デービッド・アトキンソンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
元ゴールドマンサックスの社員で、今は文化財修復会社の社長さんの語る日本の文化財の危機的状況について。
なんとなく恣意的な箇所が見られるような気がする。
文化庁が他の省庁に比べ「総合評価入札」を行っていないというのは、どれくらいの割合なんだろうか。ここデータ出せば積極性があるのに出さない理由は何だろうか。あと、下村前文部科学省大臣の名前を出す意味もよくわからない。社寺的な意味合いだろうか。あるいは大臣とパイプがあることを示したいのか?と穿ってしまうところがある。
ゴールドマンサックス証券出身ゆえに、データの意味合いについては理解しているかと思うのだが、データを出す出さないの統一性がないため恣意的なものを感じてしまう。もしや「データを見るとちがうんじゃないの?」という疑問が残る。
手前味噌でも自社のうまくいった事例を紹介した方が、この業界の活性化になったんじゃないかなぁと少し思う。
少なくとも、経営が危ないとされていた小西美術工藝社の建てなおしについては読んでみたい。(文脈から「やるべきことをやっていなかった」だけだったりするのかなとも少し思うけれども)
あと、ハコモノ行政で枠を作る時代は終わってる気がする。
文化を遺すためには人が必要。つまり、職人や地域の人が、この文化に誇りを持ち遺すべきだ、と考えるから行政が動かざるを得ないんじゃなかろうか。
これ、ターゲット誰向けの本なんだろ。
一般人にしたら「へー、文化庁が働いていないんだ、駄目だな」ってなるし、文化財を所有や修繕をしている関係者なら「ほー」ってなるし(どう働きかけるべきかの提言がないため)、国側なら「はいはい」で流される。
内部告発にしてはインパクトが薄いしなぁ……ホントに誰向けの本なんだろ。 -
Posted by ブクログ
日本の観光を構成する文化産業の構造とその問題点について分析した本です。
ここで語られることは、
・人口増の時代には許されたことも、今の時代では通用しないのなら変わる必要がある。
・文化は特別であるという考えは正に今の時代には通用せず、文化を守るために、文化を産業化せざるを得ない。
・後継者を育てるには教育に対する補助もありうるが、前提として需要が増えなければならない。同様に、産業を持続させるには補償金を出すことではなく需要を増やす施策が必要である。
ということで、要は文化といえどもマーケティングと市場経済の中で他の産業と同列に生きていくしか道はないということです。
他方で、文化財を白日の下に曝すことで壊れてしまう、市場経済に任せるままだと「正しい」「伝統的」な文化が継承されない、といった負の外部性や市場の失敗を恐れる声があります。事実、今までの文化産業の大部分の領域が負の外部性や市場の失敗に属すると解され、市場を大きく歪めて保護されてきたと言えます。もちろんラディカルに市場主義を導入すべきとは言えませんが、徐々にシフトしていくべきでしょう。
このような事情は文化に限らず、伝統に保護されて歪められた市場の中にこれまでいた多くの産業が、この人口減の社会において「審判の日」を待っています。当該の産業構造がどうなっていて、構造をどう変えていかなければならないかの分析を、この本で行われたことをモデルケースに考える価値があるでしょう。 -
Posted by ブクログ
著者が書かれた別の本「新観光立国論」があまりに面白かったので、読んだ本です。結論を言うと、主張している内容は「新観光立国論」とさして変わらず、著者の意見を詳述し、論旨の構成も整えられているという意味で「新観光立国論」の方が面白く、特に本書を読む必要はなかったと思いました。
、、と言っても、私が本書に期待していたことにあまりページを割かれていないというだけで、「新観光立国論」と比較しなければ充分に興味深い本です。
本書を読む前に期待していたのは、超一流の投資銀行で成功した著者が、全く異質の文化財補修の会社で経営者になり会社を再建するまでのプロセスの詳細ですが、そこが本書のメインではなかったです。。 -
Posted by ブクログ
日本人が一般的に「強み」だと主張しているところに、論理性が足りないこと(=wooly thinking)、客観性が足りないことが数字を基に検証されているのが面白かった。
こういったロジカルな議論が乏しい国で、今後グローバルに競争していくのが難しいのではとやはり感じてしまう。日本的な「井の中の蛙」は今後、様々な局面で日本を世界から取り残してしまうのではないだろうか。
日本人が実は個人主義が強い、というのは同感である。文句は言うが、自分ではやらない、自分に飛び火してきて欲しくない、というのは、税金、福祉、国づくり、様々な場所に見て取れる。
全体的に「強み」よりも「弱み」と若干の批判に重きが置かれている気がした。イギリス人ならではのシニカルさか。 -
Posted by ブクログ
丁寧な言葉遣いで読みやすかった。そんなに丁寧で、謙遜しなくてもいいのにと思ってしまうほど。
デービッドさんの指摘は、共感や納得する部分は多い。なにより、わかりやすい数字的根拠を示してくれるので納得しやすい。
GDPは人口との関わりが深い、というのは確かだと思う。そりゃそうだ。
日本の強みは、他の文化を取り入れてアレンジすることではなく、足し算していく、というのも納得。とはいえ、近代、お城や寺を次々と壊した時期もありますが…
あとは、おもてなしを外国人に押し付ける、というのが新鮮でした。言われてみればそうかもしれない。
最近のおもてなしには私もなんだか納得できていなかったので、妙に腑に落ちました。
またここ最近の日本がすごい、という風潮は気持ちが悪いと思っていたので、勝てるところだけ見て判断するのは危険、というのに共感。