あらすじ
日本経済の「伸びしろ」は、生産性大改革にある。
この非効率を直せば、GDP1・5倍=600兆円突破など楽勝だ!
先進国最下位に落ちぶれた日本の生産性。昭和の常識に縛られた結果、国際競争力がどんどん失われています。
とりわけ融通がきかない日本の観光サービス。顧客の要望に柔軟に対応できず「上から目線」が目立つ。著者は数々の政府委員や
顧問を務める中で、問題の所在を見定め、働きかけていきました。すると、少しずつではあるが、業界は変わり始めたのです。
観光業の進化を起爆剤に、サービス産業改革を成し遂げれば、「失われた25年」の遅れの9割は取り戻せる。
そう確信した著者が、日本経済再建の新たな処方せんを書きました。
「日本型経営」や日本人の特殊性をいくら言挙げしようと、まったく成長できていないことは、平成の経済低迷で実証済みです。
決めたことを実行できない、他人の時間を盗む、ことなかれ主義、論理的思考が苦手、クレームに弱い…企業経営と政策提案の
現場で見た、「日本病」克服の道を語ります。
<目次より>
第一章 非効率大国ニッポン
第二章 観光をサービス産業改革の起爆剤に
第三章 危険な「海外で人気の日本文化」幻想
第四章 論理的思考と変化が大の苦手
第五章 形式主義と事なかれで「失われた二十年」が長引く
第六章 感情論を止めて今すぐ実行を
結論 変化を受け入れられる国へ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アトキンソンさんの著書の内容は毎回うなづくことばかりで、線を引くとしたら線だらけになってしまう勢い。バックグラウンドの前提なしに日本を他の国と比較する、日本のメディア批判はまったくそのとおりと思う。ほんの少しだけ電車が乗るのを待ってくれることは田舎だったらあるかもしれないけれど、小さいうちの近所の駅ですら、乗客を電車が待ってくれなくて、そんなにタッチの差だったら待ってあげてもよいのに、と思ったことを思い出した。
Posted by ブクログ
2017年、41冊目です。
著者のデービット・アトキンソン氏の経歴に驚きです。
証券マンで成功した氏が、日本の国宝重要文化財を修理する会社の社長に就かれている。イギリスの出身者ですが、日本に対する愛情に基づいた様々な提言がなされています。大きな提案は、観光立国として日本が発展すれば、アベノミクスGDP600兆円の達成は可能だというものです。そのために、様々な規制を緩和して観光資源の活用が課題ということです。そしてもう一つ大きな主張は、日本の生産性の低さを改善するべきというものです。GDPを人口で割って算出するので、バイアスのかかっていない数字のはずですが、なかなか日本人自身が、客観的なデータを認めようとしない。
Posted by ブクログ
読んでて、たしかに、なるほどな、となる。
現在の日本で生産性が低いことなど、様々な要素が「高度経済成長期」の社会の在り方と結びつけられている。
この「良かったときの日本」から「落ち目の日本」になっていることを自覚して、早急に手を打たないといけないのだと思う。
Posted by ブクログ
日本について興味深いDataメモ。
<敗戦と高度成長期と微調整ばかりの事なかれ主義>
高度経済成長できた理由は、日本人気質(生真面目さや器用さなど)の要因は小さく、人口大国(ドイツ人より遥かに多い!)だったところに敗戦というゼロからの出発(とりわけ酷い状況だったドイツでも敗戦に伴うGDP減少率は3割だったが日本は5割減!)で団塊世代が働き手になったことが主因(欧州の人口増加率は戦後から2割増に対し日本は8割増!)。その強みがあったからこそ微調整で何とかなってきたわけだが、その成功体験が重しになって微調整しか出来ない世代が多勢を占めるようなった。
アトキンソン氏はだからこそ、変化のアレルギー、事なかれ主義を取り除くことができれば成長の希望があると説く。そのためには感情論を止め、エビデンスを重視し、ロジカルに考えた計画性と行動力を上げること。従来の秩序を壊してでも(どの道今の秩序は持たない)新たな価値を創造すること。イギリスも植民地を失い富の余剰がなくなって、教育からロジカル重視に転換してきたという。日本もイギリスと状況は似ている。
<海外で日本文化は人気とは言えない>
無形文化財の「和食」でもブームとは言えない。欧州の和食レストランの数は東京のフレンチ、イタリンの数とほぼ同じ。TopAdviserの「世界Top50」のレストランで和食はわずか2店。マスコミの煽る「日本を自画自賛する愚」から脱せよ、と。
<移民と社会保障>
筆者は移民受け入れに反対の姿勢。80年代、イギリスは観光ビザ入国者にも健康保険制度を適応したため医療ツーリズムによって財政が圧迫された経験を持つ。経済圏でつながるEU全体でさえ、移民はEU人口の9.4%でそのうちEU圏外からの流入は6.3%(点数制度で所得、学歴、IT関係などの業種別に高得点の人だけ移住できる)。歓迎している数字とは言えない。日本では難民(移民の中でも祖国を追われた人びと)は3年ほど合法的に滞在することができる。難民申請も何度もできるので4回もすれば12年間も滞在できる実態について危惧する。
<労働と賃金>
ベースとして男女の収入格差が倍もあるため(先進国平均は女は男の約8割)、女性労働者を増やすほど男の就業率低下や収入減による不況に陥るという。この構造は高齢者再雇用にも非正規労働や同一労働同一賃金、Global化×Online化(つまりRemote Workやクラウドソーシンクなど)にも重なる。筆者は雇用を創出するのでなく、既存の低賃金労働者の生産性を上げて今の男の賃金に近づけよ、と主張する。
Posted by ブクログ
小西美術工藝社代表取締役・デービッド・アトキンソンさんが毎回訴えている”生産性”について、小西美術工藝社で代表取締役を担う事になった経緯や、その後の仕事で経験を踏まえ熱く語られている本です。ここ数年の”日本万歳番組”についても警鐘を鳴らされております。瀧川クリステルさんで一気に認知された”おもてなし”についても、”外国人はそんなものは大して求めていない!”っとバッサリ切り捨てるアトキンソンさん! 嫌いじゃないですよ、私は!
Posted by ブクログ
外国人から見た日本。素直な意見。
観光業や伝統産業について、その接客のマズさ、特にルール至上主義で融通利かず、クレームに対して大多数を無視して禁止項目の乱立、そんな風にリスク回避思考が強いためにIR誘致や富裕層向けホテルの発想にも到らない。
日本は勤勉さや技術力に自信があるようだが、GDPの成長との相関関係は証明されておらず、データサイエンスによるEBPM(証拠に基づく政策立案)ができていない。だから、自分たちが「おもてなし」を目的に海外旅行をした事がないにも関わらず、外国人には日本の「おもてなし」を目的に日本に来てくれる事を期待してしまう。クールジャパン政策。お客さんではなく、社内の論理を重視する会社のように、ピントがズレている。それが日本の実態だと言われている気がして、同意せざるを得ない。
筆者は日本が嫌いな訳ではない。これには間違いなさそうだ。ただ、日本人の勘違いした自画自賛の態度は頂けないのだろう。これもよく分かる。
ところで、肝心な生産性の話は?一人当たりGDPのランキングで世界30位の日本。しかし、生産性を示すデータとして、この結果を見て生産性が低い、生活残業、無駄な会議が問題と切るならば拙速であり、筆者に前述の論をお返ししたい。長寿、少子、女性就業率で労働(年齢)人口が少ないために、総人口比で一人当たりGDPは下がる。著者が言うようにデフレ環境もあるし、最も目立つのはサービス業の生産性の低さ。単に働き方だけでは、結論は出せない。
ただ、会議や残業、IT活用度の低さについて言いたい事は分かる。同じ事を何度も発言する人、それでも理解しない人の多さ、それ故に資料作りに熱が入るような、この社会全体に蔓延る悪しきスパイラルよ。ルール至上主義についてもそう。自分で考える、自分の意見を持つという軸が無いから、表現力も理解力も、応用力も育たないのだ。組織が意見を聞かないから、それを持とうという努力もしなくなる。年功序列による政治力ヒエラルキーの勝ち抜き戦。その頂点界隈に、意見できず。日本だけでも無いが。ファクトと信じた検索結果を基準に生きていく事の弊害。現代病、徐々に。