津原泰水のレビュー一覧
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話題になった作品であり、非常に期待して読み進めた。期待を裏切られたわけではないが、特別な魅力を感じることはできなかった。
4人のひきこもりが1人の人間を創り上げていく。リアルの世界ではなく、ネット上の話である。ただその真の目的は明らかにされず、その目的にワクワクしながら読み進めていくことができる。会話のテンポも良く、一つ一つのセリフにも重みを感じる。さらにひきこもり達が外の世界との関係を徐々に作っていく過程も面白い。しかし、肝心のプロジェクトの内容や作成過程、そして最終目的があっと言わせるようなものではなく感じた。ネット世界やIT用語に弱いせいかもしれないが。 -
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新聞の日曜版にある書評欄で見つけた。ふだんはあまり日本の小説を読まないので、どんな小説を書く人なのかも知らなかった。読んでみる気になったのは、作品のモチーフがエスカルゴと伊勢うどん、という点にある。エスカルゴの養殖については隣の市のことなので前から知っていた。三重県という極めて地味な地方都市でエスカルゴの養殖なんか手掛ける奇特な人がいるなんて、という程度の認識でしかなく、興味はあったが、現地を訪ねることもしなかった。
エスカルゴ自体は好物で、パリでも食べたし、英国女王御用達の鳥羽のホテルでもいただいたことがある。まさか、あれも全く別物のアフリカ・マイマイだったのだろうか?本物のエスカルゴを養 -
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人形堂の主になった元OLと、店にもちこまれる人形たちの話の第2弾。
まぁ、ほかの面々が個性的すぎるので、主人公はこうじゃないとダメなんだろうけど、彼女にはいらっとさせられることが多くてww
彼女の成長記でもあると読めば、さもありなん、ではあるのだけど、でもなぁ。
今回は、束前氏が素敵でした。
あまり人にいえない類の人形を作っているのだけど、仕事に対するプロ意識がすごい。
職業に貴賤はない、っていうのを体現している。
個々のエピソードはよかったし、全体的に面白いんだけど、なんかもやっとした感じになるのは…。
単に主人公が好きじゃないから、ってだけか?? -
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ネタバレゆるやかにつながりを持つ連作短編集。長編とも呼べる。
物語の含む柔らかさ・温かさ・厳しさも勿論だが、特筆すべきは「会話」の緩やかさ・鋭さ。
こいつらの丁々発止をいつまでも聞いていたいと思える。
個人的には漱石→奥泉光→津原泰水の水脈が見えた。
「香山リカと申します」
「髪が伸びる」
「小田巻姫」
「ピロシキ日和」
「雲を超えて」
エピローグ「雲を越えて」。
かつて自分が書こうとして挫折した小説のことを思い出して、心地よく敗北宣言を胸に刻む。
2冊の中に2冊以上のボリュームが篭っているからこそ、この章の深みが味わえる。
(カラックス「ホーリー・モーターズ」の結末が取ってつけたものでないのも -
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ネタバレグレン・ミラーが終わったので僕は『アルルの女』をかけた。すっかり酔ってしまった風情の笠井さんが僕をつかまえていう。「他片くん、ビゼーはええねえ・ビゼーの曲は優しいねえ」ビゼーを優しいと感じる、あなたが優しいのだ、と僕は思った。
顔を上げると、父は亀岡さんと話しこんでいた。僕のかかえている楽器を指し、あれはコピー商品ではないのか、なぜ他社の楽器をコピーするのかなどと不粋なことを訊いている。
「あれは一つの完成形なんで、もはや改良の余地がないんですよ」と亀岡さんは無難に答えていた。「ヴァイオリンやピアノは、いまあ全部同じ形でしょう」
「ほいでもこうして見たら、エレキはずいぶん色んな形がありま -
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津原泰水の原作、もうあまり細かく覚えてはいないのだけど、並行世界の移行の装置としての「くだん」というSF的なアイデアの新鮮さが強く印象に残った記憶がある。
今回、近藤ようこの漫画を読んでみると、たしかに同じ物語なのに、まったく異なった色彩で見えてきて、まさに「くだん」によって違う世界に運ばれたみたいだ。幻のように消えていくような世界(それが私たちの生きている歴史)の中で、いわゆる「畸形」として放逐された5人が創りあげる「家族」の力強さが、くっきりと焦点を結んでくる。あちらの世界に行ったふたりが、この失われた世界を想っているラストシーンは、自分の足元が不確かになるような不思議さ。おもしろい。 -
購入済み
五色の舟
発売当初から、ずっと、読みたくて読みたくて、でも、手に入らなくて、電子図書でやっと
購入できました。もう、何回読み返したか、わかりません。これからも、わかりません。
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かけがえのない青春時代、とはよく言いますが、時を経て振り返るときになればあえてそれを実感するもの。当時は今を生きるだけで精いっぱいだった。そしてそれで良かった、そんな時代。大人になったらそんなわけにはいかないから、そのがむしゃらに打ち込んでいたモノがあったあの頃がとても眩くも感じられる。
…そういうことをほろりほろりと思った、ブラバンに打ち込んだ高校生時代と現代を行き来しながらつづられるかけがえのない日々の物語。
広島弁の温かみが味わいがあって良かったですし、シニカルで容赦もあんまりない25年後の現在の人々の姿もかえってリアルで親近感もあります。
みんなその時その時一生懸命に日々を生きていて、