津原泰水のレビュー一覧

  • 赤い竪琴

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    『バレエ・メカニック』から読みはじめた私としては、津原泰水ってこんな作品も書けるんだーと、ちょっと意外。
    まったく毛色が違うけど、すごく好きな作品。

    祖母の遺品として出てきた夭折の詩人の日記を孫・耿介に渡しに行く暁子。楽器職人である耿介はお礼に赤い竪琴を渡す。それを自宅に持ち帰る暁子。

    翌日、暁子は耿介に恋をしていると気づく。

    ここで、暁子と一緒に耿介に恋できるかどうかで、この作品の評価が分かれそうなんだけど、私は耿介の登場から完全に目にハートマークがついてました。
    でも、よく読むと、耿介の容姿につてはまったく触れられてないのよ。
    なのに、「この人好き」って思えるってどういうこと?

    私はそれを、津原泰水の文章力の凄さだと思ってます。

    暁子は夭折の作家となにか関係があったのではと思われる祖母との関係を、自分たちの関係になぞらえます。
    こういう思い込みも、なんか共感できる。
    私もそういう妄想タイプだ。

    好きだと思いながら、積極的になれない、線引をしてしまう暁子と、それに呼応したかのように淡白な耿介の他人行儀な関係にイライラしつつもドキドキしてしまう、そんな恋愛小説です。

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    2010年06月10日
  • ルピナス探偵団の当惑

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    可愛い話。
    祀島君が好きです。天然でクールって、最高だと思う。キリエのさばさばした性格も大好き。
    初期のタイトルが「うふふ ルピナス探偵団」だったのを知ってもっと好きになった。
    サイコ、好き。

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    2009年12月07日
  • ルピナス探偵団の当惑

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    このルピナス探偵団は元々1994、95年に講談社X文庫TEENS HEARTから『うふふルピナス探偵団』『ようこそ雪の館へ』の2冊が発売された。その後著者は少女小説家を卒業してしまったのだが、その後その2冊分を大幅に改稿し(『うふふルピナス探偵団』は「冷えたピザはいかが」と改題されている)+もう一編「大女優の右手」を書き下ろし、原書房ミステリー・リーグから『ルピナス探偵団の当惑』として2004年に単行本化された。今回はその原書房で単行本化されたものの文庫化である。X文庫版も、原書房版も読んだのに、また買って読んでしまった。普段なら文庫で756円なんて高い!!と思ってしまう私ですが、元々の文庫がそれぞれ400円、420円だったことを考えると2冊文+αで756円は安い!そして、面白い。10年間で3つの出版社にまたがって発売されていることからもその面白さはうかがえると思う。たまたま密室の謎を解いてしまった事によって(その事件については本の中では詳しく書かれていない)、刑事の姉不二子が持ち込んでくる事件を、解決するように迫られる日々を送る彩子。彩子は友人であるキリエ、マヤ、そして憧れの人祀島くんとともに謎を解く。どうして殺人を犯した直後に被害者に食べ残したピザを食べていったか、 どうして血文字のダイイング・メッセージは鏡文字になっていたのか、どうして女優の死体から右腕だけが盗まれたのか。少女小説らしい軽妙さと、本格的な謎の融合が魅力的。彩子の恋がどうなっていくのかも気になる。秋に発売される続編『ルピナス探偵団の憂愁』も楽しみだ。

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    2011年07月20日
  • ヒッキーヒッキーシェイク

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    おもしろかった。とにかく速い、というか、テンポがすごいというか、疾走感というか。そんなに飛ばしても小説って、物語って成り立つのか、読者って理解できるもんだな、って。
    ただ、ほかの作品も読みたいかと言うと、まあ、当面は良いかなというのも本音。もちろん、おもしろかったんだけど。もっと深いところまで潜るかなと期待してしまっていたので、どこか物足りなさみたいなものも少しあった。とはいえ、面白いんだけど。

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    2026年10月01日
  • 烏と孔雀

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    短編集。
    1作目「幻獣たち」が正しく出落ち!これだけでも万人におすすめしたい。そしていろんな人の反応を知りたい 
    名作とは言わないがつきつめると私はこういう小説が読みたい一心で読書を趣味としてる。いいか悪いか別にして。
    他のは時間あったら読んでいいのではないでしょうか(失礼過ぎ)
    津原作品なら長編「妖都」「バレエ・メカニック」が感動的傑作です。短編集は「蘆屋家の崩壊」「綺譚集」を推します。

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    2026年08月29日
  • 赤い竪琴

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    敬愛する津原泰水氏の未読の作品をまた一つ減らしてしまった。本書は恋愛小説。しかも純愛小説。本来僕の読むような(好みの)ジャンルではないけれど、やはり氏の静謐で美しい文章。楽しく読んだ。さてとっておきの『烏と孔雀』いつ読もう。もったいなくて読み始める勇気がまだ出ない。

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    2026年07月23日
  • 小説教室 忘れられない小説を書く

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    ネタバレ

     初めて短編小説を書く人のためというより、長編小説を書くかつ、公募を目指す方向けに感じた。講座を文字起こしした内容なので、脇道に逸れた話もあり分かりにくい点があった。執筆のトーンを一定にするコツや美しいを安易に使わないのは参考になったが、作家で使っている方もいるので意見は分かれそうな内容でした。

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    2026年07月08日
  • ルピナス探偵団の当惑

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    会話が、やり取りがテンポよく進む
    個人的に謎解きして、はいおしまい!みたいなミステリーが得意ではなかったので、このようなキャラが立つ、なんともない会話が面白いミステリーは大好きです。
    探偵団の4人、警察のメインキャラはもちろん、事件の犯人、巻き込まれる人たち、皆魅力的です。

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    2026年07月04日
  • ヒッキーヒッキーシェイク

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    ネタバレ

    4人の引きこもりと、彼らのカウンセラー竺原。
    人間造りのプロジェクトのお話。

    竺原の本当の目的や、引きこもり各々の状況、結末も良かった。
    タイムくん可愛いらしい。
    パセリの性格も好き。
    ローズマリーとセージの友情も良き。
    竺原と地元の友人達との関係や、死神さんとの恋も素敵。
    それぞれのキャラクターが見事で、過不足なく成立してる。
    面白かった。
    最後のミッションはなかなか手強そう。

    印象的なのは
    「自分を直視しなくては、と芹香は痛感した。ほかの人生は無いのだ。ほかの人生は無いのだ!」

    ここ良い!素晴らしい。勇気の出る一文。

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    2026年04月23日
  • 11 eleven

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    短編集だと思って侮ってたけど、一つ一つが濃密すぎる。
    読み終えるたびに、良い意味でドッと疲れる。
    これ、何度も読み返したくなるかもしれない。

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    2026年04月15日
  • 綺譚集

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    ミステリ、ホラー、幻想文学、エログロなどを同じ人は思えない多様な文体で横断する短編集。

    どれもなんとも言えない奇妙な味わいのある話。
    肉体の感覚を強調し、なんとも言えないむず痒さを感じる。死体や骨、肉など、根源的な対象に降りていくことで、人間の身体を再認識するような感覚。

    自分が気に入ったのは
    「天使解体」
    「サイレン」
    「脛骨」
    「玄い森の底から」
    「黄昏抜歯」

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    2026年04月01日
  • ルピナス探偵団の憂愁

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    敬愛する作家、津原泰水氏の青春ミステリ。僕の好みのジャンルではないのだが、相変わらず登場人物達がチャーミング。物語を時間を遡る形で配置しているところがうまい。泣ける。そうか、もう一作書かれるおつもりだったのか。亡くなってしまったのがつくづく残念。

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    2026年02月27日
  • 羅刹国通信

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    ネタバレ

    主人公達が羅刹国と呼んでいる夢の中での出来事と、現実での出来事が交互に語られていく形式で進んでいく物語。
    物語の解釈について、単行本の解説内で解説者さんが幾つか提示されていたり、著者さんの思惑も記されていたりしたけれど、私は羅刹という設定の裏側に隠されている意味は深く考えず書かれているそのままを楽しみました。

    羅刹国での共食いの様子とか、Gをどっかから出しちゃうとことか、結構グロテスクな場面があるんだけど、オノマトペで表現されてないからか割と淡々と状況が語られていて、それが良かったです。
    気味の悪いオノマトペが散りばめられているお話も悪くはないと思うけど、オノマトペに頼らない表現方法で進んでいくお話の方が想像の幅が広がるように思える。

    あと、ちょっとだけ違和感というか気になったというか。
    主人公が固定電話使ってたり(2000年にスマホはまだ無い)、バスの運賃を現金で払っていたり(交通系ICカードっぽいのもまだ無かったはず)、昔よく耳にしたメントール系の細いタバコの銘柄が出てきたり。
    25年ほど前に文芸誌で発表された物語だから、これはしょうがないよね。。

    昨年読んだ「改元」に近い読み応えだったけど、設定はこちらの方が好みなので、羅刹国の新たな場所にたどり着いた所で終わってしまったこのお話の続きは永遠に望めないということが非常に残念です。
    (と思う一方、むしろこの終わり方がより幻想的な感じを深めていて良いのかも…と思ったりもするけど)


    表紙の、このグレーの淡い感じも内容に合ってる気がしてます。読む前は単に幻想的な感じを出してるのかなって思ってたんだけど、読み終えてからは、羅刹国の荒涼とした地に佇んでる理恵を横から見た場面(黒髪が風になびいていて、鼻元がちらっと映ってるような)にも見えたりして。
    あと、カバーめくったら、ハードカバーの上下に若干の黒ずみがあって。表表紙は左上に裏表紙は右下にあるから、これは多分意図的ですよね… 羅刹国通信って、羅刹国から戻って来た あるいは羅刹国にいる間に理恵が書いたのかな、それともこの本を汚れた手で持って読んだのかな、そんな風に勝手に解釈して楽しんでます。

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    2026年01月31日
  • 妖都

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    久しぶりに津原の世界に浸りたくなって年末からちまちま読んでいた。文体の妙も然ることながら、自在に繰り広げられる妖しい世界と、深い人間味と硬質な駒っぽさを併せ持つ登場人物たちが本当に魅力的だった。

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    2026年01月05日
  • 11 eleven

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    百年に一度生まれ、未来を予言すると言われる生き物「くだん」。鬼の面をした怪物が異形の家族に見せた世界の真実とは。(『五色の舟』)


    津原泰水さんの短編集。
    幻想的だったりSF風、怪奇小説風だったり、作品によって変わる文調も印象的です。

    個人的に好きだった話は『土の枕』。戦時中の話で、津原さんの母方の血筋の「ほぼ実話」だそうです。こんなふうに誰かと入れ替わったり、もとの戸籍を失ってしまった人なんかもいたのかな。色々と考えるきっかけになり、戦争に関する日が多いこの8月に読んでよかったです。

    『クラーケン』も良かったです。大型犬を飼う女性の話。女性の鬱屈と後に起こるであろう悲劇に思いを馳せずにいられない。
    『テルミン嬢』の悲劇的でありつつ壮大な雰囲気も好き。

    どの話も閉塞的でありながら遠くに思いを馳せるような、望郷の念にかられるようなそんな短編集でした。

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    2025年08月09日
  • ルピナス探偵団の当惑

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    敬愛する幻想作家津原泰水のミステリ短編集。僕の本来の好みの津原作品ではないものの、登場人物のキャラクターが、セリフが楽しい。本にまとめるにあたって書き足された「大女優の右手」はさすが。僕の推しはキリエちゃん♪ また余裕ができたら、続きも読もう。

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    2025年07月11日
  • ブラバン(新潮文庫)

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     始まった時点で、普通ならヒロインになるだろう存在が死んでるってのはなかなか凝った構成。
     なんのかんので、柏木とか普天間とかとのエピソードが甘酢っぱい感じで、主人公モテモテだよなあ。元ブラバン顧問の先生ともそういう関係になっちゃうし。
     父親にエレキベースを買ってもらうエピソードとか、事故で右腕を失った辻からベースを渡される話とか、バンド経験者にはたまらんな。名言もいっぱい。
     再結成の話なのに、普通なら一番の見せ場になるはずの演奏シーンがないところが斬新。それでいてこれだけ魅力的な話をかけるということに驚いた。作者はホラーの人だと思ってたけど、こういう話を他にも書いているなら読みたいな。

     以下は刺さったフレーズ。

     すっかり酔ってしまった風情の笠井さんが僕をつかまえて言う。「他片くん、ビゼーはええねえ。ビゼーの曲はやさしいねえ」
     ビゼーを優しいと感じる、あなたが優しいのだ、と僕は思った。

    「どこ行っとった」
    「平和公園に」
     彼は目を見張った。「ローマ法王か」
    「はい」
    「聞いてわかったんか」
    「日本語でした」
    「ほうか」と彼は顎に手をあて、「ええ話じゃったか」
    「僕らにじゃのうて、神様に祈っとられました」
    「最後まで聞いたんか」
    「はい」と僕は頷いた。
     彼も頷いた。「ほいならええ。出席にしとく」
     悪魔の手先ではなかった。

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    2025年05月27日
  • 羅刹国通信

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    どうやら未完らしい。確かに続きを感じさせるラスト。ルピナス探偵団の人がこういう幻想小説も書くなんて知らなかったな。連載が2001年ってことは出てきた震災は東日本じゃなくて阪神淡路なのか。当時に比べると、鬼になることがポジティブに捉えられる世の中になったかもね。

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    2025年05月17日
  • ブラバン(新潮文庫)

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    40代の今を主軸に、高校時代を回想する形式。高校時は「一体何なんだ」と言葉にできない、掴みどころのない経験が、時間を隔てる事で肝がわかる感じになってると思う。
    だから、つい自分の高校時代を思い出す。

    行ったことないけど、きっと同窓会に行ったら同級生の事を「あの頃あんな事してたから今こんなだわ」とか、「上手いこと世渡りしよるんは、気づかんかったけど、あの頃から策士だったんだろうなぁ」とか、過去に結びつけるような解釈を、頭の中で勝手に繰り広げるんじゃないか。それを大掛かりにした感じの小説かもしれない。

    一番気になるのは、来生が何者か。
    少し前の小説なので違うと思うけど、もしも今、映画化されたら、きっと彼は黒幕だ。

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    2025年05月08日
  • バレエ・メカニック

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    ネタバレ

    美しい、悪い夢だなぁ。
    巻き込まれる東京にとって悪夢なだけで、理沙は普通に夢を見ている。
    理沙の夢に引きずり込まれて、幻想世界かと思ってたらどんどんサイバーパンクへ。
    文章は美しいし、寂寥感が漂ってて好きでした。どうにかして対抗しようとしてももう、全てが手遅れな気配です。

    筒井康隆先生が帯書くはずだ…と、昔々に読んで観た「パプリカ」を思うなどしました。確か空気感が全然違うけど。
    幻想とSFの垣根をやすやすと行き来する津原先生の世界をもっと読みたかったです。

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    2025年04月29日