柄刀一のレビュー一覧
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南美希風シリーズの長編。
美希風の旧友 浜坂が殺人容疑で逮捕され、彼の無実を証明するため、美希風が真相究明に乗り出す。
事件を調べる内、美希風自身も真犯人の罠にはまり、浜坂と同じように銃殺死体の側で目覚める。同じ状況に陥ったことで、浜坂の事件の真相にも気付くというもの。
美希風が探偵役で事件を解決するのはいつも通りだけど、今回は浜坂の求刑までというタイムリミット付き。さらに裁判の行方を追うリーガルサスペンスの要素もあり、いつも以上に面白くなっている。
柄刀さんといえば密室ものだけど、今回も見事な密室。たまに曲芸みたいな離れ業トリックの場合もあるけれど、今回は至ってシンプル。だからこそ、身近 -
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バチカン奇蹟審問調査官アーサーが、調査に訪れた村で起きた殺人事件の謎に迫る。
刺殺、射殺、撲殺、扼殺の4つの事件。
いずれも一見犯人が現場に存在したとは思えない、あるいは、現場から逃走できたとは思えない不可能犯罪。それを相変わらずの端正なロジックで解き明かしていく。
奇蹟という超常的な事象と、火山の噴火や地震などの自然災害が物語の根底にあるので、殺人という俗物的な行為すらもいっそ神がかった、厳かなものに昇華されるような不思議な感覚に陥る。
もし偶然の重なりが奇蹟なんだとしたら、人間の力や科学では証明できない“何か”に触れたような気分にはなる。
無宗教の人間としては、それが神の力だとは思わ -
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世の中の医療は飛躍的に進歩し、病気を治療するだけでなく、その因子を撲滅するところまで及ぼうとしている。
出産前遺伝子検査が当たり前となりつつあり、遺伝子的に問題のある出産を避けるのが主流となっている。
中にはそのような考えに異議を唱え、あえて検査を行わない者もいた。刑事朝岡百合絵もその一人であった。彼女の第一子は心身ともに発育不全である。そのことを世間では親としての怠慢と責める風潮があった。そんな百合絵は現在妊娠中、遺伝子検査を行うかどうか迷っている。そんな彼女が担当することになった殺人事件は遺伝子研究産業の大手SOMONグループの娘、亜美が被害者である。暖炉に上半身を突っ込む状態で発見された -
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3000年前の密室殺人よりも、サイモンと名付けられたそのミイラの身体や身につけていたものが巻き起こす論争がメインだと思った。
現実の学説の動向はまったく分からないが、サイモンのひとつひとつの設定が、おそらく当時の学説を踏まえて、パラダイムの変化を起こすようなポイントに焦点を当てられているのだろう。
耳や骨、石包丁についた脂肪酸などから次々と推論していく様はミステリの面白さ。
弥生時代ではなく縄文時代後期の段階で、稲作農耕文化は開始されていたのか?
サイモンが持っていた穂摘み具が非常に重要なアイテムとなっていく。
結末で、なぜかスケールの大きな話をしてしまったのはご愛嬌。
プラントオパールと -
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奇蹟審問官アーサーの2作目です。
今回は4本の中短編で宗教論争も無く、
事件とそのトリックだけに集中出来たので読み易かったです。
もちろんそこはアーサーが出向いているのですから、
一見奇蹟とも思われる事件の数々なんですが。
アーサーは地球上のいろいろな場所に出没しています。
実際ヴァチカンにこんな人がいるなら西へ東へと相当忙しいですよね。
また密室物もありますが、
個人的には3つ目の『聖なるアンデッド』が良かったです。
薄暗い雰囲気が好みでした。
アーサー以外にもう一人奇蹟審問官が出てきますが、
ひょうひょうとしたおじいちゃん神父様でいい味出してます。
4つ目の『生まれゆく者のメッセージ』 -
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ミステリーとしてはちょっと不思議な読後感。
御倉瞬介シリーズの1作目です。
主人公の御倉が絵画修復士ということから、
6編それぞれにモチーフとなる絵画があって、
その絵にまつわる謎解き(?)となる訳ですが。
トリックそのものよりも事件関係者の心情に主眼が置かれているような。
いえもちろん謎解きはちゃんとあるんですよ。
でもモチーフとなる絵画とその作者に関する説明もあって、
画家の人生に想いを馳せるようなところもあるし。
絵画、それも特に時間のかかりそうな修復という作業が絡むせいか、
全体を通して時間の流れが緩やかな雰囲気があり、
「ハラハラドキドキ」という感じでは無かったです。
事件自体は人 -
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御倉瞬介シリーズの2作目です。
5編からなる連作集で、
前回同様それぞれにモチーフとなる絵画があります。
絵画の周辺で事件が起こるのですが、
絵画修復士という立場から、
主人公御倉瞬介が巻き込まれ、推理を展開することになります。
特に探偵役として立ち回る訳ではないんですが、
事件の関係者として、また修復する者として、
絵画の背景と事件の意味を考えずにはいられないという感じです。
今回は絵画だけでなく、その画家自身、
人生だったり、その作品を描くに至った心情だったり・・・、
を掘り下げて描かれています。
その所為か、ミステリーを読んだというより絵画鑑賞した気分です。
事件を他所に、全編を通してど