夢想渦巻く夢幻の世界へ。
幻想きらめくシュルレアリスムの世界から始まりSFの世界に着地する、一幅の奇譚。
3部構成は、少しずつ主要人物と時系列をずらしながら繋がっていく。
さて、話を要約してしまうと面白くとも何ともないレビューになってしまうのが悩ましい。
感想だけ述べるなら、情景描写も世界観も、話
...続きを読むの展開もすべて心地よく、作品世界にすっかり埋没し、感動させられた。各部とも、その結末部で鳥肌が立った。
本書が分かりづらい、という感想も見かける。
最初から理屈で考えると難しい作品に見えるのかもしれない。しかし一言でいえば、これは"夢"である。
夢だと思って、まずはその奔放なイメージを素直に受け止めて頭の中で情景をそのまま展開すると、そのうち作品のほうから割とサービス精神旺盛に秘密を次々披露してくれる。
そういう意味ではテンポが良いし、しかも各部ともしっかりとオチをつけてくれる。
その種明かしが、どれも美しく、どこか物悲しく、そして、人は一人で生きられないという人間の本能に根差した世界観が根底にあるように感じられ、それが得も言われぬ共感と感動を呼ぶ。
少しとっつきにくいところもあるかもしれないが、個人的には大変お勧めできるエンタメ作品だと思う。
すっかり魅せられてしまったな。