津原泰水のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ大人の青春譚。
四十代に入った中年が高校時代を振り返り、吹奏楽部再結成に向かう話。
私はブラバン経験もないし、楽器も作中の音楽もてんでわかりませんでしたが、「ああ、青春の振り返りは甘いもので、けど現実に戻ったときの衝撃も大きいなぁ」と感じた作品でした。
年月が経って変わらない人もいれば、音信不通の人もいる、変わり果ててリスカする飲んだくれになっている者もいる。
発案者の桜井さんは土壇場で披露宴取りやめで、クライマックスは悲しみに溢れてしまう。
主人公も順風満帆とは程遠く、振り返った後は悲しみが残るような感じで描かれていました。
割と救いが無い人は完膚なきまでに無いよなぁ…
特に先生…
流産した子はやっぱり来生の子だったのかな?
それもひとつの人生で、宝石のように大事に取っておける青春を過ごしたことはかけがえの無いものなんだなぁ。
私も高校よりは大学で部活に精を出した者で、今でもその思い出は宝石のように輝いています。
割と救いがなくて暗かったり、楽器、音楽の知識が必要で、登場人物が多くて読むのが大変でしたが、年を取ってから読むべき一冊です。 -
Posted by ブクログ
たまさか人形堂物語の続編。
4つの連作短編と1つの戯曲。
登場人物の人となりがわかってきたからか、前作よりも思い入れが深くなる。
冨永君のスランプは、彼の内に秘めた悩みを反映させる深刻なものだったけど、そこから抜け出るきっかけとなった彼のやり方、その現場での澪の涙にホロリときた。
師村さんが髪の伸びる市松人形の手業の奥深さに感じ入り自分に人生無駄ではなかったと涙するシーンは感動もの。
そして澪と束前さん、口は悪いけど互いに憎からず思い合っているような関係性がなんだかいい。
彼らのこれからをもっと見ていきたかったのに、もうそれが叶わないことが残念でならない。 -
Posted by ブクログ
「たまさか人形堂ものがたり」の続編。
出版社を変えての新装版。書下ろしの「戯曲 まさかの人形館」も収録。
澪が亡き祖母から引き継いだ〈玉阪人形堂〉は、人形の修理を主に請け負っている。職人は腕利き人形師の師村と人形マニアな冨永。
前作では主に師村の過去に迫る話だったが、今回は冨永。
遅刻も早退も長すぎる昼休憩もあり、店主の澪にも平気できつい言葉を投げつける傍若無人な冨永なのだが、今回は彼にスランプが訪れる。
人形を作らない澪には『作り手にのしかかる重圧は、永久に分からない』と冨永に突きつけられた澪。少しでも彼らに寄り添おうと木目込み人形の教室に通うも、自分が思った以上に不器用であることが分かっただけだった。
束前に『皮肉屋の坊や』と言われ、思い付きで作ったとしか思えない蛸の人形『八っつぁん』はバカ売れ、天性の才能と身勝手さと優しさとが同居した冨永の根っこにあるのはやはり繊細さだった。
『八っつぁん』の売れ行きが陰ったのを機にスランプに陥った冨永は浮上出来るのか。
こうした職人、特に生み出す作業をする者のスランプを脱するのは結局本人の力だと思うので澪にできることは見守るだけなのだが、それでも人形教室に通ってみたりピロシキを焼いて食べさせたり、彼が見たいと言う阿波人形を見せてあげようと奔走したり頑張っている。
また同じくらい登場したのが束前。こちらも冨永に負けず劣らずの皮肉屋なのだが澪もまた負けずに上手いこと躱したりやり返したりしているので二人のやり取りが面白い。またなんだかんだで〈玉阪人形堂〉のために奔走してくれているのが嬉しい。
新しいキャラクターとしては束前の同級生・香山リカ。知らなかったがリカちゃん人形のリカちゃんの名前は香山リカらしい。しかもリカちゃんと同じ、父はフランス人指揮者(リカちゃんパパは音楽家)、母親はファッションデザイナーという、キャラクターそのままの美人(リカちゃんとは違うタイプだが)。
束前もリカちゃんには並々ならぬ思いがあるらしいが、二人の関係が読み進むうちに変わっていく。この辺りは津原さんらしくて面白い。
そして、髪が伸びるという市松人形を持ってきたギタリスト・蒲生くん。見た目と喋り方はいかにもなロッカーだがお祖母ちゃん思いで優しい。
それから『八っつぁん』を大量注文してくれた会社社長・神田八郎。最初は澪に強引に近づく厭らしいやり手の社長なのかと思ったら全く違っていい人だった。
一方、師村の意外な面も出てきた。人形作り一筋で、そのために波瀾の人生になった人形一筋というイメージだったが、意外にもギターが趣味で(長らく触っていないらしいが)ジャズもカントリーも澪が理解できないタイプのジャンルの曲も好きらしい。
それにしてもなぜ澪の周りにはジョン・スコフィールド好きがたくさんいるのか。
興味深かったのは髪が伸びる市松人形を作ったのが〈玉阪人形堂〉にかつていた職人らしいということ。だがそれがどれほどの技術なのか師村にも分からない。そして澪の祖母が亡き今はそこに行き着く術はない。
この辺りが今後明らかになってくれたらと思ったのだが、残念ながら先は読めない。
いかにもな職人肌な師村と、天才肌タイプの冨永、不器用だが懸命に時折大胆に突き進む澪のトリオは良いバランスだし、そこに皮肉屋の束前や時折茶化しになのか励ましなのか分からないご隠居が絡んでくるのも楽しい。
最後の書下ろし戯曲では冨永と束前という面白いコンビが見られた。
今後もシリーズが続いてくれるのかと思っていたのでこの度の訃報は本当に残念。ご冥福をお祈りいたします。 -
Posted by ブクログ
本友の紹介レビューを見て、いつか読みたいと思っていた作品。後回しになっていたけど、作者突然の訃報を新聞で目にし、今読むしかないと追悼読書。
会社をリストラされ祖母が残した小さな人形店を継ぐことになった澪は、優れた技術を持つが謎の多い職人・師村と人形マニアの青年・冨永の助けを得て修復を中心として店をなんとかやりくりしている。
持ち込まれる人形に関わるちょっとした謎を絡めながら、職人の人形への思いや、その矜持を静かの描く連作短編7篇。
澪の優柔不断なところとか、冨永の遠慮を知らない物言いとか読んでいて居心地悪くて、あまり好きなタイプの登場人物じゃないな〜と思っていたけど、最後に来てやっと3人のその後を見たいと思わせてくれた。
続編が終わる頃には、きっとこの3人と離れ難くなっているんだろうな〜。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあとがきによると「賑やかな孤立」とでも称すべき情感がこの作品に通底する、世界中の現代人が共有している、普遍的な感覚と思われているとのこと。
私が作品を評価するなんてたいそうな見識や豊かな情緒、多彩な表現力があるわけでもないのだけれど、感情的に私的な感覚でいえば、毎日毎週毎月毎年読み返したい、という激情はなく、何年か後にふと、フレーズや情景を思い出して、読み返したくなる予感がする、といった書籍でした。
幻冬舎騒動なんてのは読み終わってから初めて知ったのだけれど、早川書房の文庫版の帯、《この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます。》なんて今日日言う人がいるのかという驚きと、口だけのパフォーマンスかという疑惑の気持ちと、面白半分、興味本位で購入したのは間違いないけれど、読後感はそう悪いものではなかったですよ、と未来の自分へ綴りたい。〈続けろ!〉 -
Posted by ブクログ
元々、著者の綺譚集が大好きで、他のも読んでみたいなと思ったときに、表紙とタイトルのキャッチーさに惹かれて買っておいた。
サクサク読めた、面白かった。
私も以前、積極的に外に出るのが難しい時期があって、その時にこういうことがあったら、今とはまた違った人生を歩んでいたのかもな、なんて思った。
引きこもりが問題とか言われるけど…彼らには彼らなりの理由があるし、作中のビッキーズのように、才能がある人だっている…だから、竺原の様なカウンセラーがいてもいいんじゃないかなとも思った。
引きこもり問題って、結構ナイーブな面があるけど…この話は明るくて楽しかった。
詐欺師だーとか言われていた竺原の来歴と、最後を知ると…ちょっとしんみりしてしまった…。
ただ、ビッキーズのみんなのドタバタで明るい(?)未来が、〈続けろ!〉から想像出来て、ちょっと楽しい気持ちになった。
綺譚集とは全然違う…他のも読みたいと思った。