あらすじ
「すてきなことがおこりました。あててみる?でもあたりっこない!」
100年以上にわたって世界中で読みつがれてきた名作が、詩人・谷川俊太郎氏の訳と
安野光雅氏の絵によって新たな感動とともに誕生しました。
孤児院でけなげに暮らすジュディは、ある日顔の知らない裕福な紳士の目に止まり、奨学金をもらって大学進学を果たします。
ジュディに課された条件は、かならず毎月おじさまへの手紙を書くこと――。
孤独だった少女が持ち前の明るさと想像力をもって、たくましく才能を開花させていく様子は、
時代をとわず読む人のこころを掴んで離しません。
読んだことのある方も、読んだ気になっていた!という方も。
ふてくされたり、調子に乗ったり、落ち込んだり、大喜びしたりと表情豊かなジュディの手紙を、
ぜひ受け取ってみてください。
◎総ルビになっていますので、小学1年生から読むことができます。
◎本シリーズの見どころであるカラーイラストを多数収録。
著者について
作:ジーン・ウェブスター
(Jane Webster)
1876年、ニューヨーク州フリードニア生まれ。大学では英文学と経済学を学ぶ。在学中に社会事業に関心を持ち、孤児院などを訪問、文筆活動に入る。
父は出版社経営。母はマーク・トウェインの姪。
結婚して、翌年に女児を出産するがその直後、産褥熱により39歳の若さで他界する。
代表作は、『あしながおじさん』『続あしながおじさん』。
訳:谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう)
1931年東京生まれ。詩人。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。
1962年「月火水木金土日の歌」で第4回日本レコード大賞作詞賞、1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第34回読売文学賞、1993年『世間知ラズ』で第1回萩原朔太郎賞、
2010年『トロムソコラージュ』で第1回鮎川信夫賞など、受賞・著書多数。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、
作詞など幅広く作品を発表、世界各国で翻訳されている。
最新刊は、ディック・ブルーナ装画による詩集『バウムクーヘン』。
絵:安野光雅(あんの みつまさ)
1926年、島根県津和野町に生まれる。BIB金のリンゴ賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞などを受賞。
1988年紫綬褒章、2008年菊池寛賞、他を受賞。2012年、文化功労者に選ばれる。
主な著作に『ふしぎなえ』「『旅の絵本』シリーズ(全8巻)」(福音館書店)、『本を読む』(山川出版社)、『小さな家のローラ』(小社刊)などがある。
2001年、津和野町に「安野光雅美術館」、2017年、京丹後市の和久傳の森に「森の中の家 安野光雅館」が開館。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
何度読んでも色褪せない名作。
主人公があしながおじさんに送る手紙からなる本作は、とっつきやすく、主人公に共感しやすい。
劇的な場面は少ないが、少女にとっての悲しみや喜びを丁寧に描いた作品。
Posted by ブクログ
谷川俊太郎さんの翻訳と安野光雅さんの絵が素晴らしいです。
ジュディーの率直で前向きで、ユーモア溢れる言葉の数々はキラキラしていて、読んでいて心が磨かれて洗われるようでした。
本人が書く手紙なのに彼女がどんどん新しいことに出会い、学び、お洒落に、素敵になっていく様子が読んでいて楽しく、ワクワクしました。
読み始めたら止まらないこのお話は、ジュディの成長譚でありながら、同時にハッピーエンドに違いないと思いながらも様々な角度から想像して時々切ない、素敵なラブストーリーでもありました。
谷川俊太郎さんのまえがきと安野光雅さんのあとがきにも心を打たれました。
これまで読んだ本の中で一番好きな本になったかも知れません。
Posted by ブクログ
映画で見て,「本当に,そんな結末なの?」と思って読んでみました。そんで,せっかくなので,訳:谷川俊太郎,絵:安野光雅のものを選んで…。もう一冊,違う翻訳本も横に並べながら,訳がどんなふうに違うのか比べたりもして…。
私的にビックリしたのは,ジュディのあしながおじさん宛の手紙(大学4年生時代の2月)に,サミュエル・ピープスの日記の引用が出てきたところです。サミュエル・ピープスは,17世紀の英国海軍大臣で,日記が有名な人です。人名辞典では,DIARISTと出てくるのが普通らしいです。
私はピープスのことを知ったのは,20年ほど前に自分が興味を持って調べていた「ロンドン王認学会=ロイアル・ソアイエティ」に関わってです。彼は,海軍のお偉いさんだけではなく,この王認学会の会長にまでなった人です。彼の日記には,彼の科学好きが分かる文章がたくさんあります。それらは,板倉聖宣編訳『ロンドン科学日記~S.ピープスの日記とロンドン王認学会の記録』(板倉研究室,1995年)で読むことができます。
話はそれましたが,『あしながおじさん』は,そのほとんどを「知らない人への手紙」という形をとって物語が進んで行くという,斬新な小説です。それなのに,単調さを感じることなく,主人公が大学生として成長していく様がしっかり伝わってきて,読んだあとにはなんだか透明感というか清涼感に包まれる感じです。
子どもの時に,読んでおけば,もっと違った人生だったかなあ…変わらないか。
Posted by ブクログ
谷川俊太郎さんの訳した『あしながおじさん』を読む。よく考えると、あしながおじさんを読むのはじめてだ。1967年に出版された少年少女世界の文学の初版本。装丁が美しく、いまさっき、偶然持ち込まれたもの。必然なのかな。
作家としての表現力をやしなうには、手紙を書くのがいちばんだと、孤児院から大学へ通わせてくれたあしながおじさんと一方通行の文通をするミスジルーシャアボット。実はぼくも架空の女性「詠美」へ向けた手紙を毎日書き綴っている。手紙って、ほんとに魅力的で、内面の強度を高められる。
内部の強度を鍛える。。外側だけ取り繕っても、現代の社会では、それなりにきれいなものが出来上がってしまう。学生でも、子供でも。それは、響かない。かといって、愛などと言う誰にも反論が許されない抽象的なものでもない。コピー&ペーストでつくられる安易な表現に飛び付くのは、もう卒業しよう。ぼくたちは、ホンモノを磨くためにひとりになる。ぼくは、ダメダメだ。
人生でりっぱな人格が必要になってくるのは大事件がおこったときじゃありません。いざというときにはだれだってしゃんとするものだし、大悲劇になら勇敢に面と向かうことができます。だけど、日常のみみっちいいざこざをわらいとばすってことは、これこそ根性がいるわ。
あしながおじさんとジュデイは、会ったことがないのに、生きている時間を過ごせてる。ただ居合わせた二人とは違う。死んだ時間を何千時間過ごしても意味がない。お互いに尊敬し、信頼し、協力する。それが愛する秘訣なのだと思う。
長新太さんの挿し絵も素敵だった。
世界はこんなにもおおくのものでいっぱいだ
わたしたちがみな王のようにしあわせであるべきなのはたしかなことだ
愛されるよりも愛することって、素晴らしい。過去や未来の不安に創造力を発揮させるなら、いまここに生きることを大切にしたい。いま思いを寄せることに集中したい。
あしながおじさんとのラストは、とても温かい気持ちになった。
未来の大作家ムック
Posted by ブクログ
子どもの頃に読んだはずなのに、
まるで覚えていなかった。
ほんっとに面白い傑作。
ジュディの知性と率直さを見出したあしながおじさんの導きで、
カレッジで学ぶようになるジュディの変化が、
一方的な手紙を通じて、
情緒豊かに展開していく。
この一方通行が重要なのだ。
まるで精神分析のように、
おじさまがそこにいるのかいないのか、
何を感じ考えているのかわからないからこそ、
素直になったり、怒ったり、
いろんな感情が広がっていく。
ジュディの劣等感と傷つきと寂しさは、
体験のない人間には容易には理解できないのだが、
それを不幸にしない心のちからこそ、
あしながおじさんが彼女に惹かれたところではないだろうか。
おそらく途中からジュディ以外の読者は、
このからくりが見えてくるはずだが、
それでも最後の最後まで、
息もつかせぬ約5年間の手紙がどのように終わるのか、
ふたりはどうなっていくのか、
わくわくが止まらない。
そして私は、胸を打たれて涙した。
*
安野光雅の絵が、なんとも魅力的であり、
物語に旨味を与えている。
Posted by ブクログ
世界名作劇場のアニメ版がとても面白かったので読みました。
児童文学なだけあってとても読みやすかったけれど、全編手紙の内容だったので、主人公以外の心情が理解しづらいと思いました。