津原泰水のレビュー一覧

  • たまさか人形堂それから

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    ネタバレ

    大好きなシリーズ。多くを語りすぎず、さりとて言葉足らずなわけでもない。天才肌でスランプに悩む富永くん、意外と厳しい面のある師村さん、仕事とライフワークの切り分けができている束前さん、ひと口に職人といっても人形との向き合い方はいろいろ。私から見ると八つ当たりに近い富永くんだが、それに腹を立てることなく、素直に受け止めて行動する澪さんが好き。束前さんとの距離感も心地良く、ずっと読んでいたかった。

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    2023年01月08日
  • ルピナス探偵団の当惑

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    登場人物が大好きになりました!会話が洒落ていて
    面白い。

    3話の前に、尾崎翠の琉璃玉の耳輪を先に読みました。

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    2022年12月29日
  • 綺譚集

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    氏の逝去の報に接して再読、やはり素晴らしい。綺羅を尽くした文体で紡がれた15の短編。「小説は天帝に捧げる果物、一行でも腐っていてはならない。」と言ったのは中井英夫だったか、その言葉そのものの一冊。作者自身は「一冊だけ残せるなら、これ」と言ったそうだが、「一冊だけ無人島に持って行くとするなら、これ」かもしれない。もっと書いてほしかった。ご冥福を。

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    2022年12月14日
  • たまさか人形堂それから

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    続編があるとわかっていたから前作は一気に読んでしまったけれど、本書もまたリカちゃんをはじめヒトと人形をめぐるエピソードや会話のひとつひとつが軽妙で楽しくてゆっくり読みたいのに気がつくと残りページがみるみる減ってる。懸案のあれこれ、どうしたかなと考えるとしみじみ悲しい。もっともっと新作を読みたかったです。
    著者による「跋」(文春文庫版)有り。

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    2022年11月22日
  • バレエ・メカニック

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    著者の訃報を受けて再読。初読時はまだ『ニューロマンサー』を読んでなかったのでわからなかったけど、この小説は『ニューロマンサー』を逆向きに読むみたいな構成なんだな。最後のシーンが百閒の「冥途」なのも今回初めて気づいた。
    ガスや電気が使われ始めるのと同じく興隆してきた19世紀の心霊主義のように、テクノロジーを信じるがゆえに死後の世界がいつか可視化されると信じる人もいる。日常的にメタバースという言葉が飛び交うようになった今、VR空間で「不死を売る」ビジネスは前より容易にイメージできる。
    津原さんは「電脳空間に幽霊が生まれる」のではなく、「幽霊が電脳空間を生みだす」未来を幻視した。そこがギブスンと比べ

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    2022年10月29日
  • たまさか人形堂ものがたり

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    ネタバレ

    津原さんの新しい作品が読めなくなるのはつらいな。
    幻想的な作品の一方、こういうヒューマンな作品も手がけている。
    その懐の深さというか、筆の多彩さというか。
    やはり、つらいな。

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    2022年10月27日
  • バレエ・メカニック

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    夢想渦巻く夢幻の世界へ。
    幻想きらめくシュルレアリスムの世界から始まりSFの世界に着地する、一幅の奇譚。

    3部構成は、少しずつ主要人物と時系列をずらしながら繋がっていく。
    さて、話を要約してしまうと面白くとも何ともないレビューになってしまうのが悩ましい。
    感想だけ述べるなら、情景描写も世界観も、話の展開もすべて心地よく、作品世界にすっかり埋没し、感動させられた。各部とも、その結末部で鳥肌が立った。

    本書が分かりづらい、という感想も見かける。
    最初から理屈で考えると難しい作品に見えるのかもしれない。しかし一言でいえば、これは"夢"である。
    夢だと思って、まずはその奔放なイ

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    2022年10月16日
  • たまさか人形堂ものがたり

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    本当に、素敵な物語だった。穏やかで静かな時間が人形堂に流れていた。人形を軸に紡がれる魅力的な物語。人形に深い造詣がある作者によって描かれる人形の描写。兼ねてから人形に興味があったが、本書を読み、より興味を持つようになった。これまでは主に球体関節人形に興味があったが、文楽人形などの日本人形にも興味を持った。歴史で習った人形浄瑠璃はつまらない、難しいという印象を持っていたが、その奥深さに感嘆すると共に惹きつけられた。
    本書は手元に紙の本として置いておきたい一冊となった。

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    2022年08月24日
  • たまさか人形堂ものがたり

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    ネタバレ

    連作短編集。元々会社勤めをしていた店主の澪さん、人形マニアで天才肌な青年・富永くん、謎だらけな職人・志村さん。三人の関係性が私には心地よかった。解説者の「淡麗」という表現が本当にぴったりな物語。澪さんは人形の知識こそないが、富永くんや志村さんが納得できるまで自由に作業できる場所を提供しているように見え、それはかなり重要なことだと思うのだが、当人の認識とは異なるから困る。続いて欲しい。

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    2022年06月12日
  • バレエ・メカニック

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    感想のための語彙が完全に消失する超傑作。あらすじはシュルレアリスティックな要素を散りばめたようでありながら、読み始めてみると文章も世界観もストーリーも登場人物もガチガチに組まれていることがわかり、全ての要素が収斂していく3章を読み終えた後はさながら美麗な巨大建築を下から上まで順に眺めていったかのような気分にさせられる。人称の使い方も3章で出てくるあらゆる設定も、「これだけで絶対本書けるだろ!」みたいなアイディアが300ページの中にぎっちり詰め込まれるめちゃくちゃ贅沢な1作である。小説ってこんなに面白いことができるんだ!という新鮮な感動に出会わせてくれたことに感謝しかない。この小説の魅力を日本だ

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    2022年02月08日
  • エスカルゴ兄弟【電子特別版】

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    渦巻きに美を感じるプロカメラマンの実家が立ち飲み屋。弱小出版社の若手編集マンが担当になるなりクビになり二人で本格エスカルゴ料理を出す店を開店する話。
    カメラマンの男が個性的で妹も個性的なこの家族と過ごす日々が面白い。

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    2021年05月26日
  • ペニス

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    都会の中の鬱蒼とした公園、昨日も訪れた、私には馴染みの井ノ頭公園が舞台。この公園がジクジクと膿む巨大なカサブタみたい。主人公の公園管理人は、この隆起して、街に侵食の幅を広げる、カサブタの膿の中の幼児に思える。インポテンツ。私とほぼ同い年。うわぁ。

    公園管理人の「彼」にとって、井ノ頭公園全体は、幼い頃に通った「杜」と地続き。性が目覚め、そして父の縊死の果てを発見した、「杜」。この「杜」を「彼」は局部に飼うことになったのだろう。

    終始、迸るような勢いの筆致に放心。鬼気迫る言葉に、心身が弄ばれた。取り扱い注意。

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    2021年04月25日
  • 綺譚集

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    グロとエロとその中に潜む美しさよ、、という感じ。最初えぐみにびっくりして引きかけたけど、読めば読むほど引き込まれていって最終的には貪るように読んでた。刺激と衝撃がすごい

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    2021年04月13日
  • ブラバン(新潮文庫)

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    去年の大晦日東京より一時帰還した友人から頂いた小説。まさか小説をいただけるとは思っておらずめちゃくちゃ嬉しかった。お返しとして私も小説をプレゼントした。
    吹奏楽部に所属していた友人らしい設定の小説でなんと言っても台詞のセンスがお見事でした。読んでいて軽快で何度もクスッときたシーンがありました。主人公のお店に訪れた柏木とそのお連れカリスマに本当はボイラーメーカーというお酒であるのにマックスウェーバーであると嘘をつくところ。出されたカリスマもそれに納得してしまうこのような軽快なやりとりが続き面白く読めました。

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    2021年02月21日
  • ブラバン(新潮文庫)

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    古いアルバムをながめる時のように、優しい時間をくれる物語だった。
    「人はなぜ音楽を奏でるのか」。
    「そいつと共にいるかぎりは何度でも生まれ直せるような気がするから」。
    音楽は生へのエール。

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    2021年01月03日
  • 五色の舟

    購入済み

    不思議な世界

    前半は異形の人達が見世物一座として疑似家族を作っている姿を描いています。
    後半はifの世界。
    パラレルワールドとか苦手なんだけどこれはすんなり読めました。

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    2020年12月30日
  • 妖都

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    人間、死ぬ寸前に「あぁ死ぬのか」と思うはずだ。そのときに書き遺すことが不可能な刹那の感覚、それはきっと誰そ彼刻と似ている。
    横溢する血や粘液は、生の証と同時に死の証。曖昧な境界線。境界線をいきつ戻りつする物語。
    安寧の地とならぬ東京は生きる屍として身体化され、私達に啓示を与える。

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    2020年10月25日
  • 五色の舟

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    どうしたらいいのだろう、何とも不思議な読後感。
    異形の者たちが身を寄せ合い家族となり、見世物となって戦時下を生き抜く。

    ひと昔前、世間から隠され、弾かれてきた人たちの哀しさ、強さ。
    弱い存在に思えるけど、彼らは逞しい。ただ自分への執着が薄く、家族への愛だけを強く持っている。そんな人たちを見ていると苦しくなるのだ。

    五色の舟というタイトルも、五色となった理由含め美しい。

    しっくりくる言葉が見つからない。こことは違う未来へと導く「くだん」、一度では無理だ。また何度も読もう。

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    2020年08月10日
  • ヒッキーヒッキーシェイク

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     面白かった。作家と出版社の関係で物議をかもした作品。文庫化されて良かったと、率直に思った。

     引きこもりのカウンセラーをしている男が4人の引きこもり(ヒッキー)とあるプロジェクトを始める。そのプロジェクトが意外な方向に動いていく。結末はある程度予想がついたのだが、ちょっとしんみりさせられる

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    2020年07月09日
  • 11 eleven

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    大変自分好みの傑作だった。ブラッドベリや澁澤龍彦のような世界観が好きな方は向いていると思う。よくもまあ、これだけの内容を無駄を削ぎ、この長さに磨き、11も生み出したものだと感嘆する。個人的には『五色の舟』『土の枕』のような時代がかった独特の雰囲気の舞台がとても好きだった。最後の話は実話にヒントを得たらしいが、祖先の名前という一つのきっかけがここまで気になる事、それを調べて納得いくまで磨き上げるというご本人の気質は作家として天性のものであり、リアルタイムでその恩恵に与れる同時代に私が生まれたことにはもう感謝しかない。

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    2020年06月03日