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老境にさしかかった男の、つれづれに蘇る遠い日々の記憶。うつつの中の女の面影、逝ってしまった人たちの最期のとき。過去と現在を往還しながら、老いと死の影を色濃くたたえる生のありかたを圧倒的な密度で描く、古井文学の到達点。
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Posted by ブクログ
「雨の裾」(古井由吉)を読んだ。私には『凄い!』としか言いようがないくらいに凄い。 とりわけ「夜明けの枕」「雨の裾」は『凄い!』 あまりに深くこれらに思いを巡らせすぎていたため、あっ!と気がついたら家の前を通り過ぎたまま運転していた。(実話) と、そのくらい魂を揺さぶられている。
躁がしい徒然 死者の眠りに 踏切り 春の坂道 夜明けの枕 雨の裾 虫の音寒き 冬至まで
久しく触れていなかった、上質な文学。スマホもネットも登場しないどころか、穏やかで落ち着きのある文章にはカタカナも少ない。 安易な言葉と早いテンポの刺激的なストーリーが氾濫する今日、ときにはこういう大御所の作品に触れてバランスを取ることも大事だと気づかされた。 8話の短編は、どれも死が身近にある。現...続きを読む実と幻想とが入り交じり、時間も空間も行き来して、ときには怪談のような異世界に紛れ込んだよう。なのに、地に足が着いていて、味わい深い随筆のようにも思えるから不思議だ。 学生時代、芥川賞受賞作の「杳子」を読んで心が揺さぶられたことを思い出す。精神を病んだ女性を描いた作品を理解した自分が、少し大人になったような気がして、ちょっとうれしかったものだった。
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