仁木英之のレビュー一覧
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青年が美少女に心底惚れ込んでいるものの、美少女の側は満更でもない感を出しつつもいなす…というパターンは割合珍しくもないが、女性の側が道士で師匠だ、というのが、そういう「乳繰り合いかねない関係」を陳腐でなくするし、2巻目にしてそのやり取りがシリーズの魅力だと、はっきりと出してきた感じ。飄々とした人の会話、読んでいてクセになる。
前作は長安から世界の果てまでひとっ飛びしたが、本作では「ゆったり江南都市巡り」といった趣で、料理と酒もフィーチャーされ、旅小説感もよい。オトナな関係を王弁に見せつけてきた新キャラ・薄妃の登場と同行が2人の関係性を変えそうで全然変えないのも悪くない。 -
Posted by ブクログ
え? え? なんでこう言うことになってるの? と言う戸惑いが読んで真っ先に浮かんできた。
僕僕先生と王弁くんの長い旅が終わり、長安に戻ってきたはずなのに、彼が不可思議な眠りに陥り、それを目ざめさせるために薬種を求めに行く僕僕の前には、様々な相手が立ちふさがる。
今までは敵と言ったら王方平やラクスぐらいだったけど、三国志や西遊記の英雄たちが立ちふさがる展開。
なにやら、大きな争い事に巻き込まれているような、勘違いのようなそうでないような、良く分からない状況。
そりゃあ、なんで? と思うだろう。
その争いは、ある意味、僕僕先生と言う存在自体の謎に関わる事なんだろうけど、過去のことは本編ではあまり -
Posted by ブクログ
読む順番を間違えたかもしれない。
僕僕先生のクライマックス前に読んでおくと、ラストの話がより楽しめます。
蓬莱山の麓にいた頃の僕僕先生はこんなキャラクターだったんですね。もはや別人です。
ストーリーに振れると、これまで以上に神仙と人間の違いに触れています。人間とは何なのか?常に不十分で限られた命しかもたない身にあって、誰しもがもってしまう考えとは何なのか、いつもながら手を止め一考してしまう作品ですね。
そして、万能であるはずの神仙も、一枚岩ではない。このほころびが数千年、数万年後の王弁に降りかかると思うと、世界の深みが一層増すというものです。
あと一冊、楽しみます。 -
Posted by ブクログ
中国の有名人(人?)オールスター。大団円的なノリ、大好きです。
これまでも玄宗皇帝のような歴史上の人物は出てきましたが、最終話に向けて一気に一軍メンバーを投入してきた。そんな印象です。
中国史しらなくても、孫悟空や関羽はしってるでしょ?という大盤振る舞い。それほどの危機が天地に迫っているスケールの広がりにビリビリ来ました。
あとは、クライマックスの、僕僕先生のセリフ、、、じれったかった部分、やっとだよ!と嘆息。こういう気分をカタルシスというのでしょうか。10冊読んできたからこその満足感を覚えます。
後一冊、日が変わる前に読み切ってしまいそうです。 -
Posted by ブクログ
『SLAM DUNKの最終話かと思った』
前作から一気に読み込んでしまいました。
薬師としての王弁、殺し屋として苦境に立つ劉きん。二人の葛藤に忸怩たる思いを残します。
好きですね。
どうすればいいのかわからないい。どう選択しても、明らかに誰かが不幸になる場面。
そういう場になって、キャラクターが吐露する気持ち。
浅はかさでも、熟慮した結果でもどちらでも良く、心が揺さぶられます。
また、前半で意識されていたような、オムニバスな作風はありません。むしろ長編ものとして過去の旅路を総決算しなさいよ?と言われているような書きぶりです。
単古本の後書きで、指輪物語が引用されていました。行きて帰りし