安野光雅のレビュー一覧

  • 空想亭の苦労咄 ――「自伝」のようなもの

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    もとは2006年刊。
    見事というしかない。「定吉」という弟子を相手に、落語風に自らを、そして世間を語る。しゃべくりも会話も絶妙。凝りに凝っているのに、ゆとりがあって、自然体、すなわち安野風。でも、絵を用いないで、これだけのことができるとは。
    カバーを最初に見た時には「?」 どうやら判じ物らしい。本文は落語の「湯屋番」の話から始まる。妄想する湯屋番=空想亭=著者という図式が見えてくる。登場する落語はほかに、「二階ぞめき」「長屋の花見」「火焔太鼓」「黄金餅」「寝床」「首提灯」「猫の皿」「酢豆腐」「高田馬場」「笠碁」。
    安野光雅作品のなかでは異色中の異色。しかも80歳でこの作品!
    (p.s. 人名は

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    2025年11月13日
  • 私捨悟入

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    2020年、亡くなる4カ月前の刊行。もとは『月刊数学教育』に2013年~19年連載の「忙中閑話」と「続忙中閑話」。
    『散私語録』から続く定番スタイル。トリビア、小話、アイデア、箴言、語録、なぞなぞ、思い出などの入ったカプセル、今回は317錠。
    どこかで読んだようなエピソードもいくつか混じる。いわゆる再話。ディテールが微妙に違っているのが可笑しい。たとえば、パリのホテルで向かいの部屋の妙齢の女性から電球の取り換えを頼まれる話。今回はいつもより詳しい。
    最後、317番目は、1984年に国際アンデルセン賞を貰った時に、山梨の温泉で泊りがけの祝賀会をしたという話。余興の写真が2枚、25名ほどの参加者に

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    2025年10月18日
  • 銀の匙

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    「銀の匙」は、以前からいつかは読みたいと思っていた作品です。しかし、他に読みたい現代小説がたくさんあって、なかなか手にすることはありませんでした。ところが、教育学者の齋藤孝さんが書かれた本に、読むべき名著として「銀の匙」が推薦されていたことから、背中を押されたように、この度ようやくこの作品を手にして、時代や環境は違うけれど、自分の子供の頃を思い出すような優しい世界に浸ることが出来ました。

    「銀の匙」は、岩波文庫、新潮文庫、角川文庫などから出版されていますが、調べたところ、本書は巻末ではなく同じページに注釈が書かれており、何より画家「安野光雅」さんの挿絵も描かれているということで、いちばん読み

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    2025年05月23日
  • 絵のある自伝

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    日本経済新聞の「私の履歴書」(2011年2月連載)とはまったく違った印象。大幅に加筆、連載後の後日談もある。水彩のイラスト(55葉)も花を添える。
    37の各章に、いくつもの小話風のエピソードが散りばめられている。そして安野氏お得意の謎めいた箇所も随所にある。だから、安易に読み飛ばすわけにはいかない。
    「つえ子のこと」、「村松武司」、「ダイアナ妃のこと」の章がいい。安野氏は『旅の絵本』にチャールズ皇太子とダイアナ妃の婚礼の儀式を描き込んだことがあった。そのため、ふたりが来日した折に英国大使館主催のパーティに招待された。「ダイアナ妃のこと」には、その時のこと、そして悲劇的な死のことまでが綴られてい

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    2025年05月08日
  • 絵のある自伝

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    ネタバレ

    2024年、北九州市立美術館に安野光雅展を見に行って、グッズショップで購入しました。子どものころから安野光雅さんの絵本に親しんできたので、私が夢中になっていたあの絵本は、このようにして作られたんだなとか、こんな秘密があったのね、なんて発見もあり、読んで良かったです。絵は一つのエッセイにつき1つ、ささやかに添えてある感じです。

    印象深いエピソードがたくさん載っている。戦時中のエピソード、子ども時代のことも興味深い。
    私が一番好きな安野光雅さんの絵本、「旅の絵本」シリーズがいかにつくられたかのエピソードもあって、読めて良かった。一冊目の中部ヨーロッパ編に脱獄犯が描かれていること。これはよく覚えて

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    2024年08月18日
  • カラー版 絵の教室

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    カラー版 絵の教室
    著:安野 光雅
    中公新書 1827

    絵をどうかけばいいのかという方法ではなく、感性豊かな画家が、自分の心情、考え方を述べたものであると理解しました。

    絵を書かないものが、「絵の教室」だなんて変だとはおもいますが、カラーの挿絵がたくさんあり、まさに、絵がわかりやすく語ってくれる本となっています。

    気になったのは、以下です

    ■はじめに

    ・絵描きにならなくても、絵が好きと言う人はたくさんいます。そういう人は音楽について話したり、絵について感じたことを述べるとき、自分の言葉で話します。文学作品について好き嫌いや、あるいはもっとつっこんだ話をする人もおなじです
    ・そういえば

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    2024年06月02日
  • メアリ・ポピンズ

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    あまりにも有名な本である。津田の読み直し世界文学の1冊。やさしいやさしいお手伝いさんか、という先入観を持っていたら全く異なっていた。

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    2023年07月24日
  • あしながおじさん

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    何度読んでも色褪せない名作。
    主人公があしながおじさんに送る手紙からなる本作は、とっつきやすく、主人公に共感しやすい。
    劇的な場面は少ないが、少女にとっての悲しみや喜びを丁寧に描いた作品。

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    2023年03月27日
  • シンデレラ

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    名作絵本、どの本で読み聞かせしてあげようかなと悩んでいる最中。
    安野さんの描かれたシンデレラを見つけた。文章が綺麗。絵が美しい。大人向けかな?と思いきや萌ちゃんもしっかり見て聞いてくれた。

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    2023年03月07日
  • あしながおじさん

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    谷川俊太郎さんの翻訳と安野光雅さんの絵が素晴らしいです。

    ジュディーの率直で前向きで、ユーモア溢れる言葉の数々はキラキラしていて、読んでいて心が磨かれて洗われるようでした。

    本人が書く手紙なのに彼女がどんどん新しいことに出会い、学び、お洒落に、素敵になっていく様子が読んでいて楽しく、ワクワクしました。

    読み始めたら止まらないこのお話は、ジュディの成長譚でありながら、同時にハッピーエンドに違いないと思いながらも様々な角度から想像して時々切ない、素敵なラブストーリーでもありました。

    谷川俊太郎さんのまえがきと安野光雅さんのあとがきにも心を打たれました。

    これまで読んだ本の中で一番好きな本

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    2023年02月17日
  • 絵のある自伝

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    ネタバレ

    今、一等になるために走るのではない、いつか大人になって一等になっても得意にならず、ビリになってもくじけないプライドを持つ日の為に走るのだ

    試験というもののありかたが、教育の方向を決定づけているという変なことになりつつある。

    絵は説明ではない。(略)壁に飾る絵に題名はあっても文字はない。

    空想の時間

    などなど、普段感じてることがさらっと書かれていて、あぁ、間違ってない、というか、自分の気持ちに肯定感を得たような。

    戦中、戦後を生き抜き、沢山の絵を残し、令和の世の中まで見て逝かれたのだと思うと尊敬しかない。

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    2022年06月15日
  • あしながおじさん

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    ネタバレ

     映画で見て,「本当に,そんな結末なの?」と思って読んでみました。そんで,せっかくなので,訳:谷川俊太郎,絵:安野光雅のものを選んで…。もう一冊,違う翻訳本も横に並べながら,訳がどんなふうに違うのか比べたりもして…。

     私的にビックリしたのは,ジュディのあしながおじさん宛の手紙(大学4年生時代の2月)に,サミュエル・ピープスの日記の引用が出てきたところです。サミュエル・ピープスは,17世紀の英国海軍大臣で,日記が有名な人です。人名辞典では,DIARISTと出てくるのが普通らしいです。
     私はピープスのことを知ったのは,20年ほど前に自分が興味を持って調べていた「ロンドン王認学会=ロイアル・ソ

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    2021年08月30日
  • 『史記』と日本人

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    半藤氏が亡くなったニュースを見て、どんな人物なのかを知りたくて読む。
    史記に対する造詣が深い。その著者である司馬遷の生涯や人物像についてもとても詳しく2月8日は、司馬遷の日らしい。文学者3名の鼎談であるが、中国の歴史から日本の歴史まで広範にわたる内容でこれぞ教養と思った。司馬遼太郎は、司馬遷から名前を取ったとのことも初めて知りなるほどと感心した。

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    2021年02月12日
  • 世にも美しい日本語入門

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    子供は「鳩」→「鳥」→「九」の順に漢字を覚える、というお話がおもしろい!

    学校では画数が少ない方から覚えることになってるけど、画数関係なく、具体→抽象の方が覚えやすい。

    抽象の代表格「愛」って漢字は小学4年生くらいで習う。その歳で器としてのその漢字を知り、その器に意味をどんどんためていく、って考えたらなんかロマンチックな気がしました

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    2020年10月31日
  • 銀の匙

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    銀の匙は中勘助が書いた小説。中勘助の自伝的小説だそうだ。
    明治43年に前編が執筆され後編は大正2年1913年に執筆された。
    文章が美しく、当時をしらない自分にも郷愁を抱かせる描写がすばらしい。

    東京の神田で生まれた主人公は、やがて緑豊かな小石川に引っ越す。
    その土地でであった子どもたちとの交流や、自然描写、淡い恋心などが綴られていく。
    病弱だった主人公が、世界を見る視点は、生き生きとしていて驚きや恐怖に満ちている。

    小学校に上がってしばらくすると、主人公は勉強に追いつかず、苦労して遅れを取り戻す。
    体が大きくなり、ガキ大将となる。
    やがて近所に越してきたおけいちゃんという女の子と親しくなり

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    2020年05月22日
  • 会いたかった画家

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    表紙と裏がパウル・クレーの素晴らしい絵だ。これだけで嬉しくなってしまう。安野光雅さんは「一番好きな画家は?」と聞かれて「パウル・クレー」と答えるそうだ。さもありなん。クレーに始まって、ロートレック、モディリアーニ、佐野忠良、有元利夫、セガンティーニ、ポター、ブリューゲル、ゴッホ、ピロスマニ、ルソーなどの画家ばかりでなく、写真家のブレッソンやラスコーの洞窟画、ペリー公の時禱書なども取り上げて、本当に自由に思うがままに語っている。読んでいてとても愉しいし、芸術というものの喜びを感じさせてくれる。

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    2020年04月18日
  • あしながおじさん

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    谷川俊太郎さんの訳した『あしながおじさん』を読む。よく考えると、あしながおじさんを読むのはじめてだ。1967年に出版された少年少女世界の文学の初版本。装丁が美しく、いまさっき、偶然持ち込まれたもの。必然なのかな。

    作家としての表現力をやしなうには、手紙を書くのがいちばんだと、孤児院から大学へ通わせてくれたあしながおじさんと一方通行の文通をするミスジルーシャアボット。実はぼくも架空の女性「詠美」へ向けた手紙を毎日書き綴っている。手紙って、ほんとに魅力的で、内面の強度を高められる。

    内部の強度を鍛える。。外側だけ取り繕っても、現代の社会では、それなりにきれいなものが出来上がってしまう。学生でも

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    2020年03月23日
  • カラー版 絵の教室

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    書店で『旅の絵本』を手に取ってみて、良い本だな~なんて見入ったものだけど、同作の著者による、絵についての新書。確か、『新書75冊』からのチョイスだったかな。最初はちょっとした絵のコツみたいなところから始まって、中盤以降、美術史からゴッホ史へ、みたいな流れ。絵は描く方にも興味があるから、ちょっとした線画でも描いてみたくなっちった。読み物としても楽しめる内容でした。

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    2019年07月03日
  • 赤毛のアン

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    昔はアンに共感していたのに、今回はマリラに夢中になりました。
    マリラの愛や、迷いがとても伝わってきて、これはマリラの人生第二章、成長物語でもあるんだな、と思いました。

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    2019年07月02日
  • 小さな家のローラ

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    子どもの頃NHKで観ていた『大草原の小さな家』。
    初めて原作を読んだら、
    30年以上前に観ていたドラマの役者たちの顔で、
    インガルス一家が浮かんできて、微笑んでしまった。

    安野光雅の絵がふんだんに盛り込まれていて、
    文章を侵すことなく世界観を優しく広げている。

    こんなにもアメリカの開拓時代の文化が、
    丁寧に描かれた物語であったとは。

    日々の営みの豊かさ。

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    2019年06月29日