仲正昌樹のレビュー一覧
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未開人のうちに、かつての自分の野蛮さの鏡像を見てしまい、自分もまたそこに引き戻されるのではないかという不安に襲われる文明人は、彼らを放っておくことができない。
仲正昌樹『日本とドイツ 二つの戦後思想』p149
日本の戦後思想は、マルクス主義の人々(とマルクスを独自に解釈して実践する左派の人々)が、その時代ごとに「何を考えてどう行動した(しようとした)のか」が中心。この点が詳しく書いていないと、文字通り何が書かれているのかわからないのだが、本書はその点をドイツのそれと比較して読み進められるので読みやすい。
言われてみると過去、新聞では「マルクスっぽい理想郷」というものを共通の概念として持って -
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仲正による「日本の現代思想」。第一次安倍内閣が立った時のもので、あとがきに当時の著者の、本人らしい所感が印象的。
内容としてはかなり情報量は多いけども、世界の情勢と思想とかかわりながら、日本の情勢、思想がどのように推移してきているかがよくわかる。
ざっくりとニュアンスででしかとらえきれていないが、戦後マルクス主義が69年の学生運動にて挫折すると、ポストモダンの時代に突入。レヴィ=ストロースの構造主義とそれすらも相対化させたデリダやドゥルーズ、フーコーらによるポスト構造主義の思想ブームが起こる。日本もこれらの影響を受けながら、それがアカデミックな分野というよりもメディアミックスされた論壇にお -
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仲正がこれを書いたすぐ後に宮台との対談をおこなったものを先に読んでいたので、対談の中で宮台が所々でこの本に言及していて、内容をそんなに覚えているわけではないけど、なんとなくつながった感じ。
宮台なんかの社会学の言論界隈では自己決定が強く叫ばれる。大きな物語が焼失した再帰的な現代において、自分で選び取る強さが必要だと、まあ道徳的なものとは一線を画して語られている。しかしその自己決定自体が欺瞞だろ、というのがこの本の要旨。自己決定の主体たる自己は本当に自由な自己であろうかという問いかけが、この書全体において問いかけられ続けており、結論としては完全に自由な自己なんてないだろというところに行きつく。 -
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面白かったし読みやすかった。もとUCという特殊な文脈がシンパシーとしてひきつける。どのようなラディカルな思想であろうとも「形而上学」的な側面からは離れることができない。それを自明なものとして、それぞれの人生から思想も活動も、特に知的な分野に身を置こうとする場合は、それらを心にとどめておく必要がある。
まあ、それはめちゃくちゃわかっていたが、改めてしっかり確認。結局一周して「無知の知」ということだろうか。
収穫はデリダですかね。エクリチュールに考えさせられるところがある。ポスト構造主義理解の足掛かりになってくれたらうれしい。
17.4.14 -
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『全体主義の起源』『人間の条件』『革命について』そして最晩年の『精神の生活』とそれを補完する「カント政治哲学講義」をとりあげ、その思想の「もどかしさ」がもつ魅力を、著者自身の明快なことばで解説しています。
「序論」には、「アーレント理論の“忠実な解説”は放棄して、アーレントの思想の中で特に重要だと私が思っている内容を、現代日本でもお馴染みの政治・社会問題にやや強引に引き付けながら紹介していくことにしたい」と書かれていますが、そこまで強引な解釈をおこなっているようには感じられず、むしろ現代社会のなかに具体例を探しながら、わかりやすく解説している本だと思います。 -
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マックス・ヴェーバーの著作の中から、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、『職業としての政治』と『官僚制』、『社会科学と社会政策に関わる認識の「客観性」』と『社会学の基礎概念』、『職業としての学問』を取り上げ、その内容について分かりやすく解説している本です。
「あとがき」には、無理にヴェーバーの統一像を提示するのではなく、ヴェーバーの主要著作についてピンポイント解説をおこなうことをめざしていると書かれていますが、「ヴェーバー学」の権威である折原浩がアカデミズムきってのうるさ型ということも影響しているのか、ヴェーバーにかんする簡明な入門書は少ないので、本書のように新書サイズで読めて分 -
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ネタバレ元々は、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に興味があって岩波文庫の原本を買ったのだが、中々進まないのでこの入門書を手に取った。
読んでみると、最後の「職業としての学問」の第4章が親しみやすく、面白かった。特に、「世界を動かしている法則を知ることが可能である、という信念を人々が共有すること」としての「脱呪術化」の指摘に鋭さと現代の思想にもつながる先駆性を感じた。
私たちは、携帯電話の通話の仕組みをほとんど知らない。しかし、その動きを予測することができれば不便はなく、十分であり満足する。また、その働きに、神秘性や呪術が介在する余地は全くない。一方、「未開人」は、自分が使う道具の仕 -
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昨年末…映画『ハンナ・アーレント』を観に行って驚いた。いつもは客席もまばらな単館映画ばかりをかけるハコが満席。用意された補助席も足らず、床に敷かれた座布団に腰をおろして観たのだった…アーレントの言説のなにに、今の日本の人たちは惹かれるのだろう…?
映画はアイヒマン裁判の傍聴からなされたアーレントの言説による、世間からのパッシングを軸に、その人生を俯瞰して見せてくれた…映画を観たあと、アーレントの思索をたどろうとして、主著である『人間の条件』を買ったのだけれど、数ページめくってみて、とても読める代物ではない…と諦めた…で、概説書が欲しくて手にしたのが本書だった。
ーアーレント理論の“忠実な解 -
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ネタバレQOL(Quality of Life)とSOL(Sanctity of Life:生命の神聖さ)の対立は、自由の中核である自己決定を尊重する考え方と、キリスト教の教えを忠実に生きようとする考え方のいずれもが強く根付いている、アメリカの道徳文化の特徴を凝縮しているように思われる。
【動物化】p102
アレクサンドル・コジェーヴ「動物化論」:「人間」の欲望は、「他者の欲望」を欲望する、他者志向的な性質を持つ。
Cf. ヘーゲル「承認」
ポスト「人間」の二つの可能性としての「動物(eg. American way of life)vs. スノビズム(日本の能楽、茶道、華道、武士道etc)
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