加島祥造のレビュー一覧
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かなりひどいことが起きているのに、カラッとした読み味で読み終えられたのはオールド・マンのおかげなのだろう。野生の棕櫚に見られる一組の男女の悲しい顛末を、オールド・マンのなかの囚人と妊婦の長い旅の場面が差し込まれることで、うまく気持ちをフラットにしたまま読めた。オールド・マンが、まるで老人と海のようでもあり、自然に翻弄されながら必死にボートを漕ぐ囚人がユーモラスに映る。でもオールド・マンだけを読んでも、多分あまり意味がないのだろうと思うから、この交互という形が完ぺきなのだろう。
フォークナーは読むのに時間がかかるのに、また読みたくなる。光とも暗部とも取れるこのエネルギーを受け取りたい。自分の大 -
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小説におけるオールタイムベストに「八月の光」を挙げている私は、その著者フォークナーの文庫最新刊に当たる本作の発売を楽しみにしていた
ミシシッピ州に属す架空の街(ヨクナパトーファ郡)を舞台に、様々な登場人物たちの人生が交錯するサーガ形式であったり、或いは、代表作「響きと怒り」に用いられた、言葉を持たない(話せない)者の意識の流れを綴った文章表現であったりという具合に、小説の可能性を常に追求し続けた作家、それがフォークナーと言っていいだろう
そんな革新派スタイルの彼が、ここで試みたのは、異なるふたつのストーリーを交互に語り進めていく「二重小説」だ。元医学生と人妻が世間のあらゆるシガラミから逃れ -
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ネタバレ・wikipediaに詳細なあらすじがあるので、参考になった。
・棕櫚(シュロ)で通じているが、実は椰子(ヤシ)らしい。
・スイカズラではないのだ。舞台もヨクナパトーファではない。
・中上健次「野生の火炎樹」はオマージュしているわけだが、たぶん内容は関係なく、タイトルだけだろう。
・ちょうど前に読んだのが、バルガス=リョサの「フリアとシナリオライター」だった。年上の世慣れた女に手ほどきされた、という構図。また、帯に「二重小説(ダブル・ノヴェル)」とあるが、リョサ作は作中作であっても二重小説ではないだろう。
・奇数偶数で交互に語られる小説は多くあるが、だいたいは絡む。本作は場所も時間も異なり、絡 -
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ひらいたトランプ
ポアロシリーズ長編。再読だが記憶は曖昧。途中、うっすらとだが犯人を思い出したと思ったのだが。恥ずかしい事に、意外性のある結末に初見読みの様なリアクションをしてしまった。作品構成が良くトリックも上手い。
しかし、終盤、とある人物が都合よく睡眠薬を飲んでいる事、それを犯人が見越している事は腑に落ちないが。
初見の際にはまだポアロシリーズの世界観を把握していなかった為、バトル警視やレイス大佐、オリヴァ夫人まで疑ってかかった事を思い出した。後々彼らが登場する作品を沢山読んでいる為、完全に容疑者から除外される訳だが、いかに筆者が「容疑者はこの四人」といっても我々読者は素直に取らないし -
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ネタバレ⚠️2022年放映の映画版についても言及があるため、未視聴の方は軽いネタバレにご注意ください⚠️
今回の教訓:愛は人を変える
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エジプトのエキゾチックな景色の後に後半バタバタと展開していった映画版と違い、小説ではウィンドルシャム卿とリネットの結婚問題にページが割かれていたため、リネットがサイモンを奪うまでの過程が見られ、じわじわと迫り来る嫌な空気を味わうことができました。
ジャクリーンとの友情が壊れるだろうことは予測できたのですが、まさかジョウアナまでリネットを脅かしていたとは……油断ならないリネットの身の上を思うと、せつなくなります。映画を観てからかなり経っているため -
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ミステリにはパターンだとかテンプレだとかが山のように存在していて「口の軽い人間が不用意な発言をした、又はしそうになって殺される」なんてそれこそ数多のミステリで用いられてきた要素
本作はその口の軽い人間の死が全てを掻き回していく様が非常に面白く描かれているね
また、舞台設定の特殊性も言及したくなるかも
出版されたのは1953年、まだ戦争の残り香がそこかしこに有る頃であり、同時に大英帝国の終焉期。それもあってか登場人物の二極化が見られるね
発端となったリチャード・アバネシーの大邸宅は時代を間違えたとしか思えない代物。そんな人物が死んで遺産目当ての遺族が睨み合いを始めるなんてやはり時代錯誤
けれど