加納朋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
加納朋子さん、ちょっとお久し振りの22冊目。
星が出てくるお話が7つ。南の島、山奥のホテル、田舎町の高校、古ぼけたアパートの下宿屋、小惑星に衝突された宇宙船…、色々なシチュエーションの中で語られる話は、最後になって今まで見えていたものがガラリと変わったり、ちょっとした驚きがあったり、隠されていた謎が明かされたりと、どの話もこの作者さんらしい捻りがあって楽しめる。
とりわけ、第3話「箱庭に降る星は」の、完全無欠に見えて泣き落としには弱く、みんなの問題を解決しながら自らは屈託を抱える、そんな副会長の姿が魅力的。第四話「木星荘のヴィーナス」の超絶美女の女子大生・金江さんの天然振りも愛らしい。
加 -
Posted by ブクログ
閉校が決まった大学に、様々な理由で単位が足りずに卒業できない学生たちのために行われた特別補講合宿。
睡眠障害、摂食障害、ナルコプレシーなど、現代社会の複雑なストレスが原因とされる症状を抱えた学生たちは、まるで刑務所のような厳格な規律の生活の中、人間本来の健やかさを取り戻す力を学んでいく。
ラストの理事長の生い立ちには感銘を受けた。
「もう駄目だ、耐えられないと思った時、自分の足で逃げられる力を、今のうちに育てて下さい。そして、自分の言葉で、直接『助けて』と言える人を探して下さい。我と我が身を救うための、知恵と勇気を身につけて下さい。」
学校とは、学力をつけるためだけでなく、上手 -
Posted by ブクログ
とにかく全員卒業することを願って温情をかける理事長。
このような理事長いたら素晴らしいけれど、ここまで生徒に寄り添うことはなかなか無く、お疲れでは、と心配になってしまった。
閉校が決っている学園。心や体に問題を抱え、卒業が危うい女学生たち。
正直、悩みの種が違うお話が幾つかあって、少々頭がまとまらなかった。
自分の悩みをどこまで人にさらけ出すかは難しい。けれど、自分や人を理解するため、前へ進むため、ある程度助けを求めることも大切だと思った。それは決して恥ずかしいことではない。
心がブランコのように揺れて。どうしてこんなに揺れるんだろうって思うこともある。揺れるって、いうのが人生なのですよね。
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Posted by ブクログ
一万円選書の岩田さんがその著書で勧めてくれていたので読んだ本だということを、本編を読み終えた後の解説を読んで思い出した。
一つ目の話の主人公が語る形でのは書き出しが、自分の性に合っているというか、ハマるというかそういう感じがある本は総じて、仮に話自体が難しかったりしても自分には面白く読めるしその著者の作品を他にも読んでみようと思うもので、今回もそういう感じの作者を見つけられて良かったなと早々に思えた。
最後の理事長の話でカーテンコールのようにという話が出てきてなるほどタイトルはそういうことだったかと思ったが、果たして自分の実人生の齢五十を大分過ぎた今このテーマの話を読んだとて、なかなか、さてど -
Posted by ブクログ
当時社会人一年目として働く友人を思い出しました。
彼は、残り少ないエネルギーを自分を責めることに使っていました。心を患い、生活がままならなくなるのにそう時間はかかりませんでした。
"もう駄目だ、耐えられないと思った時、自分の足で逃げられる力を、今のうちに育てて下さい。”
この理事長の言葉は、読後何度も読み返すたいせつな一節のひとつです。
やれ深夜にラーメンを食べたとか、やれ風呂に入ってくるとか、やれ眠たいから寝かせてくれとか、私を鬱陶しそうにひっぺがす友人に心底嬉しく思う今です。
ご飯の味がして美味しいと思えること、眠りたい夜に眠ることができること、彼のそのひとつひとつが私はふとした時嬉