あらすじ
泡粒のように浮かんできては消えてゆく旅先の記憶。ペスカーラ、名瀬、シャトー=シノン、台南、トラステヴェレ、コネマラ、タクナ、長春、中軽井沢……。日常を離れた旅の途上で、人は凝り固まってしまっていた観念や思い込みを脱ぎ捨て、心も躯も身軽になる。こんな時代だからこそ読みたい、活字で旅する極上の20篇。
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Posted by ブクログ
村上春樹ライブラリー階段の本棚にあったのをパラパラめくり、ぜひ読もうと思った一冊。
名著『名誉と恍惚』の作者による、紀行文…なのかな。
旅の本が好きなのだが、この本は単なる町の風景や出来事の描写だけでなく、様々な思索やよしなしごと(と本人は仰るだろう)が織り交ぜられた文章が魅力である。
一番行ってみたいと思ったのは新京=現・長春であるが、そんな感想を持つべき本ではないような気もする。
「吉田健一にとって余生とは、何かが終わった後の時間である以上に、むしろ何かが始まる時間のことだった」
「『余生があってそこに文学の境地が開け、人間にいつから文学の仕事ができるかはその余生がいつから始まるかに掛かっている』」
というような言葉と引用、
そして早世した私小説作家阿部昭への思いなどが印象に残った。
Posted by ブクログ
おそらく、旅に関するエッセイとしては極上の部類に入るのではないか。その旅の細部はほとんど忘れてしまっても、その中でくっきりと記憶に留まっている事柄の記述は、読者があたかも追体験するような錯覚を起こさせる。
Posted by ブクログ
講演会で江國香織さんがオススメしていた旅エッセイ。旅エッセイというと旅行先で起きた事件を面白おかしく綴っているものが多いイメージだけどこれは旅行先で筆者が味わったひたすら寂しい気持ちが綴ってある。読んでると「何やってるんだ…」ってなんかいたたまれない気持ちになる。読んでて台湾に行く時に飛行機のエンジントラブルで乗る予定だった便が欠航になった時を思い出した。言われてみれば旅行での楽しい記憶よりそういう寂しい気持ちになった時の記憶のほうが明確に残ってる。他人の寂しい気持ち知る機会なんてあんまりないからそういう意味では新鮮な作品、でも知らない土地の知らない人の寂しい話だからちょっと読み辛さはあった。