柴田勝家のレビュー一覧

  • アメリカン・ブッダ

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    短編ひとつ読んだ後に、ぼーっと取り留めもなく考えてしまう余韻に襲われて楽しい。民俗学の薄ら寒い感じ、VRに生きる部族、物語が病原体、で仏陀を信じるインディアン。やー面白かった!他のも読む!

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    2023年02月18日
  • アメリカン・ブッダ

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    初・柴田勝家作品。
    民族的な匂いのするSFってのは面白いな。柴田勝家、面白作家だな!

    どの作品も面白かったけど、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」が特に気に入った。
    VRのR(Reality)が指すものは、一生VRゴーグルをつけた一族と、一般とではそりゃあ大きく乖離するよな。異文化・異星人交流モノなんだから、SF好きは好きな話だわな〜。

    「鏡石異端」は、テッドチャンの「あなたの人生の物語」を想起。この感じも好き。小川一水もILCをお題に作品を書いているようなので、そっちも読みたい。

    コロナ禍を経験している現代だからこそ、「検疫官」「アメリカン・ブッダ」も楽しめた。

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    2023年01月07日
  • 走馬灯のセトリは考えておいて

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    宗教とか生と死とに関連するSF短編集。
    「火星環境における宗教性原虫の適応と分布」は宗教の伝播を原虫に繁殖になぞらえて論じています。固い文章でもっともらしく書いていますが、こういった遊びがいかにもSFです。
    表題作である「走馬灯のセトリは考えておいて」は、ライフログや日記などから、死後にその人の人格(もしくは人格を模倣するもの)をAIとして残せるようになった世界を描いています。死後に人格が残るお話はほかにもいろいろあるし、いつか実現しそうな技術ですが、現実としてはどうなんだろうとか思ってしまいます。でも作家死後にAIが続きを書いてくれるとかはいいかもと思ってしまったり。

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    2022年12月04日
  • 走馬灯のセトリは考えておいて

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    Vtuberを題材にした文学や議論もかなり増えてきて、技術も日進月歩。もはやSFとの境目が曖昧になってきたけど、やっぱり魂の所在についてはずっと考えてしまう。全部同じ人が書いてんの?ってなるくらい雰囲気がバラエティ豊かで面白い。表題作と届木ウカさんの解説目当てだったけど、クランツマンの秘仏が骨太でかなり刺さった。仏像、大好きだからな。

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    2022年11月29日
  • アメリカン・ブッダ

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    猫も杓子もポリコレだのハラハラいうこのご時世を考えると、検疫官の世界になる日も遠からずあるのかもしれない。
    そう思うとぞっとする。

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    2022年07月14日
  • スーサイドホーム

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    不気味な作品なのに、テンポ良くサラサラ読める。さすが柴田先生。いまどきの情景描写がなされているのが、物語をよりぐっと身近に引き寄せている。
    最後がすこし駆け足気味なのがもったいないが、よくできた良作である。

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    2022年06月27日
  • ニルヤの島

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    ネタバレ

    ――

     まじで柴田勝家、本名だと思ってましたすんません。


     面白かった、と云うにはあまりにも問題提起が多すぎて、読後感を正直に書くなら「混乱」。それも、物語が入ってこなくて混乱してるのではなく、全部受け止めた上で混乱している。
     だいたい小説ひとつ読み終わったあとって、大なり小なりその作品の中で描かれていたことに対する持論、というか立ち位置、スタンス? そういうのがある程度定まっていて、なんかまぁあのひともこのひとも恋しい、みたいなことはあるにしても概ね言葉にできるものなのだけれど…
     これは…うーむ。

     読んだよ、ということだけを記すレヴュになってしまう。本当にまだまだ言葉が、足りな

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    2022年06月18日
  • スーサイドホーム

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    ある家族に端を発する呪いのお話。連作短編風ですが、時系列を少しずつずらしながら各話はそれぞれにリンクしている作りになっています。最終話ですべてつながるので、ミステリーの要素もありますね。
    直接的に怖いものはあまり出てきませんが、わけのわからないもの、理不尽なものに対する怖さがじわじわと効いてきます。

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    2022年04月25日
  • スーサイドホーム

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    羽野アキラと神無リオンの助葬師コンビはシリーズ化するかな~と最後まで飲み終わって思いました。
    呪いと祓いのどっちをとるか、っていう質問で呪われるやつは結局なんか悪いことしてるみたいに神無リオンは言うけどそんなことはないとアキラは思っていて、絶対おばあちゃんに言われたように人のために行動して助けなきゃと、ちょっと空回りしそうなところとか見た目犬っぽい感じとか、そんな羽野アキラの成長していくところは見てみたい気がする。
    美少女キャラには飽き飽きしてるので犬っぽいアキラは好きかもと思ったのでした。
    ちょっとくらい変なやつで全然いい。
    あと安全な場所だと思っていた家は本当は全く安全じゃないかもしれない

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    2022年04月25日
  • アメリカン・ブッダ

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    短編集。ガチガチのSFもあれば、オカルトチックなものもある。なにより発想が素晴らしい。1話目の生涯VRヘッドセットをつけて仮想空間に生きる少数民族とか。「ヒト夜の永い夢」の主人公、熊楠先生に再会できるのもうれしいです。
    表題作は、インディアン、仏教、加速された仮想世界などなどをミックスした作品。ちょっと思いつかない組み合わせです。

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    2022年04月17日
  • アメリカン・ブッダ

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    民俗学とSFの融合。技術が人々の生活に入り込んでも、根本にある人間の性質は変わらないというところが描かれている。さまざまな読み味の作品が多く、長編も読んでみたい。

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    2022年03月11日
  • ヒト夜の永い夢

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    1920年代~30年代を舞台にしたお話で、実在の人物である南方熊楠を主人公としています。人間の動作(右手を上げる、左足を上げるのような)を膨大な数粘菌に覚え込ませ、それを組み込んで自動人形を作ろうというお話。SFぽくもあり、和風ファンタジーぽくもあり。
    結構ハチャメチャなお話です。幻想小説ぽくもあり、読む人は選ぶかもしれません。実在の人物が多数登場するので、歴史に詳しいと楽しいかも。

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    2021年12月29日
  • ニルヤの島

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    「誰も気にしないのだな。人が一人死んだというのに」
    「気にしていない訳じゃなくて、既に気にし終えたんですよ」

    お笑いや政治など全ての事柄でもそうですが、
    ある程度背景知識など詳しくないと楽しむことができないものがあります。

    記憶を取り出せるようになることで、「死」がなくなる。
    SFを読むために、さまざまな知識を得ようと感じました。

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    2021年12月06日
  • アメリカン・ブッダ

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    北米全土を襲った〈大洪水〉のあと、肉体を冷凍睡眠させて精神世界に逃げ込んだ白人たちに現実世界のアメリカから〈仏教徒のインディアン〉が語りかける表題作ほか、六篇を収録するSF短篇集。


    〈未来の民俗学SF〉とでも呼べばいいのか、現在や近未来の最先端技術が市井の人びとの生活にまで根づき、ハレとケに溶け込んで民俗学の研究対象になった世界を描いているのが面白い。かと思えば、19世紀末のロンドンで南方熊楠が人工知能の元祖みたいなマシンに遭遇したり、〈物語〉が検疫対象になった『華氏451度』みたいな国が登場したり。「邪義の壁」はド直球の民俗ホラーだし、さまざまに品を変えて楽しませてくれる。
    巻頭の「雲南

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    2021年10月30日
  • アメリカン・ブッダ

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    本の帯の推薦文にあるように「柴田勝家は面白い」と思わせてくれる作品集です。
    デビューしたての頃の半村良さんの要素を更にポップな文体で仕上げたような気がしました。

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    2021年10月25日
  • アメリカン・ブッダ

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    柴田勝家のSF短編集。柴田勝家は初めて読んだけど、武将のような名前だなぁと気にはなっていた。いや、どれも面白い。なかでも好きなのは鏡石異譚と表題作アメリカン・ブッダ。鏡石異譚は量子加速器付近で転落した少女がその後未来の自分を見るようになる話。記憶子は未来と過去を繋ぎ、世界の記憶を作り替える。しかし現実は変わっていない。想像が膨らむ感じ。表題作は加速した電子世界と荒廃から復活しつつある現実世界のアメリカの話。時間はいくらでもあり、数千年単位で暮らしている電子世界は気が遠くなる。

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    2022年01月16日
  • ヒト夜の永い夢

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    南方熊楠にはじまり、福来友吉、江戸川乱歩、宮沢賢治など有名な実在の人物たちが天皇機関をめぐって大暴れするSF。伝記ロマン。

    分厚い割に、ドタバタとした感じというかコメディ調な部分が多いのですぐ読めた。
    脱糞だ嘔吐だがやたら多い。

    ただ、SFがそんなに得意ではないので夢の話とか天皇機関の話はなかなか頭に入ってこなかった。
    特に最後のほうの天皇機関が延々と一人語りするとこはきつかったかな。
    決戦シーンも文章が若干読みづらくて盛り上がりにくい気がした。
    あとは女性の扱いはひどいというか…一昔前の捉え方かなと。
    舞台が昭和だからそうしてるというより作者の考えかなぁという感じもしたけど…実際どうなの

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    2020年10月09日
  • ヒト夜の永い夢

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    南方熊楠が主人公。
    昭和初期の混沌とした時代の中で、粘菌による人造人間の天皇機関を作るがテロ集団に奪われてしまう。
    學天則とかが出てくると帝都物語を思い出すが、ストーリーはこちらの方がより幻想的。オドロオドロしい感じとかがホラーっぽくて良い。ただ台詞回しが読み難いところがあった。
    実際の歴史との違いがわかればもっと面白いと思った。

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    2020年08月15日
  • ヒト夜の永い夢

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    ネタバレ

    え、戦国武将の名前のSF作家!? と著者の「映え」には数年前より惹かれていたが、要はオタクを突き詰めた結果なんだろうと、飛びつくことはなかった。
    が、南方熊楠の歴史改変SFと来れば手を伸ばさざるを得ない。
    真っ先に連想したのは荒俣宏「帝都物語」だが、実は小説も映画も未見で、藤原カムイや高橋葉介の漫画で読んだ・見た気になっていたのだ、と自分にびっくり。
    また連想したのは、円城塔/伊藤計劃「屍者の帝国」、山田風太郎「魔界転生」映画化は深作欣二。

    まずは南方熊楠が視点人物というのはほぼ一貫しているが、地の文に「私は」とか「俺は」とか書かれず、最低限「こちらは」とか。
    敢えて語りのカメラ位置が少し浮

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    2020年03月19日
  • ヒト夜の永い夢

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    ネタバレ

    南方熊楠、昭和2年―
    粘菌コンピュータ搭載の自動人形「天皇機関」を発明。

    上は帯の文句であるが、もうこの時点で最高である。

    中身はというと戦前の名士オールスターが、ある陰謀と闘うドタバタSFと言う感じ。
    あらゆる夢が入り交じる東京決戦のシーンは映画『パプリカ』を思い出すような凄まじいもの。

    脳の中のあらゆる要素が一致したなら...なんて誰もが考えたことありそうな発想から夢・千里眼、粘菌コンピュータまで飛び出てくるいいSFでもあったし、
    なんやかんやで最後キレイに締まって読後感もスッキリ。

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    2019年08月23日