津原泰水のレビュー一覧
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津原氏の小説は今作で二度目だ。
前作に漏れず「独特の世界観」を構築する筆力は健在だ。
作品名を読んで大体予想はつくと思うが、本作は人形店が舞台だ。
様々な理由で持ち込まれる人形に纏わる依頼を、ひょんなことからお店を継ぐことになった「澪」を筆頭に、才ある押しかけ従業員富永君と、一級品の技術を持つ謎多き職人「師村」さんの助けを得て解決していく。
人形というのは不思議な性質を兼ね備えているものだ。持ち主の人生や、辿った歴史をまるで「記憶」しているかのようにその身に刻んでいる。
そのミステリー性を十分に生かしつつ、物語に組み込んでいくプロットに読者は魅入られるだろう。 -
Posted by ブクログ
潰れかけの祖父の人形店を継いだ主人公。
そこになぜか腕利きの職人と人形マニアが住み着き、様々な人形にまつわる謎が引き寄せられてくる…
人形といえば、澁澤龍彦でハンス・ベルメールを知り、四谷シモンへと続いていくのが自分としてのひとつの流れ、それとは別にたまたま個展へ観に行ったのが三浦悦子。この人は、ベルメールの直系だろうか。かなり精神的にしんどい表現ではあったが。
もうひとつは内田善美。漫画家で現在は既に活動していないが、この人の「草迷宮・草空間」は市松人形が主人公。
自分としては人形はどうにも重たく、身近には置きたくないけれど、人形に関わる本は結構読んでしまう。この本もタイトルに惹かれた部分があるかも、津原泰水はこれまで2冊ほど読んでいるが、面白かった記憶がある。「セントルビナス探偵団の憂鬱」「赤い竪琴」など、どちらもおすすめ。
この作家の本はこれまで2冊ほど読んでいる。 -
Posted by ブクログ
2022年に急逝した津原泰水最後の長編。
「現代の青春小説を明治の文体で」というコンセプトで書かれた青春小説。確かに今は使われない仮名遣いや漢字が多く難渋。さらに主人公が新居浜出身ということで方言が多用されているのは、私には馴染みがあるから問題なく読めたけれど、そちらにも苦労する読者は多いだろうと思う。
夢を追って田舎から東京へ出てきた主人公・修文の日常を、入居した部屋に現れるという噂の幽霊のエピソードを絡めながら描く物語は、いつ何が起こるんだろうという期待を裏切りいつのまにか終わる。
でも青春一時期ってこんなものよねと、歳を重ねた今だからそう思うし、何も起きないその日々が、今となっては人生いち輝いていて、妙に懐かしく切ないものだということが胸に迫ってくる。
そしてこの内容を今の軽い文体で書かれたら、それこそ面白くなかったかもと思うと、この文体あってこその詩情が心地よかったという感想。