安野光雅のレビュー一覧
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もとは2006年刊。
見事というしかない。「定吉」という弟子を相手に、落語風に自らを、そして世間を語る。しゃべくりも会話も絶妙。凝りに凝っているのに、ゆとりがあって、自然体、すなわち安野風。でも、絵を用いないで、これだけのことができるとは。
カバーを最初に見た時には「?」 どうやら判じ物らしい。本文は落語の「湯屋番」の話から始まる。妄想する湯屋番=空想亭=著者という図式が見えてくる。登場する落語はほかに、「二階ぞめき」「長屋の花見」「火焔太鼓」「黄金餅」「寝床」「首提灯」「猫の皿」「酢豆腐」「高田馬場」「笠碁」。
安野光雅作品のなかでは異色中の異色。しかも80歳でこの作品!
(p.s. 人名は -
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2020年、亡くなる4カ月前の刊行。もとは『月刊数学教育』に2013年~19年連載の「忙中閑話」と「続忙中閑話」。
『散私語録』から続く定番スタイル。トリビア、小話、アイデア、箴言、語録、なぞなぞ、思い出などの入ったカプセル、今回は317錠。
どこかで読んだようなエピソードもいくつか混じる。いわゆる再話。ディテールが微妙に違っているのが可笑しい。たとえば、パリのホテルで向かいの部屋の妙齢の女性から電球の取り換えを頼まれる話。今回はいつもより詳しい。
最後、317番目は、1984年に国際アンデルセン賞を貰った時に、山梨の温泉で泊りがけの祝賀会をしたという話。余興の写真が2枚、25名ほどの参加者に -
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「銀の匙」は、以前からいつかは読みたいと思っていた作品です。しかし、他に読みたい現代小説がたくさんあって、なかなか手にすることはありませんでした。ところが、教育学者の齋藤孝さんが書かれた本に、読むべき名著として「銀の匙」が推薦されていたことから、背中を押されたように、この度ようやくこの作品を手にして、時代や環境は違うけれど、自分の子供の頃を思い出すような優しい世界に浸ることが出来ました。
「銀の匙」は、岩波文庫、新潮文庫、角川文庫などから出版されていますが、調べたところ、本書は巻末ではなく同じページに注釈が書かれており、何より画家「安野光雅」さんの挿絵も描かれているということで、いちばん読み -
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日本経済新聞の「私の履歴書」(2011年2月連載)とはまったく違った印象。大幅に加筆、連載後の後日談もある。水彩のイラスト(55葉)も花を添える。
37の各章に、いくつもの小話風のエピソードが散りばめられている。そして安野氏お得意の謎めいた箇所も随所にある。だから、安易に読み飛ばすわけにはいかない。
「つえ子のこと」、「村松武司」、「ダイアナ妃のこと」の章がいい。安野氏は『旅の絵本』にチャールズ皇太子とダイアナ妃の婚礼の儀式を描き込んだことがあった。そのため、ふたりが来日した折に英国大使館主催のパーティに招待された。「ダイアナ妃のこと」には、その時のこと、そして悲劇的な死のことまでが綴られてい -
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ネタバレ2024年、北九州市立美術館に安野光雅展を見に行って、グッズショップで購入しました。子どものころから安野光雅さんの絵本に親しんできたので、私が夢中になっていたあの絵本は、このようにして作られたんだなとか、こんな秘密があったのね、なんて発見もあり、読んで良かったです。絵は一つのエッセイにつき1つ、ささやかに添えてある感じです。
印象深いエピソードがたくさん載っている。戦時中のエピソード、子ども時代のことも興味深い。
私が一番好きな安野光雅さんの絵本、「旅の絵本」シリーズがいかにつくられたかのエピソードもあって、読めて良かった。一冊目の中部ヨーロッパ編に脱獄犯が描かれていること。これはよく覚えて -
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カラー版 絵の教室
著:安野 光雅
中公新書 1827
絵をどうかけばいいのかという方法ではなく、感性豊かな画家が、自分の心情、考え方を述べたものであると理解しました。
絵を書かないものが、「絵の教室」だなんて変だとはおもいますが、カラーの挿絵がたくさんあり、まさに、絵がわかりやすく語ってくれる本となっています。
気になったのは、以下です
■はじめに
・絵描きにならなくても、絵が好きと言う人はたくさんいます。そういう人は音楽について話したり、絵について感じたことを述べるとき、自分の言葉で話します。文学作品について好き嫌いや、あるいはもっとつっこんだ話をする人もおなじです
・そういえば -
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谷川俊太郎さんの翻訳と安野光雅さんの絵が素晴らしいです。
ジュディーの率直で前向きで、ユーモア溢れる言葉の数々はキラキラしていて、読んでいて心が磨かれて洗われるようでした。
本人が書く手紙なのに彼女がどんどん新しいことに出会い、学び、お洒落に、素敵になっていく様子が読んでいて楽しく、ワクワクしました。
読み始めたら止まらないこのお話は、ジュディの成長譚でありながら、同時にハッピーエンドに違いないと思いながらも様々な角度から想像して時々切ない、素敵なラブストーリーでもありました。
谷川俊太郎さんのまえがきと安野光雅さんのあとがきにも心を打たれました。
これまで読んだ本の中で一番好きな本 -
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ネタバレ映画で見て,「本当に,そんな結末なの?」と思って読んでみました。そんで,せっかくなので,訳:谷川俊太郎,絵:安野光雅のものを選んで…。もう一冊,違う翻訳本も横に並べながら,訳がどんなふうに違うのか比べたりもして…。
私的にビックリしたのは,ジュディのあしながおじさん宛の手紙(大学4年生時代の2月)に,サミュエル・ピープスの日記の引用が出てきたところです。サミュエル・ピープスは,17世紀の英国海軍大臣で,日記が有名な人です。人名辞典では,DIARISTと出てくるのが普通らしいです。
私はピープスのことを知ったのは,20年ほど前に自分が興味を持って調べていた「ロンドン王認学会=ロイアル・ソ -
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銀の匙は中勘助が書いた小説。中勘助の自伝的小説だそうだ。
明治43年に前編が執筆され後編は大正2年1913年に執筆された。
文章が美しく、当時をしらない自分にも郷愁を抱かせる描写がすばらしい。
東京の神田で生まれた主人公は、やがて緑豊かな小石川に引っ越す。
その土地でであった子どもたちとの交流や、自然描写、淡い恋心などが綴られていく。
病弱だった主人公が、世界を見る視点は、生き生きとしていて驚きや恐怖に満ちている。
小学校に上がってしばらくすると、主人公は勉強に追いつかず、苦労して遅れを取り戻す。
体が大きくなり、ガキ大将となる。
やがて近所に越してきたおけいちゃんという女の子と親しくなり -
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谷川俊太郎さんの訳した『あしながおじさん』を読む。よく考えると、あしながおじさんを読むのはじめてだ。1967年に出版された少年少女世界の文学の初版本。装丁が美しく、いまさっき、偶然持ち込まれたもの。必然なのかな。
作家としての表現力をやしなうには、手紙を書くのがいちばんだと、孤児院から大学へ通わせてくれたあしながおじさんと一方通行の文通をするミスジルーシャアボット。実はぼくも架空の女性「詠美」へ向けた手紙を毎日書き綴っている。手紙って、ほんとに魅力的で、内面の強度を高められる。
内部の強度を鍛える。。外側だけ取り繕っても、現代の社会では、それなりにきれいなものが出来上がってしまう。学生でも