安原和見のレビュー一覧
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地図にしか存在しない街が、実は存在する、という設定の、男女七人夏物語。
地図上にあれば存在することになるのか、実際にはあるけど地図になければ存在しないことになるのか、とある種の認知論みたいな話になってくる。
登場人物のセリフでもあるが、実際、我々は街を歩くとき、スマホの地図ばかり見て、眼の前の状況をあまり見ていない。そしてスマホ上で到着したとき、初めて到着した気になっている。これは発展すると、自分で認識した情報より、外部から与えられた情報を信じてしまうのはどうなんだっけ、ということにつながると思う。
とはいうものの、登場人物が全員、他人と協調できない、他人に相談する事ができずに暴走するバカしかいない。皆さん優秀な地図学者のはずなのに。特に主人公。もうアラサーなのに。 -
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◼️ ダグラス・アダムズ
「銀河ヒッチハイク・ガイド」
ハチャメチャなSFコメディ。思い切って飛ぶ先行きにお笑いと文芸的期待をする。
もはや古典ともいえる1979年の作品で、シリーズもあるとのこと。いやー寡聞にして存じませんでした。ズバン、と展開が早い。
地元ラジオ局で働いている青年、アーサー・デントは友人で地球人に身をやつしているベテルギウス系惑星人のフォード・プリーフェクトに連れられ、地球から宇宙へと脱出する。還るべき地球はヴォゴン星人の手によりほとんど瞬時に消滅させられてしまったー。
最初、アーサーはバイパス道路建設のため、住んでいる家をブルドーザーで撤去しようとする役所に対抗して家の前に座り込む。役所曰く、計画書は9カ月も前から閲覧できるでしょ、とのことだった。ボォゴン星人もスケールの違いこそあれ同様のリクツで強弁する。で、容赦なく地球を消す。いやはやこれがギャグでなくてなんだろう。
ストーリー進行はまさにヒッチハイク。絶望と希望、偶然。間に挟まれるバカバカしくくすっと笑ってしまう展開。地球人アーサーとベテルギウス系惑星人のフォードはもと銀河帝国大統領のゼイフォードらとオリオン座の馬頭星雲の中を彷徨う。もうこうなると何が基準なのか分からなくなる。
イギリスものにして、関西の直接的なお笑いと、関東のシチュエーション的な笑いとをミックスさせたような、訳も大変そうだけれども、日本人にもよく分かりそうな、壮大なコメディ。危機感を盛り上げることもなく、すげなく地球をなくし、復活するのか?を絶妙な感じでチラつかせ、結局どこへ向かうのか、うまく全体をコントロールしている感がある。
海外のSFといえば世界共通にワクワク、ゾワゾワしたり、中間的哲学的な描き方が肌に合うこともあればちょっと敬遠かもと思ったりする。名作の一。こんなのもあるんだね。 -
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人生、宇宙、万物の究極の答えとは何なのか? この本はそうした人間の根源的な苦悩を笑い飛ばす。といっても、単に茶化しているだけではないのかも。終始続くナンセンスな文章を禅問答と捉えれば、その先にあるものは悟り、である。宇宙の真理とはナンセンスの極みなのかもしれない。
この話の元は1978年のイギリスのラジオドラマだそうで、当時は荒唐無稽な SF だったのだろうが、昨今の現実社会で AI を妄信している人たちを見ていると、妙なリアリティを感じてしまう。社会風刺としても現役だ。
難をいえば、文章がふざけ過ぎか。日本人が翻訳で読んだのでは、ブリティッシュ・ジョークは理解できないのかもしれないが…。2005年には映画化もされているらしいので、文章が合わない人そちらを観てもよいかもしれない。 -
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ネタバレ著者が続編を急かされて3週間で書いたらしい本書。著者が当時恋愛中なのもあって、反映されたのか?今作はSF要素少なめでアーサーとフェンチャーチのやりとりがメイン。
破壊されたはずの地球が復活しており、アーサーの家も元のまま存在し、旧友との再開、ガイドにも地球が復活。
しかし何やら、地球が爆発したような幻覚を見たとみんながいう。フェンチャーチは、イルカも消えたという。p156
ゼイフォードやマーヴィンのやりとりが好きだったため、物足りなかった。
終わり際に突然マーヴィンが登場したかと思えば、スっと退場した。
ビスケットの話は実体験らしい笑p144 -
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ナオミ・オルダーマンの小説。
ベイリーズ賞を2017年に受賞。
女性が男性よりも権力を握るようになった世界において、ニールという作家が考古学説をベースに創作した小説を、本書の作者であるナオミがレビューするという設定になっている。
小説では、ある日突然女性が手から強力な電流を放電できるようになり、既存の男性優位の社会を塗り替えはじめた「大変動」時代が描かれる。
その中で特に大きな役割を担う4人の人物の視点を切り替えながらストーリーが進む。
キリスト教の新しい亜流を立ち上げて教祖として信仰を集めていくアリー、マフィアの娘で最強の放電能力を持つロクシー、アメリカで勢力を増していく政治家のマーガレット、中心人物で唯一の男性でネットで人気を集めるジャーナリストのトゥンデ。
彼女たちそれぞれの目線・立場から、数ヶ月で「パワー」を得た女性たちが男性を圧倒し、社会とシステムを作り変えていく姿が描写される。
以上があらすじ。
これまでほぼすべての人間社会では、伝統的に男性が権力を振るい、女性がそれに支配される構造になってきた。
この事実に対して、本小説は「女性が男性を圧倒的に上回る力を手にした場合、社会はどうなるのか?」という、ある種の思考実験を行っている。
この点が、本小説が権威のある賞を受賞し、各界の(リベラルな)著名人から推薦されている所以である。
実際、女性と男性の優位性が入れ替わる過渡期におけるカオス、結果的に現れる社会の形の描写は興味深かった。
特に、女性が力を持ったとしても男女が平等になるわけではなく、残虐に弱者を虐げ、搾取するのが女性側になるだけだという結論は皮肉だが人間の本質をよく表していると感じた。
トゥンデの視点から見た「本能的に女を怖れる」「夜道を歩くのが恐いとはじめて感じた」というような心情も生々しくて良かった。
一方、小説としてのストーリーや登場人物の動きに違和感が多く、没入できなかった。
冒頭および巻末の「この小説は既に女性優位の社会が確立して久しい未来で描かれていて、本当の作者はナオミではない」というメタ設定は、何の伏線もなく小説に加味されていない安易なもので、この必要性を感じない。
また、世界的にパワーが発生しているはずなのに描かれるのが一部の地域のみで、風呂敷が畳めていないこと、核兵器などの大規模兵器の存在がほとんど無視されており、現実味が少ない。結論ありきのストーリー運びになっているため、違和感を感じる。
後は、これは個人的な好みの問題だが、シンプルにアメリカ小説特有の読みにくさがある。
小説としては好みではないが、設定と仮説は興味深い題材だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレヒッチハイクガイドに続き。
マーヴィンの扱いが酷い。
さてタイトルなのだが、英語では『The restaurant at the end of the universe』と言うことで確かに『宇宙の果てのレストラン』なのだが、日本語だと物理的な果てに思えてしまう。物語上では時間的なEndで物理的移動はしていないので、ややミスリードな気が。
前作より★が一つ少ないのは、何となく全体的にネガティブだった印象があるため。正確にいうと、ネガティブというより、マーヴィンはじめあらゆる登場人物に不幸が襲いかかって救いがない点。プライベートで嫌なことでもあったんだろうか、というくらい救いがない。
一応コメディとして成立するようになっているのが、マーヴィンは5760億年だったか放置された挙句自殺させられるし、アーサーとフォードは未開の星にたどり着いたまま救われないまま物語は終わるし、ブラックを通り越しているように感じる。
一作目で説明がなかった部分はだいたい説明が与えられ、まあ多くの点でスッキリはした。
読みやすさは健在だし、その救いのなさが気にならない人なら純粋に楽しめるのかもしれない。
自分は一冊目読後期待したよりは下回ったかな。