柴田勝家のレビュー一覧
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ネタバレ昭和初期。千里眼研究で世を追われた福来友吉に誘われ、「昭和考幽学会」なる怪しい研究者の集まりに参加することになった博物学者・南方熊楠。かつて英国留学中に出会った親友の孫文が遺した「人の動きを計算する機械の〈設計図〉」と粘菌が結晶化した人工宝石の力によって、悲願である少女型アンドロイド〈天皇機関〉を完成させた熊楠たちは今上天皇にその姿をお披露目しようと画策するも、実は学会内部に別の目的を持った裏切り者が紛れ込んでいて……。粘菌AIを中心に据え、熊楠をはじめとして宮沢賢治や江戸川乱歩、北一輝に石原莞爾らの運命が絡まり合うSF伝奇小説。
破天荒な熊楠おじさんを主人公に、粘菌でできた人工知能という -
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色々なジャンルでマンガのようにキャラクター性の強い作品が増えてきているけど、これもなかなかだった。土佐弁で陰陽師で捜査官の主人公。だけど思考は割と常識的だから、同僚の捜査官たちのアクの強さがまあ目立つ、目立つ……。
カルト宗教マニアで、あらゆる宗教団体からブラックリストに入れられてるキャラなんて、自分は一生かかっても思いつかないだろうなあ。
この小説はいわゆる特殊設定のミステリです。“霊子”や"怨素”などといった人間の精神から発せられる原子など発見によって、霊現象や祟り、呪いが科学捜査にも使われるという設定。
だから主人公である陰陽師の御陵(みささぎ)も捜査官の一員で、警視庁にも心 -
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これほどまでに巻末の解説をありがたいと思った本はないのではなかろうか。
この作品がSF好きの人達にとって傑作とされているのだとしたら、自分にはSFを楽しむための素養が決定的に足りていないんだなと教えてくれたような一冊。SFを楽しむためには、社会構造に興味がないとダメなんじゃないだろうか。
作中でどんなことが起きて、どんな仕掛けがあって、ラストにどんなカタルシスが用意されているのか、を雰囲気で感じ取ることこそできたものの、文系育ちの自分には「なんとなく」でしか意味を捉えきれていない単語がそこかしこで飛び交っているので、それを全部理解できたらきっともっと楽しめるんだろうなぁ……と思いつつ、そこを楽 -
Posted by ブクログ
ネタバレ柴田先生の魅力はわちゃわちゃ感にあるのではないかと感じた。それは今作で言えば天皇機関の見せる夢のわちゃわちゃ感、二・二六事件のお祭り騒ぎにおけるわちゃわちゃ感、『ニルヤの島』終盤のわちゃわちゃ感。彼の仕掛けるSF的なギミックによりあらゆるキャラクターや世界が翻弄されていく、その様に「生」を感じる。SF的ギミックそれ自体よりも、それを人々がどう受け入れていくのかに真髄がある。
本作に関しては惜しいかな、と感じた。非常に魅力的でドッタンバッタンなエンターテイメントとして楽しくは読めたが、1本のSFとしてはまとまりきっていない印象を受ける。天皇機関、という踏み込んだものを作成したはいいが、そこまで -