【感想・ネタバレ】ヒト夜の永い夢のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年10月09日

本当にすごい本。鬼滅の刃っぽいけど、大正に実際にあったんじゃないかという気がしてくるほど描写が優れている。

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Posted by ブクログ 2020年03月10日

 歴史改変ものが好きなら、是非オススメしたい一冊。スチームパンクではないし、話の核となるガジェットも全然違うけど、分かり易く言うなれば、昭和初期の日本で『屍者の帝国』をやっている感じ。この時代にもっと詳しければ、史実との違いを踏まえた上で楽しめたんだろうなぁ、とは思うけれど、物語を追うだけでも十分楽...続きを読むしめた。
 設定や舞台が漂わせる浪漫のみならず、ときおりコミカルな(一方で文章の堅実さをかなぐりすてることもない)描写が顔を覗かせるのも、読んでいて面白かったポイント。
 一方で、SFとしてどうか、と言われると、完成した天皇機関はともかくとして、もともと組み上げるつもりだった、粘菌とパンチカードを組み合わせた仕組みというのが、果してそれで歯車と上手く組み合って動くのか、という点で今一つピンと来なかった。現行の粘菌コンピュータを知らないから、或いは上手く想像が及ばなかったというだけかも知れないけれど。
 ガジェット的なものに対しては、そういう感想を抱いた一方で、作中で取り扱われる観念の解釈・アプローチに関しては、非常に好ましく思った。オカルト的な要素をブラックボックスで終わらせず、理論的な仮設を立てて説明していく様子は、非常にSFらしいアプローチであったし、以前の仮定を踏まえた上で、新しい解釈を示し、やがて結論へと導いて行く構成は、理路整然としていて、腑に落ちた。
 非常に読みやすく、一方で平易になり過ぎず、昭和初期の残り香のようなものを味わえる。派手な剣劇などはないが、大いに楽しめる歴史小説だった。

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Posted by ブクログ 2019年05月23日

昭和初期の人物や事件をなぞりつつ粘菌コンピュータが完成したことで大事件に巻き込まれていきます。飄々とした描写と登場人物たちが動き回る様子は読んでいて気持ちの良いものでした。

そして粘菌です。粘菌好きなので粘菌がどうコンピュータになるのかなどの描写が最高です。粘菌コンピュータを通して人を人としている...続きを読むのは何かを考察していくのも良いですね。

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Posted by ブクログ 2019年05月06日

昭和初期、南方熊楠を中心として紡がれる壮大な因縁曼荼羅。

熊楠、乱歩を初めとする実在人物を、現実のエピソードを基に魅力的なキャラクターとして描く。
かつ、昭和天皇即位〜2・26事件の激動の日本を舞台とした血湧くSF展開。
夢久、PKディック、大槻ケンヂ、エヴァに通ずる奇想。

新元号1冊目の読書と...続きを読むして申し分ない、大々満足の読書体験だった。

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Posted by ブクログ 2023年10月18日

昭和初期の日本を舞台にした歴史SF。思考するAI粘菌「天皇機関」を巡って、南方熊楠が革命主義者と対決する。江戸川乱歩やら北一輝やら孫文やら、歴史上の実在の人物が次々と登場してきて、とにかく展開が賑やかだ。
タイトルどおり、現実なのか夢なのか、お祭り騒ぎのような展開に飲まれた。南方熊楠と北一輝の問答が...続きを読むおもしろい。

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Posted by ブクログ 2023年04月18日

先日の柴田勝家の短編が思った以上に良かったので、長編も手に取ってみる。柴田勝家「ヒト夜の永い夢」。
明治から昭和にかけて活躍した、実在の博物学者南方熊楠(みなかたくまぐす)を主人公にした歴史改変SF。
希望の動きをパンチカードとして表し、それを手動で読み込ませて機会を動かす人形が開発されたのに対し、...続きを読むパンチカードの代わりに彼が研究していた粘菌をパンチカードに模して構成し人形に搭載。
すると粘菌がAIのようになりただのからくり人形が意思をもった自動人形になってしまったという私好みの実にベタなSF的な展開から、国家や天皇まで巻き込んだ大騒動へ。
ひいては史実として実在する二・二六事件へと虚実がマージされていく。
600ページくらいあり、途中だいぶハードな意識論のように難解な部分も展開されるのだけれども、それを難しくて面倒と思わせない語り口は実に見事。
この作家は、人間の魅力を描き出すことがとても上手。
なので小説を読む上でまず欠かせない、登場人物への感情移入が容易にできるので、物語が長くても苦にならない。
別に自分は小説を書くわけではないが、ものを語る手段としてすごく勉強になったなあと、本筋はもちろん、それ以外の部分でも感心することが多い作品でした。

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Posted by ブクログ 2021年12月29日

1920年代~30年代を舞台にしたお話で、実在の人物である南方熊楠を主人公としています。人間の動作(右手を上げる、左足を上げるのような)を膨大な数粘菌に覚え込ませ、それを組み込んで自動人形を作ろうというお話。SFぽくもあり、和風ファンタジーぽくもあり。
結構ハチャメチャなお話です。幻想小説ぽくもあり...続きを読む、読む人は選ぶかもしれません。実在の人物が多数登場するので、歴史に詳しいと楽しいかも。

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Posted by ブクログ 2020年10月09日

南方熊楠にはじまり、福来友吉、江戸川乱歩、宮沢賢治など有名な実在の人物たちが天皇機関をめぐって大暴れするSF。伝記ロマン。

分厚い割に、ドタバタとした感じというかコメディ調な部分が多いのですぐ読めた。
脱糞だ嘔吐だがやたら多い。

ただ、SFがそんなに得意ではないので夢の話とか天皇機関の話はなかな...続きを読むか頭に入ってこなかった。
特に最後のほうの天皇機関が延々と一人語りするとこはきつかったかな。
決戦シーンも文章が若干読みづらくて盛り上がりにくい気がした。
あとは女性の扱いはひどいというか…一昔前の捉え方かなと。
舞台が昭和だからそうしてるというより作者の考えかなぁという感じもしたけど…実際どうなのかはわからない。

第一部のほうが読みやすいし勢いがあって好きだけど、第二部になると私の好きな乱歩が登場するのでそれはそれでやっぱり楽しかった。

平岡夏子ってだれだろうとおもってて読み終わってから知ったらなんとあの人の祖母…じゃあの賢そうなあの子が…。

ラストのしめかたはすごく好き。

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Posted by ブクログ 2020年08月15日

南方熊楠が主人公。
昭和初期の混沌とした時代の中で、粘菌による人造人間の天皇機関を作るがテロ集団に奪われてしまう。
學天則とかが出てくると帝都物語を思い出すが、ストーリーはこちらの方がより幻想的。オドロオドロしい感じとかがホラーっぽくて良い。ただ台詞回しが読み難いところがあった。
実際の歴史との違い...続きを読むがわかればもっと面白いと思った。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年03月19日

え、戦国武将の名前のSF作家!? と著者の「映え」には数年前より惹かれていたが、要はオタクを突き詰めた結果なんだろうと、飛びつくことはなかった。
が、南方熊楠の歴史改変SFと来れば手を伸ばさざるを得ない。
真っ先に連想したのは荒俣宏「帝都物語」だが、実は小説も映画も未見で、藤原カムイや高橋葉介の漫画...続きを読むで読んだ・見た気になっていたのだ、と自分にびっくり。
また連想したのは、円城塔/伊藤計劃「屍者の帝国」、山田風太郎「魔界転生」映画化は深作欣二。

まずは南方熊楠が視点人物というのはほぼ一貫しているが、地の文に「私は」とか「俺は」とか書かれず、最低限「こちらは」とか。
敢えて語りのカメラ位置が少し浮いている、というか。
これにより、一人称なのに三人称に近づける、という独特の文体。
こんな手法もあったのだなと、まずは文体礼讃。

そして全体を通して(ネットで拾った文言だが、他に表現のしようがない)「昭和やべえやつらアベンジャーズ」。
稚気と研究心が駄々洩れの親父達(主に関西の。中央から締め出された)の祭り。
湯浅正明や今敏のカーニバル感覚・ドタバタ感覚に似ているので、「文豪ストレイドッグス」の余波を受けてアニメ化してくれないかなーと夢想。
個人的には、宮沢賢治が深層、江戸川乱歩が表層、というあたり、作者わかっているなーと鼻息を荒くしてしまう。
だいたい、登場する人物は皆、それぞれに研究者がついたり、それぞれで一冊どころか数冊研究書が成り立つくらいの、人物たち。贅沢な小説だ。

全体が3部に分かれており、1部における黒頭巾で顔を隠した匿名性が、徐々にほどかれていくという構成も、巧み。

結局はエヴァ的な人類補完計画っぽい話に落ち着くのだが、決して物足りないという感じはない。
乱歩の「夜の夢こそまこと」も例に漏れず、時間・空間・古今・東西を問わず、想像力の限界なのだろう、現実と夢というのは。

ちなみにタカハシヒロユキミツメのカバーイラストは、かなりよい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年08月23日

南方熊楠、昭和2年―
粘菌コンピュータ搭載の自動人形「天皇機関」を発明。

上は帯の文句であるが、もうこの時点で最高である。

中身はというと戦前の名士オールスターが、ある陰謀と闘うドタバタSFと言う感じ。
あらゆる夢が入り交じる東京決戦のシーンは映画『パプリカ』を思い出すような凄まじいもの。

...続きを読むの中のあらゆる要素が一致したなら...なんて誰もが考えたことありそうな発想から夢・千里眼、粘菌コンピュータまで飛び出てくるいいSFでもあったし、
なんやかんやで最後キレイに締まって読後感もスッキリ。

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Posted by ブクログ 2019年05月26日

 時は昭和2年。粘菌学者の南方熊楠は昭和孝幽学会という謎の団体に勧誘される。そこは、本流を外れた亜流の学者集団であった。自動人形"天皇機関"を作り上げ、天皇に献上することで自らの存在を知らしめようとする彼ら。南方は天皇機関の頭脳となる粘菌コンピューターを完成させるが、そこに革命家...続きを読むの陰謀が介入し事態は混沌を極めていく。

 もしも昭和初期に粘菌によるAIが完成したら、という歴史改編SF。登場人物表を見れば江戸川乱歩や宮沢賢治など有名人の名前が並び、それを見ただけでもワクワクする。

 また、著者は本書の内容について「きらら4コマ」に例えている。確かに宿場に集まって騒がしくも天皇機関を作り上げようとする様は、謎の文化部が舞台の日常系と言っても過言ではないかもしれない。(ただし、性別、年齢、鯨飲、吐瀉物には目をつむることにする。)

 昭和初期の怪しいやつらオールスターゲームに並行して展開される現実の認識に関するSF的考察。いろいろ盛りだくさんで大満足の一冊です。

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Posted by ブクログ 2021年11月18日

作中、南方熊楠は、世界は「物」と「心」が掛け合わさって「事」が生じると論じています。ウランは自然にも崩壊していきますが、連鎖反応は人の心が作用しないと発生しないですよね。いつかは心が物理でフォローされるようになるんでしょうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年11月03日

昭和初期。千里眼研究で世を追われた福来友吉に誘われ、「昭和考幽学会」なる怪しい研究者の集まりに参加することになった博物学者・南方熊楠。かつて英国留学中に出会った親友の孫文が遺した「人の動きを計算する機械の〈設計図〉」と粘菌が結晶化した人工宝石の力によって、悲願である少女型アンドロイド〈天皇機関〉を完...続きを読む成させた熊楠たちは今上天皇にその姿をお披露目しようと画策するも、実は学会内部に別の目的を持った裏切り者が紛れ込んでいて……。粘菌AIを中心に据え、熊楠をはじめとして宮沢賢治や江戸川乱歩、北一輝に石原莞爾らの運命が絡まり合うSF伝奇小説。


破天荒な熊楠おじさんを主人公に、粘菌でできた人工知能というハッタリと天皇機関説を接続させるという設定はめちゃくちゃで面白いのだが、第一部の終わりまでなかなかノレず。福来や西村ら考幽学会のメンツがキャラとして非常にデフォルメされていて、これ自体は伝奇エンタメらしさを盛り上げる狙いがあるとわかるけど会話が冗長に感じた。でも賢治は他で見たことのないちょっと気味が悪いがセクシーな人物造形で、賢治の石=賢者の石というダジャレも含めてこのパートは面白かった。
第一部の後半で北一輝が姿を現し、第二部に入って乱歩も参戦してくるとデフォルメ化が面白味に転じて一気にノレるように。悪役とはいえ、北一輝をこんなにかっこよく書いていいのかなぁ(笑)。
でも一番笑ったのは平岡なっちゃんの大活躍。乱歩と熊楠のバディが追う黒蜥蜴役に平岡公威のおばあちゃんを抜擢する発想、何? 後半で開陳される夢と並行世界の関係性が『豊饒の海』での阿頼耶識論に近づいていくので平岡家を登場させた意図はわかったけども、平岡なつ、この世で最もオートジャイロに乗るわけない人間(笑)。だが、熊楠が本当に阿頼耶識に興味を持っていたことは志村真幸『熊楠と幽霊』で読んだばかりだったので、この接続は唸った。
二・二六事件当日の帝都東京へ雪崩れ込むクライマックスは、古今の〈東京幻想[ファンタジー]〉の系譜に連なるカオスさで楽しかった。それにしてもみんなゴジラが好きだねえ。
エンタメ小説に説明を求めるのは筋違いかもしれないけど、天皇に進言する人型アンドロイドを作るのが中心軸なのに、天皇の定義が作中で語られないので何をもって〈天皇機関〉を天皇と並ぶ存在とすることができるのかが曖昧なのは気になった。また、女性天皇をめぐる議論が現実としてあるなかで、〈天皇機関〉という機械になった途端に永遠の少女姿を押し付けられ、インセスト願望と重ね合わされる構造もグロテスク。まぁ考幽学会の会員たちはアウトサイダーとして描かれているので、多少気持ち悪く感じられるのは織り込み済みなのだろう。そもそも死体をロボのガワに使うなって話だしな…(これが腐らない理屈もあんまり説明されてなかったな)。
個人的に好みの素材がこれでもかと揃っているだけに、ハッタリに乗り切れない惜しさを感じる小説だった。『アメリカン・ブッダ』収録の前日譚のほうが負の引っ掛かりは少なかったけど、粘菌成分が少ない。スチームパンクならぬ〈粘菌パンク〉の世界を動き回る熊楠自体はめちゃ良かった。2冊読んでみていつか完成度の高いドンピシャの作品を書いてくれそうな作家だという確信は持ったので、柴田勝家のことは追っていきたい。

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Posted by ブクログ 2020年05月04日

SF物は久しぶりに読んだ。南方熊楠が主人公。1860年〜1910年位までの実在の有名人がわんさか登場。2.26事件も絡み、最終対決の北一輝と南方熊楠との闘いは…という話。死体を使った生き人形を製作するまでには、たくさんの人が絡む。最終目的は違っても意思を持つ人形製作の情熱は本物。宮沢賢治、江戸川乱歩...続きを読むも登場。昭和初期に詳しい人ならより楽しめそう。

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Posted by ブクログ 2019年11月20日

予想外にこれも波動関数SFで、仏教の”因縁”で波動関数が収束するというストーリー。 宮沢賢治等、実在の人物が作中に出てくるのが面白い。しかしながら、登場人物のほとんどが男性で、その男性たちが少女の死体からオートマタを作るという流れにはアリガチ感が否めないのと、その罪に無自覚なのがまたアリガチ。なんで...続きを読むオートマタって大体少女の形態なんですかね…

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年07月14日

主人公が南方熊楠の帝都物語という印象。機関の出てくるシーンや幻想現実入り乱れる辺りは動画や映像で見たいなと思ったけれど、嘔吐脱糞シーンも多いのでやっぱり嫌だな。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年05月27日

柴田先生の魅力はわちゃわちゃ感にあるのではないかと感じた。それは今作で言えば天皇機関の見せる夢のわちゃわちゃ感、二・二六事件のお祭り騒ぎにおけるわちゃわちゃ感、『ニルヤの島』終盤のわちゃわちゃ感。彼の仕掛けるSF的なギミックによりあらゆるキャラクターや世界が翻弄されていく、その様に「生」を感じる。S...続きを読むF的ギミックそれ自体よりも、それを人々がどう受け入れていくのかに真髄がある。

本作に関しては惜しいかな、と感じた。非常に魅力的でドッタンバッタンなエンターテイメントとして楽しくは読めたが、1本のSFとしてはまとまりきっていない印象を受ける。天皇機関、という踏み込んだものを作成したはいいが、そこまで深くこの国の天皇制というものの在り方に切り込めたわけではなかった。あるべきは夢の世界と現実の対立ではなく、全能の機械人形を天皇に据えるべきなのか、そのときこの国の在り方はどう変わるのか、という議論だったのではなかろうか。もっとも、ただの粘菌でしかなかったはずの「少女」は果たして何を望んだのか、という命題も、それはそれで面白かったのは確かだが。

昭和伝奇ものとしても、比べるものではないとはわかってはいるが、似た構成を取る『屍者の帝国』がアフガンでワトソンとカラマーゾフを絡めるような納得感のある面白さがあったのに対し、本作はなぜその人物がその時期にそこにいたのか、という点がおざなりに感じることがあった。

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Posted by ブクログ 2019年05月17日

今様「帝都物語」、あるいは、「學天則は粘菌エンジンで夢を見るか」、か…

SFだと思って読み始めると、なんだ落語か、と思っていると、お約束の量子論SFにシフトし、と、まぁこれも今様か。
(「死体人形」の時点でリアリティを失っているのだが、パンクな夢ならなんでもありなのかね…)

「チョウたちの時間」...続きを読むや「宝石泥棒」に感激していた昔なら狂喜したかもしれないけど、今さらこれ読んでもなぁ…

結論:
 荒俣宏+奥泉光 < 柴田勝家、とはならず、残念。

(小さん師匠は登場しなかった、これまた残念)

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