柴田勝家のレビュー一覧
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伊藤計劃氏が亡くなってから16年
この“トリビュート”が出版されてから10年
その間、
大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。
多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。
最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響いた。
まるでドン・ウインズロウ『犬の力』を読んでるようで、SF集であることを忘れた。AIの及ぼす「天国と地獄の境界線」が、ノワールにまで入り込むとは……。
面白かった。 -
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ネタバレ――
へー南方熊楠ってこんなひとだったのか。
……とはならんからな?
一大エンタメであることは間違いなく、冒険小説であり伝奇小説であり、怪奇小説でもあり探偵小説でもありSF小説でもある。その上で哲学書でも思想書でもあり、そして或いは史書であるのかもしれない(最後のは嘘です)。
まさになんでもござれ。それこそ、南方熊楠のような小説である。いやむしろこんな小説の主人公が務まるのは確かに、柳田國男をして「日本人の可能性の極限」と云わしめた熊楠しか居るまい。
ある意味、小説の可能性の極限とも云える。
南方熊楠、福来友吉、江戸川乱歩に孫文と、登場人物リストを読んでいくだけで解るいわゆる大法螺モノなのだけれど、盛りも盛ったり。昭和のスーパーロボット大戦とでも云おうか、それぞれのシナリオが交錯してなんとも壮大な冒険譚になっている不思議。その絡み合う縁が、作中の言葉を借りるならば因縁が、物語の軸でありまた、最大の敵であり味方でもある。
作用に、研究とは物事に因縁をつけるようなもので。そして乱歩が味方についていることからも、創作もまた研究と似ているところは大いにあって。学問も小説もまったく孤独でありながら、その孤独はひとを繋ぐのだと思い知る。先に亡くなられた谷川俊太郎も、「孤独は前提としてある」というような言葉を残していたけれどまさにそうで、ではその孤独からにょんと生える、誰かに伸ばす腕は何なのか。
まったく安直な台詞ではあるのだけれど、そしてそこに至るまで巫山戯倒しているのだけれどそれでも、熊楠がその腕の名を――「この世界にある、最も煩雑な糸」の名を口にしたとき。
ほろりと、涙が溢れていたのでした。
☆4.4 -
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ネタバレ口下手な探偵が抱えていたちょっとした謎を、事件を、性別年齢不詳の浪曲師、湖月が「カタリゴト」として謎解きしていく物語。
「カタリゴト」自体も二段仕立て、一見繋がりのない3つのお題から荒唐無稽な物語を語り、そのあと語り直してネタばらし=謎解き。
その「カタリゴト」も真実と思っていたら、実際の事件との齟齬が後から見えてきて、まだ裏があることに驚かされるという。
そして、最後の最後で、これまで語ってきたバラバラの「カタリゴト」が一つの大きな物語として集約されていく。
この構成が最高によかった!
一つの事件を何度も噛み締めて楽しめる、いくつもの解釈で楽しめるというか。
湖月のキャラもいい。
帯には「美少年」とあったけど、作中で性別って明かされていたっけ?
少年でも少女でもおいしいキャラでした。
平島が推したくなる気持ちも分かる。
口下手だった探偵の平島も湖月と出会って急速に探偵として成長していくその過程も楽しめた。
最後の事件ではその成長ぶりが遺憾無く発揮されてかっこよかった!
ぜひまたこの二人での謎解き、読みたいですなあ。 -
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実在の植物学者、南方熊楠を主人公に据えた、粘菌コンピュータ搭載の自動人形「天皇機関」をめぐるSF伝奇小説。
江戸川乱歩に宮沢賢治、孫文など、名だたる歴史上の人物がこれでもかと登場しながらテンポよく描かれる物語はとにかく面白く、600P近い長編でありながら、全くだれることなく読み切ることができました。かなり荒唐無稽な大ホラ話ではあるんですが、実際にあった功績や事件をしっかりなぞっているので、ある意味リアリティも感じられるのが、作者の力量の高さを感じますね。
SFとしては、粘菌コンピュータという核となる設定はちょっと腑に落ちないところもあったのですが、それはそれとして量子論、仏教論、哲学、さまざまな理論を紐解きながら、現実と夢が混ざり合うパラレルワールド的な世界観を紐解いていく過程が非常に具体的かつ納得感があり、何度も唸らせれました。
著者の柴田勝家さん(武将ではない)の本はアメリカンブッダ以来2冊目、初の長編小説でしたが、すこぶる面白かったので他作品も手にとってみようと思います。 -
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柴田勝家…柴田勝家?!
戦国武将の?となるけど、もちろんペンネーム。
評判が良かったから読んだけど、凝ったSFだった。
私は「鏡石異譚」が好き。
未来の自分が時々「警告」をしに来てくれる少女。
人生で出会うはずの事故を回避して成長し、大人になった時に今度は幼い自分に会える。
遠野物語とSFを絡めるってアイデアが凄いし、首元のアザを見つけた時のゾッとする感じも最高!
タイトルになった「アメリカンブッダ」も面白いけど、バーチャル世界から現実に戻った時に、世界的有名人のミラクルマンが主人公を「待っていたよ」と受け入れたのがよくわからなかった。
あと、巻末の解説を有名声優の池澤春菜さんが書いていて驚いた。 -
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ネタバレ短篇集、ざっくり信仰が全体的なテーマかな。、
推しは宗教、推し活は信仰、オタクがよく言うそれをSF要素も入れつつ考察した感じがして面白い。
クライツマンの秘宝の、信仰は質量を持つ、普通に考えればエセ科学でオカルトに取り憑かれた思想って感じなんだけど、文章の"ちゃんとした"感じと、オタク強さに通じる信仰の持つエネルギーの莫大さを知ってる現代人の感覚としてはホラ話だけどどっかにこういう学者いるんじゃないかなって気もしてくる。
論文、エッセイ、小説、色んなジャンルっぽい文章が詰まってて面白かったし、そのどれもが虚構と現実が入り混じって混乱する感じが面白い。自分の無知故にちょっと信じてしまいそうね。
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Posted by ブクログ
ネタバレ表題作の『走馬灯のセトリは考えておいて』がとても面白かった。
人が死んだ後にライフログをもとに自分の分身を残せるようになった未来の話。
2023年時点においてすでに故人の生前のライフログやアーカイブを元に、あたかも亡くなった人が目の前にいるかのように再現できる技術が生まれていることから、そう遠くない未来に、終活に向けて自分のアーカイブを整理するという行為が当たり前になるのかなと思った。
自然言語処理のAIの台頭により、故人の受け答えの癖を再現できるAIのような存在も現実味が増してきていると感じる。
本書においても、技術の進化と共に死との向き合い方が変化してきていることの説明や、ライフログから試写を蘇らせることによる葛藤が描かれていて色々と考えさせられる内容だった。
巻末の解説では、アイドルに対する「推し活」の心理と、宗教における「信仰」の類似性から本作品の構造を説明しており、作品を理解する上で非常に参考になった。
“葬儀とは死者の人生に生者が意味付けをするための宗教的儀式であり、それ自体が他者を重み付けする「推し活」である”(解説より)