あらすじ
急逝した友人の一周忌近く、故人からの遺贈として届いた一枚の絵地図。友人が好んだ野川の散歩道を描いた絵の片隅で、大人が子供の手を引いていた。それは子を妊った娘の未来像か、東京大空襲の翌朝に母親と歩いた荒川土手の風景か――。はるか時空を往還し、生と死のエロスの根源に迫る、古井文学の到達点。
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Posted by ブクログ
今回の旅はこの小説とともにあった気がした。長距離列車で移動しながら、うつらうつらとなったりしながら読み進めていたのだけど、その感じがこの小説の感じと非常に合っていたと思う。この世とあの世。今と昔。夢とうつつ。あいつと自分。不思議な空気感が漂っていて、最初はそれが慣れないのだけど、徐々にそれが心地よくなってきて。堀江さんの「河岸忘日抄」と似た雰囲気があるけれど、それよりもこっちの方が数段上を行っている。。。たぶん今の現役の日本人の作家で最高峰はこの人だと思う。いや、わからないけど。何の理由もないけど直感的にそう感じた。こんな小説を、この域の小説を書ける人はこの人しかいないんじゃないだろうか。。。ちょっと他の作品も読みたくて仕方ない。この本を日本から持ってきて良かった。(08/8/26)
Posted by ブクログ
いつもより言葉がスルスルと流れていく。
読んでいくうち、作者の過去から現在を繋ぐ一本の記憶を、表題の野川を辿っていくようにしっかりと感じ取れた。
後期の古井由吉の中でも出色の出来だと思った。
Posted by ブクログ
新聞に載っていた著者の文章に惹かれて買ったもの。全編にわたって夢と現をどちらとも知れず漂うような小説。六十を越えて生から死を観じる主人公と、戦中の空襲や、青春時代の記憶などが入り混じる。
Posted by ブクログ
生活の中でたまーにある、たくさんの人といるのに急に自分の回りにフィルターがかかって自分以外がスクリーンの中にいるような感覚になる。この人の、句点の連なりによる淡々とした、ボソボソと喋っているような長ーい文章がけっこう好み。