柴田勝家のレビュー一覧
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ネタバレこれは面白い。物語の世界に没入してしまう。
■雲南省スー族におけるVR技術の使用例
VRゴーグルを装着したまま一生を過ごすというスー族の話。食事とかどうしてるのか?などと思いつつ楽しんで読んでいたらラストで納得。
■鏡石異譚
素粒子衝突実験、時間経過の一方向性、予言などをベースとしながら、自分の過去や未来と向き合う話。これまたスッキリ。
■邪義の壁
家の分厚い白い壁を信仰する話。壁の秘密にゾクゾクする。歴史を絡めた妖しさがいい。
■1897年龍動幕の内
公園に出没するという天使を追う物語。ただのファンタジーや謎解きではないところに痺れる。南方熊楠の万能ブリが活かされてる。
■アメリカン・ブッダ
大水没から逃れたアメリカ人と残った先住民。先住民の一人のミラクルマンは、もう水没は終わったというが本当なのか。時間の流れのスピードの違いが生み出す混乱ぶりが面白い。56億7千万年
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ネタバレこれはおもしろい。それに読みやすい。SFならではの難解な世界観や描写は抑えられていて、民俗学的な要素が物語の奥行きを広げている感じ。
AIや異星人など、生身の人間ではないものを主体にすることで人間らしさを浮かび上がらせるのが絶妙に巧い。
■オンライン福男
感染症の拡大の影響から新年の福男をオンラインで決める話。話が発散して無茶苦茶になっていく。コロナ禍を思い出す一話。
■クランツマンの秘仏
深い信仰には質量がともなうというエセ科学?に囚われた男と、その男の名誉を回復したい子どもたちの話。これは事実なのか?と思わせるノンフィクションのようなスタイルに引き込まれる。
■絶滅の作法
人類が絶滅した後の地球で、人類のようにふるまいたいロボットが米を育てたり寿司を作ろうとする話。昔に想いをはせるようなノスタルジックな味わいがいい。
■走馬灯のセトリは考えておいて
故人の生前を再現するAI「ライフキャスト」でバーチャルアイドルのラストライブを作っていく物語。最期の近い「中の人」の想いに胸が熱くなる。
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・オンライン福男
VRで福男の競争をするというコメディチックな話。ただ、そこに現実味が伴うのが我々の文明の現在地を感じさせる。
・クランツマンの秘仏
短編アンソロジー「異常論文」に掲載された、信仰が質量を生じさせ存在を実在させるという論文と、その実験を行った人物に関する記録。ドラマによって著者への共感が物語に存在感を与えることと相似するところが見事。
・絶滅の作法
ポストアポカリプスものの亜種のような作品。日常への哀愁と文化の継承者になる話。
・火星環境下における宗教性原虫の適応と分布
宗教や言語を寄生虫と捉えて寄生された人間の行動が変容させられている、といった内容の論文風短編。物事の主従を反転させるのは王道の手法だけれど、宗教が人間に寄生しているという題材の選定とディティールの筆致が見事。
・姫日記
戦略ゲーマーが美少女だらけの戦国時代に異界転生、みたいな内容のユーモア作。戦略ゲーマーは共感するところも多い。オイチのつけかたはダイナミック。
・走馬灯のセトリは考えておいて
VTuberをモチーフとした表題作。テクノロジーは人間の意識や魂を解明して再現もするだろうけれど、その先にある身体という限界からの開放をグラデーション的に、現実から緩やかな境界で繋がっているものとして描いている未来観が素晴らしい。
表題作らしい読み応えもあって面白かった。 -
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「伊藤計劃トリビュート』でその名を目にして依頼気になってた作家さん。
民俗学×SFの短編集、どれもおもしろー。
特に最初の「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」とタイトル作の「アメリカン・ブッダ」が好き。前者は論文の形を採りながらリアルに架空の民族の風俗を描く切り口が新しく感じた。絶対にいないはずなのに、ちょっと本当にいそうな気がする。近未来にはもしかしたら。
後者は仏教とメタバースとインディアン(ネイティブ・アメリカン)を組み合わせるというウルトラC級の盛り盛り大スペクタクル。拡げた風呂敷が最後綺麗に畳まれていく展開に感動した。
「鏡石異譚」はファンタジーみのあるタイムトラベルSF。
「邪義の壁」はこの中では異色なホラー作品。オチをはっきりと書かずに読者に想像させるのがかえってゾッとさせる。
「検疫官」少し「華氏451度」や「1984年」を彷彿とさせる正統派?ディストピア小説。この本全体的にテッド・チャンみを感じたけど、この作品が一番それを感じた。
良かった。他の作品も読んでみたい。 -
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好き。すごいよかった!
短編集だけど、どれもよく出来てるなーって。
少数民族とVR、最先端科学技術と民俗学、インディアンと仏教と仮想現実。普通一緒に並ばないでしょっていう意外な組み合わせが起こす化学反応ったらもう。どの話にもノスタルジーみたいなものを感じる。のは、無機質なもの、未来的なものののなかに、失われた(失われるであろう)情緒的なもの、文化的なものを感じるからかもしれない。そういう淡い想い出に浸る感覚になれるような、物語の美しさ。好き。
特に最後のアメリカン・ブッダがいい。お話のつくりもなかなか劇的というかロマンティックというか。現実世界→仮想現実→宇宙という展開は描写的にはスケールが大きくなっていくけど、実はどんどん個人の内面だけで完結するようになっていって、壮大なようでいて個でしかない感じ。はたまた世界(アメリカ)の危機みたいな大きな話と思いきや、2人の登場人物のプライベートな話でもあるような。個の内面で壮大な箱庭世界をつくったと思ったらそれが現実世界に繋がってる、みたいな。マクロだったりミクロだったり、精神世界だったり現実世界だったり、階層なのか円環なのか、流動的なのがまたおもしろいのかも。最後のシーンやセリフは感動してしまったと同時に、はえーそーゆーこと?!って驚きと感心が。読み終わりアドレナリンどばどばだったー。
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民族学SF!着眼点が面白い。
VR世界で生まれて死ぬ少数民族を描いた『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』から始まって、人口の大多数がバーチャルに逃げたアメリカを描く『アメリカン・ブッダ』で締める構成がすごくきれいだと思った。
個人的には物語を病気として排除する『検疫官』が一番面白かった。
生まれてから一切の物語を見出さずに生きるなんてことは不可能なのでは??それが可能なのは洗脳されてる状態なのでは??って深く突っ込むとめちゃくちゃ恐ろしい思想統制ディストピアだ……
『一八九七年:龍動幕の内』も、キャラ主体の文章が軽やかで楽しい。あとで『ヒト夜の永い夢』も読もう。 -
購入済み
面白い
ネットで見かけた「柴田勝家は才能の持ち腐れ、才能有り余ってる」って言葉に興味が湧いてこちらを購入。
ひとつひとつが長編になり得る題材なのに短編でまとめてしまっている。
これらの設定ひとつでどれほどのストーリーができるのだろう。
惜しみなくジャブジャブと注いだ短編集。 -
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歴史改変ものが好きなら、是非オススメしたい一冊。スチームパンクではないし、話の核となるガジェットも全然違うけど、分かり易く言うなれば、昭和初期の日本で『屍者の帝国』をやっている感じ。この時代にもっと詳しければ、史実との違いを踏まえた上で楽しめたんだろうなぁ、とは思うけれど、物語を追うだけでも十分楽しめた。
設定や舞台が漂わせる浪漫のみならず、ときおりコミカルな(一方で文章の堅実さをかなぐりすてることもない)描写が顔を覗かせるのも、読んでいて面白かったポイント。
一方で、SFとしてどうか、と言われると、完成した天皇機関はともかくとして、もともと組み上げるつもりだった、粘菌とパンチカードを組み合わせた仕組みというのが、果してそれで歯車と上手く組み合って動くのか、という点で今一つピンと来なかった。現行の粘菌コンピュータを知らないから、或いは上手く想像が及ばなかったというだけかも知れないけれど。
ガジェット的なものに対しては、そういう感想を抱いた一方で、作中で取り扱われる観念の解釈・アプローチに関しては、非常に好ましく思った。オカルト的な要素をブラックボックスで終わらせず、理論的な仮設を立てて説明していく様子は、非常にSFらしいアプローチであったし、以前の仮定を踏まえた上で、新しい解釈を示し、やがて結論へと導いて行く構成は、理路整然としていて、腑に落ちた。
非常に読みやすく、一方で平易になり過ぎず、昭和初期の残り香のようなものを味わえる。派手な剣劇などはないが、大いに楽しめる歴史小説だった。 -
Posted by ブクログ
文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。
以下、個別作品の感想。
◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化されている現代において、生身の人間がどのように戦闘行為に携わるか、戦争の正義を提案しているとまでは言わないが、現代のノールールな戦争より少しはましな状態を描いていると思う。
◎仮想の在処(伏見 完)
「ハーモニー」を彷彿とさせる物語。人間の意識とは、人格とは、存在意義とはなどを考えさせられる。伊藤計劃の作風に近い小説であり、彼の作品を読んでいるかのような感覚になった。
◎南十字星(柴田 勝家)
伊藤計劃っぽさはあまりないけれど、作品自体は面白い。少女との出合い、少女の死、仲間の死、自我の死、いろいろな死が平気でまわりに存在する中で生きている自分。意識がある自分、他人と同化した自分、自分ではない自分、意識と生命の存在を意識したところはやはり伊藤計劃っぽいのかな。
◎未明の晩餐(吉上 亮)
死刑囚に最後の食事を作る料理人の話。読んでいてどんどん引き込まれる。素直に面白い。哀しくもありハートウォーミングでもあり、見事な作品だと思う。
◎にんげんのくに Le Milieu Humain(仁木 稔)
ジャングルで生活する少数民族の話。部族に所属する“人間”と部族出身ではない異人がどのように生活するのかを描いている。普通に読んだだけでは、現実にある少数民族の普通の話のようにも読める。SFとして読むのは無理があると感じたのだが、他の人はどのような感想を持ったのだろうか。
◎ノット・ワンダフル・ワールズ(王城 夕紀)
生命の進化とはを問う物語。その定義を作品に語らせている。おそらく学術的な進化とは異なる解釈がなされていて、「へぇ~なるほど」と思わせる。「ハーモニー」を思い起こさせる作品である。
◎フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪(伴名 練)
実に面白い。「屍者の帝国」を思い出す。三原則についてはどこかで聞いたようなものもあるが、最初に出てきた原則を読んで瞠目した。確かに意識があるとかないとかはどのように判別するのだろうかと。それを疑問に思ってしまうと、自分自身が生きているのかどうかさえ疑ってしまう。この恐怖に震えてしまった。
◎怠惰の大罪(長谷 敏司)
人口知能(AI)が出てくるものの、それ以外でSFを感じさせる要素はない。ストーリーはキューバを舞台にした麻薬がらみの裏世界を描いたもの。ゴッドファーザーを思い出させる。長編作品の第一章が掲載されている。SF要素を楽しめるのは、第二章以降なのかもしれない。