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元ゴールドマンサックスのカリスマアナリストとして日本の金融再編に多大な影響力を与えながら、日本の国宝・重要文化財を守る江戸時代より続く老舗企業の経営者へと転身したデービッド・アトキンソン氏が、オックスフォードの日本学とゴールドマンサックスの財務分析を駆使し、「日本」の経済と文化を深く考察。日本人だけが知らない「日本の弱みと強み」をわかりやすく解説する。
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Posted by ブクログ
日本の一人当たりのGDPについて調べてみると、この本が出版されて6年も経っているのに、世界における順位は3位も下がっており、数字としては6000ドルほどしか上がっていない。周りの国も上がっているからしょうがない、と思うかもしれないが、そこで、他の国も上がっているから自分達も上げるべきだ、という姿勢で...続きを読む好成績を出している国から積極的に学ぶ姿勢が重要であると考えられる。 日本はご都合主義である、ということに大いに納得した。みんなすぐに隠蔽を試みる...サイエンス誌でも世界で一番データの改ざんが多い国ランキングで、日本は不名誉にも1位を獲得した。科学従事者としても、これらが与える印象は大きく、自分達の論文の正当性が疑われる結果につながるのではないか、と危惧してしまった。これらの根底にあるものが日本人の気質だとしたら恥ずかしいばかりである。 観光業についてはまさにその通りという、気づいているけれど面倒くさいから、一人ではどうにもできないし、という思いで放置していることに気づかされた。英語が公用語でない国でも、英語ツアーを簡単に見つけることができる。それらは主にボランティアではなく、商業的に行われている。そして、内容もかなり充実したもので、5時間ずっと歴史について語ってもらうものだったりすることもある。また、イタリアやスペインでも英語だけではなく、アジア諸語やヨーロッパ諸語のガイドを見つけることができた。こういうところはどんどん見習って、内向的な国ではなく外交的な国になっていく必要があるな、と考えさせられた。 文化財保護について、デービットさんは本当に日本人以上日本文化を愛してくれて、守ろうと必死になってくれている。私も家族で、職人を守る試みとして、華道道具、書道道具、茶道道具、まな板や食器は職人から購入するようにしている。つい先日も近所の神社に一人1マ年ずつ修復寄付をしたばかりである。こういう個人個人の興味が日本文化を救うことに繋がれば良いな、と思う。 個人的には、こういう批判的な本を読むのは日本を客観的に見ることができて面白かった。こういう本を読んで、「いや日本は...」や「外国人に何が分かる」と思ってしまう人は、愛国心が強すぎるあまり、盲目的になってしまっているのかな...?
p.144 みながわかりきっている問題を積極的に解決していくという姿勢やプロセスは、「変わらない」と絶望している国民にとってはその問題解決の効果以上に希望が持てるという心理的なプラス効果がある。 → 「変わりたいけど、変えられない」と皆が半ば諦めている課題を解決してみせることで、根強いファンができる...続きを読む。 p.147 この教えから見えるのは、「客の都合」を無視するような「傲慢な主人」ではありません。「客」のために万全を期してあらゆる準備をし、心地よい体験を演出するという、自らの頭で極上のサービスを考える「心遣いの主人」ではないでしょうか。 → ありとあらゆる状況を想定して準備ができる人こそ、お客様に感動を与えることができる。 p.148 一部の評価を、全ての評価にこじつけてしまうと、見直さなくてはいけない問題が見えなくなる。 → 良い評価を得ても、全てが満点だったと勘違いしてはならない。必ず改善すべきポイントがあるものである。 p.186 一人当たりの落とす金額が少ないと言うのは、日本人の観光客であっても、海外の観光客であっても、素直に文化財のサービス度合いに見合った対価が払われているからと考えるべきではないでしょうか。 → 感動を与えるほどのサービスであれば、みんなそれ相応の対価を払ってくれる。価格が安いということは、安くなる相応の理由がある。
日本人の「おもてなし」に関する誤解や、日本人がそれを勘違いして使っているという点が非常に興味深かった。 特に、日本人ではなく、日本という国家として考えた場合は、必ずしも高評価の「おもてなし」になっていないという指摘にはドキっとさせられた。するどい分析だと思う。
日本に魅せられたイギリス人の元外資系アナリストによる一冊。 さすがアナリストだけあって、随所にデータに基づいた現状分析とそれに対する処方箋が明示されていますのでいちいち「ごもっとでございます」と思う内容が多いですね。 著者のような第三者的な視点でデータに基づいたりして話を進めるというのは、私は比較的...続きを読む好みですのでここ数日の生活での待ち時間の長い場面を利用してあっと言う間に読むことが出来ました。 日本文化のことだけではなく、観光に関することだけではなく、経済のことだけではなく。 上記の内容はもちろんですが、それらの周辺部分にまで及ぶ幅広い内容がこの一冊に凝縮されています。 年末年始のお休みに、サラリと読まれてみてはいかがでしょうか? 付箋は21枚付きました。
アナリストと文化財補修者という二つの立場から語られる日本に、日本人ながら圧倒されてしまいました。日本人の見えていなかった日本、世界における客観的な日本の立ち位置というものが如実に語られています。自分にとって将来の指針となる一冊になると感じています。この本に出会えて良かった。
著者は、ゴールドマンサックスでパートナーを務めた後、文化財の修 繕・補修を行なう小西美術工藝社の社長に就任するという、異色のキ ャリアを積んだ方。ゴールドマン時代は、金融機関の不良債権の実態 を暴き話題になったそうです(驚くべきことに、銀行からは猛烈なク レームや脅しを受けたそうです)。また、小西美...続きを読む術工藝社の社長にな ってからは、旧態依然とした会社の体質改善に成功。まだ40代。こう いう方を真のエリートというのでしょう。 本書は、金融と文化財という、二つの世界から日本を眺めてきた著者 による、日本論・日本人論であり、文化財保護や観光活性化に対する 具体的な戦略提言の書です。凄腕アナリストだっただけに、データに 基づくわかりやすい分析はお見事。あまりマスコミで語られることの ない、日本経済の実相がよくわかります。そして、実際のデータを確 認することなく、感情論や精神論で物事を判断してしまう日本人のヤ バさも。本書を読むと、いかに自分達の視野が狭く、偏ったものの見 方をしているかを思い知らされます。 後半部では、日本の文化財保護の実態と観光の問題点が語られます。 オリンピック・パラリンピックの招致に成功し、「お・も・て・な・ し」で盛り上がる日本ですが、それがいかに実体のないものなのかも、 指摘されます。そして、英国の政策などを参照しながら、文化財保護 を通じた雇用創出、観光活性化、地方創生戦略が提言されます。非常 に納得感のある提言です。観光立国に向けた具体的な処方箋と言える ので、観光や地域経済に関心のある方、必読です。 外国人が見た「ここが変だよ、日本人」的な本はあまたありますが、 本書は、それらとは一線を画します。著者に、高い知性と教養、そし て日本文化に対する深い敬意があるが故だと思います。 私達自身のことをよく理解できるようになる好著です。是非、読んで みて下さい。 ===================================================== ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文) ===================================================== 三百年続いた日本企業の改革に成功して感じたのは、 「やるべきことをやれば日本の組織は劇的に改善する」 ということです。 イギリスのマーガレット・サッチャー首相だろうが、アメリカのロ ナルド・レーガン大統領だろうが、先進国の経済を上向きにさせる までは5?7年はかかっています。まず徹底的にマイナス面を出し 切って、改善して、そこからようやく経済が上向いていくという非 常に長いスパンの話なのです。 これに手をつけたら、すぐに結果がでてバラ色の未来が待っている、 というような「シンプルアンサー」を求めている人があまりにも多 いような気がしています。 「すぐに良くなる」「すぐに悪くなる」という単純明快な「シンプ ルアンサー」を求めている限りは経済改革というものがうまくいく わけがないのです。 数字に基づいた分析をおこない、細かい改善をひとつずつすすめて いけば、成果というものは必ず現れます。 日本人ならではの良いところも、もちろんあります。日本人は恐ろ しいほど前向き。いや、もはや「忘れっぽい」と言ってもいいかも しれません。日本のサラリーマン文化も然りです。 「過去にとらわれない」「変化に対して前向きに対応できる」 これは非常に良いことだと思います。可能性に制限がないからです。 社長さんたちの多くは「信長に学ぶ」とか「坂本龍馬を目指す」み たいな話が大好きで、よく勉強会もされていました。(…)しかし、 経営者がまずやるべきことは「生き様」を真似るなどではなく、 「数字」を見ることではないでしょうか。 「おもてなし」について重要なポイントは二つあります。ひとつは、 海外では「おもてなし」を受けたかどうか、評価をするのは客であ って、供給者側が決めるものではないということ。そして、もうひ とつが、日本人が自画自賛する「おもてなし」と、外国人観光客が 評価をする「おもてなし」は違う場合があるということです。 残念ながら、日本は「技術大国」「おもてなし」など自画自賛ばか りをしているご都合主義がゆえ、社会のなかに蔓延するこのような 「効率の悪さ」に気づいていません。 (英国では)文化財保護を産業政策のひとつに位置づけて、文化財 の保護予算を増やしてきたのです。予算が増えたことで、英国文化 を守ることができたのはもちろん、文化財保護にまつわる様々な仕 事が生まれたことで雇用促進につながりました。特に地方経済が活 性化して、治安まで改善したのです。 海外のさまざまな国のデータでは、文化財などに興味のある観光客 は一日10万円を消費するというデータがでています。では京都を 訪れる外国人観光客一人当たりの消費額はいくらなのかというと、 1万3000円弱なのです。 (「ゆるキャラ」は)文化財にカネを多く落とす外国人観光客から すれば逆に興ざめしてしまうような「子どもだまし」の観光PRと いう印象を異だいてしまうかもしれません。 海外において文化財保護の基本はPreservationとPresentationの 両方といわれます。つまり、保存しながら、それをどう人にアピー ルするかということです。 忘れてならないのは「自然保護」です。日本は一平方キロメートル あたりの植物と動物の密集度が世界一だと言われています。 これは間違いなく日本の財産です。この自然を見たくてやってくる 何千万という外国人観光客に楽しんでもらいつつ、それを維持して いく整備も今後は求められていくのではないでしょうか。 地方は歴史と文化と自然の宝庫ですから、文化財を中心とした観光 戦略というのは真の地方創生戦略になるのではないでしょうか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 欧州各国にとって、観光は極めて重要な産業です。先日訪れたオー ストリアでは、観光が第一の産業と位置づけられていました。 オーストリアに行って感心したのは、どこの町も綺麗だったことです。文化財の 維持修繕にお金をかけているということもあるのでしょうが、観光と関係のない 仕事についている普通の市民が、「綺麗にしておかないと、観光客が来てくれ ない」と言っていたところを見ると、市民一人一人の力が大きいのではないかと 思いました。 どの地方都市に行っても文化財がある状況を見て、一緒にいた日本人の一人 が、「過去の遺産で食っている国だ」と嫌味を言っていましたが、その過去の遺 産をきちんと守り、綺麗に保つ努力をしていることについては、思い至らなかった ようです。 オーストリアの次に行ったドイツの農村の美しさも印象的でした。農業がちゃん と生きていて、その日々の営みが美しい風景を生み出している。そして、家や 道も、とても綺麗に手入れされていて、それが独特の美しさを生み出している。 暮しと結びついた美しさというのは、本当に特別ですね。 日本では失われつつある美しさが、ドイツにはまだきちんと息づいている。その ことにショックを受けると同時に、農村もここまで美しくなれるんだ、という希望 というか目標をもらった出張でした。
快刀乱麻。「肯定も否定もせず、ただおかしいと思うところは指摘する」と念を押した上で、圧倒的な客観性とデータによって日本の経済を分析します。辛辣に事実を突きつけられますが、日本の良い所、悪い所を発見し、新たな歩みを始めるための希望も授けられます。オススメです。
日本人は技術力があると言われているのは、本当なのかをサイエンスする必要がある。著者のデビッドは、例えば日本のGDPを見るとこう分析している。世界には242か国あり、人口が一億人以上の国は11あると言う。日本はその10番目。人口で考えれば、中国に抜かれのは当然となる。など、日本人には、分析する習慣がな...続きを読むいので、感情論になる傾向が強い。なるほど。また、東京オリンピックのおもてなしの考え方は、上から下を見る見方だと喝破している。しかしながら、分析を深めれば、日本にはまだ伸びしろがあるとデビッドさんはまとめている。 がんばろ!
アナリストの脳みそがわかって面白い。日本経済が主題で、アベノミクス1つとっても頭ごなしに全否定するわけではなく、良いところは良い、悪いところは悪いとズバズバ切っていきます。いかに日本のニュースに踊らされていたかを痛感した、そんな本です。後半、著者の本業である文化財関連にテーマが移ってしまったのが、少...続きを読むし残念でした。
過去の成功体験にしがみついている場合ではない。 現状を客観的に分析して、変えるべき所は変える。 ―というようなお話。 そう、その通りなのだけれど、それが難しい。 一部の美談を国民全般に拡大する、シンプルアンサーに飛びつく、といった点は、もしかしたら日本人だけではなくありそうな気がするけれど、まあ、...続きを読むそうならないようにしたほうがいいことだよね、と思う。 日本人が誇りにしている「おもてなし」。 それが供給者の都合が優先され、本当の顧客本位ではないという指摘に驚く。 自分があまりおもてなしを受けたことがないので、どうかわからない。 日光東照宮の補修も手掛ける美術修復を専門とする会社の経営者となった著者。 実は、補修に関するあれこれの話があるのかと思って読み始めて、期待が外れてしまったのだが、まあ、それでよしとしよう。
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