津原泰水のレビュー一覧
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最も敬愛する作家の一人、故津原泰水氏の手になる珠玉の連作短編集。本当は一冊読めば、また一冊津原氏の未読の本が減る、それが寂しくて手を出すのを躊躇していたが、やはり繙いてしまう。創元のこととて、帯に「ミステリ連作集」とあるが違う。これは津原氏の人形愛から紡ぎ出された人形を巡る短編集。もちろんミステリの味つけのものもあるが、風変わりな恋愛譚、幻想譚、芸術家の凄みを表した芸術小説、職人の人生を描いた短編という多彩なもの。やはりどれも津原節が横溢。読み進めるに従ってたまさか人形堂が、登場人物たちが好きになるので、最終話、寂しくなるが、最後にほっとして、次作への期待が脹らむ。読んでよかった!
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Posted by ブクログ
都市が、夢に侵食されていく――。『バレエ・メカニック』は、そんな予感とともに幕を開ける。
造形家・木根原の娘、理沙は九年前の事故で昏睡状態にある。ある日、東京全体が幻覚に襲われ、現実と夢の境界が崩壊を始めた。巨大な蜘蛛が街を徘徊し、存在し得ない津波が押し寄せ、電子機器は暴走し、モーツァルトの調べが鳴り響く。理沙の主治医であり、異性装の外科医である龍神は、この都市そのものが彼女の脳と化し、壮大な「夢」を見ているのではないかと推測する。本作は、その都市が見る夢の謎をめぐる物語だ。
この作品でまず圧倒されるのは、第一章の筆致だ。シュルレアリスムを小説で描いたらどうなるか、という問いに見事な答えを -
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初めて読む時は先が気になって急いで読んでしまうので気づかなかったことが多い。今回はゆっくり読んでいて、読みながら気になったことを調べつつ読み進めた。登場人物たちのハンドルネームは聖司と芹香からきていると思い込んでいたが、スカボロー・フェアの歌詞からであった。この歌を知っているつもりでいたが、ネットで訳詞と解説を読んで『parsley, sage, rosemary and thyme』の意味やこのイギリス民謡の内容に、ああそういうことだったんだと感服した。作者の意図とは全く違うと思うが、偽善やエゴであったにせよ、こういう形の社会貢献をしてみたいと思った。
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Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったー。
短編集、初めて読む作家さん。
SFだったり、ホラーだったり、戦争ものだったり。
最初の「五色の舟」読んで、あまりの面白さに唸ってしまった。
戦中の日本で、疑似家族を形成し見せ物小屋で生活している異形の人達が、「くだん」に関わることで、運命が動き出すお話。
心がどこにあるのか?というテーマ。解説も面白かったなぁ。
世界線を越えるお話。家族愛のお話。
終わり方がとても好きだった。
幸せな世界線にたどり着いたのに、切ないっていう。
切ない繋がりでいえば、「テルミン嬢」も切ない終わりだった。がっつりSFで。
「土の枕」は風変わり戦争もの。
死の最後の瞬間に、本当の名前に固執する老