あらすじ
百年に一度生まれ、未来を予言するといわれる生き物「くだん」。鬼の面をした怪物が「異形の家族」に見せた世界の真実とは(「五色の舟」)―各メディアでジャンルを超えた絶賛を受け、各種ランキングを席巻した至極の作品集。津原泰水最高傑作短篇との呼び声が高い「五色の舟」を始め、垂涎の11篇を収録。著者による自作解題も併録。
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Posted by ブクログ
面白かったー。
短編集、初めて読む作家さん。
SFだったり、ホラーだったり、戦争ものだったり。
最初の「五色の舟」読んで、あまりの面白さに唸ってしまった。
戦中の日本で、疑似家族を形成し見せ物小屋で生活している異形の人達が、「くだん」に関わることで、運命が動き出すお話。
心がどこにあるのか?というテーマ。解説も面白かったなぁ。
世界線を越えるお話。家族愛のお話。
終わり方がとても好きだった。
幸せな世界線にたどり着いたのに、切ないっていう。
切ない繋がりでいえば、「テルミン嬢」も切ない終わりだった。がっつりSFで。
「土の枕」は風変わり戦争もの。
死の最後の瞬間に、本当の名前に固執する老人の姿が目に浮かんでしまって、泣けてきた。
Posted by ブクログ
初読みの作家。勝手にミステリー作家だと誤認識していたが、こんなSF的作品も書く作家だったのか驚く。
というよりも、ミステリーだSFだという枠を遥かに超えた作風の数々に感銘を覚えた。
特に、「五色の舟」は、「件(くだん)」という妖怪を扱っているので、てっきりホラー作品かと思ったのだが、平行宇宙を扱ったようなSF作品だったので驚いた。
Posted by ブクログ
面白かった…。
他の本と並行して少しずつ読んでいた。
どれも面白かったが、私は「手」が1番面白かった。
テルミン嬢は、コオロギ嬢を思い出した。
面白い作家だった!他の作品も全部読みたい‼︎
Posted by ブクログ
短編集は大抵あまり…なのだけれど、これはかなり好き。「五色の舟」もやっと読めた。これか……というのが感想。
全体的に歪な人たちの真っ直ぐな愛情というか、真っ直ぐな人たちの歪な愛情か。
良くも悪くも、心に残る物語でした。
Posted by ブクログ
大変自分好みの傑作だった。ブラッドベリや澁澤龍彦のような世界観が好きな方は向いていると思う。よくもまあ、これだけの内容を無駄を削ぎ、この長さに磨き、11も生み出したものだと感嘆する。個人的には『五色の舟』『土の枕』のような時代がかった独特の雰囲気の舞台がとても好きだった。最後の話は実話にヒントを得たらしいが、祖先の名前という一つのきっかけがここまで気になる事、それを調べて納得いくまで磨き上げるというご本人の気質は作家として天性のものであり、リアルタイムでその恩恵に与れる同時代に私が生まれたことにはもう感謝しかない。
Posted by ブクログ
好きな世界でした。面白かったです。
幻想的なホラーもあればSFもあり、色とりどりでした。
「五色の舟」「クラーケン」「テルミン嬢」「土の枕」が特に好きでした。
「五色の舟」は見世物小屋の家族と件という要素も、物語の行く末も、お話に漂う物悲しさと美しさも好きです堪らなく。薄暗く混沌としたあの頃の様子も。
「クラーケン」のラストの行動、主人公の女の気持ちがわかります。「あとは魔の領分だった」というラストの言葉選びも素敵。
「テルミン嬢」、深海の巨大な悲しみってなんだろう。。でも、海は悲しみという気がします。
「土の枕」はひとつだけほぼ実話という一篇なのですがすごい…ひとりの男の劇的な人生。他人の名前を騙って出征した為に自分の本当の名前を失う。男の息子は取り合わなかったけど、孫である津原さんの心には引っかかったから、このような物語になって残ったのだと思うと人生の妙を思いました。
なんだかとても充足しています。良い短編集でした。
Posted by ブクログ
難しくて疲れました。難しいというのは、物語が難解という意味でもあり、何が本質かを見つけるのが容易でないという意味でもあり、伝えたいことついて考えるのが難儀という意味でもあります。多くの作品が、脳が認識する現実世界が本当の世界なのかという疑問に沿って書かれているため、言葉そのものさえ本来の意味ではないような錯覚さえしてきて、構成も内容も脳みそに侵食してきて、ぐったりしてしまうのです。でも、だからこそ、評価されたのだろうと思います。記憶に残る短篇集です。
解説は、解説して欲しかった作品に全く触れていなかったので残念でした。分かりやすいものにしか触れていないようでしたので読みませんでした。
「土の枕」は『綺譚集』の中の「約束」と同じ書き方で、同じテーマだと分かりやすく、津原さんの関心が強いのかなと思いました。『バレエ・メカニック』風の作品や、お得意の音楽ものや、ホラー要素で読みやすいものなど色々あって盛り沢山です。私は作風がちょっと違う「キリノ」と「琥珀みがき」が好きです。どちらもとても共感(わかるなぁ、って感じが)しました。あとがきで「キリノ」は桐野夏生さんの特集のために書いた津原さんの自画像と知り、「琥珀みがき」は朗読用と知り、なお面白いと思いました。
Posted by ブクログ
ファンタジーだったりSFだったりホラーだったりどれでもなかったりするが
いずれも作者の偏った範囲で高い技術を感じさせる短編集
基本は幻想文学というくくりの作品ら
どの箇所にも入念なこだわりがちゃんと感じられて気持ち良い
Posted by ブクログ
幻想短編集というべきか。
誰も、孤独をかかえ、ひっそりとでも大事に生きようとしている。それなのに、誤ったり踏み外したり、翻弄される。それが人間ってものだからな。
娘を亡くした父親の戸惑いと、悲しみが、「延長コード」の重さに象徴されている。感情をほとんど出してないのに、延長コードが切なく表している。
グレードデンに魅入られて、救われると同時に、結局は救われない女の話「クラーケン」
何かに依存することは、弱さだ。だがそれがどうしても必要な時もある。そして、それだけで救われないことも多々ある。
弱さと儚さと孤独と、そういうものの中に美しい瞬間は存在するのだろう。
美しい物語だった。
そして、悲しい話達だった。
Posted by ブクログ
初津原泰水。
幻想的な短編集なのだけど、怪談ありSFありと文章や設定に濃淡があり、ただふわふわした不思議なお話を集めました、という感じにならないのがよかった。
突然世界の真ん中に落とされるような始まり方と、余韻の残る終わり方が素敵。
Posted by ブクログ
SFのショートショートに期待するような明確なオチはない。どちらかといえば幻想小説だし、そうとも言えない作品もあるし、まぁジャンル分けなんてどうでも良いのだけど。
不可思議な世界に誘われ、虜となり、抜け出せないまま、不安なような、恐ろしいような、寂しいような…そんなさざ波立った心持ちのまま物語は終わる。これが何か中毒性のある快感なのだ。すっきりするわけではないのに。
ひとを選ぶけど、ハマるひとはハマる短編集です。
Posted by ブクログ
「そんな人生は(中略)「よく人からエキセントリックな性格って言われます。自分ではそういうつもりはないんですけど・・・」なんてうかつな代物を顔文字つきで世界に向けて発信する、そのアップロードの一瞬を何十年にも引き延ばしたようなもんだと思うんだ。」
Posted by ブクログ
さめない悪夢の中にほうりこまれたような気持ちになる、珠玉の短編集。趣向をこらしたさまざまなジャンルの作品は、どれも甲乙つけがたいですが、中でも『五色の舟』は陰鬱でグロテスクなのに美しい物語です。
Posted by ブクログ
百年に一度生まれ、未来を予言すると言われる生き物「くだん」。鬼の面をした怪物が異形の家族に見せた世界の真実とは。(『五色の舟』)
津原泰水さんの短編集。
幻想的だったりSF風、怪奇小説風だったり、作品によって変わる文調も印象的です。
個人的に好きだった話は『土の枕』。戦時中の話で、津原さんの母方の血筋の「ほぼ実話」だそうです。こんなふうに誰かと入れ替わったり、もとの戸籍を失ってしまった人なんかもいたのかな。色々と考えるきっかけになり、戦争に関する日が多いこの8月に読んでよかったです。
『クラーケン』も良かったです。大型犬を飼う女性の話。女性の鬱屈と後に起こるであろう悲劇に思いを馳せずにいられない。
『テルミン嬢』の悲劇的でありつつ壮大な雰囲気も好き。
どの話も閉塞的でありながら遠くに思いを馳せるような、望郷の念にかられるようなそんな短編集でした。
Posted by ブクログ
どの短編もそれぞれの個性があって濃厚だが読みやすかった。意味はわからなくてもなんだか頭に残るという作品が多い。たぶん最後の一行が余韻を残しているのだと思う。
書かれている女性たちがリアルな女の姿に思えた。こういう人いるよね、となんとなく思うことが多かった。
全部良かったけれど「五色の舟」「手」「クラーケン」「YYとその身幹」「土の枕」が印象的かな。
中でも「土の枕」は凄いと思ったが、まさかほぼ実話とは!
戦争で混乱しているときならあり得ることなのかもしれない。偽りの身分で騙し通したこと、本当の名前をもう自分以外に知っている人はいないこと、奇妙な虚しさに包まれた。
私は、自分が何者かを決めているのは名前のような気がしていて、だから本当の名を名乗れないまま死ぬのはかなりの苦痛が伴うだろうと想像した。
Posted by ブクログ
11の短編集です。
表紙を飾る「四谷シモン」作の人形は
津原作品にはピッタリだと思うんですよね。
内容も期待を裏切りませんでした!
夢と現、幻想とホラーの狭間というのでしょうか?
あやふやな感覚と余韻がたまりません。
特に好きなのは「五色の舟」「手」「土の枕」
独特の時間を過ごしましたぁ~
Posted by ブクログ
「五色の舟」の漫画版がたいへん素晴らしかったので原作も読んでみた。タイトル通り11の作品からなる短編集で、冒頭を飾るのが「五色の舟」だ。短篇ながら、漫画版の要素はほとんど含まれている。地の文で軽く説明されている内容を、漫画版は具体的に描いていたということだ。漫画版は淡々とした絵柄と残酷な物語の落差が魅力的だが、小説版は絵が無いことでイマジネーションが広がる良さがあり、どちらも文句無しの名作。
収録作品は、題材もストーリーもヴァラエティに富んでいるが、ほとんどは、明確な起承転結を持たない不条理感に満ちた幻想小説だ。文体も作品によって変わるが、基本的には純文学のタッチで、このような題材を、これだけ研ぎ澄まされた文体で書いてくれたことに感動する。幻想小説やホラー小説の類は結構好きだが、ベストセラーになっているものを読むと、どんなにストーリーが面白くても、読者におもねった下品な文体にガッカリさせられることが多い。その点、本作の存在は極めて貴重だ。別に純文学だから偉いと言うことではなく、文体そのものが持つ美しさと強度がまるで違うのだ。
最も好きなのは「五色の舟」だが、それに次ぐのが「延長コード」と「土の枕」。「延長コード」は、幻想色は薄いものの、「五色の舟」と同様、此方の世界と彼方の世界の間で揺れ動く人間の姿を描き、唐突な幕切れと相まって鮮烈な印象を残す。「土の枕」は、幻想色皆無と言っていい作品だが、大正〜昭和前半の小説を模倣した文体が面白い。「五色の舟」に通じる要素も垣間見られるし、ここでも2つの世界というテーマが貫かれている。文学的な完成度の高さでは、この3作が際だっているように思う。
それ以外では、ホラー小説風の「手」や、三島由紀夫と江戸川乱歩を混ぜ合わせたような「微笑面・改」などがかなり面白い。「YYとその身幹」や「テルミン嬢」などピンと来ない作品も幾つかあるが、総合的には傑出した短編集だ。今回初めて知った作家だが、他の作品も読んでみたい。ただしいろいろなジャンルで全く違う作品を書いているようなので、この手の作品が読みたいのであれば、事前の調査が必要になるだろう。
なお本作は、2014年のSFマガジンで、オールタイム・ベストSFの国内短篇部門第1位に輝いたそうだ。しかし「幻想小説」なら分かるが「SF」と言われると、いささか首を傾げる。普通にSFと言えそうな作品は「テルミン嬢」くらい。「五色の舟」など此方の世界と彼方の世界を題材にした作品をパラレルワールドものとみなすことは出来なくもないが、それにしても他の作品を押しのけてオールタイムのSF1位と言われると、何か違うような…
Posted by ブクログ
11の作品からなる短編集。
大好きな伊坂さんが進めていた作家さんだと思い、読んでみた。
帯にジャンルを超えたと書かれているが、
まさにそのとおりというか個人的にはノンジャンルという印象。
正直SFというイメージで読み始めてしまったためかなかなか読み進められず理解に苦しんだ。
どれもそれぞれにインパクトがあるが、
最初の「五色の舟」がなんだかんだ一番好きかもしれない。
難しさを感じずにはいられないが、
時間をかけて2,3度読むと深まっておもしろいかもなと思える一冊だった。
「バレエ・メカニック」も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
収められた11の短編どれも違った味わいだが、共通して怪しげな輝き方をする。「バレエメカニック」のときもそうだったが、描かれた世界を頭の中に想像しようとするのだが、自分の能力を作品が遥かに上回ってできないことがもどかしい。降参しようとするのだが、物語が力ずくで脳を押し広げようとする。そんな、辛いながらもなかなか体験できない1冊だった。
Posted by ブクログ
逝去の報にびっくり。まだお若かったのに…。本作は追悼の意を込めて、家に積読いてあったものからチョイス。☆は1つプラスで。…ってことは実際には…ってのはさておき、やっぱり短編集はちょっと苦手。さらには、SF寄りってのも個人的にピンとこない理由。豊崎社長の書評然り、大森さんの解説然り、絶賛の嵐な訳で、問題はきっと、ちゃんと読めない自分の方にあり。でも率直な評価です。
Posted by ブクログ
11個の話が入ってるから「11」。ジャンルは幻想小説?スティーブン・キングの息子ジョー・ヒル「20世紀の幽霊たち」と似ている。神経や肉体を損傷するような話が多く、少し辛い。
「追ってくる少年」2回読み返した。犬と臓器が交わるとさらっと書いてあって怖い。
「テルミン嬢」1人の女性と大洋や宇宙との交感ってよくあるパターンだけど、これだけ痛みがあるのは珍しいかも。
「土の枕」これ好きです。読み返してもしみじみする。
Posted by ブクログ
幻想、SF、ホラー、文学など11話の作品を収録した短編集。
自分が今まで読んだことのない物語たちでした。短編それぞれが多種多様なジャンルをまたいでいる、というのもありますが、それに加え文章もそれぞれの短編の味を最大限に引き出すため、それぞれに工夫が加えられている、そんな風に思いました。
そうした短編たちばかりだったので初読での評価が非常に難しい、というのが正直な印象…。自分の理解の範疇を越えているように感じた短編もいくつかあって、あらためて小説の世界は広いのだな、と感じました。
そんな中印象的だったのは、異形の家族がたどり着く新たな運命を描いた「五色の舟」。幻想的かつ圧倒的な物語の力、想像力の強さを感じさせられます。これまでも、そしてこれからもこういう作品は生まれないように思います。
「微笑面・改」は自分の顔の前に常に別れた妻の顔が見えるようになった男の話。シュールなホラー形かと思いきや最後で男がたどり着いた心理は過ぎ去った過去への郷愁を感じさせます。
「琥珀みがき」はショート・ショート。ラスト一行でぐっと心がつかまれます。
脳科学と音楽をテーマにしたハードSF「テルミン嬢」は理論が難しかったものの読みごたえは十分。
そして「土の枕」も「五色の舟」に負けない唯一無二の短編であるように思います。20ページに満たない短編ながら、戦争と、戦後の時代の雄大かつ急な流れ、そしてその流れの中での人間の小ささ、そんなものを濃密に感じさせてくれる短編でした。
既存の小説で満足できない、という人にはぜひ読んでみてほしい短編集です。自分もまた時を置いて再びこの短編集は読むことになるのだろうな、と思います。
第2回twitter文学賞
Posted by ブクログ
五色の舟
なんなんだこれは
不思議な読後感
延長コード
これも不思議な話。結局何が言いたいのか・・・
追ってくる少年
う〜ん
微笑面・改
これ好きかも
琥珀みがき
なんとなく好き
キリノ
これは嫌い
読み辛い
〜的アトモスフィアってなんだよ
手
これは怖い
クラーケン
なんか気持ち悪い
YYとその身幹
結局気になってしょうがないという訳か
テルミン嬢
そりゃ薬漬けは嫌だろうけれども
土の枕
最後は歴史小説
これは面白い
Posted by ブクログ
心の奥の混沌とした暗闇の中から何ものかを取り出して、陽の当たる場所にさらしたような、あるいは胸にあいた風穴から欠落したしたものを丁寧に掬いあげて提示したような、そんな短編集でした。フィクションをリアルな物語として捉えられるのは、誰もが心の奥底に混沌とした部分を秘め持っているからなのでしょうネ。文学のジャンルを超えた、とても味わい深い一冊でした。