デービッド・アトキンソンのレビュー一覧
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新観光立国論 2107
1.なぜ短期移民が必要なのか
・GDPを維持するため。人口減少による国の強靭性の低下は避けられない。どれだけ効率化や女性の社会進出を進めても成長は難しい。
・議論に感情を挟むことは許されない。
・来る目的になるものと副次的な物の線引き
2.観光後進国ニッポン
・観光立国とは、観光に関わるコンテンツを生み出すことで経済を支える産業の一つとなっている国のこと。 その一つの基準としては、2014年のUNWTOによる報告で世界の観光産業が間接的及び誘発的な影響を含めて全世界のGDPの9%を占めているとしているため、この9%を満たしているかどうかとなる。もう一つは外国人から得た収益の割合。つまり国際観光客到着数。
・観光立国になるためには「気候」「自然」「文化」「食事」の4要素を満たさなければならない。複数の観光を提供できる国が観光大国になれる。地域も同じ。
・日本は1平方kmあたりの動植物は世界一。
・文化は琴、三味線、神社、工芸など伝統文化とアニメ、ダンスなどの現代文化の二つに大きく分かれる。これをコンテンツ化する力を養いたい。
・マナー、交通、治安、気配りなど的外れな観光PRが多い。歴史や自然、食事などコンテンツを発信しなければならない。住民としての快適さは必ずしも動機にはならない。
・観光立国になるためには「も」という考え方が重要である。目的となるものが少ないとリピーターはつかない。
4.おもてなしで観光立国にニーズとビジネス視点を
・おもてなしを押し出すのならば、「相手が何を考えて、何を求めているのか」を把握することに努力しなければならない。いつまでも供給者視点だと観光立国にはなれない。
・ゴールデンウィークに代表される「多くの人を捌く観光」から「お金を落とす客に来てもらう観光」に舵を切り替えなければならない。
5.観光立国のためのマーケティングとロジスティックス
・ニーズを把握し、それを満たす施策を打ち出し、日本に来てもらうのが観光業の1番面白いところ。そのために観光資源を磨き、観光客が喜ぶことをやる。
・日本人は外国人を一括りにする傾向が強い。国、人種、性別などを細かくセグメンテーションして、ターゲティングを綿密に計画して、実行に移していく。
・先進国の観光収入の平均はGDPの1.8%。日本のGDPの1.8%は817.6億ドル。それを一人あたりの観光平均支出の1461ドルで割ると、2020年には5600万人の観光客に来てもらう必要がある。さらにUNWTOによると2013年から2030年までに世界の外国人観光客数は1.7倍に増えると予想されている。そのため、2030年には8200万人の予想が妥当な線。しかし、1番重要なポイントは経済効果。人数ではない。
・台湾人観光客は「テーマパーク」と「旅館に宿泊」に特に興味を持っている。韓国は「日本食と日本酒」、中国人は「ショッピング」。マーケティング的には、「ショッピング」と「食」を軸にアジア諸国へのPRはできている。しかしこれは情報発信したというよりもたまたまニーズに答えられたという側面の方が強い。一方、アメリカ人は自然や文化に関心を持っている人が多い。
・リーケージ問題は気にすべき。収入のうちどれだけ地方経済の収益につながっているのか。爆買いをしても輸入品ばかりでは地域に恩恵はもたらされない。
・相手の国の文化や国民性を理解した上で、観光資源に価値を見出し、お金を落としてもらうのが観光ビジネスの基本中の基本。
・花火大会などのイベントのロジスティックスは最悪。運行本数を増やしたり、回数を増やしたり、有料座席を設けた方が満足度は高い。
6.観光立国のためのコンテンツ
・支払う金によってランク付する。ニセコは食事やナイトタイムなどの多様性によって人気が出た。
・コンテンツに優先順位をつけ、早急に整備しなければならないもの、必要不可欠なもの、中長期的に整備していく物に分ける。
・日本には多くの文化財があるが、それが全く活かされていない。日本の文化財は一つ一つの見た目が地味で海外に比べると規模は小さい。しかし、歴史の中での意味づけや彫刻美が理解できると魅力的なもの。そのため、展示と説明が不可欠。ガイドの多様性やその質が低い為に滞在時間が短かったり、ツーリストトラップになったりしているのが現状。学べる場所としての満足度を上げていく。
→まずは日本人にその魅力を伝える。自国民ですらその価値を十分に理解できていない。
・文化財はその価値を伝えるだけでなく、その当時の着物文化や公家文化、武家文化、庶民の暮らしなど日本文化全体を発信するかもこともできる。
・文化財には、国民の財産である側面と観光客を呼ぶコンテンツの両面があることを忘れてはならない。コンテンツの質を高めるには予算がもっと必要であり、稼げる場所に変えていった方がいい。
■その他
・観光は学際的で総合力が必要とされ、現場での実践が最も重要視される分野。また、段階的で影響が出るまでに時間がかかり、ステップを踏んだ戦略が必要となる。人間力が試される分野でもあるので、目線を上げて学び続けることでいつか役立つ日が来る。 -
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ネタバレ「新・所得倍増論」の続編。
日本の生産性が低いという話を前提に、日本が陥っている勘違いから脱却し、これから何をしていくべきかという議論が展開されている。
主張の軸は、前編に引き続き
・企業数を減らす(生産性の低い企業が淘汰されるようにする)
・最低賃金を上げる(欧州で失業率は増加しなかった)
・女性の活躍できる環境を整える(女性を全く生かせていない、子どもが一人以下の夫婦で専業主婦は福祉社会におけるフリーライダー)
というようなもの。
どれも合理的で納得がいくけれど、少なくとも中年以上の日本人には受け入れられないだろうと感じた。
最近若い世代を中心に人気を集めているひろゆき氏と同様、「賃金の高さが重要」という話を当たり前のように話している。
この辺はデフレが当たり前になり、経済失策を正当化(or単に無知であることを正当化)するために、「お金が全てではない」というきれいごとにしがみつく日本人にとっては受け入れがたい事実かもしれない。
筆者の言う通り、「福祉社会の維持にはお金がかかる」。それに尽きる。福祉社会を維持したいのなら、生産性を上げて経済成長するしかない。それに反発しておきながら、自分は福祉社会の恩恵にあやかろうとする人も、フリーライダー同様、社会にとってはマイナスということになってしまう。
本論とは全然関係ないけれど、「家を買って仕事のモチベーションを上げる」という話は面白かった。確かに、人間追い込まれないと頑張れないですからね。 -
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イギリス人が日本の現状を分析し、処方箋を提示する本。最初は日本人に耳障りのよい「潜在労働力は世界4位、しかし労働生産性は世界28位」と日本を褒めたたえて販売増を狙う本かとおもったが、後半は、日本は中小企業がつぶれず残っていて、その経営者はデータ分析などせずに賃金を低く抑えることで利益を確保してきたと痛快な展開。
エコノミストらしく論文、データに基づいた展開は予想通り。
私はオーディオブックの2.8倍速、2時間半で読んだ。そんなむつかしい本ではないので聞き流すのをおすすめします。
内容はぜひ読んでほしいが、個人的には、最低賃金を日本では厚労省が決めている(経産省が行うべき)、日本は変わらない率ではトップ、高齢者、社会人になって勉強しないので大学での再教育システムも必要というのは印象に残った。 -
Posted by ブクログ
低迷を続ける日本経済。私たち(一般市民)の生活が一向に豊かにならない原因は、monopsony(モノプソニー、買い手独占)が強く働いている、いまの労働市場にある。
遡ること1964年、OECD(経済協力開発機構)の加入条件である資本の自由化。この課題(当時の懸念ともいえるが)を払拭するために制定された中小企業基本法。企業の育成を後押しするための優遇措置が、本来市場から退場するべき生産性の低い中小企業をも救済し、延命させることにも繋がってしまったのは皮肉な話し。
人口の減少、少子高齢化社会のフェーズに本格的に突入したいま、再びこの国の経済に活力を取り戻し、豊かな生活を手にするためには、企業の規模を大きくし、労働生産性を向上される以外に道は残されていないと著者は切実に訴える。
本書の中で幾度となく槍玉に挙げられる中小企業の経営者の感想(ホンネ)をお聞きしたいところ。
ただし彼らは合理的に判断し、経済活動をしてきた(いる)のであり、全ての責任は時の権力者である政治家にあることは強く申し上げておきたい。
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Posted by ブクログ
日本について興味深いDataメモ。
<敗戦と高度成長期と微調整ばかりの事なかれ主義>
高度経済成長できた理由は、日本人気質(生真面目さや器用さなど)の要因は小さく、人口大国(ドイツ人より遥かに多い!)だったところに敗戦というゼロからの出発(とりわけ酷い状況だったドイツでも敗戦に伴うGDP減少率は3割だったが日本は5割減!)で団塊世代が働き手になったことが主因(欧州の人口増加率は戦後から2割増に対し日本は8割増!)。その強みがあったからこそ微調整で何とかなってきたわけだが、その成功体験が重しになって微調整しか出来ない世代が多勢を占めるようなった。
アトキンソン氏はだからこそ、変化のアレルギー、事なかれ主義を取り除くことができれば成長の希望があると説く。そのためには感情論を止め、エビデンスを重視し、ロジカルに考えた計画性と行動力を上げること。従来の秩序を壊してでも(どの道今の秩序は持たない)新たな価値を創造すること。イギリスも植民地を失い富の余剰がなくなって、教育からロジカル重視に転換してきたという。日本もイギリスと状況は似ている。
<海外で日本文化は人気とは言えない>
無形文化財の「和食」でもブームとは言えない。欧州の和食レストランの数は東京のフレンチ、イタリンの数とほぼ同じ。TopAdviserの「世界Top50」のレストランで和食はわずか2店。マスコミの煽る「日本を自画自賛する愚」から脱せよ、と。
<移民と社会保障>
筆者は移民受け入れに反対の姿勢。80年代、イギリスは観光ビザ入国者にも健康保険制度を適応したため医療ツーリズムによって財政が圧迫された経験を持つ。経済圏でつながるEU全体でさえ、移民はEU人口の9.4%でそのうちEU圏外からの流入は6.3%(点数制度で所得、学歴、IT関係などの業種別に高得点の人だけ移住できる)。歓迎している数字とは言えない。日本では難民(移民の中でも祖国を追われた人びと)は3年ほど合法的に滞在することができる。難民申請も何度もできるので4回もすれば12年間も滞在できる実態について危惧する。
<労働と賃金>
ベースとして男女の収入格差が倍もあるため(先進国平均は女は男の約8割)、女性労働者を増やすほど男の就業率低下や収入減による不況に陥るという。この構造は高齢者再雇用にも非正規労働や同一労働同一賃金、Global化×Online化(つまりRemote Workやクラウドソーシンクなど)にも重なる。筆者は雇用を創出するのでなく、既存の低賃金労働者の生産性を上げて今の男の賃金に近づけよ、と主張する。