薬丸岳のレビュー一覧
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犯罪被害者遺族のための犯罪加害者の追跡調査とその後の展開を描く衝撃作。息子を殺された父親、弟を育児放棄という形で失った兄、身内が犯罪加害者になってしまったために苦しみぬいた母娘などなど。どこまで行ってもぬぐい切れない思いがある。
そんな人たちが犯罪加害者の居場所を知ったとしたらどうなるのか。それが本作のテーマ。初めは連作小説のような展開だが、徐々に主人公である元警察官、今は探偵事務所で探偵をしている佐伯修一が自分自身が巻き込まれた犯罪加害者との対峙という展開に集約されていく。
本作を読んでいると、加害者を守ることは、被害者遺族が犯罪を犯さないためのある意味での抑止力にもなっているのではな -
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「刑事のまなざし」「その鏡は嘘をつく」「刑事の約束」に続く夏目シリーズ第四段。
4編からなる短編集です。
これまた、重いストーリばかり。しかし、この手の話は大好きです。
■黄昏
第70回日本推理作家協会賞受賞作品。
母親の死体をスーツケースに隠してもっていた娘。
母親の死を届けなかった理由とは?
年金詐欺 ?
■生贄
これは辛い物語。
公園のトイレで起きた殺人事件。
レイプから身を守ったと主張する女性。
しかし、その女性の過去、そして、その真相とは..
最後、もうひとひねりあったところがすごい。
■異邦人
ベトナム人による強盗致傷事件発生。
しかし、その事件の真相とは?
外国人労働者に対 -
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【どうやったら子供たちを守れるだろうか】
子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が2人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。
作者の作品は、少年犯罪がテーマのものしか読んでいなかったので、大人の性犯罪をどう裁くかがテーマのこの作品は新鮮で興味深く読んだ。
大人が子供たちを自らの欲のために利用する。
あまりにも理不尽な理由に巻き込まれた幼い子供たちを守る為にはどうしたらいいのだろう。
性犯罪者の刑期の短かさと再犯率の高さに驚いた -
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オーナーの落合とレストランバーを共同経営し、愛する妻と娘と幸せな人生を歩んでいた向井聡の元にある日、「あの男たちは刑務所から出ています」という手紙が届く。差出人の名前は坂本伸子。今はもうこの世に存在しない人物からの手紙、そしてあの日してしまった約束を思い出した向井は慄く。
娘の復讐を代わりに果たすという約束でお金を譲り受けたにも関わらず、相手が癌で死んだことをいいことに、その約束を記憶の彼方に追いやって新しい人生を歩んできた主人公。脅しているのは誰なのかを最後まで追い続けることになるが、正体についてはそんな偶然あるか、という思いが無いわけではない。主人公についても結構ひどいことをやらかし -
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『こんなに怒りにうち震えても、まだ、人の心を取り戻して欲しいと望まずにはいられない。』
刑事 夏目シリーズの第4作目。
この作品も社会問題を扱った事件の短編集でどの話も興味深かった。
表題になっている“刑事の怒り”は、寝たきりの若者が急に亡くなり事件か事故かの両方で捜査するのだが、高齢化社会の昨今、考えさせられるテーマだった。
介護をする家族や恋人。意思疎通がままならない患者。誰かの手助けがなければ生きられない人の存在価値を、自らも娘が寝たきりである主人公に突きつけることで読者も一緒に考えさせられる。
“娘がもし死を望んでいたとしたら自分はどうするか“
この問