古井由吉のレビュー一覧

  • やすらい花

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    人生の最晩年に達した男の回想形式による短編小説6篇。
    語り手となる人物は、1937年生まれの古井由吉と同世代に設定されていると思われ、私小説的な一面もあるのかもしれません。

    老境に達した人間がどのような心境になるのか、もちろん自分には想像することも難しいのですが、この短編小説集に触れることで、それを疑似体験できたような気がします。
    「達観」や「郷愁」といったイメージとはずいぶん違って、案外惑っており、情念的でもあるな、という印象。

    回想といっても、時制は単純ではなく、青年時代の出来事を思い出している中年時代の自分を、今、回想しているといった多重階層形式になっていたりします。
    言葉づかいは高

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    2019年01月06日
  • 杳子・妻隠

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    平坦な話の流れの中に、登場人物の心情の変化が事細かに表現されている。

    男女の仲とは脆く危うい面も持ち合わせているものなのだな、と感じた。

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    2018年12月05日
  • 木犀の日 古井由吉自選短篇集

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    元の発表時期でいうと四半世紀にわたるスパンから自選した短編集。現と夢のあいだにあるようなタッチは一貫している。すごくちょっとした徴候を感じとって、そこから夢想がどんどん広がっていく。

    寝る前に読むとてきめんに眠たくなって、短編ひとつもなかなか読み通せなかった。

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    2018年11月05日
  • ゆらぐ玉の緒

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    明確なストーリーはなく,季節のうつろいと,作者を彷彿とさせる老人の心情が詩情豊かに描かれています。

    意味を捉えるのもなかなか難しく,私は読み終えるのにとても時間がかかりましたが,とても常人には真似のできない高尚な表現力に,本格的な文学というのは本書のような小説をいうのだろうと思いました。

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    2018年08月24日
  • 文学の淵を渡る(新潮文庫)

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    ネタバレ

    初読。外国文学、古典、近代文学と幅広い分野にわたっての対談。長年にわたって文学と真摯に向き合い、もがき続けて、書き続けてきた二人が、晩年にいたってなお書くのをやめることに恐怖しつつ新しい何かを手に入れようとしているのが印象的。対談も明快な難解さでいっぱいです。

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    2018年05月29日
  • 人生の色気

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    古井由吉 著「人生の色気」、2009.11発行、今年79歳の著者、72歳の時の作品です。半生記であり、折々の思い、考え方が綴られています。戦後の解放感は、とにかく生き永らえたという深い実感から発してるそうです。そして、日本の戦後の発展は、野放図な活力と几帳面な律義さによると。人の耳をはばかりながらのセックスから団地という別天地が出現するも色気、エロティシズムはなくなった。緊張感のない時代に年をとるのは難しく、ちゃんと年を重ねているのは、田中角栄、大平正芳の世代まで。

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    2016年09月07日
  • 杳子・妻隠

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    ピース又吉のエッセイがすごく心に残っていて手に取りました。

    「病んでいる」とか「夫婦だ」とか定義付けることに何の意味もないような気がしてくる。社会的には必要なんだろうけど、当人にとっては。
    ストーリーは好みではない(たぶんあんまり理解できてない)ものの、面白い描写があちこちにあって、その感覚を想像することは楽しかった。
    暗くてじっとりして生々しいんだけど、素っ頓狂な感じ。

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    2016年06月22日
  • 杳子・妻隠

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    又吉効果で読者が増えた古井由吉。初めて読んだが、なかなかクセが強い文体だわ。杳子は正直、描写の濃密さに辟易してしまったが、妻隠は楽しめた。夫婦という不思議な関係性を、うまく言葉で切り出している気がする。
    どうでもいいけど、どっちも読んでいて気になったのが、体をよじるという表現が頻繁に出てきたこと。古臭い言葉ではないけど、一般生活ではあまり聞かない言葉なだけに気になった。あと、官能性を表現するのに、太ももがよく出てくる。逆に胸については、あまり描かれなくて、古井さんは脚フェチなのかな、と勝手に想像してしまった。

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    2015年09月14日
  • 辻

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    巻末に収められた大江健三郎との対談では、「私の作品は全然難しいことないのに」と笑いながら語っているが、やっぱり難しい。
    氏の作品は用いられている言葉自体はどれも一般的なものばかりであるにも関わらず、文章になった瞬間に、1つ1つの文章が重層的になり、単一的な読み方を許さない解釈の幅がある、そんな点にあるように感じる。

    そして物語られる世界は、極めて日常的な生活における情景であるが、たとえそれが我々が当たり前だと思っている世界だとしても、物語られる文体というフィルターをかけることによって、全く別の様相を呈してくる。日常の中に潜む幻想性ともいうべき世界を、直接的な題材ではなく、文体により描ききる技

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    2014年07月10日
  • 蜩の声

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    現実に起きた事象とも絡め、一年のうちを古井氏独特の文体で描いている
    相変わらずの筆力だが、今回はやや胸に来る部分が少なかった

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    2013年11月04日
  • 蜩の声

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    私の読書不足というか読解力のなさというのも相まって、読むのにえらく時間を費やした。
    霞の中をたゆたうような気分にさせられる文章だった。
    私が持っている辞書には載っていない単語も多く、難解だった。

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    2012年10月26日
  • 槿

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    ネタバレ

    あー……しんどかった……。
    こんなん中年じゃなきゃわからないでしょ!
    なんでそんなに物忘れ激しいのかとか、なんで関係を結ぶのをそんなにもかたくなに避けるのかとか……
    中年の危機をしらない若者からしたらファンタジーですよ。読むのが15年早かった。

    過去に夜這いのようなかたちで誰かに抱かれたという園子、
    よく男に付け回され怯える伊子、
    そして自宅マンションの真上で殺人が起こったバーのママさん、
    ある日を境に女たちが杉尾を中心として…近づいてくるわけでなし、かといって遠のくわけでもなく、ある一定の距離を保ちながら少しずつ…すがっているようにも見え、誘惑するようにも見え。

    女たちはそれぞれに恐怖と

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    2012年05月28日
  • 蜩の声

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    五感、特に匂いにかんする描写がとてもきめ細やかで香り立つような文章。現在と過去が交錯する、主人公の記憶の世界。老いるということは自己と他者、身体と環境などのあらゆる境界が曖昧になってゆくことなのか。年をとってから再読してみたい本。

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    2012年05月16日
  • 人生の色気

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    古井氏の作品で初めて読んだ。タイトルに惹かれた。エロスという言葉がでてくるが、今まで意識したことがない中で古井氏の言葉を読んでいくと、不思議と人生を有意義に過ごすための人間観が変化していくのを感じた。世代間のギャップを感じておられるようだが、本質的なところは現代にも通じると思う。

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    2012年04月11日
  • 蜩の声

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    8つの短編集。季節の移り変わりに応じて、主人公の年齢も変わってゆく。

    霧の中で読んでいるような、そんな感覚に捕らわれる。現在、未来、過去といった時間の感覚も曖昧になる。
    まるで夢の中にいるような、不思議な作品でした。微妙な感情の表現の仕方が素晴らしいと思う。
    自分の語彙力のなさを痛感しました。

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    2012年03月29日
  • 木犀の日 古井由吉自選短篇集

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    自分の感性では少し難しかったような気がした。
    社会の中での自分の対比というのは、それは物凄く辛いことで文学的命題ではあるのだけども、少し生活に密着しているような気がして、それを自選して編集した妙なバランスの悪さを感じた。
    多分社会経験が足らないせいもあるのだろうけど。
    ただ田舎から東京に戻ってラッシュに違和感を感じる、なんて全く面白いとも思わなかった。
    そんなの思い付いても誰も書かないだろうと。
    あと会社で意図的に発狂した話も。
    興味深く読めたのは『椋鳥』。
    まあ竿姉妹の話なのだけど、こういうドロッとした女の情念が好きだ(あまり関わりたくはないが)。
    きっと40代後半からこの短

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    2012年01月14日
  • 人生の色気

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    前にある人が「文学とはエロスだ」というようなことを言っていて、その時は閉鎖的な囲いに違和感を感じ、「はぁ」とか「ふーん」だとか適当に思っていたのだけど、エロスに想いを馳せる古井の姿を見ていたら、あながちその通りなのかもしれない、とも思うようになった。しかしながら、この本の「人生の色気」という大きな題名から私が勝手に想像していた、終わりに向けた死の色気とは異なり、生への色気、続く色気であることに、男を感じさせるのだが正直少し物足りない。おせっかいながら題名を変えた方がいいと思う。

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    2011年03月04日
  • やすらい花

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    「夏のたそがれ時に縁側に坐って庭越しに正面の生垣を眺める老人の姿を、男は妻を亡くして一年ほどになり、そんな時刻に一人暮らしの五階の住まいから思い出して、見えるはずもないその昔の影を探すことがある。」
    という書き出しに、もう読むの止めようかと思いました。
    結局通読しましたが、「え、今何の話してるの?」と迷うことしばしば。
    著者は主語と述語の間をうんと遠くするのが好きみたいで、読点と読点の間に別の時制の話を入れ込むのが好き。まるで関係代名詞を省略した英語の和訳を読んでいるような、詩を読んでいるような、妙な気分です。

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    2010年10月05日