あらすじ
『安野光雅氏(あんの・みつまさ、画家)○日○時○分、老衰による心不全のため××クリニックで死去、八十+X歳。葬儀・告別式は○日正午より、三ヶ月間、インターネット・ホームページ○○○上において施行、したがって供花、弔慰等、金品はすべて辞退。』(本文「私の死亡記事」より)。大好きな落語の語り口を借り、得意の空想癖とユーモアを駆使して自由奔放につづった、幼少期、戦争、焼け跡、芸術、闘病、死生観……鮮やかに浮かび上がる人生の苦味と甘味。
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Posted by ブクログ
もとは2006年刊。
見事というしかない。「定吉」という弟子を相手に、落語風に自らを、そして世間を語る。しゃべくりも会話も絶妙。凝りに凝っているのに、ゆとりがあって、自然体、すなわち安野風。でも、絵を用いないで、これだけのことができるとは。
カバーを最初に見た時には「?」 どうやら判じ物らしい。本文は落語の「湯屋番」の話から始まる。妄想する湯屋番=空想亭=著者という図式が見えてくる。登場する落語はほかに、「二階ぞめき」「長屋の花見」「火焔太鼓」「黄金餅」「寝床」「首提灯」「猫の皿」「酢豆腐」「高田馬場」「笠碁」。
安野光雅作品のなかでは異色中の異色。しかも80歳でこの作品!
(p.s. 人名はどこまでが本当か、見極めが必要。たとえば、二等兵時代の「石原という元ラッパ卒の友人」とか、N響アワーに出演しているきれいな娘さん「阿川ふみ」とか。)