田村義進のレビュー一覧
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失敗から閑職に追いやられた落ちこぼれスパイ(遅い馬)たちの活躍を描く第二作目。
今回はかつて英国の下っ端のスパイだった老人が心臓発作を起こしてバス内で無くなったことに端を発し、それが旧ソ連時代、ベルリンの壁崩壊時に生き残る場を探して西側で冬眠することになったKGBスパイの残党(蝉)の捜索に発展していく。
読み終わって振り返ってみると、結構ページ数の多い作品なのだが、最初の半分はほとんど動きがなく、死んだ老スパイの地味な背景調査とロシアの要人警備の話。それでもぐいぐい読ませる。
主要な登場人物、泥沼の家ので長であるジャクソン・ラム、遅い馬の一人リヴァー・カードライト、同じく遅い馬のメンバーであ -
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前作『カルカッタの殺人』のレビューにて、「早いとこ次の現場に急行せねば!」と大口を叩いてから1ヶ月強。他の作品に気を取られてかなり出遅れてしまったが、こちらの2人も手遅れだったようだ。
2人というのは主人公ウィンダム警部とその部下バネルジー部長刑事のこと。
2人が警護していたにも拘らず、不覚にも藩王国の王太子が序盤で暗殺されてしまった。その刺客にも後々死なれてしまい窮地に陥るという、早々から手に汗握る幕開け。
都市部のカルカッタとは違い舞台となるサンバルプールは藩王国で、珍しく英領に入っていない。おまけに被害者(王太子)の生まれ故郷とは言え、ウィンダムらが所属する帝国警察には捜査権がなく… -
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インド系移民2世である筆者なればこその作品。
英印、双方に軸足を置いて「公平」太郎と欲する気持ちの高まりがペンをとらせたのかと思うようなくちぶりがウィンダムの吐露を通じて随処で語られている。
支配・被支配の関係は16世紀ごろより始まって、植民地時代の幕開けと共に世界各地でなされて行った。
印度に於ける「植民地の圧政」は知っているようで意外とミステリー的部分が多い。
ローラット法の名前も初耳~かような法律の存在があることは想像に難くないけれど・・この法の下で針黒人の命と印度人の命を秤にかけた図式の悍ましさが浮き彫りになる。
イギリス人が支配できるのはその『道徳的優位性?!』『私たちが使えている -
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英国統治下のインドで捜査に挑む、帝国警察のウインダム警部とインド人部長刑事バネルジーコンビのシリーズ第二作。
今回は『藩王国』が舞台になる。
聞きなれない言葉だったので調べてみたら『イギリス従属下で一定の支配権を認められていた藩王(prince)の領国』という説明だった。作品を読み進めると藩王であるマハラジャといえどインド国外に出るには英国総督府に旅券発行の申請をしなければならないし、インド政庁に財務報告書を提出しなければならないという義務があるとのこと。
だが政治や宗教、慣習や文化は認められているし『藩王国』内での捜査権は英国帝国警察といえど無い。
それをやってしまうのがウインダムの強引さ -
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ネタバレ殺人の過去を再現せよ。
妻の様子を見てほしいとドクター・ライリーを通じて考古学者に依頼され、看護師のレザランはバグダットに向かった。不思議な魅力を持つルイーズ・レイドナーは不安定な様子を見せ、周囲の空気も何かピリピリとしている。ルイーズが昔の夫からの脅迫状に怯えていることをレザランは知ったが、その後ルイーズは殺されてしまう。犯人は死んだはずの昔の夫なのか?
ドクターに頼まれてレザランが書いた手記という形で表された作品。『アクロイド殺し』を知っていると警戒してしまうが、そんな警戒心もあっけらかんとした書き出しで解けてしまう。バグダットへの第一印象と心の変化。遺跡発掘への無関心と調査団や現地で -
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読んでいると度々、『あぁ!そうよね!いいよねー!わかるわー』となり、自分が思いの外静寂を必要とし、その時間を愛し、人一倍静寂が必要なのだと、
改めて気づけた。
それでもヒマラヤも南極も行ったことない私には、限りなく無音。というものが想像以上のものだということが著者の表現力からイメージできた。
味わってみたいような怖いような。
元より、静かな環境をかなり好む方なら、一読の価値あり。日頃から賑やかなのがお好きな方はちんぷんかんぷんかも。というより良さがわからないと思う。
後半は引用が多く、とにかく静寂取り入れるといいよー!みたいな感じになり飽きたのはここだけの話。 -
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1920年、インド・カルカッタでサンバルプール国王太子が車中で射殺された、車中にはウィンダム警部とバネルジー刑事部長も一緒だったが、犯人は逃亡し自殺、王太子は死亡した。
王太子の葬儀がサンバルプール王国で行われウィンダムとバネルジーは葬儀に向かい王太子殺害事件の真相を探る事となった。
舞台は、カルカッタから遠いマハラジャの国サンバルプールは地方の田舎街だが、幻想的で豪華絢爛な宮殿が思い浮かぶ。ストーリーはウィンダムとパネルジーの行動は現代なら違法捜査や不法侵入等のルール違反が多くて、ほぼ物語として成立しないが、時代的には何の問題も無く捜査がスムーズに進んで行くが、登場人物全員が怪しい -
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著者は1974年ロンドン生まれのインド系移民二世で、デビュー作の本作は2017年にイギリスで刊行され同年の英国推理作家協会(CWA)賞エンデバーヒストリカル・ダガー(歴史ミステリー)賞を受賞した。
小説の舞台であるインドは、1858年から1947年迄イギリスの植民地だった。
1919年インド・カルカッタでイギリス人の官僚が治安が悪く白人の寄り付かないブラックタウンの道端で惨殺された。イギリスから派遣されているウィンダム警部と現地人で新人部長刑事バネルジーが捜査に当たる。
翌日、列車強盗が発生し列車保安員が殺された。1時間に亘って強盗団は列車を止めたものの何も盗らずに逃走した。
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私は書くために生まれてきたのだ。
(中略)
ものを書くのは(略)読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生も豊かにするためだ。立ち上がり、力をつけ、乗り越えるためだ。幸せになるためだ。おわかりいただけるだろうか。幸せになるためなのだ。本書のかなりの部分は私がどうやってそれを学んだかということに費やされている。そして、その多くはどうすればもっと巧く書けるかということについての記述である。残りは(ここがいちばん大事なところだが)許可証だ。あなたは書けるし、書くべきである。最初の一歩を踏み出す勇気があれば、書いていける。書くということは魔法であり、すべての創造的な芸術と同様、命の水である。