松浦寿輝のレビュー一覧

  • 香港陥落

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    中国人、イギリス人、日本人の目線で書いた第二次大戦前後の小説だが、個人的には香港で生まれ育った香港人の視点も加えて欲しかった。まあ、小説だし、作者が日本人だから仕方ないとしても、香港の現状を考えると、香港人目線で、祖国とは何かというテーマがあれば、なお面白いと感じた。

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    2023年07月07日
  • 人外

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    カワウソのような人外が、人間以上に意識を持って終末の世界を横断して行く。

    何とも不思議で美しくて難しい本。
    小説というより、詩を読んでる感じだった。

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    2023年06月23日
  • 香港陥落

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    何度か旅行した香港を思い浮かべながら読み進めた。日中戦争時の香港、戦後の繁栄を始める香港、また、現在のイギリスから中国への返還後の香港、さらに返還5 25年を経て、中国共産党の圧倒的な強圧的な支配が進み、多くのイギリス人、中国人が脱出を図る香港、サイド、A、サイドBに続き、細動しー、サイドディーと物語は続くのだろう。香港を旅行する時、自分の人生の過去を振り返るのか、先の短い将来を見据えるのか、シェイクスピアの様々な物語の中で、私にとっても香港はいろいろな思いを感じさせるところだ。

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    2023年03月11日
  • 男性作家が選ぶ太宰治

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    中村文則さんのエッセイを最近読んだので、その繋がりで読みました。

    太宰治の人となりについてはほとんど何も知らないので、読む前の勝手なイメージでは「気難しく人嫌い」な人かと思っていましたが、作品を読むと「ユーモアの感覚もあって、実際に話せばあんがい話好きな人だったんじゃないか」という印象を受けました。

    個人的に良かったのは富嶽百景の一場面で、天下茶屋の2階に寄宿している主人公が店の人間とも親しくなってきた頃、店の若い女性店員が1人で客の相手をしている時に、わざわざ1階に降りて隅でお茶を飲みながら遠巻きに見守ってあげているところです。

    そんなにあからさまな優しさを出す感じの主人公じゃないんで

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    2022年10月02日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    短編小説。
    中には情景がぼんやりしたまま終幕になったものもあるが、大半は程よく心地良い作品。
    日本には暦のほかにこんなにも豊かな四季の表現があると温かさも得た。

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    2020年02月09日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    12名の著名な作家の短編が72候の解説と一緒に読める、ある意味で贅沢な本だ.重松清の鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)は父親としての最後の旅行で息子の翔太を見つめる親心がうまく描写されている.筒井康隆の蒙霧升降(ふかききりまとう)は戦後の風物詩を散りばめた彼独特の文章でしっかり意見を述べているのが良い.堀江敏幸の熊蟄穴(くまあなにこもる)は菱山の取材活動のなかで村の古老たちとの奇妙な会話が面白かった.

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    2019年12月08日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    物語ではなく、読書そのものと、日本の繊細な四季の移ろいを味わう一冊。初めて読む作家さんもいて楽しかった。

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    2019年12月05日
  • 人外

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    おもしろっ。
    カワウソみたいな猫みたいな人外が
    ディストピア的な世界を歩くキャッチーさと
    人外の意識「わたしたち」と過去と未来と偶然と必然をらせんに例えるよくわかんなさが程よいバランス。
    表紙もすてき。

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    2019年06月24日
  • 名誉と恍惚

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    ネタバレ

    松浦寿輝「名誉と恍惚」(新潮社)は、2016年、話題をさらった作品だが、読み終えて考え込んでしまった。小説を映画化する話はよくある。では、その逆は、映画のように小説を書くということに込められた意味は何だろう、というのがこの長い長い小説を読みながら浮かんできた問いだった。

    始まりは1937年、事変直後の上海共同租界。小雨の外白渡橋(ガーデン・ブリッジ)を紺色の背広を着た一人の男が渡っていく。彼がポケットから取り出した折り畳みナイフの刃がきらりと光る。検問所で誰何された男は「工部局警察部芹沢一郎であります。」と日本語で答える。

    男はビルの入り口で待っていた軍人に促され、「百老匯大廈(ブロードウ

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    2019年01月29日
  • 名誉と恍惚

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    すごい熱量をページ数からも内容からも感じた。カッコいい。
    あぁ、そっちへ行ってはダメだよ、と思うけど行かずにはいられないのでしょうね。最後のビリヤードのシーン、震えたわ。

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    2018年11月14日
  • 名誉と恍惚

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    ネタバレ

    日中戦争時、上海で工部局に属する警官芹沢。陸軍参謀の嘉山に青幇の蕭と面会したいと頼まれるが、そこから芹沢の運命は動き出す…760ページの超大作。戦争について、人種について、軍について、テーマがいくつかある。日本人と朝鮮人の子供であることの芹沢の苦悩、日本に捨てられたことの苦悩、埠頭での恍惚のシーン、よく描かれている。長いが飽きさせず(いや、しかし長かったけれど)、充分本の中の世界に、芹沢が生きてきた世界に浸れました。

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    2018年04月25日
  • 名誉と恍惚

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    戸籍には記載されない出自として日本の母と朝鮮の父を持ち、日中戦争初期の上海で日本の支那駐屯地と一線を画す上海共同租界の警察官という職業を持つ主人公が、日本が戦争という形で外の世界と軋轢を起こしながら不可逆な道を進んで行く時代に、そのアイデンティティにより不可避な運命に巻き込まれて行く濃厚な日々の物語。いや不可避と言うより、衝動的にプロアクティブに運命に飛び込んで行く物語なのかもしれません。その行動のドライバーが「名誉と恍惚」、書名になっているキーワードです。徹底的に主人公のボーダー性は重ねられていて、性愛についても男女それぞれに向けられているし、芹沢という日本人の名前から沈という中国人の名前に

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    2018年03月24日
  • 男性作家が選ぶ太宰治

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    女性作家が選んだものとはまた違う感覚の作品も多く、未読作品が多かったのでとても楽しめた。餐応夫人がすき。この作家さんはこういう作品を選ぶんだなぁ…って部分でも楽しめてなんだかお得。

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    2018年03月16日
  • あやめ 鰈 ひかがみ

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    「あやめ」の始まりかたが好きだと思う。事故で死んだ木原が立ちあがり死んだことを分かりながらずれた記憶の中を歩いていくところ。隣り合わせの記憶の世界では死者が生者のように動いている。「鰈」は「あやめ」にも出てきた土岐が死者の地下鉄に載って地獄の世界に足を踏み入れていくまでが書いてあった。これはちょっと微妙。明らかな社会的強者と弱者の色分けが苦手なんだと思う。弱者の気持ちを上から書いてあるように読めてしまうのが苦手。性的な弱者も。今後の自分の課題でもあるかも。逃げてばかりじゃダメだ。書けないならせめて読めないとダメだと分かっているから。「ひかがみ」は良かった。真崎が死者を見送って妹を獲る。この妹タ

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    2017年04月26日
  • あやめ 鰈 ひかがみ

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    ネタバレ

     現実と幻想(?)のはざまを漂う男3人のそれぞれの話が、あとがきにもあるようにまるで輪のようでした。
     生きていることと死んでいることは、近いというより、少し重なっているのかなという気がしました。線を引くようにくっきり分かれるものじゃなく、生きてもいるし、死んでもいるし、そんな感じがしました。

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    2013年06月14日
  • あやめ 鰈 ひかがみ

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    ネタバレ

    社会の底辺で幽明の境を彷徨う男達が落ちてゆく失墜の中に呑み込まれながらも、幸福を見出してゆく過程を描いている。虚実が定かでない幻想世界に今回もどっぷりと浸らせてもらった。花腐しや幽に比べると幾分弱いか。

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    2012年07月16日
  • あやめ 鰈 ひかがみ

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    三本の短編からなる連作小説。
    主人公は多少の違いはあれ生と死の狭間の世界にいる。
    「あやめ」は生と死の間に生えているとされる花で、主人公の旧友がママをするスナックの名前でもある。主人公は交通事故にあって死んだはずの男だ。
    「鰈」は泥酔して記憶があいまいになりいつ買ったかわからない魚がクーラーボックスに入っているという、これも生と死のモチーフとして描かれている。
    「ひかがみ」は膝の裏側のくぼみのことだ。いつ死んだのか、いや元々いたのかもわからない妹の布団からのぞくひかがみは、生(性でもある)のモチーフである。
    全編通して時間の知覚をあいまいにすることで、都会の隅で時間が濁っていく描写のその手管が

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    2012年04月30日
  • わたしが行ったさびしい町

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    タイトルどおり、筆者が旅行や出張で訪れた国内外のふつうでさびしい町について語られてる。
    旅行本ってガイドブックだけじゃなかった!

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    2025年10月12日
  • BB/PP

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    「BB / PP」(松浦寿輝)を読んだ。

    短篇集。

    表題作の「BB / PP」はかなりグロテスクで、それは私に映画「エクス・マキナ」(監督 : アレックス・ガーランド)を思い出させる。

    それ以外はどれもモノクロームの写真を眺めているような静けさを纏い、あるいは色褪せた古い写真を眺めているようなもの悲しさを纏い、読んでいる途中にふと意識が何処か別のところ(かつて自分が通り抜けてきた分かれ道であったり、わずかの間住んだ外国の路地裏であったり)へさまよう。

    それほど陰鬱なストーリーではないので眉間に皺は寄らない。(表題作は別!)

    なかでも「四人目の男」はけっこうスリリングで良いね。

    最後

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    2023年10月23日
  • 香港陥落

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    香港、戦前、日本人中国人イギリス人、3人な男の話。
    中国に取り込まれ前に行けて良かった。  
    確かに仕事で何回も行ったが、石垣との旅が思い出された。

    日本人とイギリス女のその後など、日本人のその後がないのは致命的な欠陥、と思い直し 四つ星から下げた

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    2023年06月05日