津原泰水のレビュー一覧

  • 五色の舟

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    ネタバレ

     ビームでの連載で読んでいて、改めて単行本で通して読んだ。フリークスたちが身を寄せ合って健気に生きている感じが心に沁みる。ただどんなに仲がよくても、あんな狭い舟で寝泊りするのはオレには無理だ。

     言葉を話せなくて、テレパシーで意思の疎通をしているところをとてもすっきりと表現されていて素晴らしい。桜が初めて言葉を話すところがじわじわと感動的だった。

     くだんがとても不思議な存在で、平行世界のSF的な展開がすんなり入ってくる。今より古いけどそんなに古くないテクノロジーの時代と悲惨な展開を迎える場所がとてもよかった。

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    2017年06月06日
  • エスカルゴ兄弟【電子特別版】

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    エスカルゴをメインにした料理店に挑戦する元編集者とカメラマンの凸凹コンビの成長物語。キャラがそれぞれひねくれているので、会話が楽しい。続編のありそうな最後、楽しみ!

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    2016年08月05日
  • ブラバン(新潮文庫)

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    津原 泰水の大ファン。
    なのに、リンダリンダリンダとかの流行に迎合した小説なんじゃねえの?
    と思い込んで、若干敬遠、積読していたのを、ようやく読む。
    自分の馬鹿。

    文学少年・軽音少年であり、ブラバン少年では決してなかった自分でも、
    共感的に楽しむことができた。

    とはいえ、村上春樹の「ノルウェイの森」が単純な青春小説ではないのと同意義で、
    この小説も多重構造、裏切りや謎、語り手による恣意的な隠匿、といったテーマを隠し持っている。
    それを次回は意識して読みたい。

    普通に読んでも面白いし、裏読みしても面白そう。

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    2016年07月13日
  • クロニクル・アラウンド・ザ・クロック

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    文庫を持ってるのに装丁がよかったのでつい買ってしまった。
    爛漫の音楽を知っているような気がしてくる。なぜか文庫を読んだ時よりくれないさんの成長を感じた。

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    2016年05月13日
  • 11 eleven

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    初津原泰水。
    幻想的な短編集なのだけど、怪談ありSFありと文章や設定に濃淡があり、ただふわふわした不思議なお話を集めました、という感じにならないのがよかった。
    突然世界の真ん中に落とされるような始まり方と、余韻の残る終わり方が素敵。

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    2016年03月13日
  • 11 eleven

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    SFのショートショートに期待するような明確なオチはない。どちらかといえば幻想小説だし、そうとも言えない作品もあるし、まぁジャンル分けなんてどうでも良いのだけど。
    不可思議な世界に誘われ、虜となり、抜け出せないまま、不安なような、恐ろしいような、寂しいような…そんなさざ波立った心持ちのまま物語は終わる。これが何か中毒性のある快感なのだ。すっきりするわけではないのに。
    ひとを選ぶけど、ハマるひとはハマる短編集です。

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    2016年01月22日
  • 五色の舟

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    ヘタウマな雰囲気の漫画でした。荒削りな線が逆に妙にリアルで、とても気持ち悪い。それが良かったのかもしれない。
    女性の牛みたいな雰囲気の人がもしかしたら主人公なのかもしれない。

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    2015年06月26日
  • 五色の舟

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    文化庁メディア芸術祭で展示されているものを読み、大きな衝撃を受けた。漫画を読んで、最近ここまで深く心を揺さぶられたことはない。残酷でグロテスク、それでいて優しく甘美。描き込みの少ないあっさりとした絵柄と濃厚すぎる内容との落差が、逆にイマジネーションを刺激する。「優しさに満ちた『少女椿』」のような前半だけでも十分に良いのだが、幻想譚としての色彩が強くなる後半はさらに圧巻。読者自身がどこに「心の置きどころ」を見いだせばいいのか分からぬまま取り残されるようなラストは、これまでに読んだり見たりした幻想作品の中でも屈指のものだ。原作は短編小説らしいが、もはや小説だの漫画などというジャンルを超越した一大芸

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    2015年05月13日
  • 五色の舟

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    なぜ異形のものに惹きつけられてしまうのだろう。目を背けつつ凝視してしまう。憐れみながら嫌悪し、好奇の目を向ける己の醜悪さにいたたまれない気持ちになる。

    異形の家族の話。彼らは自身の欠損を生活の糧に替え、戦中の貧しさのなか、したたかに逞しく生きています。しかし残酷な未来を知り、くだんに導かれ別世界へと旅立つことになる。体の欠損が補わられ、皆が幸せになる世界…。

    でもこの幸せがもの哀しく感じられるのです。それは何故なのか?グロテスクなのに美しい物語です。

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    2015年03月28日
  • 五色の舟

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    近藤ようこさんの漫画はいつも幻想的で、線も綺麗で昔から大好きだった。久々にこの人の漫画を読んだ。ノスタルジックな風景に引き込まれ異形な人達が1つの家族として生きていく姿。実際に昔は見世物小屋とかあったみたいだし、私の子供の頃もそんな話を聞いた事があり、自分の中のノスタルジアに触れ、何処か読んでいて懐かしさを感じた。くだんの話は、聞いたら死ぬって言われる怪談で聞いた事がある。漫画の中の、くだんは優しい目をしていた。何もかも知り尽くした人の目は諦めの目になるのかも。

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    2015年03月24日
  • 五色の舟

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    せつなくて不思議でグロテスクで懐かしくて、得られた世間的な幸せや日常の平穏の向こう側にある舟に涙した。

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    2015年03月04日
  • 五色の舟

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     平成26年度第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞作品。
     近藤ようこが、津原泰水の短編を下敷きにマンガ化した作品。美しく哀しい幻想譚として見事に結晶化されている。鈴木清順監督の映画『ツィゴイネルワイゼン』を思い出してしまったのは、異形の旅芸人が登場する、幻想的な作品であったからだろうか。
     異形という存在は、懐かしさを呼び起こし、見る者を神話的な世界へと誘う。戦前から戦後間もない時期までは、たしかに、そんな人たちが芸を見せながら旅をしていた。
     見世物小屋の一座で糊口をしのぐ異形の5人家族。怪物「くだん」を一座に加えようとするが、家族はやがて二つの世界に引き裂かれることになる。戦争

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    2015年01月07日
  • 五色の舟

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    これはいい漫画ですわ……!戦時中の見世物一座の矜恃と生き様。そして件と平行世界。最高のエンタメっすわ……

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    2014年12月20日
  • 綺譚集

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    津原泰水の短編はどれも素晴らしいのだけど、どの作品も読み始めはややうんざりする。自分の中の見たくない自分や忘れかけていたものなど、なんというかそういう朽ち果てようとしていたものに不意に出くわしてしまう感じ。ダメージが大きい。綺譚集では、自分の残酷さと薄さに向き合わされた。「聖戦の記録」、血が滾った。

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    2014年11月06日
  • 五色の舟

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    それは1冊の漫画でしかない。

    読後に感想を言葉にできないというか、この複雑な気持ちの揺れを表現できる「ことば」をもたない。感情を言葉の檻にとじこめたくないとすら思う。10人読めばきっと10人とも違う感想をもつんだろうなと思わせる1冊の漫画。人だけじゃなくて、読む環境とか読むタイミングでとかでも、いろいろとかわってくるんじゃないかと思う。でもきっと、みんな読んだあとでは自分自身から目をそらしている部分があったことに気がつくんじゃないかな。

    ぼくはずっと、こういう風に言葉にできない感情を引き起こす本や漫画を読み、音楽を聴いてきた。その言葉にできない感情と向き合い続けることの積み重ねが、今のボク

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    2014年10月28日
  • 11 eleven

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    「そんな人生は(中略)「よく人からエキセントリックな性格って言われます。自分ではそういうつもりはないんですけど・・・」なんてうかつな代物を顔文字つきで世界に向けて発信する、そのアップロードの一瞬を何十年にも引き延ばしたようなもんだと思うんだ。」

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    2014年10月04日
  • 五色の舟

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    自らの奇形の身体を見せ物にすることで糧を得、時には奇形どうしのまぐわいをも見せる見世物一座。一座はあるとき「くだん」が産まれたとの噂を聞きつけ、それを一座に加えようと思いたち……
    過去も現在も未来もすべてを言い当てる「くだん」、家族として身を寄せ合い生きる奇形の人々、そしてますます激しくなる戦争、それらが渾然となって幻想的な雰囲気をもたらす。そして、それと同時に「くだん」にSF的な機能を果たすことで、ただの幻想に流れず「くだん」の存在意義にまで踏み込む。このバランスの絶妙さ。
    もとの原作がいいのか、近藤ようこのアレンジがいいのか。これは原作も読んでみないと。

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    2014年07月27日
  • 11 eleven

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    さめない悪夢の中にほうりこまれたような気持ちになる、珠玉の短編集。趣向をこらしたさまざまなジャンルの作品は、どれも甲乙つけがたいですが、中でも『五色の舟』は陰鬱でグロテスクなのに美しい物語です。

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    2014年04月13日
  • 五色の舟

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    必読。ただその一言です。

    名手・津原泰水の手になる短篇「五色の舟」(短篇集『11』所収)、そのコミカライズですね。
    見世物一座の少年、和郎を語り部とする本作は、原作からして傑作といえるものでした。津原泰水一流の高密度な文体を見事に視覚化した本書もまた、原作に勝るとも劣らない素晴らしいものです。

    いずれも何かしらの欠損を抱えながら、互いに「家族」として日々を過ごす見世物一座の人々。彼らが出会う、未来を予言するという化生「くだん」。そして和郎が見る「五色の舟」の夢……あくまで静かに語られる物語の末に和郎たち家族が迎える運命は、幸福でいながら喪失感に満ちています。

    わけても終盤のモノローグ、そ

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    2014年04月05日
  • 綺譚集

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    ひたひたと、ずぶずぶと、静かに狂気に溺れていく感覚。
    罪であり、むごたらしく、醜悪なものであっても、津原泰水の文章の中では、崇高な犯し難い何かに変貌します。
    長編も何作か読みましたが、短編の方が魅力が凝縮されている感じです。

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    2013年10月05日