津原泰水のレビュー一覧
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シュールレアリスムに始まりサイバーパンクで終わる。
発売当初から感想や書評を読んでも、どんな話かさっぱりわからなかったけれど、実際読んでみて、これは読まなきゃわからないな、と思った。
様々なところでシュールレアリスムとかサイバーパンクとか言われていて、実際各章を取り上げるとそういう分類になると思うけれど、すべて読み終わったときの印象は、綺麗な話だな、ということだった。
抽象的な表現だけど、私の内にある言葉では具体的に表すのはとても難しい。内側にある言葉で表そうとすると、そういう表現になってしまう。
たぶん個々のキャラクターについて書けば、それなりに具体的な書き方もできるだろうし、個々のキャラク -
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前衛芸術家、木原の娘は事故で9年間昏睡状態にある。
彼女は、都市を巻き込んで夢を見る。
読みながらずっと小松左京の「ゴルディアスの結び目」と萩尾望都の「バルバラ異界」を思っていた。眠り続ける娘の夢が共通だからといえばそれだけなのだが、それだけじゃないように感じていた。
眠りは、ある種の<死>だ。
その<死>の中で、「生きている」ということを探し続ける父親の姿は、普遍であり、愛情深いものだ。が、「夢」はそれを拒絶していく。
娘の主治医、龍神はそれを目の当たりにして、自身の喪失にうちのめされる。
もう決して手にできないものだからこそ、人は求めずにいられないのだ。
その当た -
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祖母の形見の人形店を継いだ主人公。
人形マニアと、凄腕の職人の三人で、修理専門の人形店として営業中。
修理として持ちこまれた人形とそれを取り巻くミステリー短編集。
*毀す理由
*恋は恋
*村上迷想
*最終公演
*ガブ
*スリーピング・ビューティ
一口に人形といっても、様々でそれに対する知識というか、含蓄に圧倒される。といっても、それが嫌みではなく、本当に人形が好きなんだというその気持ちになごむ。が、それを引きだしているのは、押しかけ従業員で人形マニアの富永くんなんだが。
店主である澪はリストラされたOLってことで、祖父母の思い出は大事にしてるけど、だからといってそんな -
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『バレエ・メカニック』から読みはじめた私としては、津原泰水ってこんな作品も書けるんだーと、ちょっと意外。
まったく毛色が違うけど、すごく好きな作品。
祖母の遺品として出てきた夭折の詩人の日記を孫・耿介に渡しに行く暁子。楽器職人である耿介はお礼に赤い竪琴を渡す。それを自宅に持ち帰る暁子。
翌日、暁子は耿介に恋をしていると気づく。
ここで、暁子と一緒に耿介に恋できるかどうかで、この作品の評価が分かれそうなんだけど、私は耿介の登場から完全に目にハートマークがついてました。
でも、よく読むと、耿介の容姿につてはまったく触れられてないのよ。
なのに、「この人好き」って思えるってどういうこと?
私 -
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このルピナス探偵団は元々1994、95年に講談社X文庫TEENS HEARTから『うふふルピナス探偵団』『ようこそ雪の館へ』の2冊が発売された。その後著者は少女小説家を卒業してしまったのだが、その後その2冊分を大幅に改稿し(『うふふルピナス探偵団』は「冷えたピザはいかが」と改題されている)+もう一編「大女優の右手」を書き下ろし、原書房ミステリー・リーグから『ルピナス探偵団の当惑』として2004年に単行本化された。今回はその原書房で単行本化されたものの文庫化である。X文庫版も、原書房版も読んだのに、また買って読んでしまった。普段なら文庫で756円なんて高い!!と思ってしまう私ですが、元々の文庫が
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百年に一度生まれ、未来を予言すると言われる生き物「くだん」。鬼の面をした怪物が異形の家族に見せた世界の真実とは。(『五色の舟』)
津原泰水さんの短編集。
幻想的だったりSF風、怪奇小説風だったり、作品によって変わる文調も印象的です。
個人的に好きだった話は『土の枕』。戦時中の話で、津原さんの母方の血筋の「ほぼ実話」だそうです。こんなふうに誰かと入れ替わったり、もとの戸籍を失ってしまった人なんかもいたのかな。色々と考えるきっかけになり、戦争に関する日が多いこの8月に読んでよかったです。
『クラーケン』も良かったです。大型犬を飼う女性の話。女性の鬱屈と後に起こるであろう悲劇に思いを馳せずに -
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始まった時点で、普通ならヒロインになるだろう存在が死んでるってのはなかなか凝った構成。
なんのかんので、柏木とか普天間とかとのエピソードが甘酢っぱい感じで、主人公モテモテだよなあ。元ブラバン顧問の先生ともそういう関係になっちゃうし。
父親にエレキベースを買ってもらうエピソードとか、事故で右腕を失った辻からベースを渡される話とか、バンド経験者にはたまらんな。名言もいっぱい。
再結成の話なのに、普通なら一番の見せ場になるはずの演奏シーンがないところが斬新。それでいてこれだけ魅力的な話をかけるということに驚いた。作者はホラーの人だと思ってたけど、こういう話を他にも書いているなら読みたいな。