【感想・ネタバレ】バレエ・メカニックのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2023年01月28日

眠り続ける少女の意識が都市に再現される物語。親がその都市で彼女を探し続ける1章が大好きです。
電波障害とともに幻覚がいり混ざる町で、少女の面影を探し過去を見つめ続けます。そして人物を変えながら1冊を通して描く語りと巡礼も最高。

0

Posted by ブクログ 2022年10月29日

著者の訃報を受けて再読。初読時はまだ『ニューロマンサー』を読んでなかったのでわからなかったけど、この小説は『ニューロマンサー』を逆向きに読むみたいな構成なんだな。最後のシーンが百閒の「冥途」なのも今回初めて気づいた。
ガスや電気が使われ始めるのと同じく興隆してきた19世紀の心霊主義のように、テクノロ...続きを読むジーを信じるがゆえに死後の世界がいつか可視化されると信じる人もいる。日常的にメタバースという言葉が飛び交うようになった今、VR空間で「不死を売る」ビジネスは前より容易にイメージできる。
津原さんは「電脳空間に幽霊が生まれる」のではなく、「幽霊が電脳空間を生みだす」未来を幻視した。そこがギブスンと比べて人間中心主義だと言ってもいいだろう。都市を神経的に操るのはウィンターミュートでもニューロマンサーでもなく、7歳の少女なのだ。でもはじまりはきっとこうなんじゃないかと思う。そしていつかお互い混じり合って気がつかないうちに人間とAIの主従が逆転するのだろう。
題名の元ネタになったレジェの映画とアンタイルの音楽をYoutubeで視聴したけど、やっぱりこの小説には坂本教授の同名曲のほうが合っている。人類がかつて幻視した未来のイメージに対するノスタルジア。世紀末に十年遅れてアナクロニックになった滅びのヴィジョンが、逆にこの作品を普遍的なものに引き上げたのではないだろうか。

0

Posted by ブクログ 2022年10月16日

夢想渦巻く夢幻の世界へ。
幻想きらめくシュルレアリスムの世界から始まりSFの世界に着地する、一幅の奇譚。

3部構成は、少しずつ主要人物と時系列をずらしながら繋がっていく。
さて、話を要約してしまうと面白くとも何ともないレビューになってしまうのが悩ましい。
感想だけ述べるなら、情景描写も世界観も、話...続きを読むの展開もすべて心地よく、作品世界にすっかり埋没し、感動させられた。各部とも、その結末部で鳥肌が立った。

本書が分かりづらい、という感想も見かける。
最初から理屈で考えると難しい作品に見えるのかもしれない。しかし一言でいえば、これは"夢"である。
夢だと思って、まずはその奔放なイメージを素直に受け止めて頭の中で情景をそのまま展開すると、そのうち作品のほうから割とサービス精神旺盛に秘密を次々披露してくれる。
そういう意味ではテンポが良いし、しかも各部ともしっかりとオチをつけてくれる。
その種明かしが、どれも美しく、どこか物悲しく、そして、人は一人で生きられないという人間の本能に根差した世界観が根底にあるように感じられ、それが得も言われぬ共感と感動を呼ぶ。

少しとっつきにくいところもあるかもしれないが、個人的には大変お勧めできるエンタメ作品だと思う。
すっかり魅せられてしまったな。

0

Posted by ブクログ 2022年02月08日

感想のための語彙が完全に消失する超傑作。あらすじはシュルレアリスティックな要素を散りばめたようでありながら、読み始めてみると文章も世界観もストーリーも登場人物もガチガチに組まれていることがわかり、全ての要素が収斂していく3章を読み終えた後はさながら美麗な巨大建築を下から上まで順に眺めていったかのよう...続きを読むな気分にさせられる。人称の使い方も3章で出てくるあらゆる設定も、「これだけで絶対本書けるだろ!」みたいなアイディアが300ページの中にぎっちり詰め込まれるめちゃくちゃ贅沢な1作である。小説ってこんなに面白いことができるんだ!という新鮮な感動に出会わせてくれたことに感謝しかない。この小説の魅力を日本だけに留めておくのは絶対にもったいない、もう翻訳されてるのか?
一章だけでも今敏が映像化したやつを見てみたいと思ってしまう……

0

Posted by ブクログ 2019年06月11日

読んでいて幸せだった。モーツァルトとビートルズと情報の洪水にひたすら流されていく感じ。サイバーパンクと「わかりきれないところがある」というだけでもう好きな小説。

0

Posted by ブクログ 2018年12月08日

最初のほうは幻想の意味でファンタジーだが
後半からいわゆるサイバーパンクな(『ニューロマンサー』風な)SF
作者の長編はじめて読んで気付いたが
意外と登場人物が小説っぽい
そのあたりSF付きな小説にみえてあまり好きになれないかもしれない
文章はえんえん(読みやすいという意味で)良い方の「文芸」で
...続きを読む快流れるように目がすべるので意味をとるため読み返したりして時間がかかる
そういうところは文句ないのだが
長編より短編のほうがそれっぽく見える技術に見える

0

Posted by ブクログ 2013年01月05日

シュールレアリスムに始まりサイバーパンクで終わる。
発売当初から感想や書評を読んでも、どんな話かさっぱりわからなかったけれど、実際読んでみて、これは読まなきゃわからないな、と思った。
様々なところでシュールレアリスムとかサイバーパンクとか言われていて、実際各章を取り上げるとそういう分類になると思うけ...続きを読むれど、すべて読み終わったときの印象は、綺麗な話だな、ということだった。
抽象的な表現だけど、私の内にある言葉では具体的に表すのはとても難しい。内側にある言葉で表そうとすると、そういう表現になってしまう。
たぶん個々のキャラクターについて書けば、それなりに具体的な書き方もできるだろうし、個々のキャラクターにも魅力を感じているけれど、この小説を思い返してみるに、むしろ綺麗な話と抽象的な表現に留めておいていいんじゃないかと思う。

0

Posted by ブクログ 2012年11月16日

読み始めは耽美的な小説かと思ったけれど、モーツァルトしか流れなくなるカーラジオ、過去へのトリップなど、次第にSF色が強くなって独特な幻想小説が創られていた。マルドゥック~のプールかな??とかチルドレンとかいろいろ聞き覚えがあったけれど、立ち上る世界観にやられたので☆5。

0

Posted by ブクログ 2012年09月23日

津原泰水のサイバーパンクSF。全3章からなっており各章は独立しているがつながりがある。文章は一文一文考えて置かれている印象。「君」を主語とする二人称の部分もあり読みづらく感じる部分もあるかもしれない。よく考えて、文章であらわされるものを想像しながら読んでいくとおもしろい。

0

Posted by ブクログ 2012年06月05日

感想を書くのが難しい…
描かれている世界が、自分の想像範囲をはるかに超えていて、なかなか理解できないまま最後まで進んでしまったが、理解できないにもかかわらずページを繰る手は止まらない。
山尾悠子のように、創造された世界と現実との開きが大きいだけなら、もっとスッと読み物として入ってくると思うのだが、津...続きを読む原泰水は、この世界と地続きでいながら、ねじれたりぶれたりしているような、気持ちの悪さが加わる。でも、決して心地悪くはない気持ち悪さなんだけど。

0

Posted by ブクログ 2012年05月10日

久々にSF読んだなと思いました。
詩的で、混沌としていて、メカニカルで、破滅的で、タナトス&エロスもあって、読みごたえがありました。
もう何冊か、この作者の書いたものを読んでみたいなと。

0

Posted by ブクログ 2012年05月01日

 前衛芸術家、木原の娘は事故で9年間昏睡状態にある。
 彼女は、都市を巻き込んで夢を見る。

 読みながらずっと小松左京の「ゴルディアスの結び目」と萩尾望都の「バルバラ異界」を思っていた。眠り続ける娘の夢が共通だからといえばそれだけなのだが、それだけじゃないように感じていた。

 眠りは、ある種の<...続きを読む死>だ。
 
 その<死>の中で、「生きている」ということを探し続ける父親の姿は、普遍であり、愛情深いものだ。が、「夢」はそれを拒絶していく。
 娘の主治医、龍神はそれを目の当たりにして、自身の喪失にうちのめされる。

 もう決して手にできないものだからこそ、人は求めずにいられないのだ。
 その当たり前が、悲しい。

 シュールな表現で煙にまいてるけど、底辺にあるのは愛する人の死を悼む心なんだと思う。
 ああ、憐れむ気持ちなのか。
 それが、小松左京や萩尾望都を呼び起こしたのだろう。

0

Posted by ブクログ 2022年12月13日

津原泰水版ニューロマンサー。ようやく読めた。一章が二人称、二章が一人称、三章が一人称複数で書かれているところなども含めて、あらゆる技術を使って遊んでいるような印象の小説。すごい。そもそも幻想とSFの混じったようなこの世界観を人の頭に想起させつつ文章ひとつひとつも美しいのはどういうことなんだと頭を抱え...続きを読むてしまう。多分いろんな意味で理解できていないところもたくさんあるのでまた読み返したい。犬や馬の描写のあたたかみが好き。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年11月08日

読み出しは幻想小説かと思ったけど、途中からは…う~んたぶんSF。でも文章と作品全体の雰囲気はは最後まで幻想小説風。解説の言葉を借りるとサイバーパンクSF??最後まで静かに物語が流れていきました。

0

Posted by ブクログ 2013年11月09日

こういうのSFっていうのかな?SFの定義ってよくわかんない。ゆーたらガンダムもおジャ魔女も全部SFじゃね?みたいな。でもこういうのSFっていうんだろうなー。サイエンス・フィクション。サイエンス・ファンタジーとかでもいいんじゃないの。

初っ端からぶっ飛ばしてて最初こそ???だったけど、変調子な雰囲気...続きを読むにどんどん嵌ってった感じ。作中で出てくる絵画やら曲やらはほとんどわからなかったので、わかっている人は尚楽しいのだろうな、とも思うがわからなかったからよかったようにも思う。ビートルズもよく知らないからなあ。そういう諸々キーワードを無固形に受け止めていたからだらだらっと読めたんじゃないかとも思う。

しかし日本人作家の小説にはわりと木根原みたいな人出てくるよね。フランス人みたいなおっさん。フランス人みたいなおっさんだなって本当に思った(笑)フランスのおっさんの知り合いとかいないけど(笑)
日本のリアルにこういうおっさんは実在するのだろうかとそこが一番気になりました。おわり。

0

Posted by ブクログ 2012年11月06日

1章を読み終わった先に、麻薬のような読書体験が待っている。
紙の上に精緻に写し取られた夢の世界。悪くない。

0

Posted by ブクログ 2012年04月25日

シュルレアリスムとハードSFの融合。
大脳を失った植物状態の少女。その機能を都市が肩代わりするという発想を、津原泰水の筆力をもって幻想的に描いた秀作。
作家のファンには当然お勧めの一作でありますが、本作がなんとしてもハードSFである点は了解しておいた方がよいと思われます。
「五色の舟」のような、SF...続きを読む要素を備えた幻想小説ではなく、特に物語終盤では、ガチガチの近未来設定が何の断りも無しに専門用語の羅列でもって雪崩れてきます故。

0

Posted by ブクログ 2012年04月08日

アニメ化してほしいな。
おじさんばかりが、観念としての1人の少女を巡ってわたわたしているばかりの話だけれど、大蜘蛛とか馬車とか、きっととても絵になる。
できれば造形家のおじさんのダンディさ、30%増しくらいで。

キャラクタがすごく素敵です。
ドードーが最初から最後まで愛おしい。

幻想小説に慣れて...続きを読むいない人には読みにくいかも。

0

Posted by ブクログ 2012年03月18日

折り重なる言葉、混濁と混沌のサイバーパンク!
津原泰水の新たなる一面を読ませてもらった感じ。
四谷シモンの人形が配された表紙がとても印象的。
作家本人が装丁しているとのこと、これも結構珍しい。

0

Posted by ブクログ 2012年02月25日

3章から成る、第1章。
冒頭から混乱しっぱなしの脳みそに、なぜか意識の右上の方から「パプリカ」のアニメーションが流入。
歯止めの利かない超現実にワクワク、たまらない。
第2章からラストへのサイバーパンク。私の脳も補完して欲しいってくらい超ハード。
重厚なるレイヤーは無視して表層だけ掬い取る。
しかし...続きを読むながら、本筋は一貫して明確で、せつなくて胸打たれる。

0

Posted by ブクログ 2012年02月13日

シュルレアリズムとサイバーパンクを融合させたような物語。
3部構成の中でシュルレアリズムからサイバーパンクへ移行していくような感じがした。
特に第一部はエッシャーやダリの絵を見ているような映像が頭を過ぎる。題名はキュビズムのレジェだが。
人間(今作では携帯電話とかの電波?)をシナプスとして都市をひと...続きを読むつの生命体(脳)のように捉える考えは以前からあり、個人的にも以前から同調しているもの。それゆえ著者の描写は気持ち悪くも気持ち良かった。

0

Posted by ブクログ 2018年07月21日

奇妙なタイトルに惹かれる。1920年代の前衛的な人間の出てこないバレエを創造した芸術活動から借りたシュールな作品。

9年前に昏睡状態に陥った理沙の脳内活動と現実の東京がリンクしてくる。バラードを思わせるタイトル作から第3章までの構成。タイトル作はとてもシュールで面白いのですが、だんだんテクノロジー...続きを読む的なわかりやすいお話になってくる。自分的にはそんな説明的にならなくても良かったかな。

猛暑のなかでシュールなバラードを読みたくなってきたぞ。

0

Posted by ブクログ 2015年11月01日

かーなーり難しい本。この一文はとても美しいが果たして意味はあるのか、そう考えながら読んだらきっと面白くないと思う。言葉のリズム、芸術的イメージの膨らみこそがこの小説の醍醐味であり、物語とはそれを演出する器に過ぎないと解釈する。

0

Posted by ブクログ 2014年11月11日

SFの中でもサイバーパンクと言われるもの。

いきなり第1章から語り手の不明瞭さで脳みそをシェイクされる。

想像力や集中力が途切れると一気においてけぼりをくらう。

大枠は捉えられるが、詳細がまだつかめない。

苦手な人は筒井康隆著のパプリカや、妄想代理人(アニメ)を読む(観る)といい。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年08月12日

九年前に海辺で溺れ、大脳の機能を失い脳幹のみが機能し生存している理沙。
東京各所にて、七本肢の巨大蜘蛛が目撃されたり、
高速道路で津波に遭遇されたりなどの現象が起きる。
理沙の父の木根原は担当医の龍神から、これらは理沙の夢想が引き起こしているという話を聞き、起きている現象に心当たりを覚え動き出す。
...続きを読む
第一章バレエ・メカニックは理沙の父親木根原サイド、
第二章貝殻と僧侶は理沙の担当医龍神好実サイド、
第三章午前の幽霊はチルドレンとなった山岸外起夫サイドで構成されている。
読み進むにつれていったい誰の語りなのかと不思議さが増していったが、なぜかその不可解さが読み進めさせているような気がした。

読んでいてすごいと感じたのは、
幻想、夢想の世界にひきこまれると同時に、
ものすごいリアルさを感じてしまうことだ。
現実なのか夢想なのか登場人物たちも判断できなくなっていくが、まさにそれを体験させられるような感覚をもたせる文章ですごかった。

ただ難解なのは間違いない。
けど、それでも読めたことについて考えると
それだけのおもしろさがそこにあったということだと思う。

0

Posted by ブクログ 2013年07月07日

たとえ不可抗力であったにせよ、ちょっとした不注意や油断が、自身を含め、多くの人の人生を狂わせてしまうということは、往々にしてありがちなことだと思います。超現実的で不条理な世界観や、作中で繰り広げられるパニックに眼を奪われがちですが、これは人生を踏み外してしまった人々の想念が織り成す、救いのない悲しい...続きを読む物語です。読み始めると、どんどん深みにはまり込んでしまいますよ。

0

Posted by ブクログ 2012年10月02日

シュールレアリスム小説から探偵小説、最後はSFへ。
しかし、最終章のような人とのつながりが希薄になった世界においても、心の一部が欠けた人達が、誰かを求めて彷徨う物語であるのは変わらず。

0

Posted by ブクログ 2012年07月09日

 津原泰水さんは『11』を読んだ時から、文章が綺麗な作家さんだなぁ。という印象。

 今回の『バレエ・メカニック』は、『11』とはまた違った綺麗さがあるなぁと感じました。でも、とってもSFっぽくて、固有名詞が多い印象。
 SFは慣れていなくて、多分この小説世界の設定も「なんとなく分かる」程度だけ...続きを読むれど、それでも文章に惹き込まれました。

0

Posted by ブクログ 2014年01月07日

不安で不吉な暁の夢のような今作。
混沌としている。
でも嫌いじゃない。

後半、走り読みしてしまった。
いつかまたゆっくり読み返したい。

0

「SF・ファンタジー」ランキング