津原泰水のレビュー一覧
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このルピナス探偵団は元々1994、95年に講談社X文庫TEENS HEARTから『うふふルピナス探偵団』『ようこそ雪の館へ』の2冊が発売された。その後著者は少女小説家を卒業してしまったのだが、その後その2冊分を大幅に改稿し(『うふふルピナス探偵団』は「冷えたピザはいかが」と改題されている)+もう一編「大女優の右手」を書き下ろし、原書房ミステリー・リーグから『ルピナス探偵団の当惑』として2004年に単行本化された。今回はその原書房で単行本化されたものの文庫化である。X文庫版も、原書房版も読んだのに、また買って読んでしまった。普段なら文庫で756円なんて高い!!と思ってしまう私ですが、元々の文庫が
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ネタバレ主人公達が羅刹国と呼んでいる夢の中での出来事と、現実での出来事が交互に語られていく形式で進んでいく物語。
物語の解釈について、単行本の解説内で解説者さんが幾つか提示されていたり、著者さんの思惑も記されていたりしたけれど、私は羅刹という設定の裏側に隠されている意味は深く考えず書かれているそのままを楽しみました。
羅刹国での共食いの様子とか、Gをどっかから出しちゃうとことか、結構グロテスクな場面があるんだけど、オノマトペで表現されてないからか割と淡々と状況が語られていて、それが良かったです。
気味の悪いオノマトペが散りばめられているお話も悪くはないと思うけど、オノマトペに頼らない表現方法で進んで -
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百年に一度生まれ、未来を予言すると言われる生き物「くだん」。鬼の面をした怪物が異形の家族に見せた世界の真実とは。(『五色の舟』)
津原泰水さんの短編集。
幻想的だったりSF風、怪奇小説風だったり、作品によって変わる文調も印象的です。
個人的に好きだった話は『土の枕』。戦時中の話で、津原さんの母方の血筋の「ほぼ実話」だそうです。こんなふうに誰かと入れ替わったり、もとの戸籍を失ってしまった人なんかもいたのかな。色々と考えるきっかけになり、戦争に関する日が多いこの8月に読んでよかったです。
『クラーケン』も良かったです。大型犬を飼う女性の話。女性の鬱屈と後に起こるであろう悲劇に思いを馳せずに -
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始まった時点で、普通ならヒロインになるだろう存在が死んでるってのはなかなか凝った構成。
なんのかんので、柏木とか普天間とかとのエピソードが甘酢っぱい感じで、主人公モテモテだよなあ。元ブラバン顧問の先生ともそういう関係になっちゃうし。
父親にエレキベースを買ってもらうエピソードとか、事故で右腕を失った辻からベースを渡される話とか、バンド経験者にはたまらんな。名言もいっぱい。
再結成の話なのに、普通なら一番の見せ場になるはずの演奏シーンがないところが斬新。それでいてこれだけ魅力的な話をかけるということに驚いた。作者はホラーの人だと思ってたけど、こういう話を他にも書いているなら読みたいな。
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40代の今を主軸に、高校時代を回想する形式。高校時は「一体何なんだ」と言葉にできない、掴みどころのない経験が、時間を隔てる事で肝がわかる感じになってると思う。
だから、つい自分の高校時代を思い出す。
行ったことないけど、きっと同窓会に行ったら同級生の事を「あの頃あんな事してたから今こんなだわ」とか、「上手いこと世渡りしよるんは、気づかんかったけど、あの頃から策士だったんだろうなぁ」とか、過去に結びつけるような解釈を、頭の中で勝手に繰り広げるんじゃないか。それを大掛かりにした感じの小説かもしれない。
一番気になるのは、来生が何者か。
少し前の小説なので違うと思うけど、もしも今、映画化されたら -
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不思議な感覚で意識が曖昧、頭にモヤがかかった状態で読むとなんとなく理解できる。そして文豪作家より読みやすいと思ったら少女向けの小説も書いていた作家。羅刹国という夢の中の精神世界とでもいうのか、そこは砂漠で最終を探すため歩き続ける。留まる事は死を意味する。
死に至った主人公はまた羅刹国に戻っていたそこで話は終わるが本当はまだ続くらしいが完結する前に作者が亡くなって未完のまま出版された。
でもこのまま終わっても読み応え充分な作品で羅刹国の描写や主人公の心情は理解できるしもっと深い意味があるという余韻に浸る事ができる。
初期の精神疾患を患っている設定なのか常軌を逸していないので理解不能には至らない作 -
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ネタバレいつまでも目覚めることができない悪夢のような小説だった。
けれど流れるような美しい文章にスーッと吸い込まれていくようで、読んでいて苦にならない。語り手が冷静で、あまり感情的でない点もいい。難しくてなんのことを言っているのか分からないシーンもあるのに、読む速度が落ちないのが不思議だった。
自暴自棄のような木根原の生き方も、すべては娘の事故から始まったと分かった瞬間に嫌悪から同情に変わった。第一章の終わりで、死んでいく娘と語らうシーンは特に良かった。娘と父親だけが知っている美しいシーンだった。この別れのためにあの幻覚があったのかと納得した。
第二章で理沙が消滅していないことが判明したときは鳥肌が立 -
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理恵は十二歳のとき、崖から叔父を突き落として殺した。高校生になった理恵は、見知らぬ少年に「人殺しのくせに自分が鬼だと気づいていない」と言い放たれ、自分の額に二本の角が生えているのを知る。それから理恵の夢は角を持つ者たちが互いを貪り合う〈羅刹国〉へと通じるようになった。2000〜2001年に発表された作品の初の書籍化。
未完扱いらしいけど本当に続きを書くつもりあったのかな。確かにもう一段深いところへ潜り込んでいくところで終わっているようにも思えるけど、強烈だけど魅力もある悪夢から、灰色で虚無的な現実に着地する宙ぶらりんの余韻が相応しい作品にも思える。空想的な飢えと争いから、現実的な経済と労働 -
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解説の方は自己完結的なフィクションだと最初思ったと書いていたけれど、私には最初からこれは社会と人のありようを示した寓話のように思えた。本当は対立がないかもしれないところに二項対立を自ら作り出し、どちらかの側に着くと決めて戦う。それがいつの間にか生きるよすがになっている。多分、そうしている方が楽だから。でも、その二項対立を超えて次の世界へ至る様がラストシーンなのだろうと感じた。きっとそうする力が、個人にも、社会にも、あると信じたいという気持ちが結実したようなラストだった。読み終えてしばらく、感慨に耽ってしまって動けなかった。きっと折に触れて思い出し読み返す作品になるだろうと思った。(人によって解
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圧倒的なまでの90年代の香りを醸し出す作品。
バブル期日本の思想が無く、目的もなく、ひたすら周りよりいかにイケてるかという軽薄なかっこよさと同時に存在する虚無感と死への誘い。
岡崎京子のリバーズエッジや岩井俊二のリリィ・シュシュのすべてを思い出さずにはいられなかった。
解説でラストがオープンエンドであることに触れられていたが、エヴァにしろ何にしろこの時代の作品はオープンエンドが多い。結局目指すべき方向性とその基となる思想を失っていた時代なのだからきっちりとした結末を用意できない事は仕方がない。
心地よいナルシシズムと表裏一体の自己破壊願望を存分に堪能しつつも、やはり時代と寝た作品でもあると思っ