周回する人工衛星のよう...続きを読むだ。思想は今、危機的低迷を迎えているというけれど、人は生きている限り必ず何か考えているもの。ましてやこの難しい時代だ。狭いニッチでミクロな分析に甘んじる現代思想の残り火が、やがて思いがけない方向へとスイング・バイで飛び出していかないとも限らない。がっぷりと組み合うに値する面白い地平が待っていそうな気がする。思想は死んだと物わかりのいい顔で切って捨てるのは、今少し早計かも知れない。

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Posted by ブクログ 2010年04月01日

「あとがき」が読んでいて笑ってしまうくらい痛烈である。
戦後のマルクス主義の隆盛からフランスの現代思想の輸入と80年代ポストモダン論の隆盛と落ち込み。2006年当時の言説状況までわかりやすく概説している。すらすら読めた。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

戦後日本の思想状況をとてもわかりやすく整理している概説書。思想内容の解説だけでなく、その文脈(裏事情)を、戦後マルクス主義を縦糸として描き出していて、流行当時はとっつきにくかった「現代思想」、「ニューアカ」、「ポストモダン」思想も今となってみればそういうことだったのか!と肯定的にも評価できる。単なる...続きを読む知的流行として斥けられることの多い「現代思想」だが、未だに「左/右二項対立図式」から自由になっていないように見える日本の閉塞状況からすると、振り返ってみる意義はそれなりにあった。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

ちょっと恐いくらいわかりやすい。あと、絶対笑わせようとしている(でも素直に笑っていいのかわからなくなる)箇所が多々あり。

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Posted by ブクログ 2017年03月12日

日本におけるマルクス主義以降の思想・哲学状況を概観するのに最適。やはり、そうだったのだという納得感が読むうちに漲ってくる。その時々の自分の考えが世界の大きな流れの部分であったという感覚、類としての自分を確認出来る分析である。してみると今、足元の混沌状況も世界の知性がそうなっているからなのであろう。自...続きを読む分の思考状況の客観的位置付けを空間的に確認出来る。

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Posted by ブクログ 2016年05月29日

各章読み応えあるけど、ラストの物書きとしての姿勢、想いがそのまま吐露する場面で随分と印象が変わった。

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Posted by ブクログ 2016年02月24日

「現代思想」世代です。稀有の才能というべきか、見事にまとめられています。哲学・思想によって、「世界」を全体的に見渡すことのできるような絶対値に最終的に到達することは不可能である」としながらも、副題にあるように、ポストモダンとは何だったのか」と問い(もはや私には無いが...)、現代思想の何を、後世のた...続きを読むめに遺産として書きとめておくべきかを考える。哲学科を目指し、政治学科へ進み、行政学を専攻した私、懐かしさが先にたち...思い出しては目頭が熱くなる。丸山眞男、吉本隆明、サルトル、バルト、廣松渉、フーコー、デリダ、レヴィ・ストロース、メルロ=ポンティ、アルチュセール、山口昌男、デリダ、蓮實重彦、栗本慎一郎、浅田彰、柄谷行人、中沢新一、ドゥルーズ、クリステヴァ、これはまるで私の本棚だ。さすがに 90年代からはフォローしきれてなくて、「郵便的不安」とか「動物化」の東浩紀の諸作など読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2017年11月30日

ニュー・アカデミズムの流行とともに始まった日本の「ポストモダン思想」とはいったい何だったのかという問いをめぐって、戦後思想の流れや消費社会の成立過程をたどっていき、ポストモダン思想がどのような社会的状況の中で生まれたのかを明らかにしています。

現実から乖離したところで展開されるマルクス主義にシンパ...続きを読むシーを抱く学生たちの活動は、やがて際限なく分化するセクトどうしがたがいに行動のラディカルさを競い合うような不毛な構図を生み出していました。こうした日本のマルクス主義思想から脱却する道を示した思想家が、吉本隆明です。彼は、丸山真男らが論じている西欧近代的な意味での「国家」は「擬制」にすぎないということ、そしてその根底に擬制を求める「幻想の共同性」があると主張します。この吉本の思想は、理性中心主義の解体をめざす「ポストモダン思想」への橋渡しとなったことを、著者は指摘しています。

また廣松渉は、ルカーチの人間学的マルクス主義を退け、関係論的な立場に立ったことで知られています。マルクスは、市民社会において人びとの社会的な振舞いや認識を深いところで規定している社会的関係性を分析するための「物象化」という概念を発見しました。そして廣松は、マルクスの「物象化」についての分析を重視し、社会的関係性についての「物的世界観」から脱却し、「事的世界観」へとシフトする必要を主張します。

ただし廣松は、「事的」な「生の現実」という実感を手放すことはなく、そうした実感をも相対化する視点に立つことはできなかったように思います。そして、廣松がとることのなかったこの方向へと進んでいったのが、ポストモダンの思想家たちでした。本書では、消費社会の成熟とともにポストモダン思想が説得力を増していった経緯を、わかりやすく説き明かしています。

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Posted by ブクログ 2015年02月19日

70年代までの思想の移り変わりの記述はわかりやすい。
特に世間が左翼から廃れていったくだりは納得。
80年代以降の流れがなかなか難しい。
でもそれは確かに記述の通り思想が多様化しているというのは
理由の一つなのかなと。

これから色々読もうと思った自分にとっては
ブックリストとしても使えそうだと感じ...続きを読むた。

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Posted by ブクログ 2014年03月30日

 現代思想ブームとかニューアカブームというのがあったんだよね、昔。オレ自身はびみょーに乗り遅れたというか、間に合わなかったというか、ぶっちゃけ当時はむつかしくてよくわかんね、だったんだが。まぁでも、社会に関する本を読んでいけば否が応でも栗本慎一郎だの浅田彰だのの痕跡に巡り会う。ここらへんわかりやすく...続きを読む誰か解説してくんねーか……と思っていたのだが、「この本ばっちり!」というかんじ。

 戦後、マルクス主義が大衆社会の本格的な到来によって説得力を失い、消費資本主義にふさわしい思想を求めた結果、ポストモダン思想が台頭するというストーリーを、その「終焉」までかなりわかりやすくおさらいしてくれている。あっちこっちバラバラと解説するというんではなく「スジがとおっている」ので、よみやすく頭に入りやすい。

 とくにマルクス主義後退のあと、ポストモダンブーム(というか浅田彰ブーム)にいたる背景の説明がなるほどーという感じだった。マルクス主義ちゅーのは、社会を分析するだけじゃなくって、そのあと「革命」に立ち上がらないといけない思想であるんだが……それはぶっちゃけしんどいよね。「実践」しなくても、近代のしくみについて批判的に検証していける、それに意味がある、というので「ポストモダン」がもてはやされたというのは、わかる、わかるなーという感じ。加藤周一が『羊の歌』で、たしか自分のことを「傍観者」みたいに定義していたが……、これは「マルクス主義」が当然の時代の中で、「実践」にその身を投じられなかった知識人が、等しく持つスティグマなのかもしれないなぁとか。その「身を投じる」という後ろめたさから解放されているか否かが、時代を分けるのかもしれないなぁとか。ま、「シラケつつノリ、ノリつつシラケる」という現代的な感性が時代にマッチした、とかいうかるーい説明も、もちろんありなんだけどね。

「あとがき」のあたりでは、いつもの左翼への嫌悪感がちょっとモロ出しになっちゃってるが、まぁそれも愛嬌か。たしかに『美しい国』からそのまんまハルマゲドン的な脅しへもっていこうという麗しのサヨク言論はちーとばかしアナクロだとは思うし(だからといって、もすこし「ネットウヨ」的なものにきびしくてもいーかなーと思うんですが、どうでしょうね仲正先生)。左とか右とか古くさいこと言う前に、まぁ落ち着いてフーコーでもかじれ、というのはけっこう効く処方箋なんではないかね、それなりに。
 というわけで、200ページかそこらで、日本における「ポストモダン」受容について一定のスジをもったまとめが読める、という意味で便利な本でした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年07月29日

「現代思想」:脱・中心化もしくは脱・体系化していく傾向。p12

【マルクス主義】p32
①労農派:直接的に社会主義革命を目指すべきだと主張するグループ。
②講座派:封建制の残滓である天皇制を中心とする「絶対主義」耐性を生み出した明治維新は本来の意味でのブルジョア革命ではないので、他の反体制勢力と協...続きを読む力しながらブルジョア民主主義革命の完遂を目指すべきだとする"二段階革命論"を提唱するグループ。

後期フッサールの「共同主観性(=間主観性)」p76
廣松渉『世界の共同主観的存在構造』:「物象化」と「共同主観性」の不可分性。

ベンヤミン『パサージュ論』:パリの中心部に出来上がったパサージュ(アーケード)を中心とする都市の景観を遊歩者(フラヌール)の視点から描き出した。ベンヤミンは、都市空間の中に様々な形で「表象=再現前化 represent」されているブルジョワジーの欲望を、商品の発するユートピア的なファンタスマゴリー作用という面から理解することを試みた。p88
※「ファンタスマゴリー」:何の変哲もないただのオブジェに光を照射することによって、スクリーンの上に怪物のような巨大な影を映し出す「幻灯装置」。Cf. マルクス「物象化論」

ボードリヤール『消費社会の神話と構造』
記号論的世界観への転回

サルトル「実存主義的マルクス主義」:「疎外」された状況を克服しようとする主体的な「実践」によって、(下部構造によって決定されう)「歴史」の中で自由の空間を切り開くことが可能であるとする立場。『弁証法的理性批判』

普遍的な進歩史観を相対化する構造主義と、「歴史」の中での主体的な「実践」の意義を強調する実存主義的なマルクス主義の対立構図。p116

【フーコーのエピステーメー論】p116
エピステーメー(知の体系):各時代に偏在する。
エピステーメーによって、その時代の「知」の在り方が条件付けられることを、フーコーは「歴史的アプリオリ」と呼ぶ。p117

フーコー「生・権力 bio-pouvoir」:我々の日常生活の様々な場面にいつのまにか入り込み、我々を「内」から支配している"小さな権力"をめぐる問題。p122

デリダ「二項対立図式を免れて、純粋に真実を映し出せるような透明なエクリチュールはない。p130

「オイディプス・コンプレックス by ドゥルーズ=ガタリ」:「主/客」未分化状態にある母子の原初的な関係が、父=主体の介入によって切り裂かれ、母が自分のものではなく、父のものであったことを知らされた子が、父に対して嫉妬しながらも、自らも父の男根と同化したいという願望を抱くようになり、父に倣って「主体化」していくようになる、というストーリー。p134

「欲望する機械 by ドゥルーズ=ガタリ」:自己増殖し続ける無意識的な欲望の連鎖。p137

「外」から暴力的な破壊活動を加えるまでもなく、「資本」の流動性と「主体」の消費欲の拡大によって「資本主義」自体が「内」から不可避的に変質していく、という彼らの議論は、大量消費社会という現実、とりわけ80年代の日本社会の実情にうまく対応していた。p139

構造主義以降に出てきたフランスの思想家・社会理論家たちは、全てを説明できる絶対的な統一理論のようなものは目指さない、むしろそういうものを構築しようとする欲望に抵抗することを、"共通項"にしていたようなところがある。p145 Cf. リオタール『ポスト・モダンの条件』=「大きな物語の終焉」

【栗本慎一郎の祝祭論】p147
経済人類学者の栗本慎一郎
ポランニー、バタイユらに着想。
Cf. ネイティブ・アメリカンにおける「ポトラッチ」
『パンツをはいた猿』<メモ>草なぎくんの露出事件
「生産的に労働する人間」観から「蕩尽する人間」観へのパラダイムシフト。

「不均衡累積過程論 by 岩井克人」:「物」と「物」との交換媒体として生まれてきた「貨幣」、とくに紙幣は、それ自体としては(使用)価値はほぼゼロのはずだが、その貨幣に人々が競って群がって、次第に「貨幣」が膨張していくのは、どうしてか。
貨幣経済の社会においては、"流通している"という事実それ自体によって、貨幣によって表示される"価値の総量"が次第に増加していく、という、不思議な事態が生じる。

【パラノからの逃走】p169
浅田彰『構造と力』第6章「クラインの壺からリゾームへ」
ブラックホールに吸引されるようにみんなが一つの方向へ引きづられながら、自己差異化的な循環運動を続けているモダンな状態、つまりパラノイア的な状態から、運動の方向性がスキゾ的に分散化していくポストモダンな状態へと移行していく可能性を示唆。
※「リゾーム(根茎)rhizome」:樹木(ツリー)のように系統的に発展しているのではなく、菌類の根のように、どこを中心として、どういう方向に根を張っていくのか、全体図がよく読めないような発展をしているということ。

ヘーゲル=マルクス弁証法:正(テーゼ)→反(アンチテーゼ)→合(ジンテーゼ)

ゲーデル「不完全性定理」:いかなる無矛盾な体系においても、その体系自体の中では証明も否定もできない論理式=命題が存在する、ということ。
Cf. 論理学における「自己言及性のパラドックス」メタ・メタ・メタ...自己回転を免れない。

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Posted by ブクログ 2011年12月17日

ちょっと考える事があって学生時代以来再読してみたのだけど、今改めて読んでみるとポストモダンとはなんだったのかが改めて理解できた。気が付いたのは、そのような考え方というのが何を前提として生まれてきたものか、ということ。
ポイントとなるのは、本書でポストモダンの思想家で取り上げられる人物というのは、大...続きを読む半がフランス・ドイツを中心とした英米を除いた西洋諸国であること。そう、彼らの思想的土台というものは二度の世界大戦を経験した事に対する近代的「知性」への疑問と、地理的に「資本主義/社会主義」という二項対立的な価値観が現前に迫ってきているという状況が存在していた事だ。そこに対する懐疑として生まれたのが構造主義?ポスト構造主義という所謂ポストモダン的な考えなのだと思う。
そして、このような考え方が80年代の日本で「ニューアカ」という形でもてはやされたのだけど、これがまた上記の西洋諸国とは違う土台で生成されてしまった。つまり、この時期の日本では全共闘が象徴するようなマルクス主義的なものの分裂が進む事によって左翼思想が形骸化してしまい、高度経済成長によって生み出されたバブルによる消費中心社会が到来していた。そして、「記号」や「構造」という考え方はこのような思想的土台無き中で、表象と戯れるのに極めて有効な「ツール」であった。つまり、土台を取り違えた、継ぎ接ぎ状態の上に成り立っていたのが80年代のニューアカブームだったと言える。まあ、日本の戦後思想に土台もクソもないっちゃそうなんだけど。
だからこそ、90年代以降、社会主義の崩壊によってグローバル資本主義による画一化が到来し、日本ではおいてバブル崩壊によって経済的土台が失われた事によって、そのような考え方が失墜することになったのだろう。また、そもそもこのような二項対立的な考えの前提を問い直していく姿勢というのは、次第に自己言及的になり自己撞着になってゆく恐れがあり(特にポスト構造主義。ラカンはワカランし、デリダはサッパリダ)、現代アメリカの政治経済に対して、有効な言説を持ちえる事は出来ていない(90年代にこうした言説の衒学さをアメリカの学者、アラン・ソーカルに『知の欺瞞』で喝破されたのもある意味象徴的かも)。ポストモダンとは、結局のところ現代の次に来るものではなく、現代における過度期の産物だったのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2011年12月05日

この本で著者は、保守vsマルクス主義、マルクス主義陣営の内乱、ポストモダン、そして現在の論壇、という現代思想の流れを扱いながら、思想が世の中を動かす絶対的な装置だと自惚れた思想家に対して、冷ややかな目で横目で見ながら持論を展開している。

思想というものは絶対的なものなんかではなく、世の中の分析装...続きを読む置のひとつにすぎない、と述べられている。

思想を職業としている自らの自己否定かと思いきや、冷静な目で現代思想を活用していこうというポジティブな見解を示しており、妙な説得力に感心させられた。
特に印象に残ったところとしては、ポストモダンの記述について、ポストモダンが流行らなくなってきている現在の方がポストモダンの最盛期よりもよりポストモダン的である、という逆説的な分析に興味が惹かれ、現代思想を学ぶ意欲が掻き立てられた。

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Posted by ブクログ 2011年11月09日

いろいろ十数年疑問に思っていたことがすっきりした。日本にフランス本家ばりのポストモダン思想家はいないし、マルクス主義もインフレ気味。全部借り物。借り物使って東京でごにょごにょ。5年前の本だけど、実は21世紀の大きな物語はイスラム抜きに語れないんじゃないの?とか。
とりあえず、本屋の本棚で買うべき本が...続きを読む分かって良かった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年06月11日

[ 内容 ]
1980年代、「ポストモダン」が流行語となり現代思想ブームが起きた。
「現代思想」は、この国の戦後思想をどのような形で継承したのか。
海外思想をどのように咀嚼して成り立ったのか。
なぜ80年代の若者は「現代思想」にハマったのか。
丸山眞男や吉本隆明など戦後思想との比較をふまえ、浅田彰や...続きを読む中沢新一らの言説からポストモダンの功罪を論じる。
思想界の迷走の原因を80年代に探り、思想本来の批判精神の再生を説く。
沈滞した論壇で唯一気を吐く鬼才による、異色の現代思想論。

[ 目次 ]
序 かつて、「現代思想」というものがあった
1 空回りしたマルクス主義(現実離れの戦後マルクス主義;大衆社会のサヨク思想)
2 生産から消費へ―「現代思想」の背景(ポストモダンの社会的条件;近代知の限界―構造主義からポスト構造主義へ)
3 八〇年代に何が起きたのか(日本版「現代思想」の誕生;「ニュー・アカデミズム」の広がり)
4 「現代思想」の左転回(なぜ「現代思想」は「終焉」したのか;カンタン化する「現代思想」)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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Posted by ブクログ 2010年03月11日

日本の1960〜2000年代頃の思想がまとめられてて読みやすかった。
また、海外のモダニティ、ポストモダニティも要点がつかみやすくて理解がはかどった。
日本のつまみ食いの輸入でいかにゆがんでいるのかがよくわかる。

ただ、最後の筆者の総括はもう一歩踏み込んだものが欲しく物足りなかった。

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Posted by ブクログ 2009年12月26日

海外ではフーコー、バルト、日本では柄谷行人、蓮實重彦、90年代初めに少し遅れて私がはまった人たちですが、そういったいわゆるポストモダンの人たちが時代背景を含めて紹介されています。

いろいろと懐かしく読みましたが、あれ以降代替わりとなるような人が出てきていないのは、あのカテゴリー自体がその時代に要...続きを読む請されたもので、やはり流行だったということなのでしょうか。それは少し寂しい気がします。

それにしても浅田彰の文章は、それも流行であったのかもしれませんが、少し読むときにためらわれるほど気恥ずかしい感じがします。私だけ?

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

現代思想に至るまでの流れ、今時の大学生が文系学問やっていたら逃れられないだろうポストモダンとは。
読めば読むほどあざとい書き方に思えてならない。わかりやすい。

全共闘の最中の思想の動き、マルクス主義などからはじまる近代の学問の流れなどをさらっと復習、手はじめに読むには良い本ではないだろうか。
普通...続きを読むに面白いよ、この本。

僕の受け持った発表区分がそうだからかもしれないけど、全共闘の流れを理解するのには本当に役立った。小説で読んでもいまいちぴんとこないものではあったしね。なぜ今こそ革命がおきないのだろう。
60年代ほど思想的に大衆を巻き込むのに難しい状況にはないと思われるのに。

消費文化に毒されているから?市民社会、民主主義などがすっきり根付いているから?

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

学部時代、教養科目のドイツ語でお世話になった先生が書いた本。いまや金沢大学一の有名人かもしれません。
「現代思想」についてわかりやすく説明されています。
「専門」というものが、タコツボに陥っていて、その学問の作法をきっちり守っているというのはあながち間違いではないなぁ、と感じました。
そういった「専...続きを読む門化した」学問の枠組みを超えられない思考法や単純な二分法を打破しようとする「現代思想」はそれが流行った80年代よりも現在のほうがはるかに有用だという指摘には思わず納得。

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Posted by ブクログ 2017年08月15日

仲正による「日本の現代思想」。第一次安倍内閣が立った時のもので、あとがきに当時の著者の、本人らしい所感が印象的。

内容としてはかなり情報量は多いけども、世界の情勢と思想とかかわりながら、日本の情勢、思想がどのように推移してきているかがよくわかる。

ざっくりとニュアンスででしかとらえきれていないが...続きを読む、戦後マルクス主義が69年の学生運動にて挫折すると、ポストモダンの時代に突入。レヴィ=ストロースの構造主義とそれすらも相対化させたデリダやドゥルーズ、フーコーらによるポスト構造主義の思想ブームが起こる。日本もこれらの影響を受けながら、それがアカデミックな分野というよりもメディアミックスされた論壇においてのパフォーマティブなものとして影響を与え、80年代、浅田彰、柄谷行人、中沢新一らが活躍、90年代に入り宮台真司や東浩紀などが現れ現代にいたる。サマリーにもなってないが、僕の頭の中は今こんな感じ。

ただ、今の人文系の論調がユルフワさをもって自嘲するような隘路で乾杯してる理由を考えるにおいて、時代整理の道筋が見えたのが幸い。もう一度は読み直さないと整理されないとは思うが、読み直すかな・・


17.8.14

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Posted by ブクログ 2014年04月14日

戦後日本に置ける思想潮流を主軸に、「現代思想」の流れを掴むのに最適か。海外の動向についてもコンパクトに纏めつつ、中沢新一・東浩紀まで拾う。単体として見るのでは判らない、全体の潮流が掴めるのが特色か。

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Posted by ブクログ 2010年02月07日

80年代に流行った「現代思想」とはなんだったのか。それ以前の日本におけるマルクス主義の流行まで遡って、思想の流れと共に解説している。マルクス主義とその限界、構造主義やポスト構造主義まで解説してあり、その流れを確認するのに役立った。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

卒論用。
どういった経緯で現代思想が登場し、
もてはやされるようになったのかわかりやすく解説されている

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