柴田勝家のレビュー一覧

  • 伊藤計劃トリビュート

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    伊藤計劃氏が亡くなってから16年
    この“トリビュート”が出版されてから10年

    その間、
    大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
    理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
    SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
    現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
    『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。

    多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。

    最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響いた。
    まるでドン・ウインズロウ『犬の力』を読んでるようで、SF集であることを忘れた。AIの及ぼす「天国と地獄の境界線」が、ノワールにまで入り込むとは……。

    面白かった。

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    2025年05月02日
  • 岸辺露伴は嗤わない 短編小説集

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    漫画の方は六部で読むの止まってますが、岸辺露伴シリーズは漫画、小説共に読み続けています。
    今作も、良くも悪くも岸辺露伴って感じの作品でした。
    3つ目の話が私的には今作中で一番印象に残ったかな?
    地方の集落では本当にこんな力があったりして、と妄想してみたり。

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    2025年02月14日
  • アメリカン・ブッダ

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    タイトル買いジャケ買い!
    好きな話しはタイトルにもなってるアメリカンブッダ。
    オススメポイントは、なんといっても二方向からの面白さで、科学的分野からの面白さ、それは実際におこるかもしれないという不安と、実際にできるようになるかもしれないネット上の理想郷への期待感、哲学的分野からの面白さは、あの理想郷は本当に理想郷なのか?時間も苦しみもほぼない世界とは本当に幸せなのか?
    そんな、科学と哲学というちょっと距離がありそうだけれどもペアリング抜群の材料を同時に摂取できて、お腹いっぱい幸せな読後感でした。

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    2025年02月02日
  • カタリゴト 帝都宵闇伝奇譚

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    おもしろい!

    大正時代。
    口下手な平島元雪は華族の地位を捨て探偵に。
    憧れていた堀井男爵の死に関する真犯人を見つけることを望んでいる。
    しかし探偵としての仕事は、事件とは程遠い猫探し。
    そんな時、真鶸亭湖月と出会い、ファンになる。
    14.5歳に見える年少の浪花師は、惚れ惚れする語り口調で人々を魅了していた。

    この芸人の語りごととしての短い話が、一本の線となり繋がる。

    華族や財閥の歴史に興味が出ました。
    元雪と湖月と、その友人キャラ達も魅力的。

    シリーズ化してほしい。
    読みます!

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    2025年01月09日
  • 岸辺露伴は嗤わない 短編小説集

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    曰くのない人形と不見神事が面白かったです。特に不見神事は一番平和な話なんですけど、人間って怖いね系の話で好きです。実写化もしやすそうだし、いつか実写版も見てみたいです。余談ですが、読んでる時に頭の中の露伴が原作じゃなくて高橋一生氏だったんですよね。実写の影響力ってすごい。

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    2024年12月29日
  • 岸辺露伴は嗤わない 短編小説集

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    どの短辺も岸辺露伴らしさが現れていて、面白いかったです。
    個人的にオススメなのは3話目の『不見神事』ですね。人間の歪みと土地の理不尽さ、解決するしない事の、全てが岸辺露伴でした。

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    2024年12月21日
  • ヒト夜の永い夢

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    ネタバレ

    ――

     へー南方熊楠ってこんなひとだったのか。
     ……とはならんからな?


     一大エンタメであることは間違いなく、冒険小説であり伝奇小説であり、怪奇小説でもあり探偵小説でもありSF小説でもある。その上で哲学書でも思想書でもあり、そして或いは史書であるのかもしれない(最後のは嘘です)。
     まさになんでもござれ。それこそ、南方熊楠のような小説である。いやむしろこんな小説の主人公が務まるのは確かに、柳田國男をして「日本人の可能性の極限」と云わしめた熊楠しか居るまい。
     ある意味、小説の可能性の極限とも云える。
     南方熊楠、福来友吉、江戸川乱歩に孫文と、登場人物リストを読んでいくだけで解るいわゆる大法螺モノなのだけれど、盛りも盛ったり。昭和のスーパーロボット大戦とでも云おうか、それぞれのシナリオが交錯してなんとも壮大な冒険譚になっている不思議。その絡み合う縁が、作中の言葉を借りるならば因縁が、物語の軸でありまた、最大の敵であり味方でもある。

     作用に、研究とは物事に因縁をつけるようなもので。そして乱歩が味方についていることからも、創作もまた研究と似ているところは大いにあって。学問も小説もまったく孤独でありながら、その孤独はひとを繋ぐのだと思い知る。先に亡くなられた谷川俊太郎も、「孤独は前提としてある」というような言葉を残していたけれどまさにそうで、ではその孤独からにょんと生える、誰かに伸ばす腕は何なのか。
     まったく安直な台詞ではあるのだけれど、そしてそこに至るまで巫山戯倒しているのだけれどそれでも、熊楠がその腕の名を――「この世界にある、最も煩雑な糸」の名を口にしたとき。
     ほろりと、涙が溢れていたのでした。

     ☆4.4

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    2024年11月26日
  • カタリゴト 帝都宵闇伝奇譚

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    ネタバレ

    口下手な探偵が抱えていたちょっとした謎を、事件を、性別年齢不詳の浪曲師、湖月が「カタリゴト」として謎解きしていく物語。
    「カタリゴト」自体も二段仕立て、一見繋がりのない3つのお題から荒唐無稽な物語を語り、そのあと語り直してネタばらし=謎解き。
    その「カタリゴト」も真実と思っていたら、実際の事件との齟齬が後から見えてきて、まだ裏があることに驚かされるという。
    そして、最後の最後で、これまで語ってきたバラバラの「カタリゴト」が一つの大きな物語として集約されていく。
    この構成が最高によかった!
    一つの事件を何度も噛み締めて楽しめる、いくつもの解釈で楽しめるというか。
    湖月のキャラもいい。
    帯には「美少年」とあったけど、作中で性別って明かされていたっけ?
    少年でも少女でもおいしいキャラでした。
    平島が推したくなる気持ちも分かる。

    口下手だった探偵の平島も湖月と出会って急速に探偵として成長していくその過程も楽しめた。
    最後の事件ではその成長ぶりが遺憾無く発揮されてかっこよかった!
    ぜひまたこの二人での謎解き、読みたいですなあ。

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    2024年11月12日
  • カタリゴト 帝都宵闇伝奇譚

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    角川ホラー文庫から刊行されていますが、ホラーではないですね。大正期の帝都東京を舞台にしたミステリーで、主人公の自称探偵が集めた情報を、街頭で芸事をする謎の美少年がストーリーに仕立てて整理する。そんな流れで進みます。
    この美少年浪曲師である湖月くんのキャラがいい。蠱惑的な面を見せたかと思えば、街頭で行き倒れてたりもする。いい距離間を保ってるキャラです。シリーズ化して、将来的にアニメ化までいくといいなぁ。

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    2024年11月11日
  • カタリゴト 帝都宵闇伝奇譚

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     大正時代の帝都で探偵・平島と美しい年少浪曲師・湖月が、『ムカデ伯爵』『黄金幽霊の首』などの怪奇事件を僅かな手がかりと各地の伝承下敷きにした『カタリゴト』として講談調に仕立てて真相へ導く話と、推しとファンである二人の関係性も面白かった。

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    2024年10月31日
  • スーサイドホーム

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    面白かった〜!最終章でなるほど〜ッ!こうきたか!!となりながら読みました!全ての謎がキレイに回収されていて、これがホラー✕ミステリーか〜
    羽野アキラと神無リオンのコンビでの活躍がまた読みたい!台湾のあの話は初めて聞きました〜実際にあることなんだろうか…

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    2024年08月17日
  • ヒト夜の永い夢

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    実在の植物学者、南方熊楠を主人公に据えた、粘菌コンピュータ搭載の自動人形「天皇機関」をめぐるSF伝奇小説。

    江戸川乱歩に宮沢賢治、孫文など、名だたる歴史上の人物がこれでもかと登場しながらテンポよく描かれる物語はとにかく面白く、600P近い長編でありながら、全くだれることなく読み切ることができました。かなり荒唐無稽な大ホラ話ではあるんですが、実際にあった功績や事件をしっかりなぞっているので、ある意味リアリティも感じられるのが、作者の力量の高さを感じますね。

    SFとしては、粘菌コンピュータという核となる設定はちょっと腑に落ちないところもあったのですが、それはそれとして量子論、仏教論、哲学、さまざまな理論を紐解きながら、現実と夢が混ざり合うパラレルワールド的な世界観を紐解いていく過程が非常に具体的かつ納得感があり、何度も唸らせれました。

    著者の柴田勝家さん(武将ではない)の本はアメリカンブッダ以来2冊目、初の長編小説でしたが、すこぶる面白かったので他作品も手にとってみようと思います。

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    2024年07月31日
  • 走馬灯のセトリは考えておいて

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     VRやゲーム、語り口調など、「今風!」という印象のSF短編集。反面、歴史や生物論をモチーフにしたものも異常な説得力を持っていて、複数の分野に跨がる筆者の精通ぶりに舌を巻きました。ただぶっちゃけ、あまりに詳しすぎて「宗教性原虫」は全く理解できなかった……orz
     個人的なお気に入りは、人の生死と魂について考えさせられる表題作の他、「オンライン福男」と「絶滅の作法」の三作。が、「姫日記」で次々と主人公を襲う不条理ぶりには、なんか悔しいながら笑いを堪えられなかった……(笑)

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    2024年06月22日
  • アメリカン・ブッダ

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    柴田勝家…柴田勝家?!
    戦国武将の?となるけど、もちろんペンネーム。
    評判が良かったから読んだけど、凝ったSFだった。
    私は「鏡石異譚」が好き。
    未来の自分が時々「警告」をしに来てくれる少女。
    人生で出会うはずの事故を回避して成長し、大人になった時に今度は幼い自分に会える。
    遠野物語とSFを絡めるってアイデアが凄いし、首元のアザを見つけた時のゾッとする感じも最高!

    タイトルになった「アメリカンブッダ」も面白いけど、バーチャル世界から現実に戻った時に、世界的有名人のミラクルマンが主人公を「待っていたよ」と受け入れたのがよくわからなかった。

    あと、巻末の解説を有名声優の池澤春菜さんが書いていて驚いた。

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    2024年03月23日
  • アメリカン・ブッダ

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    柴田勝家、ずっと気になってたのがやっと読めた。がっつり民俗学の雰囲気。SFで擬似数学的科学的な発想の世界観のものは多いけど歴史社会的なアプローチで語るとこういう感じになるのか、と興味深かった。設定は全てが新鮮で、スー族のVR技術、邪義の壁、アメリカンブッダあたりが展開としても面白かった。

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    2024年02月11日
  • 走馬灯のセトリは考えておいて

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    秘仏の話は、自身の人生と研究が重なり異様な熱を帯びた研究者を第三者の視点から書く民族史のような文体が「ありそう」で面白かった。
    エンタメとしては走馬灯がいちばん面白かった。死後も残されたもののためにクローンを残す設定だけでなく現在のVブームを数世代前の文化として描くこともSFっぽい。

    (元)文化人類学生としての好奇心が刺激された。

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    2023年12月30日
  • 走馬灯のセトリは考えておいて

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    ネタバレ

    短篇集、ざっくり信仰が全体的なテーマかな。、

    推しは宗教、推し活は信仰、オタクがよく言うそれをSF要素も入れつつ考察した感じがして面白い。

    クライツマンの秘宝の、信仰は質量を持つ、普通に考えればエセ科学でオカルトに取り憑かれた思想って感じなんだけど、文章の"ちゃんとした"感じと、オタク強さに通じる信仰の持つエネルギーの莫大さを知ってる現代人の感覚としてはホラ話だけどどっかにこういう学者いるんじゃないかなって気もしてくる。

    論文、エッセイ、小説、色んなジャンルっぽい文章が詰まってて面白かったし、そのどれもが虚構と現実が入り混じって混乱する感じが面白い。自分の無知故にちょっと信じてしまいそうね。

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    2023年12月05日
  • アメリカン・ブッダ

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    表題作をはじめ6本の短編が収められている
    私の好みでは表題作であるアメリカン・ブッダが面白かった
    仏教の教えを訥々と語るミラクルマンとそれを仮想世界で聴く主人公の視点で描かれている
    仮想世界は現実世界と体感時間の速度が異なっており、ブッダの教えを聞きながら世界が一巡する
    現実で語るミラクルマンに仮想世界が追いついて入れ子の構造となる
    それにより現実と仮想の壁を曖昧にした幻想性を仄かに感じた

    私達の現実も今あるルールや常識に確固とした礎はない
    そんな当たり前を感じさせてくれた作品

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    2023年12月03日
  • ヒト夜の永い夢

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    昭和初期の日本を舞台にした歴史SF。思考するAI粘菌「天皇機関」を巡って、南方熊楠が革命主義者と対決する。江戸川乱歩やら北一輝やら孫文やら、歴史上の実在の人物が次々と登場してきて、とにかく展開が賑やかだ。
    タイトルどおり、現実なのか夢なのか、お祭り騒ぎのような展開に飲まれた。南方熊楠と北一輝の問答がおもしろい。

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    2023年10月18日
  • 走馬灯のセトリは考えておいて

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    ネタバレ

    表題作の『走馬灯のセトリは考えておいて』がとても面白かった。
    人が死んだ後にライフログをもとに自分の分身を残せるようになった未来の話。
    2023年時点においてすでに故人の生前のライフログやアーカイブを元に、あたかも亡くなった人が目の前にいるかのように再現できる技術が生まれていることから、そう遠くない未来に、終活に向けて自分のアーカイブを整理するという行為が当たり前になるのかなと思った。
    自然言語処理のAIの台頭により、故人の受け答えの癖を再現できるAIのような存在も現実味が増してきていると感じる。

    本書においても、技術の進化と共に死との向き合い方が変化してきていることの説明や、ライフログから試写を蘇らせることによる葛藤が描かれていて色々と考えさせられる内容だった。

    巻末の解説では、アイドルに対する「推し活」の心理と、宗教における「信仰」の類似性から本作品の構造を説明しており、作品を理解する上で非常に参考になった。

    “葬儀とは死者の人生に生者が意味付けをするための宗教的儀式であり、それ自体が他者を重み付けする「推し活」である”(解説より)

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    2023年08月11日