仲正昌樹のレビュー一覧
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本の帯に「18歳から読める現代思想の入門書!」とあり、確かに現代思想の代表人物を取り扱っている内容だが、あくまで仲正の読みによるものであり、教科書的に概論をしているものではなく、自分の主張のためのものであることを前提にして読むべきである。平易には書かれているが決して教科書のような位置づけにはならない。
とは言え、別に批判して難癖をつけるためにこの点を断ったのではなく、以上の点を前提にして読むと非常に著者の主張が過度にエキサイティングなものではなく且つ冷徹・慎重に展開されているのがよく分かる。
本書では現代思想の10人の代表人物を取り上げながら、哲学・思想が<死>と不可分に結びついているこ -
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主体とは何なのか、まるで、僕らがしっかりと持っていると思われるような「主体」。言葉を変えれば「自分」であり「自己」。僕は自分が無いなんて全然感じたことがないけれど、周りには自分が無いと他人に言われ、自らもそう言っていた人がいた。主体とは、そんな有無で語れるような、ちゃんと輪郭をもったものなのだろうか。
そして、彼女はなぜ自分が無いと思い、僕は自分が無いと思わないのだろうか。
僕たちは「自分」とは何なのかを深く考えたことがない。恐らく好き嫌い、快不快程度の感情のことを「自分」と思い込んでいるのだろう。そして国の指針を示すような頭の良い人たちも「自分」というものをちゃんと考察していない。つまり僕 -
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本書は、四つの章から出来ている。「二つの戦争責任」、「国の形を巡って」、マルクス主義という「思想と実践」、「ポストモダン」の状況、の四つである。■「戦争責任」は誰にあったのか。
なぜ日本は「人道に対する罪」に問われなかったのか。
「普通の国民」も加害者なのか。
「反省仕方」のドイツとの違い。
日本の左翼は平和護憲主義の矛盾など、戦後の左右の言論の矛盾点が前提を共にするという二項対立にある不毛の度合いが大きい論議になっているという問題意識が基軸なって論じられている。■第一章には、戦後ドイツと戦後日本の戦争責任の相違が述べられている。これを論じるにはヤスパースの「贖罪論」を抜きにして論じるわけには -
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後輩が勉強しているというので、ハイデガーを勉強するのに読んだ二冊目。つくづく仲正昌樹の入門書は、初心者にやさしいつくりになっていることに割と感動した。
この一つ前に、ちくま新書の『ハイデガー入門』を読んだのだが、そちらは、『存在の時間』でハイデガーが示している概念を、プラトンやアリストテレスの概念から解釈して、哲学史的なつながりを解説するものだった。個人的には、まったくためにならなかったのだが、仲正もまず最初に、従来の入門書が、そうした哲学史的な拘りから、他の哲学者との影響関係を説明するものばかりだったことを指摘していて、前回の本への感想が、自分だけの違和感でなかったことに安心した。
では、こ -
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ネタバレ某YouTubeチャンネルで統一教会が紹介されていた際、この本が紹介されていたので興味を持って手に取ってみた。
主な構成は、著者が統一教会に入信してから脱会し、その後の生活を描いたうえで、「宗教とは何か」「統一教会での体験が自分の人生にどのような影響を与えたか」について語っている。
まず、著者の入信と脱会のきっかけである。入信のきっかけとしては、アンケートを取った際に、後で案内された原理研究会のメンバーが自分に対して安心感を与え、話を聴いてくれ、話に対して承認を与えてくれたこと──つまり承認欲求を満たしてくれたこと──が大きかった。これが統一教会に入信した主な理由であった。
一方、脱会の -
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ネタバレ本作『日本とドイツ 二つの戦後思想』は、「過去の清算」を軸に、第二次世界大戦後の日本とドイツの60年間の思想的歩みを比較するもの。国際軍事裁判や占領統治から始まり、両国が戦争責任や国家のあり方、マルクス主義、ポストモダンといった思想課題にどう向き合ってきたかを、類似点と相違点を浮き彫りにしながら論をすすめる作品。
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いやあ、これ、面白かった。
ちょっと前の昭和の思想史って、近いようでなんだか分からなそう、取っつきづらそうじゃないですか。
ちょっと小熱い思想系の本には、確かに丸山眞夫とか吉本隆明(ばななさんのお父様)とかがよく引用されていましたが、そこまで実際手を伸ばす気にはなかなか -
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本書は、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーの主要著作を解説した一冊です。対象となっているのは、以下の著作です。
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
『職業としての政治』
『官僚制』
『社会科学と社会政策に関わる認識の客観性』
『社会学の基礎概念』
『職業としての学問』
勤め人である私にとって、これらの内容は明日からの仕事や生活にすぐ直接役立つものではありません。
しかし、300ページ弱の新書というコンパクトな形で、これだけの著作の要点を丁寧に解説してくれており、読後には、間接的にでもマックス・ウェーバーとつながったような感覚が得られました。学生時代の宿題をようやく果たすこと -
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元統一教会信者の金沢大学法学類教授が、昨今の社会を「知恵と教養」で分析した本、、
世の中の事象をニュースなどを鵜呑みにせず、批判的に?見る、という意味では、
私も目指すところなのではあるが、なんだかしっくりこない本となった。
テーマとして取り上げられたのは下記目次の通りで、
検証 ナチスは「良いこと」をしたのか(小野寺拓也 田野大輔)を盾に、
少しでもナチスの政策を肯定的に批評する人を糾弾する人に対する批判に始まり、
マインドコントロールによりお金を搾り取る統一教会と、
女性をもてなし多額の金を使わせホストと何が違うのか、
そもそも高校、大学進学だって自分の意志といえるのか、と投げかけ -
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英では契約や慣習法の基本原理を確認する形で新たな制度が構築されていったが、日本では政権が交代するたびに大宝律令・御成敗式目・武家諸法度などが生まれ、基本となる考えがどのように継承されてきたのか曖昧。日本で制度論的な保守主義を考えるのは困難。天皇制以外に守るべき制度がないため、日本の保守思想は、制度よりも精神論や文化論に力を入れてきた(例:西部邁・佐伯啓思)。ただし、細部を見れば、日本の法・政治にも慣習は見られる。日本の憲法には、政党の役割に関する規定はなく、政党が何のために存在するのかについて規定がないにもかかわらず、立法府は政党の協議によって運営されてきた。p.214『精神論ぬきの保守主義』
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いまの本邦がかなり全体主義的な雰囲気に満ちているので、そこに引きずられないようにするための手がかりとして、また全体主義とは具体的にどういうことでどういう経緯で起こって、現在に至るまでにどう影響してきたのかが知りたくて読んだ
読んでみて思ったのは全体主義は同質性に基づいているということで、やっぱり共感を重要しすぎてしまうと、自分と異なった意見を持つ人、それがエスカレートして自分と生きてきた環境や文化が異なる人を異質なものだと排斥してしまう可能性も充分にあって、自分と同じ意見を集めやすい環境ではかなり自覚的に気をつけなければなと思った。ハンナ・アーレント自身はナチスのユダヤ人迫害からアメリカに亡命 -
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ハンナ・アーレントの思想を、彼女の著作を軸に、現代にひきつけた問いから整理した書。少ない文章量の中で鋭くまとまっていて、読み応えがあった。
今回とくに面白かったのが、第二章「『人間本性』は、本当にすばらしいのか?」。
「アーレントは、そうした冷厳な現実を踏まえて、『人間性のすばらしさ』あるいは『ヒユーマニズム』を無邪気に信じ、それを信じることによっていつかユートピアが実現できると思っている"良心的"な知識人たちに警告を発しているのである。無邪気な『人間性』信仰は、その理想に合わない者を排除する全体主義に繋がりかねない、と。」
私自身、思想や哲学の本も、新聞やテレビのニ