仁木英之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
謀の規模が凄い。僕僕の目論見がこういう事だったとは。最初からそういうつもりで。
歴史と古代仙界史に合わせてこれだけのスケールでストーリーを練り上げていくの大変そう。神仙がどこまでも満足できずに傲慢になってゆく存在だというのは悲しい。吉良の故郷の惑星に行って先祖の翼を貰い受けるくだりがよかった。耕父と燭隠の友情のデカさに圧倒された。王弁の台詞はところどころで青臭く綺麗事だらけのように思えるが、今の現実世界でも誰かの欲の為に誰かが犠牲になっている真っ最中なのだ。戦を終わらせる為に人類滅亡させればそれで解決かどうかなんて考えなくてもわかる。
結局「一」ってなんなんだ。コンピュータの01の一みたいなも -
Posted by ブクログ
園芸を知るのは、土を知る事。
どんな植物にどんな土が合うかどうか・・・
考古学に興味を持つ定年退職した元刑事、フクさん。
長野の遺跡発掘で古代衣装をまとった女性の殺害現場に出くわす。
そこで出会った、考古学者の通称「つちくれさん」
殺害された女性も、犯人で捕まった男性も顔みしりであり、
なぜか気の合う老齢の二人は、真犯人を探すことに。
つちくれさんの言葉がとてもいい。
「年取って、頭がゆっくりになってくるのは悪いことやない。全速力で走って、見えなかったことが、よう見えるようになった。」
フクさんが、妻にぬれ落ち葉で捨てられると冗談を言えば、
「フクさんは落ち葉でも地べたに転がっているのは苦 -
Posted by ブクログ
ネタバレ改めて、仁木英之氏をとんでもない作家だと思い知った。こんなに深く歴史を追ったベース上でこんなに魅力的なキャラクターを作り出してファンタジーの要素とユーモラスを混ぜて仙人と周りの人々を描き出すなんて神技過ぎる。
劉欣が最期に王弁に己の仙骨を譲り渡すシーンが最初で最後に二人が真に心を通わせた場面だったのだろうか。恋せよ魂魄なんて軽いタイトルに似つかわしくない、どえらい旅の展開になってきた。貂も王方平も人間と仙人の違いはあれど中身は同じ、現状に満足できない事だ。
タシの生死についてデラクが放った一言「このご時世に死ぬ時期がわかってるって、どれほど幸せなことかわかる?」が突き刺さった。
もしも劉欣が司 -
Posted by ブクログ
ネタバレ吐蕃の国での話。王弁がこれまでの無鉄砲さを脱ぎ捨て、強くなっていく過程をまざまざと読み取れて、ものすごく読み応えがあった。
薄妃と蒼芽香は手前の地に留まり、新たな旅の仲間が加わる。吐蕃の政のあれこれを読み進めるうちに、漠然と国家や統治者、良くも悪くも民の意向を整える政治のあり方の難しさがわかってきた。人間とは弱いから強くなるのか。
僕僕の人間社会に干渉しないけど王弁の成長のために末端で小さく関与するスタイルが好ましい。王子ドルマは民の中を放浪して王側の敷いたレール上の鍛錬だけではない、自分の頭で考え動く、見聞を広めて己を鍛える時間が必要だったと思う。王位を捨てきれない苦悩は決して贅沢ではない。 -
Posted by ブクログ
古代中国。王弁という名の青年が、父親の財産で働かなくても一生食べてお釣りが来る事に気づきニートになる。そのニートが仙人に出会うことから旅が始まるストーリー。シンプルに羨ましい。
太平楽がウリの王弁には仙人になるための仙骨(精神を支える骨)がないが仙縁(仙人とのご縁)がある。この仙人、見た目は美少女だが中身はおっさん、つかみどころのない不思議な魅力でいっぱいの僕僕。長生きし過ぎて名前を忘れたから一人称のボクからとって僕僕という。仙人らしくない人間好きでお節介な彼女が世界を旅して神々や人間たちの揉め事を解決に導いてゆくファンタジー物語。はたして王弁と一緒にいられる策はあるのか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ「胡蝶」と呼ばれる暗殺部隊が失ったもの、それは「劉欣」という名の凄腕暗殺者。劉欣の生い立ちから彼が仙骨を持っている事、僕僕が半ば無理やり旅の一行に加える事によって最後の方で救われていく劉欣の本来持っていた人間らしい心。最も外見のイメージが湧きづらい登場人物であるが、見た目が原因で捨てられ虐めに遭い住処もない幼少期を過ごしたという。どんな親であってもいつかは先に死ぬ。劉欣に必要だったものは自由と尊厳、友愛。すべてを見通す仙人にしか救えないような険しい境遇にあった彼が「ばかな奴ら」に癒されていく様がまざまざと描かれていて心底よかったと思えた。
このシリーズは比較的軽くコメディタッチで仙人と人間の師 -
Posted by ブクログ
僕僕先生シリーズ史上最高傑作と名高い作品。シリーズの始まり「僕僕先生」を入手する前に読んでしまい、この四作目をきっかけに全シリーズを探し回って入手。圧倒的な世界観の虜になること間違いなしの超大作。旱の神様が居座っているせいで人々が死に絶えそうになっている苗の国にたどり着いた僕僕一行。蚕の正体がわかる作品。王弁の私的な感情から大変な騒動に巻き込まれていくが、旱の神様である跋という醜い少女姿の女神が生まれた経緯、その力を封じる為の悲しい選択、愚かな神々の闘いなど時間も空間も飛び越えた複雑な世界の仕組みが最終的に僕僕の技と黄帝の登場により、なんとか治まる。生まれたくて生まれたわけではない悪神である女
-
Posted by ブクログ
僕僕先生という仙人(美少女)と王弁というニートが繰り広げるほっこりする癒し系のファンタジー。
文体も伸びやかで、話ものびのびとした印象だった。この文体非常に好きだ。
ただ忙しくて二〜三日で一冊読むという目標を果たせず、途切れ途切れに読んでしまった。
王弁は聡明なのだが繊細で、世の中そのものが耐え難いタイプ。
母の死、父の浮気。辛い科挙の勉強。そしてその果ての「自分が稼がなくても大丈夫なんだ」と知った瞬間。
殴られるより打たれるより、どんどんと「自分は不要だ」「自分の努力は徒労だ」と分かっていく時の傷というのは深く人を腐蝕させていくものがある。
そんな彼を救ったのが僕僕なのだが、僕僕もなかなか