1.選択肢の数を最小限に抑える
選択肢が多すぎるとワーキングメモリに過負荷がかかり、さまざまな悪影響が及ぶ。ストレスや不安が増大したり、判断力が鈍ったり、正しい選択をしたかどうか自信がもてず、くよくよと考え込んだりしがちになるのだ。だから幸福になりたいのなら、選択肢の数を最小限に抑えよう。職場では「この時間はこの作業に専念する」と決めよう。パソコン画面には複数のプログラムではなく、ひとつのプログラムだけを立ちあげよう。いちいち画面を切り替え、複数のプログラムを行ったり来たりするよりも、作業に集中しやすくなる。
■2.ランニングする
イリノイ大学の研究によれば、ランニングはワーキングメモリも改善する。運動するとワーキングメモリを強化できるのではないかと考えた研究チームは、どんなスポーツがもっとも効果があるかを調べることにした。(中略)
いくらウェイトをもちあげたところで、ワーキングメモリに測定可能な改善は見られないというのに、ランニングは頭脳の力を大きく上げたのである。とりわけランニングの直後、ワーキングメモリの能力が急上昇した。たった30分間のランニングであろうと、その直後は、ランニングの前よリワーキングメモリの働きが向上したのである。
■3.オメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取する
オメガ3脂肪酸が、いわばワーキングメモリ増強剤であることは、科学的に証明されている。たとえ、あなたが健康で元気いっぱいの若者で、おそろしく頭が切れるとしても、オメガ3脂肪酸を摂取すればワーキングメモリの性能はさらに向上する。2012年におこなわれた研究では、6か月間、健康な若者(18~25歳)に、オメガ3脂肪酸を摂取させたところ、半年後、彼らのワーキングメモリは大きく改善された。他方、オメガ3脂肪酸の欠乏はワーキングメモリに悪影響を及ぼすという報告もあがっている。
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■4.ローズマリーの香りを嗅ぐ
2003年の実験で、モスは被験者の成人をローズマリーのグループ、ラベンダーのグループ、そして何も嗅がない対照群という3つのグループに無作為に分けた。(中略)
するとローズマリーのグループは、対照群と比較して、ワーキングメモリ課題で高スコアを獲得した。ところが、ラベンダーは逆効果であることがわかった。ラベンダーのグループのスコアは、対照群のそれより低かったのだ。ローズマリーには覚醒作用があるので、ワーキングメモリが改善され、ラベンダーには鎮静作用があるため、ワーキングメモリには逆効果だったのではないかと、モスは推測している。
■5.整理整頓を心がける
ワーキングメモリに関する知識に基づいて考えれば、そして、散らかっていた場所と散らかっていない場所での生活に予想を超える違いがあった実体験から考えれば、生活空間や職場にものが多けれぽ多いほど、ワーキングメモリの働きが悪くなり、日常生活のさまざまな場面に悪影響が及ぶはずだ。必要な書類をさがしだす作業にワーキングメモリがかかりっきりになっていると――「ほら、明細が書いてあったあの書類、どこに置いた?」「知らない。どこかにしまったんでしょ?」――あなたは本来の仕事にワーキングメモリを専念させることができなくなる。
■6.暗算する
暗算は、ワーキングメモリを強化する。というのも、暗算をするには、さまざまな数字を同時に覚えなければならないからだ。数を左から右に順に掛けていき、そのつど、足していくのが、暗算のもっともわかりやすい方法だ。
(例) 39×7の場合
・3O×7=210
・9×7=63
・210+63=273
■7.テレビを消す
子どものワーキングメモリをサポートするうえで欠かせないのは、テレビを消すことだ。研究によれば、子どもがテレビにさらされる時間が長ければ長いほど、注意などに関する面で発達に問題がでるリスクが高まり、ワーキングメモリが正常に発達しにくくなる。では、いったいどうすれば、テレビを消すことを子どもに納得してもらえるだろう? 率直に、ていねいに、子どもたちに説明しよう。テレビを観ていると集中力が衰えるおそれがあるうえ、生活のさまざまを場面に悪影響が及ぶ可能性があることを説明しよう。
本書ではいくつかの章の終わりに、その章の内容に関連した「ワーキングメモリ・エクササイズ」を収録していますので、それぞれお試しアレ。
さらに第7章以降の第2部では、「ワーキングメモリを改善する」というタイトル通り、実践的な内容となっています。
勉強本オタクとしては、記憶の達人が活用する3つのテクニック(「コードブレーカー」「ブートストラッピング」「チャンキング」)辺りも触れたかったのですが、かなり細かい内容なので、これまた本書にてご確認を。