古井由吉のレビュー一覧

  • 夜明けの家

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    この作品辺りから20p程と短めな短編形式が増えて行くが、内容が伝承や故人とのエピソード等雑多で、後期の作品集の中ではかなり楽しめた。

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    2022年11月04日
  • 野川

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    いつもより言葉がスルスルと流れていく。
    読んでいくうち、作者の過去から現在を繋ぐ一本の記憶を、表題の野川を辿っていくようにしっかりと感じ取れた。
    後期の古井由吉の中でも出色の出来だと思った。

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    2022年11月04日
  • 聖・栖

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    一応連作。
    『栖』は『杳子』と同様神経疾患を一つの軸としているが、少ししつこ過ぎる気がした。そして当人に
    病んでいる自覚が無い分、情が移りづらい。
    『聖』は単体で通じる程の完成度で、こちらの方が好みだった。

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    2022年10月06日
  • 杳子・妻隠

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    「杳子」
    大学生の時にしばらくお付き合いをしていた女性は小柄で可愛らしく、真面目で読書家、友達思いのキュートな人だった。
    彼女が北海道へ一人旅に出かけた時に、私は多分何かに嫉妬したのだろう。
    彼女が私より旅行を選んだような気がした。
    その頃から私は自分の中にあるウジウジとした女々しい思いを彼女に少しずつ吐き出すようになっていたと思う。
    私は彼女の本質を知らなかっただろう。そして自分の女々しい思いをぶつけることが彼女の心から私を遠ざけるのだという事を知らなかった。
    この作品の「杳子」は心を病んでいるのだけれど、自分が病んでいる事を知っている。そして彼女を取り巻く世の中と人々は彼女を救い出すことが

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    2022年09月19日
  • この道

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    70代から80代に向かう著者の日々と、迫り来る死。テレビから伝えられる日本の、世界の惨状と、無惨な死。それを見て著者が振り返る戦中戦後直後の光景。40代の頃の日々。60代の頃の自分。数百年前の、数千年前の去っていった人々。自らの生と死と、数多の人々の生と死が混ざりあい、穏やかな風のように文章も著者の命も流れていきます。

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    2022年09月11日
  • 仮往生伝試文

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     1989(平成元)年刊。52歳の頃の作品である。実はほとんどリアルタイムにハードカバーで購入し、私が遥か以前から親しんできた『眉雨』と同年に刊行されたようだ。しかし、『眉雨』とは結構がまるで異なる。
     はじめ連作短編の形かと思って読み始めたのだが、前の章に記述された内容を直接言及する箇所が出てきて、これは長編小説なのだと気づいた。とはいえ、もちろんこの頃の古井さんの作品だから、大がかりな物語らしいものは全く存在せず、最初の方はことに随筆のような姿をしている。
     この作品の特色は、僧などの「往生」を採録した国内の古い文書を参照して紹介するような書き方で、カギ括弧もなく地の文に古語が紛れ込んでい

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    2022年06月04日
  • 杳子・妻隠

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    ネタバレ

    ピース又吉が第二図書係補佐で題材としていたため読んだ。
    しかし、自分の頭では理解できなかった。読書が下手になったのだろうか。
    だけど、雰囲気は全体に好きだった。

    杳子は神経症を患う彼女を持つ男の視点で物語は進んでいく。
    最終的には杳子が健康になるために、病院へ行くと宣言して終わる。
    恋人のためを思って自分の体を治そうとする姿によって、自分の恋人へ姿勢を改めようと反省した。
    彼女は私とデートする時はいつも身なりを整えてくる。それに対して、私は不潔感漂う姿でデートに行く。そんな容姿では彼女に対して甚だ失礼だろう。
    相手を思うからこそ自分を変えると言う精神は忘れてはいけない。

    妻隠は全くわからな

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    2022年05月24日
  • こんな日もある 競馬徒然草

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    「優駿」誌上での連載から抜粋した本になります。
    枠連しかない時代から、オグリキャップからの競馬ブーム、そしてわたしが競馬を見始めた90年代末から現代に至るまでの競馬場の様子が描かれています。
    競馬を長年やり続けたことの奥深さを垣間見れる一冊です。

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    2022年01月18日
  • われもまた天に

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    肉体的に衰弱していく自分自身の姿を、巧みな表現力で書き表したユニークに著作だ.頭は活発に活動しているなかで、身体の動きは儘にならないもどかしさがよく分かる.小生より10歳上だが、語彙が豊富で流石に一流作家だと感じた.表題作で地下鉄を降りて方角を間違える場面は、自分がコントロールできない歯がゆさがよく描写されていると感じた.

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    2021年04月17日
  • 杳子・妻隠

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    ネタバレ

    古井由吉氏の作品ははじめてだったが、
    いかにも純文学を読んでいますという時間を過ごした
    世にも奇妙な物語にしても面白いと思った

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    2021年01月30日
  • 杳子・妻隠

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    「杳子」が小川洋子さんのラジオで紹介されていて、気になって読んだ。1971年の芥川賞受賞作品。掴みどころがなく何とも言えない気分になるが、美しい文章だと思った。小川洋子さんが、「繰り返し読むことで発見がある」と評されている。他の古井由吉作品も読んでみたいと思った。

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    2020年12月23日
  • 人生の色気

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    ネタバレ

    人生の色気
    (和書)2010年01月22日 23:58
    古井 由吉 新潮社 2009年11月27日


    mixiの足跡を辿っていった先でオススメされていた本です。

    非常に面白かった。読み易いし、作家って何だろうと言うことに率直に答えていて読んでいて楽しい。

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    2020年09月25日
  • ゆらぐ玉の緒

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    俳句の余韻をずっと味わっていたような読後感。
    電車の中ではなく、静かな場所で心地よい椅子に座ってじっくり読みたい。

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    2020年01月05日
  • 往復書簡 言葉の兆し

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     東北の震災の年、東京の古井由吉と仙台の佐伯一麦のあいだでやり取りされた手紙。際立ったことが語られているわけではない。でも、今読むと、もう一度心の中の、ことばにならない何かを失いたくないと思う。1995年阪神大震災という、自然の、想像を絶する破壊の、刻み込まれた、経験に戻っていく自分を見つける。
     家族を失い、自宅は倒壊した少年や、少女たちが、倒れなかった学校の、薄暗い職員室にやってきて、笑いころげ、経験の奇異を自慢しあうかのようにおしゃべりしていた。そんな顔が浮かんでくる。25年も昔のことだ。
     二人の作家が、そんな少年たちの心の奥にあったもののことを語ろうとしている。
     誠実な本だ。

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    2019年02月12日
  • 野川

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    新聞に載っていた著者の文章に惹かれて買ったもの。全編にわたって夢と現をどちらとも知れず漂うような小説。六十を越えて生から死を観じる主人公と、戦中の空襲や、青春時代の記憶などが入り混じる。

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    2018年11月05日
  • 辻

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    輪郭がぼんやりとしていて、何がなんだか分からないと思っていたら、ふとこれは老境の物語ではないかと気付いた。それも、ふと途中で、古井と大江の巻末の対談を読んだからだ。この対談は、訳詩と創作の破滅的な関係を語っていて、すこぶる面白い。

    分かったのは、暖かい髭、だけだった。

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    2018年07月04日
  • 人生の色気

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    今年で80歳になる老作家・古井由吉さんのエッセー集。
    濃密な文体の小説と違って、実に軽やかな筆運びです。
    このことから逆に、小説に全精力を注いでいることが分かります。
    「貧寒たる文学環境の中で、僕自身は、なるべく丁寧に言葉を綴る、というただ一つを心得にしてきました。」
    と古井さんは書いています。
    そうなのだろうと思います。
    本書は、老作家の半生をつづった回顧録でありながら、優れた作家論、小説論でもあるように思いました。
    たとえば、
    「作家は、真のタブーを上手く避けながら表現することによって、文章の色気を出してきました。」
    「いま、作家は例外なく端正で整った文章を書くでしょう。なぜ、もっと奔放に

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    2017年09月22日
  • 辻

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    いつかいつかと思いながら、やっと古井由吉を読むことが出来ました。
    古井は昭和12年東京生まれで、「杳子」で芥川賞を受賞。
    その他、谷崎賞、川端賞、読売文学賞、毎日芸術賞も受賞し、今や純文学界の重鎮と言えましょう。
    最近では、又吉直樹が「憧れの作家」だと公言しています。
    ただ、作風は素人にはちょっと難解で取っつきにくいのも事実(古井自身は「難解ではない」と反論していますが…)。
    気軽に寝転がって読めるような小説ではなく、端然と居住まいを正して読むことになります。
    で、本作は、日常に漂う性と業を主題とした12の連作短編集。
    一読して、ただならぬ小説であることが分かります。
    何がただならぬと言って、

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    2017年07月11日
  • 杳子・妻隠

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    ネタバレ

    なーんか背筋が寒いのよね。
    文章が、どすーんと鎮座していて
    その文章を読むのに何手間もかかる感じです。

    前者の作品は
    強迫観念に取り付かれた女性と
    人生を無為に過ごす男性の物語。

    だんだんと男性が女性に引きこまれて
    やんでいくさまが実に背筋が寒いです。
    ですが、女性は、やっぱり強いね。

    後者の作品は…
    二人だけの日常に
    思わぬ影がさしていく作品。
    二人だけの世界は、ありえないのよね。
    そして、なにやら意味ありげな発言が
    でてくるのが気になるところ…
    (そうではないと信じたいですが)

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    2016年11月17日
  • 蜩の声

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    「現代日本純文学最高峰の作家の一人」言われる所以が分かる気がする。難しい、ゆえにレビューしようがない
    商品説明の「対極のあわいを往還しながら到達するさらなる高み――。記憶の重層から滴る生の消息。震災をはさんで書き継がれた言葉の圧倒的密度。」に尽きる。初期の頃と比べ文章が洗練されて簡潔的になってはいるものの内容は同等の濃密さ。作者が書く作品は文字通りの文学だと思う。

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    2016年06月24日