あらすじ
東日本大震災を契機に交わされた迫真の24通。仙台近郊で罹災して以後、被災地から言葉の恢復を探る佐伯と、震災後と戦後の風景を重ねつつも、そこに決定的な違いを見出し、歴史を遡るなかで言葉の危機と可能性を問う古井。大きな喪失感のなかで、いま文学が伝えるべき言葉とは?
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Posted by ブクログ
東北の震災の年、東京の古井由吉と仙台の佐伯一麦のあいだでやり取りされた手紙。際立ったことが語られているわけではない。でも、今読むと、もう一度心の中の、ことばにならない何かを失いたくないと思う。1995年阪神大震災という、自然の、想像を絶する破壊の、刻み込まれた、経験に戻っていく自分を見つける。
家族を失い、自宅は倒壊した少年や、少女たちが、倒れなかった学校の、薄暗い職員室にやってきて、笑いころげ、経験の奇異を自慢しあうかのようにおしゃべりしていた。そんな顔が浮かんでくる。25年も昔のことだ。
二人の作家が、そんな少年たちの心の奥にあったもののことを語ろうとしている。
誠実な本だ。