田村義進のレビュー一覧

  • 大統領の弁護人

    Posted by ブクログ

    敏腕刑事弁護士ロビーのもとに大事件が舞い込んだ。依頼人は前米国大統領ジャック・カトラー。環境問題や医療改革に尽力した偉大な大統領が、愛人殺害の容疑をかけられたのだ!40年来の親友としてロビーは弁護を引き受ける。だが、あらゆる証拠がジャックを犯人と示していた。彼は本当に殺人犯なのか?全米注目の裁判で、次々と飛び出す証拠と意外な事実―事件の真相に迫るほど、謎は深まる。最後に待ち受ける衝撃の真実とは?

    やはりジョン・グリジャムやスコット・トゥローに代わる作家はなかなか現れないのだなと思った。

    0
    2026年10月12日
  • ゴルフ場殺人事件

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「ドーブルーユ母子から逃げるためのコンノー夫妻の偽装殺人」と「金銭のために恋人の両親を殺害しようとしたマルトの2つの殺人(片方は未遂)」だから、ドーブルーユ母とコンノーの過去に起因した問題とはいえ、犯人当ての魅力はあまりなかった。
    でも、「ルノー=コンノー」説は気づいた時に「もしかして!?」となるので大分面白い。子供の頃に初めて読んだ時は気づかなかった気がする。

    内容忘れてたので再読。

    0
    2026年10月07日
  • 大統領の弁護人

    Posted by ブクログ

    「大統領の弁護人」(ローレンス・ロビンズ : 田村義進 訳)を読んだ。

    本作は実際に著名な弁護士ローレンス・ロビンズが七十二歳でものしたデビュー作であり残念ながら遺作でもある。

    なかなか斬新な物語である。
    ネタバレは避けたいのでこれ以上は書かない。

    しかしこんなにも風紀が乱れてるのか、かの国は?

    0
    2026年09月30日
  • メソポタミヤの殺人〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    メソポタミアの遺跡発掘調査ということで、読んでいく中で砂埃が舞うような空気を感じた。
    事件が起こり調査を進めていく中で、人間関係とは、愛とは、とぼんやりと考えることがあった。
    ファムファタールとオムファタールが出会ったこと、嫉妬心が強い男、と面白い関係だなと思った。
    ただ、ミステリー度でいうと他の作品よりは少し低めかなと思った。人間関係に重きを置いている印象。

    0
    2026年09月17日
  • 白昼の悪魔〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    序盤から不必要なほどキャラクターがわんさか出てくるが、たった数ページの会話でぞれぞれの特徴を捉えることができるので苦にならない。登場人物の書き分けが世界一上手いのではないだろうか。

    【ネタバレ】
    トリックに新規性はありませんし、この手法だとリスクが高すぎるので、ポアロがいうほど計画性の高い狡知に長けた(スリック)犯罪という印象は受けませんでした。共犯者の存在は当てられませんでしたが。
    リゾート地という心理的に開放感のある心地よい舞台で人間関係が交錯していく物語の本筋にはのめり込むことができ、その点は『ナイルに死す』に匹敵するかも。バカンスの文化が羨ましいなあ…もっと真夏に読むべきだった。

    0
    2026年09月13日
  • 白昼の悪魔〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    ポアロシリーズ20作目。1941年の作品。
    『白昼の悪魔』という邦題もなかなか渋いけれど、原題『Evil under the Sun』がかっこいい。

    小さな島のリゾート地が舞台という夏に読むにはぴったりでした。事件が起こったのは8月25日。

    朝起きたらバルコニーから海岸に降りてひと泳ぎ、ホテルのダイニングルームで朝食。あるいは遅くまで寝ていてベッドで朝食。
    海辺で日光浴、ボート遊び、テニス、散策もしくはテラスで読書。
    島はホテルの私有地なので、海岸は宿泊客のみのプライベートビーチ。
    なんていう上流社会の夏の過ごし方がなんとも優雅。

    (216ページ)
    「ミセス・マーシャルはいつもベッドで朝食をとっていたんだね」
    「はい、いつもです。いつもベッドでほんの少しだけ。紅茶とオレンジ・ジュースとトーストを一枚です。多くのご婦人方同様、太らないように気をつかっていらっしゃったのでしょう」

    ミスリーディングや思わせぶりなセリフ、小道具が多すぎて、宿泊客全員怪しく思える。というか、ラスト40ページくらいまで誰が犯人でもおかしくない展開。ミステリーとしてはまったくフェアじゃないけど、夏のリゾート気分を味わえたので私は十分満足。

    新訳版は田村義進。『ゴルフ場殺人事件』、『メソポタミヤの殺人』なども手がけており、全体的に上品で読みやすい。
    ただ、いくつか、伏線回収されていなかったり、あれ、このセリフあったけ?みたいな箇所があるんだけど、これは原文のミスなのか。

    ブティックのオーナーであり、ドレスデザイナーであるロザムンド・ダーンリーのモデルはあきらかにココ・シャネル。
    彼女のつけている香水は「ガブリエルの8番」。この香水は架空のものですが、ココ・シャネルの本名はガブリエル・シャネルで、2017年に「ガブリエル シャネル」という香水が発売されています。
    それを考えると、ラストの彼女の選択はいまいち不満である。

    (37ページ)
    「結婚して子供をつくるのは誰にでもできることです。あなたのように自分の力で地位と名声を勝ちえた女性は、百人──いや、千人にひとりいるかいないかですよ」
    ロザムンドはにっこり笑った。「でも、やっぱりわたしは哀れなオールドミス。とにかく、今日はそんな気分なんです。どんな貧乏暮らしでも、夫がどんなに粗野で陰気な人でも、腕白坊主がぞろぞろあとを追いかけてきても、そのほうがずっと幸せなんだと思っています。そうじゃないでしょうか」

    いくつか自分用注釈。

    3ページに出てくるコーネリア・ロブスン、リネット・リッジウェイは『ナイルに死す』。

    ウェストン州警察本部長と話しているセント・ルーの事件とは『邪悪の家』。

    133ページの「ウォーレス」とは、1931年に妻を殺したとして有罪になり、その後、逆転無罪となったウィリアム・ハーバート・ウォレス事件のこと。


    以下、引用。

    12
    「そうなんです、ムッシュ・ポアロ、あなたのお噂はコーネリア・ロブスンからいろいろとうかがっています。わたしたち、五月にはバーデンホフに滞在していましてね。そのとき、エジプトでリネット・リッジウェイが殺された事件の話を聞いたんです。」

    Badenhof

    14
    「わたしが若いころには、せいぜい足首までしか見ることができませんでした。ふんわりしたペチコートがちらっと見えただけで、胸がドキドキしたものです。それがいまは、ふくよかなふくらはぎも、膝も、リボンがついたガーターまでも──」

    21
    「たしかにここは夢のような場所です。じつにのどかだ。陽は燦々と降り注ぎ、海はどこまでも青い。ですが、ミス・ブルースター、忘れちゃいけません。邪悪は陽の下のいたるところに潜んでいます」

    35
    「ええ、びっくりするくらいに。イギリスの田舎です。大きなあばら家。馬や犬。雨の歩道。薪ストーブ。リンゴ畑。つましい暮らし。古ぼけたツイードの服。来る年も来る年も同じイブニング・ドレス。荒れ放題のお庭。秋にはシオンが咲き乱れ……」

    37
    「結婚して子供をつくるのは誰にでもできることです。あなたのように自分の力で地位と名声を勝ちえた女性は、百人──いや、千人にひとりいるかいないかですよ」
    ロザムンドはにっこり笑った。「でも、やっぱりわたしは哀れなオールドミス。とにかく、今日はそんな気分なんです。どんな貧乏暮らしでも、夫がどんなに粗野で陰気な人でも、腕白坊主がぞろぞろあとを追いかけてきても、そのほうがずっと幸せなんだと思っています。そうじゃないでしょうか」

    44
    ううん、ニキビじゃない。そう判断して、ほっとした。そして思った。十六歳なんてイヤ。本当にイヤ。
    自分がどこにいるかわからない。子馬のように頼りなく、ハリネズミのように刺々しい。見苦しさや頼りなさが気になってならない。

    46
    時間の感覚をつかめないのは幼さのせいかもしれない。一年は永遠に思える。

    69
    70
    74
    ドーヴィル、ル・テュケ、ジュアン・レ・パン
    ビアリッツ
    マーゲイト

    83
    部屋を出て、廊下を進む。廊下のはずれのドアからバルコニーに出る。そこにある階段をおりていけば、ホテルの下の岩場に出る。その岩場には磯まで小さな鉄の梯子が取りつけられている。海水浴場へ行くより手間がかからないので、朝のひとときをそこで過ごす者は多い。

    85
    年上のクリスティーンとのあいだには微妙に共感しあえるものがある。それはどちらも同じ人物を憎んでいるという事実に根ざしているからにちがいない。

    93
    「さっきも主人に言ったばかりなんだけど、わたしたちもぜひダートムーアに行ってみたいと思ってますの。ここからはそう遠くないし、言い伝えからしてロマンチックなところのようだし。それからあの有名な監獄のあるところ、プリンスタウンていったしら。あそこへも行ってみたい。」

    94
    歯磨き粉の金属ケース

    108
    「こいつは驚いた!」と、州警察本部長のウェストンは言った。「こんなところできみに会えるとは!」
    エルキュール・ポアロは愛想よく答えた。「これはお久しぶり。セント・ルーの事件以来ですな」
    「いまでもよく覚えてるよ。あんなに驚いたことはない。いまだに納得がいかないのは、葬儀のときのきみの策士ぶりだ。普通じゃ考えられない。常軌を逸していた」

    112
    「マーシャル大尉がどんなふうに思い、何を考えているかはわかりません。感情を表に出さない御仁のようですから」
    「でも、感情はあるはずだ」
    エルキュール・ポアロはうなずいた。
    「ええ。感情はあるはずです」

    133
    「なんとも言えません。感情を表に出さないので。証人台に立ったときの印象は間違いなく悪いものになるでしょうね。ある意味、気の毒な話です。どんなに傷ついていても、そんなふうには見えないのだから。ウォーレスも同じような調子だったので、陪審員の心証を害して、有罪判決を下されてしまいました。確たる証拠があったからじゃありません。妻を亡くして、あんなに冷静でいられるはずはないと思われたからです」

    ウィリアム・ハーバート・ウォレス事件

    149
    「ある学者が記した論文によると、社交界で浮名を流した伊達男(ボー)ブランメルと生涯独身であったニュートンのような人物とでは、孤独の意味がまったくちがう。」

    183
    「サボイ・ホテルでブレスレットをなくしたときに来てくれた若い刑事さんは、そりゃもう、優しくて親切な人でした。」

    210
    聖書。古びたシェークスピアの戯曲。ハンフリー・ワード夫人の『ウィリアム・アッシュの結婚』、シャーロット・ヤングの『若い継母』、A.E.ハウスマンの『シュロップシャーの若者』、エリオットの『寺院の殺人』、バーナード・ショーの『聖女ジャンヌ・ダーク』、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』、ディクスン・カーの『火刑法廷』。

    216
    「ミセス・マーシャルはいつもベッドで朝食をとっていたんだね」
    「はい、いつもです。いつもベッドでほんの少しだけ。紅茶とオレンジ・ジュースとトーストを一枚です。多くのご婦人方同様、太らないように気をつかっていらっしゃったのでしょう」

    239
    「聖書に出てくるイザベルやアホリバのような毒婦です。悪行のかぎりを尽くし、あげく鉄槌がくだされたのです」

    260
    すぐに返事はかえってこなかった。村人たちにじろじろ見られているのが気になるのだろう。指をさされこそしないまでも、それと同じことを目でされているのだ。

    285
    「無作法をお許しいただけるでしょうか、マドモアゼル」
    「あなたが無作法なことをなさるとは思いませんけど」
    「恐縮です。それでは言わせてください。あなたがいまお使いの香水はじつにいい。繊細で、深淵で、複雑です」手を振り動かし、それから感情のこもらない声になって、
    「ガブリエルの八番ですね」
    「よくおわかりですね。ええ、わたしはいつもこれをつけています」

    294
    「たしかにアリーナ・マーシャルは聖職者が淫らな女(スカーレット・ウーマン)と呼ぶにふさわしい人物です。」

    366
    若島正「明るい館の秘密 クリスティ『そして誰もいなくなった』を読む」

    0
    2026年08月16日
  • メソポタミヤの殺人〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    考古学者の妻の面倒を見るために出向いた看護婦の手記によって話が進んでいく。
    死んだはずの元夫から来る脅迫状、物音、不審な人物…

    例のごとく登場人物皆何か隠してるっていうお馴染み。
    もちろん犯人は自信あったのに当てられませんでした。

    0
    2026年07月09日
  • メソポタミヤの殺人〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    【再読】
    看護師のエイミーは、たまたま知り合った外科医のライリーに依頼されてエリック・レイドナーの遺跡調査団とともに中東へ赴く。そこでエイミーはエリックの妻ルイーズの看護をすることになるのだが、どうもこのルイーズの様子がおかしい。彼女は何かに心を苛まれているようだった。エイミーが話を聞くと、ルイーズは死んだはずの前夫から脅迫されているのだという。さらに何者かが窓を覗いていたり保管室から怪しい物音が聞こえたりと、不可解なことが続く。
    一人としてそのことに真剣に取り合わなかったが、ついにルイーズが何者かの手で殺されてしまう。そこに颯爽と現れたポアロは関係者から事情を聞き、捜査を始める。宿舎のつくりや目撃証言から、外部の犯行とは考えがたい。ポアロはエイミーをパートナーに選び、調査団のメンバーから証言を集めていく。すると、誰からも好かれていたルイーズの裏の顔が徐々に明らかになっていく。
    そうしていると、今度はミス・ジョンソンが塩酸を口にして死亡する。ジョンソンはその直前に、誰にも見られずに宿舎に侵入する方法がわかったと言っていたため、口封じのために殺されてしまったのだ。またこの事件を機にラヴィニー神父も姿を消してしまった。
    ポアロはミス・ジョンソンが残した言葉をヒントに、ついに真相に辿り着く。
    犯人はルイーズの妻エリックだった。実はエリックこそがルイーズのかつての夫で、正体を隠して彼女に接近したのだった。そして彼女の裏切りに対する復讐として殺害に及んだ。ちなみに姿を消したラヴィニー神父は発掘した品を盗むコソ泥だったこともわかる。

    中東を舞台にした異国情緒溢れる作品。みなに好かれていた女性の過去、そしてもう一つの顔とは。最初の夫と離婚した後、考古学者の男性と再婚したクリスティー。彼女の人生が作品の下地となっている。
    ●見どころ
     ・ポアロの登場は三分の一ほどが過ぎてから
     ・語り手であるエイミーにみくびられるポアロ
     ・フラグを立ててしまう登場人物
    ●名言
     「殺人は癖になる」

    0
    2026年07月05日
  • ゴルフ場殺人事件

    Posted by ブクログ

    他のジャンルや作家さんを味見したあとは、いつだってクリスティーに戻りたくなります。「やっぱり白ごはんとお味噌汁よね!」みたいな感じです。笑

    ポアロシリーズ2作目である本書ですが、ドラマを視聴済み、あらすじもいまいち惹かれずでスルーしていた一冊だったりします。
    けれど、結末を知っているはずなのに二転三転する展開にはビックリ。意外すぎる真犯人すら覚えていない、驚異の脳細胞よ。。
    フランスが舞台なせいか、男女関係があちこちにあり、「火遊びかと思いきや本命」みたいなミスリードもたくさんあってまあ翻弄されました。それにしても「若さと美貌に寛大なフランス法廷」……( ˊᵕˋ ;)

    しかし本書で最も言及しなくてはならないのは、なんといってもヘイスティングズでしょうね!さすがに、無分別すぎる!笑
    「愛されキャラ」として認知しているから耐えられたものの、ポアロシリーズを順番に読んでいく純粋な読者からすれば、よっぽど腹に据えかねるキャラクターだったのではないでしょうか。そのあたりがどう読まれたのか、ちょっと気になります。

    また、解説として掲載されているのは、ドラマ版で日本語吹替版を演じられた熊倉一雄氏のエッセイ。
    あいにく私は字幕派で、熊倉氏のお声は拝聴したことがないのですが、スーシェ版ポアロへの思い入れを読むことができてよかったです。
    「アガサ・クリスティーの作品の魅力は、ひと昔前の世の中の様子がけっこう書かれている」という評にはまったくもって同感です。現代ミステリは殺伐として暴力的すぎます。奥ゆかしいのがいいよ。

    総じて、ドラマ版のジロー警部もインパクト大でしたが、原作も思った以上に楽しむことができました。やっぱりクリスティーはいいな〜。

    0
    2026年06月25日
  • エイレングラフ弁護士の事件簿

    Posted by ブクログ

    巨匠ブロックが生み出した、最強の弁護士マーティン・エイレングラフを主人公とする連作短篇集。これまでに発表されたシリーズの全作品12篇が収録されている。
    なにがすごいかというと、彼の依頼人はすべて無実であり、裁判になる前にことごとく潔白が証明されてしまうのだ。どのようにして? そこは読んでいただいて確認してほしい。そして彼は法外な成功報酬を受け取るのである。すべてが同じ形式なので、裁判シーンは一切ない。
    過去にハヤカワ文庫で刊行された傑作集に何作か収録されていて、初読ではなかったが印象はまるでなく、他のシリーズキャラクターに比べると明らかに弱い。そのせいで本にまとまるのが遅れたのかもしれない。

    0
    2026年05月31日
  • ゴルフ場殺人事件

    Posted by ブクログ

    数年ぶりくらいのアガサ・クリスティー、たっぷり味わわせていただきました。今まで読んできた作品がシンプルな動機や真相だったからか、四転くらいする展開に最後まで気が抜けなかったです。登場人物、時系列、場所すべてがパズルのように組み合わさって真相に近づくので、何度か整理しないとついていけなくなります(笑)

    0
    2026年04月18日
  • 書くことについて ~ON WRITING~

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     近頃の、文士村活動の輪の中で、知人が薦めていた本。すぐに入手はしていたが、ようやく手に取って読み終えた。
     タイトルの通り、書くことについて、ということで、作家がその知見を語るものだが、そこは、さすが大御所。巷にあふれるお手軽なHow to本とは異なる。早くそのテクニックを知りたい、コツを伝授してもらいたい、と思って読み始めると、途端に壁にぶち当たるだろう。序盤は、彼の生い立ちなのだから(笑)

     いろんな点で、よいタイミングで巡り合えたなと思う。ホラー作家という印象が強いし、映画の原作者として認知はしていたが、スティーヴン・キングの著作だからと読んだ作品は一作もない。映画化された作品も、ホラーというジャンルを避けているので、見た作品は少ないのだが、たまたま昨年、『スタンド・バイ・ミー』と『シャイニング』を映像のほうで楽しんだので、少しは作者に親近感も湧いてきていたタイミングだった(もちろん、映画『シャイニング』は、監督のキューブリックが独自解釈を加えたので、スティーヴン・キングは、あとからドラマかなにかで自分の意に沿うよう撮り直したという話は聞いている)。
     いずれにせよ、あのスティーヴン・キングの、と思って読めたので、腹落ちは良かった。

     そんな来し方行く末を語るような筆致で、随所に物書きとしての心がけ、秘訣、注意点を語るが、特段、珍しいものはない。
     たとえば、

    “無駄な言葉は省け”だ。私もそのように心がけよう。

     創作のアイディアについては、
    「われわれがしなければならないのは、そういったものを見つけだすことではない。そういったものがふと目の前に現れたときに、それに気づくことである。」
     ゆえに、ストーリーについては、インタビューで問われたとき
    「地中に埋もれた化石のように探しあてるべきものだ」
     と答えている。これなぞは、仏像を彫る仏師、あるいは彫刻家の誰かも言ってそうな言葉だ(聞いた覚えがある)。

     映像化される原作を多く送り出しているだけに、ウケのよい物語を産みだすのは巧いのだろう。本音なのか、虚勢なのか、こんな言葉もある。

    「小説の役割は文法の手本を示すことではなく、読者がストーリーを楽しみ、のめりこみ、文章を読んでいることを忘れるようにすることなのだ。」
    「おおよその場合、ひとに本を買わせたいという気持ちを起こさせるものは文学的価値ではない。飛行機のなかで気楽に読めるかどうか、読みだしたらとまらなくなるかどうかである。」

     それだけを意識して作品を生み出しているのではないとは思うが、大作家をして、それくらいの気持ちで、肩ひじ張らずに書いているのもしれない、と思わせる。

    「プロットに重きを置かない理由はふたつある。第一に、そもそも人生に筋書きなどないから。」

     この一文は、本書の執筆中に九死に一生の大事故を経験したからなのかもしれない。そのクダリが本書にも収められている。
     要は、単純なノウハウ本ではないのだ。またそれが面白かったりもする。

    「結末にこだわる必要がどこにあるのか。どうしてそんなに支配欲をむきだしにしなければならないのか。どんな話でも遅かれ早かれおさまるべきところにおさまるものなのだ。」

     これは、創作で生み出す作品のことだけではなく、己の人生への達観でもあるかのように読めた。ああしたい、こうもしたい、と、自分の進路を無理に操舵しないほうが良いのかもしれない。
     
     とにかく、大先生をして鍛錬は怠っていないし、やはり多くを読んで、多くを書いているということは分かる。何ごとも日々の積み重ねということだ。
     そこは、少しずつでも学んでいこうと思う。

    「ドアを閉めて書け。ドアをあけて書きなおせ。」

     作品は誰のものか? この金言を胸に。

    0
    2026年04月16日
  • エイレングラフ弁護士の事件簿

    Posted by ブクログ

    有罪の被告人を必ず無罪というか罪にも問われないようにする(悪徳)弁護士の話。こうするためには文章にはなっていないが、弁護士本人?が犯罪を犯しているということで、かなりブラック。短編集であり、初めは面白く読んだが、後半は少し食傷気味。

    0
    2026年03月26日
  • メソポタミヤの殺人〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    外国の話は人の名前が分かりづらいなー。何回か挫折しそうになるもなんとか読み切りました。名探偵あるあるの登場人物全員集めて推理を披露するシーン、さすがクリスティ!かっこよかったです

    0
    2026年03月18日
  • 白昼の悪魔〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    なんと、初アガサ・クリスティーです。
    リゾート地の海岸で白昼堂々、元女優の夫人が絞殺された。同じホテルに滞在していた探偵ポアロも捜査にあたるが・・・

    いかにも疑わしい容疑者が複数ありつつも、いずれもアリバイがあって犯人を特定しきれない。そんな中、探偵だけは見落としがちな小さな事実を積み重ねて犯人に辿り着く。古典ミステリーの基本に忠実な作品でした。
    後出しジャンケン的な種明かしに強引さは感じますが、その大らかさも古典の味かと。

    0
    2026年03月07日
  • 白昼の悪魔〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    人物描写や散りばめられたエッセンスを回収していく鮮やかさなどはクリスティ作品の醍醐味であり、とても楽しかった。犯人の意外性という意味では、もう少しで読み解けたかも…感はあったが、やはり裏切られてしまった。
    ゾクっとする感じよりも、緻密に組み立てられている小説だったと思う

    0
    2026年02月28日
  • 書くことについて ~ON WRITING~

    Posted by ブクログ

    作家、スティーブン・キングの作家人生を振り返る前半と、書くことについてのポイントや大事にしている掟(のようなもの)を解説した後半、そして終局部では車に轢かれて死にかけたスティーブンが書くこととは自分にとって何なのかを読者に打ち明けている。

    「書くことについて」解説した本を今までも何冊か読んだが、無駄な副詞や手垢のついた言い回しを削除することはどの本でも言われている。つまりネットニュースやSNS、多くの自己啓発本で見かける無駄に大仰な言い回しはダメな文章の典型ということだ。

    いい文章とは、程よく余計な脂肪を削ぎ落としたものである。

    設定・プロット・ストーリー・テーマ…何に重きを置いて書くかは作家によって異なると思うが、スティーブン・キングは何よりストーリーを重視し、書き出しも状況を考えてからスタートする作家らしい。

    そういう裏話がわかるという点で、作家が書いた書き方に関する本は読んでて面白い。

    0
    2026年01月08日
  • 静寂とは

    Posted by ブクログ

    情報に溢れた世界で、私たちは外にあらゆる全てを求め続けて、自らの内に見い出す術を忘れてしまう。静けさが持つ豊かさを感じて、実践するための本。

    0
    2025年12月17日
  • 十二支像を奪還せよ

    Posted by ブクログ

    大学生のウィルは中国の資産家から十二支像奪還を依頼される。かつて英仏軍に盗まれた五体の像が世界各地の美術館にあるというのだ。ウィルは友人たちを勧誘し、5人のチームを結成。最初の像を盗み出すことに成功するが…。

    爽やかな犯罪小説。
    クライヴ・カッスラーの諸作を想起させるような邦題はどうかと思うが。

    0
    2025年11月23日
  • ゴルフ場殺人事件

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    あまり期待してなかったのだが、ふつうに面白い。この人もしかして代表作群が凄すぎて、他のパッとしない作品の評価が霞み&厳しくなりがち?なんとなくロジックを重視する方は合わないかなあと。ポアロが超人すぎて、作者の思いつきをそのまましゃべっているようにしか見えないほど(笑)
    複雑な人間関係トリックによる入り組んだ真相が明かされた時の快感たるや。あとベッタベタのメロドラマも自分好みで、読後感も心地よい。

    0
    2025年11月08日