津原泰水のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
突然実質的クビを言い渡された、調理師免許持ちの編集者のナオノコトノボルこと尚登が送り込まれたのは、ぐるぐる写真家秋彦が開店を目論むエスカルゴレストランだった。
個性的な家族、讃岐と伊勢のロミオとジュリエットなど、人間的魅力のある面々のやり取りが面白い。笑えることをさらっといれてくるのがよい。桜がちょっと何を考えているのかよくわからず、あまり好きに慣れなかった。女性でいうなら梓の方が、何だかんだで大人で格好いい。尚登と秋彦のエスカルゴ兄弟も何だかんだで息があってる。飲食業はそんなに簡単ではなかろうと思いつつ、楽しい気持ちになれる本だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ幸せになる。
「何かを作る(創る)」ことに対する、著者の深い愛情を感じる。
和洋様々、そしてエスカルゴ!!という馴染みのない?料理の数々。
どれも美味しそうで、もう、食べたい……
うどん対決にも笑ってしまったが、まさかエスカルゴを乗せるとは???
まるっきり発想しなかったレシピなので衝撃。
なお、軍艦巻きが一番食べたい。食べたいったら食べたい。
キャラクターがどれも愛おしく、読者の「コレ!」というツボを押さえている感じもいい。サービス満点。
みんなちょっとずつはた迷惑で、可愛い。
桜というキャラの存外無遠慮なところと、酒豪に笑った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小さな出版社の編集者からいきなりエスカルゴを扱う店の調理師になる主人公。螺旋好きの写真家兼店長、高校生ながら家計を助けるためにガールズバーで働くその妹などその店の家族も複雑ながら面白い。
主人公の実家は讃岐うどん店なのに、伊勢うどん店の娘とほのかな恋愛も何だかロミオとジュリエットみたいで面白い。
本物のエスカルゴはどういうものなのか、ちょっと興味も湧くし、とにかく出てくる料理が全て美味しそう。
何となく原宏一さんみたいなテイストながら、出てくる登場人物たちはみんな良い意味で大らかでやっぱり津原さんらしいなとも思う。
終盤、あの猿渡がチラッと出てくる(名前だけなのが残念)のが嬉しかった。相変わらず豆腐と伯爵と仲良くしているみたいでニンマリする。
こういう気取らないお店なら入ってみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ先に新潮文庫から刊行された、『爛漫たる爛漫』『廻旋する夏空』『読み解かれるD』をまとめて単行本化したもの。
作者曰く「音楽小説であり青春小説であり推理小説」(※単行本版あとがきより)。
■好きなところ
・主人公・向田くれないと新渡戸鋭夫の、息の合った漫才のようなやり取りが痛快。個性的なキャラクター同士の掛け合いは、津原作品の醍醐味だと思う。
・くれないにとって鋭夫は遠い存在になっていくのかな…と思いきや、最後の4行で号泣。
・「読み解かれるD」の最後に、くれないが和気泉の言葉を口走る場面。何の必然性もないのだが、不思議と鮮やかで、最も主人公に感情移入した。
・作者が津原やすみ名義で書いていた少女小説「あたしのエイリアン」からの引用。「Preludio」に「なんてカラフル。」という一文を発見した時は、色めき立った。赤羽根菊子と岡村五月が逞しすぎる成長を遂げていて笑ってしまった(千晶はどうしてるんだろう…)。「あたしのエイリアン」ファンは必読。
・作風の広さや題材に、毎回毎回驚かされる。これからも新作を楽しみにしています。
■いまいちなところ
・津原作品の女性主人公は、さばさばしていて芯が強いキャラクターが多い。くれないも同系統で、あまり新鮮味はない。
・くれないは17歳で、登校拒否して友人がいない設定。17歳というには、大人びている気もする。自分では暗い性格でコミュニケーションが苦手と思っているが、実際は前向きで、初対面の相手でも臆せず喋る辺り、羨ましいくらいだ。17歳の時の自分を投影するには、「リア充」な主人公。
■制作の裏側
・いつもはいきなり一行目から書き始める作者が、「小説でロックを表現する」ために、音楽のレコーディングの過程を模して、詳細な設計図を組み立てた上で執筆したとのこと。設計図の作成には、アウトラインプロセッサという文書作成ソフトが使用されている。
・「最新作が最高傑作」という自らのポリシーを貫いた作品(※読み解かれるD 文庫版あとがきより)。かっこいい。