加島祥造のレビュー一覧
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クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。普段の文脈と違った表現方法。序盤は不思議な感覚だった。
今作は飛行機内という密室での殺人だが、密室である事がテーマではなく、フランスで金貸しをしているマダムジゼルがどのように殺害されたのかがポイントだ。当時の推理小説ではありきたりで古臭い印象があるであろう、未開の地住人の吹き矢、未発見の毒など、大げさに伏線を広げながらも二本のスプーンや黄蜂の死骸、乗客の持ち物リスト等実際の手がかりも十二分に描写し、きちんと道筋が立つ様にしている。
当時飛行機というものがどの様なものだったかがわかる描写が面白く、ポアロが飛行機が苦手というのもイメージ通りで彼の可愛らしさの部分である様に思う。
クリスティ作品は時代背景と海外ミステリーという側面から登場人物がこんがらがる事が多いが、今回は飛行機のスチュワード等登場人物に挙げられていない人物も多く、冒頭に挙げた様に少し変わった書き方をしていた為、序盤なかなか苦労してしまった。
クリスティは年寄りの描写も上手いが若くて魅力的な女性を描くのも得意で読者として感情移入しやすい。ジェーンについては犯人かどうかわからない中でポアロの「お節介」が始まった段階で犯人ではなさそうだと感じたが、ポアロの粋な計画もあり悲劇的であるがこれから希望に満ちていく女性としてとても印象深い人物だ。最後、あれ程ポアロが感心するなんて(笑)とてもチャーミングだ。
また、クリスティ自身、考古学が割と身近にある関係上、考古学者の冒険に割と肯定的なのだろう。
トリックとしては大味で、果たして3分程度で今回のトリックが可能かどうかは疑問だ。合わせて毒針を手で刺すにしても上手くできるかどうかは謎なのだが、ここはご愛顧で良いだろう。
人の人相なんて他人であれば気が付かないため、変装などについては納得のいくものであった。
ポアロ含め警察も関係者を洗いざらい巻き込むのはミステリー古典のお約束だが、なかなか今回は冒険があると感じている。ホーバリ夫人への脅迫然り、ジェーンを秘書として連れていく事然り。古典だからこそ許容できる面白さだと思う。
最後に、ジローは少しばかりでも登場し、皮肉の一つでも言って欲しかったが(笑)名前がでるだけでも楽しい気分になった。 -
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ネタバレ古代エジプトでも連続殺人は起こる。
父親が若い愛妾を家に連れてきた。彼女の態度に家の者たちが反感を募らせる中、彼女は亡くなった。そして続く不幸。夫を亡くして実家に帰ってきていたレニセンブの運命はいかに。
いや古代エジプトの意味あったかな、と言ってはいけないのだろうけど、クリスティーがエジプトにハマっていたことは伝わる。しかし別に古代エジプトでなくてはいけない理由は特になかった。だからこそ普遍的なミステリは時代も場所も選ばないんだなぁと思う。多分実写化するならセットを組めばロンドンでも東京でも大丈夫な古代エジプト。
気の強い義姉、気の弱い兄、自尊心の強い兄、おっとり静かな義姉、我儘で自惚れ屋の弟、老獪な祖母、落ち着いた管理人、湿っぽく押し付けがましい召使い、若くて歌の上手い書記、一家の主人、性格の悪い愛妾。これだけキャラクターが揃っているだけでお腹いっぱいである。一人、また一人と死んでいくのはなかなかスリルがあり、最後にレニセンブに迫る害意もハラハラする。そして明かされる犯人。
確かに自分で毒を入れたなら飲む量を調節できる。ずっと低い評価をされてきた抑圧からの悪に染まってしまった心。探偵役が犯人に示す温情とレニセンブへの誠実さ。最後のロマンスも含めてクリスティーだなぁと満足。 -
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ノンシリーズ。
紀元前二千年のエジプトが舞台という異色の設定ではありますが、良い意味で“いつものクリスティー”ともいえる、人間ドラマ&ミステリを楽しませて頂きました。
墓所守をしている一族の長・インホテプが、北方からノフレトという美貌の愛人を連れて帰ってきたことから一族内の空気が不穏なものに包まれていきます。
インホテプの娘・レニセンブの胸騒ぎも虚しく、ある日ノフレトが墜落死してしまい・・。
ノフレトVS一族の妻女達のバチバチの対立から、ノフレトの死を皮切りにしての連続不審死。
その真相は、殺人のトリック云々ではなくて“まさか、あの人が!?”という、“印象操作”的な目くらましで見事に騙されました。
そして、レニセンブの恋の行方は?誠実なホリかイケメンのカメニを選ぶのか・・というロマンスパートも注目です。
解説でも書かれていましたが、本当にクリスティーは“人間関係の綾”を描くのが上手いですよね。
個人的に、トリック一辺倒のミステリより“物語性重視”なので、私がクリスティーを殊更に好む理由がこれなんです。
と、いう訳で久々にクリスティーワールドを堪能させて頂きました。うん、これこれw。 -
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ポアロもの。
パリからロンドンに向かう旅客機内で、金貸しの老婦人の変死体が発見されます。その老婦人の首には針で刺されたような跡があり、直前に飛んでいた黄蜂に刺されたのかと思いきや、席の近くに吹き矢の針が見つかります。
そして、偶然乗り合わせたポアロの席の背後から吹矢筒が発見されて・・。
その吹矢筒のせいで陪審員から有罪にされそうになったこともあり(?)真相解明に乗り出すポアロ。
イギリスとフランスを行き来しながら、老婦人の背景を洗っていくうちに意外な事実浮かびあがってきます。
飛行機の中での殺人という事で、基本的に犯人は乗客のメンバーと乗務員(スチュワード)に絞られるのですが、座席表を何度も見ても私の脳細胞では特定は難しく、結局ポアロが明かす真相に驚愕するといういつものパターンでした。
因みに、陪審員に有罪にされそうになった件でポアロをいじるジャップ警部はとても楽しそうでした。 -
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1959年発表の「87分署シリーズ」第9作目で、スティーヴ・キャレラの妹が結婚する一日に巻き起こる騒動を描いた番外編的な一編。他の作品に比べて舞台設定や登場人物は限定されているが、その分ストーリーは淀みなく快調で、マクベインの技倆を存分に堪能できる一作となっている。
結婚式当日に届いた義弟への脅迫文に端を発する物語は、隣人の不可解な殺人事件を絡めつつ、ドタバタの様相を呈していくのだが、読者のつぼを押さえた起伏をしっかりと盛り込み、無理のない展開でまとめ上げている。招待客でもある刑事らは、華やかで賑やかな現場で混乱しつつも、プロとしての能力を発揮。事件の発生から解決までがリアルタイムで進行する中、個性溢れる登場人物が奔走するさまはスピード感に満ちている。
肉体派のコットン・ホースが〝最強の女〟に出し抜かれるなどエピソードも豊かで、ファンにとって本作が印象深い作品となるのは、この日にキャレラの愛妻テディが双子を産むことだろう。刑事達が繰り広げる喜怒哀楽のドラマが、いつのまにか我が身のことのように感じられること。この共感の度合いが高いのは、マクベイン熟練の腕あってこそである。 -
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古代エジプトの墓所守の家族内で起こる連続殺人事件。ポアロやマープルといったシリーズ探偵が登場しない歴史ミステリーで、作者としては異色の作品。
家長である父親、その子供の長男夫婦、次男夫婦、三男、夫を亡くして出戻りの長女、家長の年老いた母、雇われの管理人の男、古参の召使の女が主な登場人物。登場人物それぞれが個性的で、性格の違いによる書き分けが巧い。特に、家長の母親エサの慧眼ぶりと召使のへネットの嫌味な性格が印象的。
家業の墓所守や農地経営等で一族の生計を立ててきたが、父親が出張先から妾を連れて戻ってきたことで、微妙なバランスを保っていた家族内の関係に波乱が生じ、連続殺人へとつながっていく。
お互いの微妙な心理関係を織り込みながら進行していくストーリーは、なかなか読ませる。ヒロイン役の長女レニセンブがホリとカメニのどちらを選ぶのかというラブロマンスとしての興味もある。
犯人は1つだけトリックを使っているが、たいしたものではないし、読者が推理する要素はほとんどないので、ミステリーとしては平凡。 -
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ネタバレ上流階級に憧れる中流階級の人々が、一族の中で唯一お金持ちのおじさんが死んでお金がもらえる、と喜んでいる。
その中で『だってリチャードは殺されたんでしょう?』の一言で、妙な疑心暗鬼状態に。
犯人探しよりも、登場人物のじんぶつびょが丁寧で、この時代のイギリス人の生活描写がわかって面白かった。ポアロの登場が遅いのと、そこまで物語に関与せず、ただ解決するためだけに出てきて、ストーリーの中で影がうすいくせに浮いていて少し違和感だった。
翻訳も、時代が時代だか仕方ないけれど、お寺さん趣味とか、お坊さん、尼さん、お経をあげる、など今なら違和感あるな、というところがちらちらあった。