あらすじ
インフルエンザの流行下、幾度目かの入院。雛の節句にあった厄災の記憶。改元の初夏、山で危ない道を渡った若かりし日が甦る。梅雨さなか、次兄の訃報に去来する亡き母と父。そして術後の30年前と同じく並木路をめぐった数日後、またも病院のベッドにいた。未完の「遺稿」収録。現代日本文学をはるかに照らす作家、最後の小説集。
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Posted by ブクログ
「われもまた天に」(古井由吉)を読んだ。
矯めつ眇めつするほどの人生など生きてこなかった私ではあるけれど、還暦を過ぎてから殊更に古井由吉の文章が沁みてくる。
『ほんとうのことは、それ自体埒もない言葉の、取りとめもないつぶやき返しによってしか、表わせないものなのか。』(本文より)
Posted by ブクログ
肉体的に衰弱していく自分自身の姿を、巧みな表現力で書き表したユニークに著作だ.頭は活発に活動しているなかで、身体の動きは儘にならないもどかしさがよく分かる.小生より10歳上だが、語彙が豊富で流石に一流作家だと感じた.表題作で地下鉄を降りて方角を間違える場面は、自分がコントロールできない歯がゆさがよく描写されていると感じた.