杳子・妻隠

杳子・妻隠

572円 (税込)

2pt

“杳子は深い谷底に一人で坐っていた。”神経を病む女子大生〈杳子〉との、山中での異様な出会いに始まる、孤独で斬新な愛の世界……。現代の青春を浮彫りにする芥川賞受賞作「杳子」。都会に住まう若い夫婦の日常の周辺にひろがる深淵を巧緻な筆に描く「妻隠」。卓抜な感性と濃密な筆致で生の深い感覚に分け入り、現代文学の新地平を切り拓いた著者の代表作二編を収録する。

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杳子・妻隠 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    純文学とは何なのか? そのわかりやすい例がこの作品のように思う。

    異なものを描く事がそうではないかな。
    『杳子』には質感がある。
    それを質感を伴って体感させる事を通して理解や共感に繋がる可能性がそこにはある。
    わかるがわからない作品。
    人もまたそうだと思う。

    0
    2025年07月11日

    Posted by ブクログ

    筆致に圧倒された。
    だれかと関係を持つ、ともに生活を送る。
    まったくの孤独ではないはずなのに、閉塞的なその関係によってより孤独が深まっていくような、そんな苦しさと寂しさと、やるせなさのようなもの。自分の中で上手く言語化できなかった感覚が、描かれていたような気がした。

    0
    2023年10月27日

    Posted by ブクログ


    “内向の世代”としてどんどん深化していった中期以降の古井由吉とは内容を異にする初期の大名作。
    当時より観察力・透明な筆致は完成しているが、何より表題の『杳子』のひたむきな表現に心が動く。
    他作を同様にお薦めは出来ないが、本書に関しては戦後の必読書と言いたい。

    0
    2022年10月06日

    Posted by ブクログ

    ひたすら陰鬱な作品で,メランコリーが全体を支配しているのが特徴。70年代「内向の世代」の代表作で,ある種の純文学の王道だろう。

    今にも落ちそうな危うさで,といっても落ちたからといって何事も起こりそうもない,といった徒労。閉ざされた世界における不安は,現代でも十分通じるところがある。

    「病的」とい

    0
    2021年07月20日

    Posted by ブクログ

    『ピース又吉がむさぼり読む新潮文庫20冊』からピックアップした一冊。
    閉ざされた世界での男女の恋愛というものは、かくも重くて暗いものなのか。そもそも恋愛とは実は明るいものではないのかもしれない。そんなことを考えながら読み終えたとき、又吉が帯の惹句に書いている「脳が揺れ…めまいを感じ」たという症状にワ

    0
    2018年11月18日

    Posted by ブクログ

    脚本家いながききよたか氏の話から興味を持って読みました。

    『杳子』は芥川賞受賞作品
    彼女の庇護者のようなつもりの彼氏の一字一句が、彼女を妖しく表しているようで、そこに愛を感じました。
    杳子は精神的に不安定な人物ですが、賢い人です。とても魅力溢れるご婦人で、幸せになってほしいと願いたくなります。

    0
    2024年07月03日

    Posted by ブクログ

    「杳子」
    大学生の時にしばらくお付き合いをしていた女性は小柄で可愛らしく、真面目で読書家、友達思いのキュートな人だった。
    彼女が北海道へ一人旅に出かけた時に、私は多分何かに嫉妬したのだろう。
    彼女が私より旅行を選んだような気がした。
    その頃から私は自分の中にあるウジウジとした女々しい思いを彼女に少し

    0
    2022年09月19日

    Posted by ブクログ

    「杳子」が小川洋子さんのラジオで紹介されていて、気になって読んだ。1971年の芥川賞受賞作品。掴みどころがなく何とも言えない気分になるが、美しい文章だと思った。小川洋子さんが、「繰り返し読むことで発見がある」と評されている。他の古井由吉作品も読んでみたいと思った。

    0
    2020年12月23日

    Posted by ブクログ

    杳子--おそらく統合失調症である女との交際を実に細かく描写している。登場人物は二人以外にほとんどいないのに、描写の細密さによって最後まで読ませてしまう。これはすごい作品だ。
    妻隠--正直、よく分からなかった。

    0
    2015年09月21日

    Posted by ブクログ

    杳子よりも妻隠の方が個人的には断然よかった。
    今となっては当たり前のように言われる、精神疾患・境界知能と呼ばれる人たちに当てはまるのが杳子ではないだろうかという気持ちで読んでいた。ある意味とてもリアルでフィクションのために加工されたキャラクターでは全くなく、身近に杳子のような人間がいる世界を見ている

    0
    2025年10月18日

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