海外ミステリー - グーテンベルク21作品一覧
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-ABCというイニシャルを記したいたずらのような手紙が探偵ポワロのところに届く。だが彼の不吉な予感どおり、アンドーバー(A)でタバコ屋の老婆アリス(A)が殺害される。勝ち誇るかのように第二の手紙はベクスヒル(B)での事件を予告し、カフェの給仕女ベッティ(B)の死体が海岸で見つかる。図に乗った犯人はチャーストン(C)での殺人を予告、ポワロや警察を嘲笑うかのようにカーマイケル卿(C)を殺害する。そして次はドンカスター(D)だ…すべての死体のかたわらにはABC社の時刻表が。無差別殺人を趣味とし、ポワロに特別な恨みをもつ者のしわざなのか? 灰色の頭脳は悩みに悩む。脂の乗りきった時期のクリスティの傑作。
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4.5深夜に雪で立ち往生したオリエント急行の寝台車内で、アメリカの老人ラチェットが殺害された。たまたま乗り合わせたポワロはいち早く事件を知らされる。どう考えても乗り合わせた12人の乗客以外には犯人はありえなかった。一人また一人としらみつぶしに状況を聞く調査がはじまる。だが、それぞれの乗客のアリバイは完璧だった。外の世界と断絶した緊迫した状況の中、矛盾する刺し傷とともにポワロの灰色の脳細胞は悩みに悩む。クリスティの代表作。
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-南米アルゼンチンの自分の農場から久しぶりにロンドンへ戻ってきたヘイスティングスは、なにはともあれ、まず旧友ポワロを訪問した。ところがなんと、ポワロはアメリカの石鹸王の依頼を受けて、ブラジルのリオへと旅立つところだった! そのときである。一人の憔悴した男が窓から寝室へとはいったのであろうか、ポワロの前にあらわれた。男は失語症にでもなったように「ファラウェイ街十四番地、エルキュール・ポワロ氏」としか言わない。だが医師のすすめで紙と鉛筆を渡すと、男は「4」という数字を12回も書きなぐった……国際犯罪組織を相手のアクションとサスペンス、ポワロの魅力全開の痛快編。
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4.3小さな村の名士アクロイド氏は、書斎の椅子で何者かによって刺殺されていた。叔父の死にショックを受けた姪のフロラはたまたま余生をその村で過ごそうとしていたポワロに事件の解明を依頼した。ポワロは言った。「いったんお引き受けした以上は、最後までやりとげなければ止みません。たとえ途中で警察に一任しておく方が無難だとお考えになるような事態にいたりましてもですぞ。よい猟犬というものは決して追跡を途中で放棄するようなことはいたしません」……ミステリーの女王の名を不朽のものとしたクリスティの記念碑的作品。
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-ポワロは、フランス滞在中の大富豪ルノールから「警察の力を借りたくない、助力を頼む」という手紙を受け取る。急ぎフランスの小さな町メルランビーユへ飛んだポワロを待ち受けていたのは、建設中のゴルフ場の一画で刺殺された富豪の死体だった。パリ警察の派遣した探偵ジローとの捜査の知恵くらべが進展するなか、富豪とは関係のなさそうに思われる浮浪者が同じ凶器の犠牲に…クリスティのポワロもの長編第2作。
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2.0イギリス中の興味と関心をあつめたスタイルズ荘の事件は、ヘイスティングズ大尉が友人の別荘に招かれたときに起こった。再婚して間もない友人の義母エミリーが毒殺されたのである。嫌疑は一族のみんなにかかる。ベルギーから英国に亡命してまもなくエミリーに住まいを世話されたポアロは、恩義も感じて事件解決に乗り出す。…不滅の探偵を生み出した「ミステリの女王」の新鮮さのあふれる処女作。
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-史上最も風変わりな探偵…それが本書に登場のネロ・ウルフである。1日にビールを6リットルちかくも飲み、フランス料理の専門シェフを雇うくらいグルメで大食、おかげでぶくぶくに太って、大好きな蘭を1万株も栽培する屋上に行くのも専用エレベーターの世話になる。つまり自分では動けず、完璧な安楽椅子探偵。指示を仰いで動き回るのは有能な助手のアーチーだ。本書は47作にものぼるシリーズ処女作で、むろん最高の出来という折り紙つきの作品。そもそも本書巻頭で、見知らぬイタリア女の不意の来訪を受けたのは、49の銘柄のビールを一本ずつ賞味しているときであった!
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-田舎町の開業医ビクリーは妻のジュリアの抹殺を決意する。周到完璧と思われる殺害計画にもとづく実際の犯行、捜査警察官との虚々実々のやりとり、緊迫感あふれる法廷での尋問、そして意想外な結末……倒叙形式ミステリの最高傑作のひとつであり、推理サスペンスの頂点をなす代表作。フランシス・アイルズという名は「毒入りチョコレート事件」で有名な英国を代表するミステリ作家アンソニー・バークレーの別名である。
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-宝石と切手のコレクターで出版社の経営者でもあるドナルド・カークは、ニューヨークの中心街に事務所をもっていた。ある日の夕刻、中年太りのさえない小男がたずねてくる。カークは留守だったので、秘書のオズボーンはカークの事務室で待つように案内する。用件を聞いても、男は「内密の用件」としか答えない。約一時間後、カークはたまたま階下で出会ったエラリーを連れて帰ってくる。秘書の話を聞いて二人が事務室に行くと、男は脳天を割られて死んでいた。そして部屋にあるあらゆる物が動かされて「あべこべ」になっていた。中国福州で発行された「エラー切手」にからむ密室殺人!
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3.0ニューヨークの薄気味の悪い館にすむ元シェイクスピア俳優ドルリー・レーンを探偵役にすえた、クイーンの「悲劇シリーズ」4部作の第一編。株式仲買人がすし詰めの路面電車のなかで、ポケットに忍び込まされた高純度ニコチンを塗った針先に刺されて即死する。そんな芸当は、いったい誰に可能だったのか? 動機は? しらみつぶしの警察の調べによって、共同経営者が浮かび上がるが……緻密な構成、全体の進行を劇の上演に見立てた凝ったつくりで、遊び心も忘れない本格ミステリーの代表作。1932年、バーナビー・ロスという無名の新人名義で発表され、ミステリー界にセンセーションをまきおこした作品としても有名。
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-セイヤーズの作風を知る好個の短編2つ。「疑惑」は、妻に毒を盛られているのではないかという夫の疑惑をテーマにした鮮やかなクライム・ストーリーの傑作。「アリババの呪文」はピーター・ウィムジー卿ものの短編。卿が盗賊一味にくわわり、一杯食わせるという趣向のもので、「開け、ゴマ!」の呪文に声紋判定の設定がみられるのが面白い。
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-セイヤーズの処女長編。若い建築家の住むアパートの浴室で、ある朝、男の全裸死体が見つかる。身につけていたのは鼻眼鏡と金鎖だけ。たまたま前夜、金融界の大御所が謎の失踪をしていたが、関係があるのか? 死体はその男というわけでもなさそうだ…貴族探偵ピーター・ウィムジー卿はふとした機縁から、この事件を手がけることに。執事バンターとの息のあったやり取りはユーモラスで、余裕を感じさせるが、はたして首尾は?
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-ホームズが宿敵モリアーティ教授もろともライヘンバッハの滝壷の底に消えて3年。失意の日々を送るワトスン医師のもとへ一人の老人が訪れた。その老人の正体は、なんと死んだはずのホームズであった! 喜びの再会と同時に、2人の新たな冒険が始まる。ホームズ物傑作短編第3集「シャーロック・ホームズの生還」から「空家の怪事」「ノーウッドの土建屋」「ひとり自転車を走らせる女」「プライアリ学院」「踊り人形」「ブラック・ピーター殺し」「奸賊ミルヴァートン」「六個のナポレオン」「三人の学生」「金縁(きんぶち)の鼻眼鏡」「スリー・クォーターの失踪」「アビ農場の屋敷」「第二のしみ」13編を収録。
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4.0女芸人カーロッタ・アダムズの人まね演技は完璧で、たまたま舞台を観たポワロは有名人の模写に感銘をうけた。ポワロはその晩、真似をされた当人のひとりで、有名な女優ジーン・ウィルキンソンから、離婚話に応じない夫を説得してもらいたいという依頼を受ける。だが、その夫エッジウェア卿は自宅で、何者かによって鋭利な刃物で殺害され、つづいてカーロッタも変死をとげる。難解な謎に挑むポワロ。
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5.0エルキュール・ポワロ、ミス・マープル、トミーとタペンス、ハーリー・クィン、パーカー・パイン……「ミステリーの女王」クリスティが創造した6つの脳髄(探偵役)が、それぞれの待ち味を生かして活躍する軽い短編集。車内で、カフェで、アームチェアで読むのに好適の作品集。
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-ホームズの世界を楽しめる作品。名だたるホームズ嫌いがアメリカ映画「まだらの紐」の脚本担当になったため、「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」の会員からの非難が相次いだ。一計を案じた会社は嘱託として会員をハリウッドに招待する。ところが、パーティの席に現れた当の脚本家が殺される。しかも、死体が消えた! 暗号・密室・国際的陰謀……シャーロキアンがもてる知識をフル動員して推理に当たる。
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-正統派ハードボイルドの巨匠レイモント・チャンドラーの中短編全集第1巻。本巻には、チャンドラー自身の序文を巻頭に置き、「脅迫者は射たない」「赤い風」「金魚」「山には犯罪なし」の傑作4編を収めた。哀愁とサスペンスを背に不朽の主人公フィリップ・マーロウがロサンゼルスのネオン街を歩き去る。「レイモンド・チャンドラーはアメリカについて語る新たな方法を発明し、それ以来我々にとってアメリカは全く違ったものとして映るようになった」ポール・オースターはこんなふうに書いている。
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-ショッキングな書き出しではじまる本書は、妻を愛し、歓心を得ようとしながら、妻の心とはうらはらな言動をする異常性格の夫に献身的につくす健気な女の、内心の葛藤を描く犯罪心理小説。「世の中には殺人者を生む女もあれば、殺人者とベッドをともにする女もある。そしてまた、殺人者と結婚する女もある。リナ・アスガースは、八年近くも夫と暮らしてから、やっと自分が殺人者と結婚したことをさとった……」
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-ハードボイルド派の代名詞となった感のあるチャンドラーの作品は、その枠を超えて親しまれている。長年その作品を味読してきた訳者は、本書において4つの中編を選び、「この1冊でチャンドラーのすべてが解る」と、控えめながら自負を語る。チャンドラーの魅力を紹介し、あらためてそれを確認する最適の作品集。「湖中の女」「女を裁け」「翡翠」「マーロウ最後の事件」を収録。
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-大西洋をイギリスに向かう豪華客船のなかで盗難事件が起こり、奇怪な殺人事件が発生する。死体が消えたあと「盲目の理髪師」が柄に描かれた、血まみれの剃刀が残っていたのだが、これはいったい何を意味するのか。そんなこととはおかまいなく、船上ではあれやこれやのドタバタ劇が続発、笑いのうち肝心の事件は消え失せるかに見えたのだが…真打のフェル博士が安楽椅子探偵となって登場する、円熟味を加えたカーの名編。
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-第二次大戦下、英国の兵器製造会社からイスタンブールに派遣された技師グレアムは、トルコ海軍の軍艦再装備計画に加わっていた。だがそれはドイツ、イタリア、ロシアの知るところとなり、グレアムの身に危険が迫る。トルコ秘密警察の手引きによって民間汽船で逃れたグレアムは、ギリシアから乗船してきた男がドイツの意を受けたルーマニアの暗殺者ベーナトであることを知った! だが、グレアムの秘密をつかもうと暗躍していた者は、それだけではなかった。スパイ小説史上に輝くアンブラーの初期傑作。
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-第二次世界大戦直前のイタリアを舞台に展開されるスパイ戦! 時は大戦勃発直前の北イタリア。英国人の若い技師マーロウはスパータカス工作機械株式会社ミラノ支店のマネージャーとしてミラノに着いたばかりだった。同社はイタリア政府に軍需物資を供給する英国の会社だ。だが、彼の先任者が夜半、何者かの操縦する車に轢殺されたのだということを、マーロウは知らなかった。やがてマーロウにも、何か奇妙な事件が、自分のまわりに起こりかけていることがわかって来る。婚約者に出したラヴレターが、何者かの手で開封されているのを知ったのである……。アンブラーの独壇場である本格スパイ小説の傑作!
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-派手なアクションを避け、地道にスパイの心理を追うスパイ小説の王道を切り開いたアンブラーの初期の代表作。「探偵小説味のある作品を書いている現役の作家で、文学者として最も優れた人は誰かと考えてみると、英のグレアム・グリーン、仏のジョルジュ・シムノン、それから英のエリック・アンブラー、この三人が特別に際立っている」江戸川乱歩はこう書いた。イスタンブールを訪れた英国人作家ラティマーは、秘密警察長官から、国際的犯罪者ディミトリオスが死んだことを聞かされる。だが、ディミトリオスの死体を眺めているうちに、ラティマーはこの男の謎につつまれた過去を洗ってみようという衝動にかられた。
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-米国の貧乏青年トムはひょんなことから、富豪グリーンリーフに息子を連れ戻してほしいと頼まれ、礼金欲しさにイタリアへと旅立った。現地でトムが出会ったのは、金にも女にも恵まれた放蕩息子ディッキーだった。裕福で自由奔放なディッキーに羨望を抱くトムは、自分を下男同様にこき使うディッキーに殺意をも抱くようになる。そしてディッキーの許婚マージをも手に入れようと画策する。自分とディッキーの容貌が酷似しているのに気づいたことが、そのきっかけに……。サスペンスの巨匠ハイスミスの代表作。ルネ・クレマンの映画で有名になったが、原題は「才子リプリー」で、典型的なピカレスク・ロマンだ。
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-サスペンス・スリラーの第一人者ウィリアム・アイリッシュの傑作の粋を集めた短編集の続編。本書には、表題作のほか「三時」「命あるかぎり」「特別配達」「ハミング・バード帰る」「送って行くよ、キャスリーン」など11編を収めてある。大都会のなかの人間の孤独と、しのびよる死の影……意表を突く技巧とバラエティに富むテーマに加えて、なによりも光る哀切な雰囲気描写と緊迫したサスペンス……読者の心をつかんで放さない。
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-ハイスミスの処女長編。若い建築家ガイは、妻と離婚するため故郷へ向かう列車の中でチャールス・ブルーノーと名乗る青年に出会う。彼は富豪の息子で、異常なまでに父を嫌っていた。それを打ち明けられたガイはふと、妻とのトラブルに悩んでいると話す。彼の妻ミリアムは、他人の子供を身ごもっていたのだ。ガイに同情したチャールスは、驚くべき計画を持ちかける。彼がガイの妻を殺すかわりに、ガイに自分の父を殺してくれと言うのである──異常な状況に置かれた人間たちの心理と行動を綿密に描き出した、心理小説、サスペンス小説の傑作。
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-探偵劇「鼠と海狸(ビーヴァ)」のクライマックスでは、ガードナーとライヴァルの俳優サーボネイジアが激しく言い争う。ガードナーは台本どおりにアーサーに拳銃を付きつけて発射した。だが、弾が込められていないはずの拳銃からは実弾が発射され、アーサーは即死した…新聞記者のナイゼルとアレン警部はガードナーから招待され、目の前でその事件を見たのだった。「マーシュ女史の作品はどの一場面を取り出しても脚色する必要もなくすぐにそのまま舞台で上演し、映画化することができる」これは有名な評論家ヘイクラフトの言葉だが、演劇通マーシュ女史ならではの機智に富んだ会話でスピーディに展開されていく本格推理長編。マーシュはクリスティ、セイヤーズ、アリンガムと並ぶ黄金期の四大女流作家のひとりである。
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-アンクル・アブナーはエドガー・アラン・ポーの生んだオーギュスト・デュパンに続いてアメリカが送り出した名探偵だ。彼が登場する作品は1911年から「サタデー・イブニング・ポスト」などに発表された。本書には、代表作「ドゥームドーフ殺人事件」「ナボテの葡萄園」のほか、18編を収めた。前者は古典的かつ独創的な密室トリックで知られ、後者は見事な最後の裁判のシーンがすべての作品の集大成となっている。当時の巡回裁判法廷の情景と民主主義確立途上のアメリカ人気質を生々と描き、正義を信じるアンクル・アブナーの面目躍如! 牧歌的な牧草地帯も好ましい背景になっている。
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-アリンガムの作品には、現代の社会的背景が巧みに取り入れられているものが多いが、本作では、イギリスの出版社の内幕が詳細に描かれていて、特異なバックグラウンドをなしている。デリケートで、しかも鋭い性格描写、物質的な謎でなく性格にもとづく謎、老練な技巧による流動的な文章など、探偵小説として第一級のものであるばかりか立派な文学的価値をもつ傑作。『幽霊の死』に続くアリンガムの長編。
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-死後の忘却を憂慮した画家ラフカディオは12点の作品を未発表のまま残し、死後10年を経過した時から毎年1点ずつを公開するという遺志を残した。社交界の人々が集まるレセプション当日、殺人事件が起き、遺族の友人でもある探偵アルバート・キャンピオンが犯人究明に乗り出す。画家、批評家、画廊などをめぐる美術界の実状が詳しく描かれ、それだけでもおもしろく読める。アリンガムはセイヤーズ、クリスティとともに、イギリスの三大女流推理作家の一人に数えられる本格派の代表格である。
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-資産家の未亡人は、毎夜自室に侵入するコウモリ、雀、ネズミにおびえていた。フラー警部の頼みで未亡人の部屋番となった敏腕看護婦ヒルダは、砒素を盛られたと主張する老婦人の奇妙な生活習慣に目をみはる。その背後には無職の長男夫婦、離婚した長女とその前夫、二人の娘ジャニス、召使い、お抱え医師などが織りなす複雑な人間模様があった。こうしたなかで老夫人が殺害され、ついでヒルダの監視の眼をくぐって次の殺人が…
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-錆びた真鍮(しんちゅう)のノブが付いたペンキ塗りの木製ドアが見ていた殺人犯の姿! 巧みに組み立てられた計画が、最後にドアひとつのために粉砕されようとは。事件後すでに何ヶ月も過ぎて、無数の手がノブに触れた。ドアのペンキも塗り直してあった…だが。
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-「ロンドン・レヴュー」誌の寄稿家トッドハンターは、大動脈瘤であと数か月の寿命と宣告された。彼は熟考のすえ、余命の残るあいだに「有益な殺人を犯そう」という結論に達する。めざす人物はすぐに見つかった。それは「吸血鬼」とよんでもいいような酷薄非情な女だった。ファローウェイ一家はその犠牲となってあえいでいた。彼は拳銃を忍ばせて夕闇のなか女の家を訪れ、椅子にすわる女めがけて発砲した…「殺意」とならぶバークレーの代表作。
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-海辺を散策していた推理作家ハリエット・ヴェーンは、遠望する岩礁のうえに動かない人物を発見した。それは喉を剃刀で切られた男の死体だった。だが、浜辺には男のものと見られるひとすじの足跡しかなかった。やがて死体は満ちてきた潮に流されて行方不明になる。……錯綜する謎また謎。ウィムジー卿はこの難事件を解けるのか? シリーズ屈指の重厚な長編。
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-舞台は寒風吹きすさぶスコットランドの人里はなれたエルカニー城。そこの当主で異常な吝嗇家ラナルド・ガスリーが、クリスマスの朝に胸壁から墜死しているのが発見される。ガスリーはかなり前から死に瀕した詩人ウィリアム・ダンバーの「詩人への挽歌」を憑かれたように口ずさんでいるところを目撃され、近くの村ではもっぱら気がふれたという噂が流れていた……全体を圧倒するゴシック・ロマンの雰囲気のなかに展開する謎につぐ謎、そしてどんでん返し。いち早く江戸川乱歩が第一級の名作として紹介しながら、翻訳されなかった古典ミステリ期の代表作。最初の一章は少し堅苦しいが、その後、テンポは軽快になり、クライマックスまで一挙に読ませる。
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-ブラックウッドは幼年期から青年期にいたる間の特異な体験や思想遍歴により、人為的な文明に対比すべき超自然的なものに対する感性を、鋭くとぎすましていた。その自然が、人間といかに関わるかを、さまざまなモチーフと手法で描いたのが彼の作品群である。自然が強烈な意志を持っていて、隙あらば人間を侵し、ついに荒廃へと導くものとしてとらえるのだ。輪廻をテーマにした「いにしえの魔術」、恐るべき生霊現象を描く「ウェンディゴ」、黒魔術の恐怖「邪悪なる祈り」など、怪奇作家という名称を嫌っていた鬼才の代表的傑作9編。
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-1868年に出版された本書は、現代ミステリの最初の試みと見なされている。T・S・エリオットは「英国で最初に発表された最も優れたミステリ長編」と書き、ドロシー・セイヤーズは「おそらくこれまでに書かれた最もすばらしいミステリだ」と記した。黄色のダイヤといわれたインドの秘宝「月長石」は、不思議な経緯をへてイギリスへ。ある晩、「月長石」は持ち主ヴェリンダー家から忽然と消失する。同家の依頼を受けたロンドン警視庁のカフ部長刑事は万全な体制で捜査にあたったが、手がかりは乏しい。果たして犯人はどこに? 意外性とサスペンスあふれる展開で読者を飽きさせない不朽の名作。コリンズはディケンズと互いに影響を与えあった。
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-1949年、エラリー・クイーンはミステリに詳しい作家、評論家など12人に委嘱し、それぞれにミステリの歴代傑作12編を推薦させた。著名な評論家ハワード・ヘイクラフトはそのうちの一人である。エラリー・クイーンは「ヘイクラフトに探偵小説界の指導的歴史家の名を冠しても異議をさしはさむ者はないであろう」と述べている。ヘイクラフトは要望に応え、時代順に13編を選んで提出した。これが本書「黄金の十三」である。 (収録作) 「盗まれた手紙」エドガー・アラン・ポー 「赤毛組合」コナン・ドイル 「13号独房の問題」ジャック・フットレル 「オスカー・ブロズキー事件」オースティン・フリーマン 「犬のお告げ」G・K・チェスタートン 「奇跡の時代」M・D・ポースト 「ほんものの陣羽織」E・C・ベントリー 「黄色いなめくじ」H・C・ベイリーン 「玄関の鍵」フレデリック・I・アンダースン 「争いの元」ドロシー・セイヤーズ 「神の燈火」エラリー・クイーン 「フウジス小僧」ダシール・ハメット 「踊り子探偵」ウィリアム・アイリッシュ
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