柄刀一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
エラリー・クイーンの国名シリーズへのオマージュを意識した連作短編集。当然、ロジック寄りのパズラーで、被害者も犯人も人物像から厚みをバッサリ切り落とされた記号で、動機も適当な感じだ。こうした方向での、殊に前半の2作での徹底ぶりはすごい。そんなわけだから、本作を読んで物語的な厚みがないとか、無味乾燥とかの非難をするのはお門違いと言うことになる。そう言いたくなる気持ちは分かる、パサパサぶりだが。ただ、肝心のロジックにそこまでの切れを感じない。物語的な膨らみを多少は意識したように思える、後半の2作の方が、むしろロジックの完成度も高く感じるから、作家さん的にも何か無理があるのかも知れない。個人的ベストは「或るオランダ靴の謎」。足跡密室のヴァリエーションでなかなか楽しい。でも、これもロジックと言うよりトリックですね。
-
Posted by ブクログ
過去に読んだけど内容を記憶していないモノを読んでみようシリーズ
2年前の謎に満ちた殺人事件と、巨大企業の家元である宗門家。
そしてその宗門家で起きた殺人が複雑に絡み合い、
最初の方は不気味でオカルティックな雰囲気が漂う。
2年前の殺人事件の被害者が、20年近く前に亡くなった人物と同じDNAを持っていたり、
新たな殺人事件の被害者の爪に残る肉片から、その前に既に被害者となっている人物のDNAが出てきたり。
ただ、最終的には、警察によるDNA鑑定の盲点を突いたミステリーといった所か。
正直全くそのトリックに思い至らず、「なるほど」と思ったが。
そういったトリックの作りや意外な真犯人など
非常に面白そうな要素が集まっているように思えるのだが、
読んでいると何とも退屈なイメージである。
どうやら文章がわかり難いのが原因らしい。
勿体無い。
それと、掴みが非常にオカルト風であるにもかかわらず、
その種明かしに何故かあまり驚きがない。
ネタバレありで書くと「天才の考えは凄いね」ぐらいなのである。
結局、普通だったという感想になる。だから印象に残らないのか。
それでも、作者が訴えたかったであろう
「何でも遺伝子で決めていいのか。病気の要因を持つ子供は中絶して構わないのか」
という社会への提言はとても伝わる。決して悪い小説ではない。
-
Posted by ブクログ
ネタバレディクスン・カーが未解決事件の真相を記したされる書をめぐる不可能犯罪。ディクスン・カーが好きな人にはたまらないのかな。カーが解決したされる過去の事件を含め、作中で扱われるトリックは大きく4個(3+1?)。実現性には乏しそうだが、どれも良くできているし、特にメインの友坂殺しのトリックは細かいところにまで神経が行き届いている。けれども、どれもがトリックのためのトリックなのはいただけない。要するに、事件が不可解なのは、(ある理由で)犯人が不可解な状況を作りたかったからだ、と説明されてしまう。個人的には、こんな謎解きくらい興ざめなことはない。